宅建過去問 権利の変動篇 借地借家法
借地権の過去問アーカイブス 平成19年・問13
使用貸借,借地権の対抗力,法定更新,期間の定めのない借地契約の存続期間
Aが所有者として登記されている甲土地上に、Bが所有者として登記されている乙建物があり、CがAから甲土地を購入した場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。 (平成19年・問13) |
1 Bが甲土地を自分の土地であると判断して乙建物を建築していた場合であっても、Cは、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できない場合がある。 |
2 BがAとの間で甲土地の使用貸借契約を締結していた場合には、Cは、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できる。 |
3 BがAとの間で甲土地の借地契約を締結しており、甲土地購入後に借地権の存続期間が満了した場合であっても、Cは、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できない場合がある。 |
4 BがAとの間で期間を定めずに甲土地の借地契約を締結している場合には、Cは、いつでも正当事由とともに解約を申し入れて、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できる。 |
<コメント> |
肢1,肢2は民法と判例の問題で,少し戸惑った方がいたかもしれません。ただ,正解肢は借地借家法の頻出テーマですから,合格するには正解できないといけません。 |
●出題論点● |
(肢1) 土地の新所有者が建物の収去・土地の明渡しを請求できない場合
(肢2) 使用貸借には,第三者への対抗力はない (肢3) 借地権設定者が遅滞なく異議を述べないときは法定更新 (肢4) 期間の定めのない借地契約の存続期間は30年 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | ○ | ○ | × |
正答率 | 60.7% |
乙建物 (所有者としてBが登記されている) ――――――――――――――――――――――― 甲土地 (所有者としてAが登記されている) ⇒ CがAから甲土地を購入した |
1 Bが甲土地を自分の土地であると判断して乙建物を建築していた場合であっても、Cは、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できない場合がある。 |
【正解:○】 Cが建物の収去・土地の明渡しを請求できないケースは幾つかあります。以下のうち,一つでも思い浮かべることができればよしとしましょう。 (1) 時効による取得 甲土地を購入したCがBに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できない場合としては,まず時効による取得があります。 (1)Cが購入した後に,Bが甲土地を時効取得した場合(判例・最高裁・昭和41.11.22) (2)Bが甲土地を時効取得した後に,Cが購入し,Bが先に登記した場合(判例・大審院・大正14.7.8) (2) 請求が権利の濫用に該当する場合 所有権を取得したCは,Bに土地を使用する権原がなければ,本来は,建物の収去・土地の明渡し請求できるはずですが,所有権に基づく妨害排除請求が権利の濫用となる場合には,妨害排除請求が認められません(平成18年・問1)。 |
2 BがAとの間で甲土地の使用貸借契約を締結していた場合には、Cは、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できる。 |
【正解:○】 使用貸借(民法593条)の借主には,もともと第三者〔新所有者や抵当権者等〕に対する対効力はなく※,使用貸借の目的物である土地の上の建物が登記されていてもこのことに変わりはありません。 また,使用貸借には借地借家法は適用されません。
したがって,甲土地の購入者であるCは,使用借権者Bに対して,建物を収去して土地を明け渡すよう請求〔妨害排除請求〕することができます。 ※使用貸借での借主は,貸主に対してのみ,その権利を主張することができるだけなので,甲土地の所有者が変わってしまった以上,本肢の場合,BはCの甲土地の返還及び明渡し請求に対して,対抗するものを有していません(物権の債権に対する優先的効力)。 |
3 BがAとの間で甲土地の借地契約を締結しており、甲土地購入後に借地権の存続期間が満了した場合であっても、Cは、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できない場合がある。 |
【正解:○】 借地(甲土地)上の建物乙に所有権の登記があるのですから,Bは,対抗力のある借地権を有しています(借地借家法10条)。 借地契約の存続期間が満了していても, (1) 借地権者が契約の更新を請求して,借地権設定者が正当事由をもって遅滞なく異議を述べなかった場合, (2) 借地権者が土地の使用を継続しているときに,借地権設定者が正当事由をもって遅滞なく異議を述べなかった場合, このどれかに該当する場合は,自動的に更新されます〔法定更新〕(借地借家法5条)。 したがって,Cの甲土地購入後に借地権の存続期間が満了した場合に,Cが,正当事由をもって遅滞なく異議を述べなかったときは,Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できないので,本肢は正しい記述です。 |
4 BがAとの間で期間を定めずに甲土地の借地契約を締結している場合には、Cは、いつでも正当事由とともに解約を申し入れて、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できる。 |
【正解:×】 借地(甲土地)上の建物乙に所有権の登記があるのですから,Bは,対抗力のある借地権を有しています(借地借家法10条)。 借地契約で期間を定めなかった場合,存続期間は30年になります(借地借家法3条)。このため,土地を購入したCに正当事由があっても,解約の申入れをすることはできません。 Cにできるのは,存続期間満了後に,Bが契約の更新を請求したときやBが土地の使用を継続しているときに,正当事由をもって遅滞なく異議を述べることくらいしかありません。 |