宅建過去問 権利の変動篇 借地借家法

借地権の過去問アーカイブス 平成21年・問11 


 現行の借地借家法の施行後に設定された借地権に関する次の記述のうち、借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。(平成21年・問11)

1 借地権の当初の存続期間中に借地上の建物の滅失があった場合で、借地権者が借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、借地権設定者は地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借契約の解約の申入れをすることができる。

2 借地権の当初の存続期間が満了する場合において、借地権者が借地契約の更新を請求したときに、建物があるときは、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときでも、その異議の理由にかかわりなく、従前の借地契約と同一の条件で借地契約を更新したものとみなされる。

3 借地権の当初の存続期間中に借地上の建物の滅失があった場合、借地権者は地上権の放棄又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる。

4 借地権の当初の存続期間が満了し借地契約を更新する場合において、当事者間でその期間を更新の日から10年と定めたときは、その定めは効力を生じず、更新後の存続期間は更新の日から20年となる。

<コメント>  
 正解肢は過去問でも出題歴のあるものだったので,正答率はそれほど低くはありません。
●出題論点●
 (肢1) 借地権設定者の『地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借契約の解約の申入れ』

 (肢2) 借地権設定者〔地主〕の異議に正当な事由があると認められるときには,
     借地契約は終了する。

 (肢3) 借地権者の『地上権の放棄又は土地の賃貸借の解約の申入れ』

 (肢4) 借地権の更新後の期間

【正解】

× × ×

 正答率  57.7%

1 借地権の当初の存続期間中に借地上の建物の滅失があった場合で、借地権者が借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、借地権設定者は地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借契約の解約の申入れをすることができる。

【正解:×平成10年・問11・肢1・肢3, 
◆更新後の無断築造−地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借契約の解約の申入れ

 普通借地権で,契約の更新の後に建物の滅失があった場合に,借地権者が借地権設定者 (地主) の承諾を得ないで〔また,それに代わる裁判所の許可もないのに〕残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは,借地権設定者 (地主) は,地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができます(借地借家法8条2項)

 しかし,この規定は,当初の存続期間中に,借地上の建物の滅失があって,借地権者が借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときには適用されないので,本肢は誤りです。

▼参考 借地権の当初の存続期間中に借地上の建物の滅失があった場合〔当事者間で増改築禁止特約があるとする※1〕に,借地権者が借地権設定者の承諾※2を得ないで〔また,それに代わる裁判所の許可もないのに〕残存期間を超えて存続すべき建物を築造したとき,借地権者は更新の請求はできますが(借地借家法5条1項),借地権設定者は正当事由があれば更新拒絶することができます(借地借家法6条)

※1 増改築禁止特約がない場合は,借地権設定者の承諾がなくても,再築できる。

※2 当事者間で増改築禁止特約がある場合に借地権設定者の承諾を得られないときは,借地権者は,借地権設定者の承諾に代わる許可の裁判を申し立てることができます(借地借家法17条1項)。 

●建物の再築
 契約の更新の後に,借地権設定者が残存期間を超えて存続すべき建物の築造〔再築〕について承諾しない場合,借地権者は,借地権設定者の承諾に代わる許可の裁判を申し立てることができます。 

(借地契約の更新後の建物の再築の許可)

第18条  契約の更新の後において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造することにつきやむを得ない事情があるにもかかわらず、借地権設定者がその建物の築造を承諾しないときは、借地権設定者が地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができない旨を定めた場合を除き、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、延長すべき借地権の期間として第七条第一項の規定による期間と異なる期間を定め、他の借地条件を変更し、財産上の給付を命じ、その他相当の処分をすることができる。

2  裁判所は、前項の裁判をするには、建物の状況、建物の滅失があった場合には滅失に至った事情、借地に関する従前の経過、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。)が土地の使用を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。

3  前条第5項及び第6項の規定は、第1項の裁判をする場合に準用する。

2 借地権の当初の存続期間が満了する場合において、借地権者が借地契約の更新を請求したときに、建物があるときは、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときでも、その異議の理由にかかわりなく、従前の借地契約と同一の条件で借地契約を更新したものとみなされる。

【正解:×平成10年・問11・肢1・肢2
◆借地契約の更新拒絶の要件

 普通借地権の更新の請求は,原則として,存続期間満了後も建物がある場合にできます(借地借家法5条1項)

 しかし,借地権者が借地契約の更新を請求した場合に,借地権設定者〔地主〕が遅滞なく異議を述べ,かつ,その異議に正当な事由があると認められるときには,借地契約は終了します(借地借家法6条)

借地権設定者〔地主〕の異議に正当な事由が正当の事由がなければ,従前の借地契約と同一の条件で借地契約を更新したものとみなされます(借地借家法5条1項)

3 借地権の当初の存続期間中に借地上の建物の滅失があった場合、借地権者は地上権の放棄又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる。

【正解:×初出題
◆更新後の建物の滅失−地上権の放棄又は土地の賃貸借の解約の申入れ

 借地権者が,『地上権の放棄又は土地の賃貸借の解約の申入れ』をすることができるのは,借地契約の更新の後に建物の滅失があった場合です(借地借家法8条1項)

当初の存続期間中に借地上の建物の滅失があった場合は,再築について,借地権設定者の承諾があれば,借地権は,承諾があった日または建物が築造された日のいずれか早い日から20年間〔残存期間がこれより長いとき,または当事者がこれより長い期間を定めたときは,その期間〕存続します(借地借家法7条1項)。再築について,借地権設定者の承諾がないときは,肢1の参考を参照してください。

4 借地権の当初の存続期間が満了し借地契約を更新する場合において、当事者間でその期間を更新の日から10年と定めたときは、その定めは効力を生じず、更新後の存続期間は更新の日から20年となる。

【正解:平成10年・問11・肢1・肢3平成13年・問12・肢1
◆借地権の更新後の期間

 借地契約を更新する場合,その存続期間は当事者の協議によって定めますが,更新後の存続期間については借地借家法で制限を受けます。

 借地借家法では,借地権の設定後の最初の更新では20年,2回目の更新以降は10年〔当事者がこれより長い期間を定めたときは,その期間〕とし(借地借家法4条),当事者間でその期間よりも短い期間を定めても,その定めは効力を生じません〔強行規定〕(借地借家法9条)

 このため,借地権の当初の存続期間が満了し借地契約を更新する場合に,期間を更新の日から10年と定めても,その定めは効力を生じず,更新後の存続期間は更新の日から20年となるので,本肢は正しい記述です。


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