宅建業法 実戦篇

宅建業者の過去問アーカイブス 昭和61年・問38 免許の基準 (欠格要件)


株式会社甲社が県知事に対して宅地建物取引業の免許の申請を行った。次の記述のうち,県知事が宅地建物取引業法の免許をしてはならない場合に該当するものはどれか(昭和61年・問38)

1.「甲社の専任の取引主任者は,宅地建物取引業法違反により過料に処せられ5年を経過していない。」

2.「甲社の代表取締役は,私文書偽造の罪で懲役3年の判決を受けたが,それを不服として現在最高裁判所に上告中である。」

3.「甲社の相談役の1人は,3年前破産手続開始の決定があったことを理由に宅地建物取引業の免許を取り消された株式会社乙社の取消し当時の監査役であった。」

4.「甲社の取締役の1人は,道路交通法違反により懲役1年,執行猶予2年の刑に処せられ,現在執行猶予期間中である。」

【正解】

該当しない 該当しない 該当しない 該当する

1.「甲社の専任の取引主任者は,宅地建物取引業法違反により過料に処せられ5年を経過していない。」

【正解:該当しない

宅建業法違反による罰金刑−宅建業免許の欠格要件

 宅建業法違反により罰金の刑に処せられ,その刑の執行を終わり,又は刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者は,免許を受けることができません(宅建業法・5条1項3号の2)

 本肢では,過料に処せられた場合なので,欠格要件には該当しません。

 KEY 

            宅建業法違反により罰金の刑
                  ↓
 刑の執行を終わり,又は刑の執行を受けることがなくなった日から
 5年を経過しない者は,免許を受けることができない。

宅建業法での過料10万円(宅建業法・86条)

・登録を消除されたとき,又は主任者証が効力を失ったときに主任者証の返納をしなかった。

・重要事項説明をするときに主任者証の提示をしなかった。

・使用人その他の従業者が知り得た秘密を他に漏らした。

→ このほかには,指定流通機構に対する国土交通大臣の監督命令に違反した者に30万円以下の過料がある(宅建業法・85条)

2.「甲社の代表取締役は,私文書偽造の罪で懲役3年の判決を受けたが,それを不服として現在最高裁判所に上告中である。」

【正解:該当しない

◆確定判決になっていないとき

 免許を申請する者が,

 <禁錮以上の刑 (禁錮・懲役・死刑) に処せられ,その刑の執行を終わり,又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者>の場合は,国土交通大臣又は都道府県知事が免許をしてはならない欠格要件に該当しますが(宅建業法・5条1項3号)。,

 確定判決になっていない,つまり,高等裁判所の控訴審に係属中,最高裁に上告中であるときは,<有罪か無罪か,又有罪だとしても刑そのものが確定せず,刑に処せられてはいない>ので,欠格要件には該当しません。

確定判決・・・上訴裁判所によって取り消される余地のなくなった判決を言います。

 KEY 

 控訴審に係属中,最高裁に上告中のときは,刑に処せられていないので,
 欠格要件にはならない。

個人業者で国土交通大臣免許を受けている者は,平成16年3月末現在では,4業者。

3.「甲社の相談役の1人は,3年前破産手続開始の決定があったことを理由に宅地建物取引業の免許を取り消された株式会社乙社の取消し当時の監査役であった。」

【正解:該当しない

◆破産手続開始決定による免許取消は欠格要件には該当しない

 破産開始手続決定,免許を受けてから1年以内に事業を開始しない,引き続いて1年以上事業を休止した,等によって免許取消になった者の場合は,それのみでは欠格要件にはなりません(宅建業法・5条1項)。破産開始手続決定による免許取消しでは,復権を得ればいつでも免許を受けることができます。

 また,破産手続開始の決定によって免許取消しになった法人の役員であった者が,免許を申請する法人の役員にいるとしても,その法人は欠格要件には該当しません。

 KEY 

 破産手続開始の決定があったことによる免許取消。
                  ↓
    【個人業者】復権を得れば,欠格要件に該当しない。

    【法人業者】破産した法人の役員であった者が役員にいる法人は,
            欠格要件に該当しない。

●監査役

法人の役員またはそれに準じる者が取引主任者であるときは,その者が主として従事する事務所等では専任の取引主任者とみなすという規定(宅建業法・15条2項)は,監査役には適用されない。(監査役には業務を執行する権限がないため。)

4.「甲社の取締役の1人は,道路交通法違反により懲役1年,執行猶予2年の刑に処せられ,現在執行猶予期間中である。」

【正解:該当する

◆欠格要件に該当する刑罰の執行猶予期間中

 免許を申請する者が,

 <禁錮以上の刑 (禁錮・懲役・死刑) に処せられ,その刑の執行を終わり,又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者>の場合は,国土交通大臣又は都道府県知事が免許をしてはならない欠格要件に該当します(宅建業法・5条1項3号)

※執行を受けることがなくなった・・・時効が完成した場合など。

 執行猶予期間が満了すれば,刑の言い渡しそのものの効力がなくなり,刑に処せられなかったことになります(刑法27条)。したがって,<欠格要件に該当する刑罰についての執行猶予期間>が満了すれば,免許を受けることができます。

 しかし,執行猶予期間中は免許を受けることはできません。

 KEY 

 欠格要件に該当する執行猶予期間中

免許を受けることはできない


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