宅建業法 実戦篇
自ら売主の制限の過去問アーカイブス 昭和63年・問40
クーリングオフ・手付について信用の供与による契約締結誘引の禁止・
広告開始時期の制限・手付金等の保全措置
宅地建物取引業者が自ら売主となって行う工事完了前の建売別荘の分譲に関する次の記述のうち,宅地建物取引業法違反とならないものはどれか。(昭和63年・問40) |
1.「Aは,別荘近くのレストランにおいて,宅地建物取引業者でないBと売買契約を締結した。Bは,契約締結4日後,Aに対し書面により宅地建物取引業法第37条の2の規定に基づく契約解除 (いわゆるクーリングオフ) を行ったので,Aは,契約の解除に伴い,Bに対し損害賠償を請求した。」 |
2.「Aは,宅地建物取引業者でないCと売買代金1,500万円で売買契約を締結した。その際,Aは,「手付金は300万円とするが,とりあえず契約時には50万円だけ払ってくれればよい。」と言って,売買契約の締結を勧めた。」 |
3.「Aは,別荘地の開発について,森林法第10条の2の規定に基づく開発行為の許可を受ける必要があったが,許可を受けていなかったので,土地が未造成の状態であり許可を受けていない旨を表示して広告した。」 |
4.「Aは,宅地建物取引業者Dと売買代金2,500万円で売買契約を締結した。その契約においては,契約時に125万円の手付金を,契約締結1月後に750万円の中間金を支払う旨約定されていた。Aは,契約どおりDから125万円を手付金として受領したが,宅地建物取引業法第41条及び41条の2に規定する手付金等の保全措置を講じていなかった。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
違反する | 違反する | 違反する | 違反しない |
1.「Aは,別荘近くのレストランにおいて,宅地建物取引業者でないBと売買契約を締結した。Bは,契約締結4日後,Aに対し書面により宅地建物取引業法第37条の2の規定に基づく契約解除 (いわゆるクーリングオフ) を行ったので,Aは,契約の解除に伴い,Bに対し損害賠償を請求した。」 |
【正解:違反する】 ◆買主にクーリングオフされたときは,契約の解除に伴う損害賠償を請求できない 宅建業者は,自ら売主として宅建業者ではない者と売買契約を締結して,買主からクーリングオフされると,契約の解除に伴う損害賠償や違約金の支払を請求することはできない(宅建業法・37条の2・第1項,第3項)ので,本肢のケースは宅建業法に違反します。
|
2.「Aは,宅地建物取引業者でないCと売買代金1,500万円で売買契約を締結した。その際,Aは,「手付金は300万円とするが,とりあえず契約時には50万円だけ払ってくれればよい。」と言って,売買契約の締結を勧めた。」 |
【正解:違反する】 ◆信用の供与の禁止 宅建業者は,その業務に関し,相手方等に対して,手付について貸付その他,信用の供与をすることによって契約の締結を誘引する行為をしてはいけません(宅建業法47条第3項)。 本肢のケースでは<手付を数回に分けて受領する>ことになるので,手付についての信用の供与に該当し,宅建業法に違反します(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方,国土交通省)。
|
3.「Aは,別荘地の開発について,森林法第10条の2の規定に基づく開発行為の許可を受ける必要があったが,許可を受けていなかったので,土地が未造成の状態であり許可を受けていない旨を表示して広告した。」 |
【正解:違反する】 ◆広告開始時期の制限 宅建業者は,宅地の造成前,又は,建物の建築工事の完了前は,その工事について必要とされる開発許可や建築確認等の法令に基づく許可等の処分(政令で定めるもの)があった後でなければ,宅地又は建物の売買その他の業務に関する広告をすることができません(宅建業法・33条)。 森林法の規定に基づく開発行為の許可は政令で定める許可等の処分の一つであり(宅建業法施行令2条の5第23号),本肢のケースでは当該許可を受けていないので,<土地が未造成の状態であり許可を受けていない旨>を表示して広告したとしても,宅建業法に違反します。
|
4.「Aは,宅地建物取引業者Dと売買代金2,500万円で売買契約を締結した。その契約においては,契約時に125万円の手付金を,契約締結1月後に750万円の中間金を支払う旨約定されていた。Aは,契約どおりDから125万円を手付金として受領したが,宅地建物取引業法第41条及び41条の2に規定する手付金等の保全措置を講じていなかった。」 |
【正解:違反しない】 ◆手付金等保全措置 本問題での物件は,工事完了前の建売別荘で未完成物件です。 宅建業者は,自ら売主として宅建業者ではない者と未完成物件の売買契約を締結する際に,手付金・中間金等の合計が代金の5%超,または,1,000万円超になる場合は,手付金等保全措置を講じなければ受領できないことになっています(宅建業法・41条1項)。 本肢のケースでは,手付金として125万円 (2,500万円の5%ちょうど) を受領しようとするときには手付金等保全措置を講じる額には達していないので,手付金等保全措置を講じる必要はありません。 しかし,中間金として750万円を受領しようとするときには,手付金と中間金の合計で,125万円+750万円=875万円となって,代金2,500万円の35%になり代金の5%超に該当するので,手付金等保全措置を講じる必要があります。
|
1000本ノック・宅建業法編・本編のトップに戻る Brush Up! クーリングオフに戻る