宅建試験
法改正情報 レポートNo.02 |
'04 民法改正施行の全体像 |
●平成16年3月1日施行 (仲裁法関連)
●平成16年4月1日施行 (担保物権等の改正・人事訴訟法関連)
1 民法改正●(1) 今回の民法改正の全体像
2 民法改正●(2) 仲裁法関連の民法改正
3 民法改正●(3) 人事訴訟法関連の民法改正
4 民法改正●(4) 担保物権の改正・第371条 果実
5 民法改正●(5) 担保物権の改正・滌除 → 抵当権消滅請求
第378条〜 第387条,第577条
6 民法改正●(6) 担保物権の改正・第389条 一括競売の変更
7 民法改正●(7) 担保物権の改正・抵当権設定後の賃貸借・第395条・第387条
8 民法改正●(8) 担保物権の改正・根抵当権(398条の19,398条の20)
9 民法改正●(9) 担保物権の改正点・不動産質権(359条),債権質(363条),
先取特権(306条,308条)
⇒ 短期賃貸借の経過措置 ⇒ 抵当権者の同意の登記
●現代語化などの民法改正による抵当権での条文番号の変動 (平成16年12月1日公布,平成16年法律第147号) |
担保物権の民法改正後,現代語化・保証規定の見直しなどの民法の改正があり,次のように条文番号に変動がありました。 |
(抵当権の順位) 373条1項→373条,(抵当権の順位の変更) 373条2項→374条1項,373条3項→374条2項,(抵当権の被担保債権の範囲) 374条→375条,
(抵当権の処分) 375条→376条,(抵当権の処分の対抗要件) 376条→377条, (代価弁済) 377条→378条,(抵当権消滅請求) 378条→379条,(抵当権消滅請求ができない場合)379条→380条,380条→381条, 根抵当権にも条文番号の変動はありますが,省略します。 |
●民法改正(1) 今回の民法改正の全体像 |
昨年の12月に民法改正の施行日が政令で公表されました。このため,12月に発行された一部の基本書では,編集段階で間に合わず,改正前の記述か,改正を予告した記述になっています。〔しかし,12月後半以降に編集されたものはおおむね改正に対応しており,現在では,改正前の記述又は改正を予告というのは少数派になってきています。〕 今回の民法の担保物権に関する改正は,実務面での影響は甚だ大きなものであり,平成16年の破産法の約80年ぶりの大改正と相俟って,不良債権資産の処理に活路を与えるものと期待されています。〔今回の一連の改正で倒産件数が増加すると予測するアナリストもいます。〕 ただお断りしておかなくてはいけないことがあります。民法が改正されたから改正前のものは宅建試験と全く関係ないかというと違います。現行の短期賃貸借等は改正施行前に対抗要件が確定しているものについては,経過措置がとられており,改正後も相当の期間はまだまだ残存します。したがってこの経過措置がある以上,実務上で知らないわけにはいきませんし,経過措置が出題される可能性もあります。 経過措置も平成16年4月1日現在施行されている法令に含まれるからです。 お手持ちの基本書等で改正前の記述があったからといって,アワテテほかの本を買う必要はありません。改正後のみの記述の本では改正前のものについて全く言及していないものもあり,これでは経過措置が万一出題されたときに対応できません。 改正前の記述も全く無駄ではないのです。 お手持ちの基本書等で改正前の記述がある場合は,このレポートをプリント・アウトし縮小コピーしてテキストに貼っておくだけで十分です。 今回は,民法改正のハイライトにあたる部分をつぶさに見ていくことにしましょう。 □民法改正の全体像 今回の民法改正に関連するのは,次のものです。 ●仲裁法の制定 平成16年3月1日施行 → 民法(第12条第1項5号)の改正 ●人事訴訟法の制定 平成16年4月1日施行 → 民法(親族編)の一部改正 ●民法・担保物権等の改正 平成16年4月1日施行 → 民法(物権編・債権編)一部改正 このほかに,担保物権の改正と連動して,民事保全法・民事執行法・不動産登記法も |
●民法改正(2) 仲裁法関連の民法改正 |
□仲裁法 平成16年3月1日施行(平成15年12月25日政令第544号) 仲裁法(平成15年法律第138号・平成15年8月1日公布)は,「公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律」(明治23年法律第29号)の第8章・仲裁手続(786条〜805条)を独立させた法律です。 仲裁法の制定に伴い,民法では,被保佐人が保佐人の同意を得なければいけないものを規定している第12条第1項の第5号が,これまでの「仲裁契約」から,「仲裁合意」に変わりました。 第12条第1項の第5号 【旧】 五 贈与,和解又は仲裁契約を為すこと 【新】 五 贈与,和解又ハ仲裁合意を為すこと |
●民法改正(3) 人事訴訟法関連の民法改正 | |
□人事訴訟法 平成16年4月1日施行(平成15年12月12日政令第512号) 「人事訴訟法」(平成15年法律第109号・平成15年7月16日公布)は, これに伴う民法での改正部分は次の3点です。
第749条 【旧】 第766条乃至第769条の規定は,婚姻の取消につきこれを準用する。 【新】 第728条第1項,第766条から第769条まで,第790条第1項ただし書 並びに第819第2項,第3項,第5項及び第6項の規定は, 婚姻の取消しについて準用する。 ※宅建試験には全く関係ありませんが今回収録しました。改正点で見落としが |
●民法改正(4) 担保物権の改正・第371条 果実 |
「担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律」(平成15年法律第138号・平成15年8月1日に公布され,平成15年12月12日の政令第509号により平成16年4月1日から施行)により,民法・民事執行法・民事保全法・不動産登記法が改正されました。
民事執行法の改正により,不動産担保権の実行は,『担保不動産競売』と『担保不動産収益執行』の2つになりました。(民事執行法180条) 『担保不動産競売』はこれまでの「不動産競売」ですが,『担保不動産収益執行』は,抵当不動産を裁判所が選任した管理人に占有を移してその収益の中から配当等を実施するという新しい制度です。 また抵当権者は競売開始決定による差押の後に担保不動産収益執行を併用することもできます。〔競売手続が進行して競売の買受人が代金納付すると抵当権の登記は抹消されるため,登記抹消の時点で担保不動産収益執行も終了します。〕 この制度の導入に伴い,民法では359条,371条,398条の20に改正がありました。 また,民法の条文には現れていないものの,「抵当不動産の賃料債権に対する物上代位権の行使」と「担保不動産収益執行」が競合する場合は「担保不動産収益執行」の効力が原則として優先されることとし,「担保不動産収益執行の開始決定」の前に物上代位による差押えをしていた債権者は「担保不動産収益執行手続」の中で担保権の順位に従って配当等を受けることになりました。(民事執行法93条の4第1項,第3項) 第371条 果実 2 第三取得者が第381条の通知を受けたるときは其後一年内に抵当不動産の差押 【新】 抵当権は其担保する債権に付き不履行ありたるときは其後に生じたる 新371条の果実は「天然果実」だけではなく「法定果実」(賃料)も含むと解されており,抵当権者は,「物上代位」(最高裁・平成1.10.27)と「担保不動産収益執行」などで法定果実から債権を回収することができます。〔ただし,競合する場合は,担保不動産収益執行が優先されます。〕 ▼改正後の371条は,「天然果実・法定果実を問わず,債務不履行が生じた後には抵当権が及ぶ」ことを明らかにしたとされています。(内田貴「民法3」〔東京大学出版会,2004〕p.395) |
●民法改正(5) 担保物権の改正・第378条〜 第387条,第577条 滌除 → 抵当権消滅請求 |
●抵当権実行の通知は廃止された 旧381条では,『抵当権者は,抵当権を実行しようとするときは,滌除〔現行では抵当権消滅請求と改称〕をするかどうか検討させるチャンスを与えるために,あらかじめ第三取得者にその旨を通知しなければいけない』という規定がありましたが,平成15年の法改正で廃止されました。(381条は削除) 【旧】381条 抵当権者が其抵当権を実行せんと欲するときは予め第378条に掲げたる 【新】381条削除 ●滌除 → 抵当権消滅請求 法改正により『滌除』は『抵当権消滅請求』と名称が変わり,滌除による増価競売も廃止されました。(旧・383条3項,旧・384条,旧・385条,旧・386条,旧・387条は廃止され,新たな条文に入れ替わっています。) このほかには,以下のものが変更になっています。 ・『普通抵当権で抵当権消滅請求できる者が抵当不動産の所有権を取得した者に 第378条 滌除の廃止→ 抵当権消滅請求 【新】 抵当不動産に付き所有権を取得したる第三者は抵当権消滅請求(第383条の規定に依り同条第三号の代価又は金額を抵当権者に提供して抵当権の消滅を請求することを謂う。以下同じ。)を為すことを得 ⇒ 旧378条での「払渡しまたは供託」は,新378条では「提供」となっていますが,新383条3号では「弁済または供託」となっているので,これについては実態的に変更があったわけではありません。 第379条 【新】 主たる債務者,保証人及び其承継人は抵当権消滅請求を為すことを得ず。 第380条 【新】 停止条件附第三取得者は条件の成否未定の間は抵当権消滅請求を為す ・『抵当権消滅請求をすることができる時期』(382条), 抵当権の実行としての競売に因る差押の効力発生前ならばいつでも,抵当権消滅請求をすることができます。〔担保不動産競売が申立てられて差押登記がされるときまで〕 → 差押前までというほかには制限がないため,被担保債権の弁済期が到来 また抵当権消滅請求は,抵当権者が担保不動産競売を申立てて取消になって 第383条 一 取得の原因,年月日,譲渡人及び取得者の氏名,住所,抵当不動産ノ性質、 二 抵当不動産に関する登記事項証明書 但 既に消滅したる権利に関する登記は 三 債権者が二箇月内に抵当権を実行して競売の申立を為さざるときは ・『抵当権消滅請求を拒否する場合,抵当権者は2ヵ月以内に競売を申し立てる』 抵当権消滅請求権者が,時価に相当する金額を抵当権者に提示すれば問題はあり その場合,抵当権者は,抵当権消滅請求の申し出の送達の日から2ヵ月以内に また,第三取得者が抵当権消滅請求をした場合に,抵当権者が競売の申立てをする なお,民法・民事執行法とも規定はありませんが,通説では,抵当権消滅請求を ●抵当権消滅請求を承諾したとみなされる場合 増価競売の廃止により,整備された規定です。 ・抵当権者が,抵当権消滅請求を受けて,2ヵ月以内に競売を申し出ない場合(384条1号) ・申し立てた競売を取り下げたり(384条2号),却下されたり(384条3号), ●抵当権消滅請求を承諾したとみなされない場合 →詳細は覚える必要なし 取り消す旨の決定が確定になっても,抵当権は消滅せず,抵当権消滅請求を承諾 ・最低売却価額を超える額の買受申出がないため競売手続が取り消される場合 ・売却を三回実施しても買受けの申出がなく,差押債権者が売却実施の申出をしない ・売却を実施したが買受けの申出がなかったため競売手続が取り消された場合 ・担保不動産競売の手続の停止及び執行処分の取消しを命ずる裁判の謄本が提出され ⇒ 改正前は,『増価競売』という制度がありましたが,改正により廃止され,上記のように買受の申出がなく競売が取り消されても,抵当権者は買受義務を負わずにすみ,抵当権消滅請求は効力を失うことになります。 ●代金支払拒絶権 (577条) 【新】 1 買受けたる不動産に付き抵当権の登記あるときは買主は抵当権消滅請求 2 前項の規定は買受けたる不動産に付き先取特権又は質権の登記ある場合に 滌除→抵当権消滅請求と改称したために,2項に分け,1項で抵当権,2項で 不動産質権や不動産上の先取特権は抵当権の規定が準用されるため,目的不動産の第三取得者の代価弁済や消滅請求によっても消滅することになっています。ここで覚えておきたいのは,買い受けた不動産に質権や先取特権が登記されていたら,抵当権と同様に質権者や先取特権者に対して消滅請求することができるということです。 註 不動産質権や不動産上の先取特権は,実際には,現在ほとんど使われていません。 |
●民法改正(6) 担保物権の改正・第389条 一括競売の変更 |
第389条 【旧】 抵当権設定の後 其設定者が抵当地に建物を築造したるときは抵当権者は 土地と共に之を競売することを得 但 其優先権は土地の代価に付てのみ 之を行うことを得 【新】 1 抵当権設定の後 抵当地に建物が築造せられたるときは抵当権者は土地と共に 2 前項の規定は其建物の所有者が抵当地を占有するに付き抵当権者に対抗する 更地に抵当権設定 建物を築造 抵当権の実行(競売) 土地に抵当権を設定した後,抵当権設定者や抵当権者に対抗できない第三者が しかし,建物の競売代金から優先弁済を受けることはできません。 改正前,一括競売できるのは,設定者が抵当権設定後に抵当地に建物を築造したときだけでした。改正により,「抵当権者に対抗できる敷地利用権」を有しない第三者の建物も ●一括競売できる建物の代表例 → 出題が今後予想される (1)建物の所有者が抵当権設定者で,抵当権設定後に築造した建物 (2)建物の所有者が抵当権設定者以外のとき〔改正法施行後〕 ・抵当権設定後に,「抵当権者の同意の登記により対抗力を付与されていない土地の賃借人」が築造した建物 ・抵当権設定後に,設定者によって築造された建物を譲り受けたが,「抵当権者の同意の登記により対抗力を付与されていない土地の賃借人」が所有している建物 ●一括競売できない建物の代表例 → 出題が今後予想される (1)建物の所有者が抵当権設定者で,抵当権設定時に既にあった建物 (2)建物の所有者が抵当権設定者以外のとき ・抵当権設定前から抵当権者に対抗できる土地の賃借権を有している賃借人が ・〔改正法施行後〕 ・抵当権設定後,改正法施行前に,短期賃貸借の要件を満たしていた土地の賃借人 |
●民法改正(7) 担保物権の改正・第395条・第387条 抵当権設定後の賃貸借 |
平成15年の民法改正により短期賃貸借は悪用されることが多いため廃止され,それに代わるものとして「抵当権者の同意による,賃借人への対抗力の付与」(387条),「競売後の明渡し猶予」(395条)が創設されました。
●「抵当権者の同意による,抵当権設定後の賃借人への対抗力の付与」 〔賃借権の登記+抵当権者の同意の登記〕 (土地・建物の両方) 抵当権者の同意により賃借権が存続する制度。 抵当権設定後の賃貸借契約でも,その賃借権の登記がされていて,(その賃借権の登記がされる前に抵当権が登記されている) 抵当権者全員がその賃借権の存続を承諾してその同意を登記したときは,賃借人は,同意した抵当権者に対して賃借権を対抗できる。(387条1項) 抵当権設定の登記 賃借権の登記 賃借権に同意する登記 ――●――――――――――――●――――――●――――→ 抵当権者が同意をする際に,その抵当権を目的とする権利を有する者〔転抵当権者等〕その他の「抵当権者の同意によって不利益を受ける者」がいるときは,抵当権者は,それらの者の承諾がなければ,その同意をすることができません。(387条2項) ★賃借権の登記 387条1項での賃借権の登記は,借地借家法の10条の「借地上の建物の登記」〔表示の登記・所有権保存の登記等〕,借地借家法の31条の「賃借権登記に代わる引渡し」を含めないと解されています。つまり,抵当権設定後の賃貸借契約がこの2つである場合は抵当権者には対抗できません。 ◇適用できる不動産のイメージ ・土地 こう並べて見て考えてみると,いわゆるアパートの一室や賃貸のテナントの一区画を借りる場合は,そもそも登記そのものができないために対象外だということがわかります。 ★敷金の承継 不動産登記法の改正(132条1項)により,敷金があれば登記することを要し,賃借権の登記で敷金額についても抵当権者の同意を得ておく必要があります。賃借人が抵当権者に対抗できるときには,競売の買受人は敷金の返還義務を負担します。 ●「競売後の建物の明渡しの猶予」 (建物のみ) 賃貸アパートなどの場合賃借権の登記をすることはできないため,抵当権者の同意の登記により対抗力が付与されていない建物の賃借人を保護する規定も必要です。競売の買受人が簡単に明渡しを請求できるとすれば,抵当権のある賃貸アパートには誰も入らなくなってしまいます。 抵当権設定後に建物賃借人となった者で一定の要件を満たす者は,抵当権が実行されて買受人が買い受けたときから6ヵ月間は,明渡しが猶予されます。(395条1項) 競売で買い受け 明渡し期限 (6ヵ月後) ――●――――――――――――●――――→ その一定の要件は以下のどちらかです。 ・競売手続の開始前からその建物の使用または収益をしている者 ・強制管理または不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により建物の使用収益をする者 ただし,その明渡し猶予期間中の建物使用についての対価を支払わなければならず,買受人が建物使用者に対して相当の期間を定めてその1ヵ月分以上の支払いを催告したにもかかわらず,その相当の期間内に履行しないときは,明渡しの猶予は受けられません。(395条2項) 「抵当権設定後に建物賃借人となった者で上記の要件に該当しない者」には,明渡しの猶予は適用されません。 ★敷金は買受人には承継されない。抵当権設定後に建物賃借人となった者(抵当権者の同意の登記により対抗力を付与された者等を除く。)は,買受人に対抗できないため,買受人に敷金返還の請求をすることはできず,敷金で対価を相殺することはできません。 ☆土地についてはこのような規定はないので,抵当権設定後に土地の賃借人となった者〔借地権の登記及び抵当権者の同意の登記がある者を除く〕には,明渡しの猶予は適用されません。 |
●民法改正(8) 担保物権の改正・根抵当権 (398条の19,398条の20) | |||||||||
●根抵当権者による元本確定請求(398条の19第2項,3項) 確定期日を定めなかったとき,根抵当権者は,いつでも元本の確定を請求することができ,この場合根抵当権者が請求したときに元本は確定します。 〔不動産登記法の改正により,根抵当権者は元本確定の登記を申請することも
●元本不発生に係る確定事由の廃止(398条の20第1項第1号) 元本確定事由が従来の五つから四つになりました。 改正によって,担保すべき債権の範囲の変更や取引の終了その他の事由によって担保すべき元本が生じないことになっても,それのみでは根抵当権の担保する元本は確定しないことになりました。 従来は,担保すべき債権の範囲の変更や取引の終了その他の事由によって担保すべき元本が生じないことになったときは,元本が確定するとされていましたが,『取引の終了』をめぐる紛争やトラブルが多く,旧・398条の20第1項第1号は廃止されました。 【廃止された第1号】 ●担保不動産収益執行の導入による変更点(398条の20第1項第1号) 左の場合に於ては根抵当権の担保すべき元本は確定す 一 根抵当権者が 抵当不動産につき競売 若くは 担保不動産収益執行 又は ⇒ 元本確定事由の旧・398条の20第1項第2号を「担保不動産収益執行」の導入に合わせて変更し第1号にしたものです。 |
●民法改正(9) 担保物権の改正点 不動産質権(359条),債権質(363条),先取特権(306条,308条) |
●不動産質権の法改正 359条の改正により,以下の三つは,別段の定めのほかに ・不動産質権者は用方に従い,使用収益できる。(356条) 担保不動産収益執行では,裁判所が選任した管理人が目的不動産を管理し,収取した収益・換価代金から必要費用を支払ってから配当等を実施することになっているためです。 ●債権質の法改正 改正前,債権に質権を設定する場合は,その債権について証書があれば, 債権証書といっても何が該当するものなのか不明瞭なものが多く,この規定によりトラブルになるケースが多かったためです。 ただし,手形債権など債権を譲渡するときに証書の交付が必要な債権の場合の債権質は改正前どおり,債権の証書の引渡しによって質権設定の効力が発生します。 363条 債権にしてこれを譲渡すにはその証書を交付することを要するものを ⇒ 宅建試験でも敷金返還請求権に質権設定という事例が以前出題されています。 ●先取特権の法改正 306条・308条の改正により,先取特権によって担保される労働債権の種類や範囲が商法旧・295条1項に合わせる形で拡大されました。 306条 左に掲げたる原因より生じたる債権を有する者は債務者の総財産の上に 2号 雇用関係 〔改正前は 雇人の給料〕 308条 雇用関係の先取特権は,給料その他債務者と使用人との間の雇用関係に基き生じたる債権につき存在す。 〔改正前は 雇人が受けるべき最後の6个月間の給料〕 参考 商法・旧・295条1項 会社と使用人との間の雇用関係に基き生じたる債権を有する者は会社の総財産の上に先取特権を有す。 ⇒ これにより給料の期間制限がなくなり,また給料以外の労働債権にも先取特権によって広範囲に担保できるようになりました。また使用人としたのは「商法旧・295条1項での使用人」には請負・委任等の契約により労務を提供する者も含まれるとされていたのでそれに合わせる趣旨だとされています。 |
⇒ 短期賃貸借の経過措置 ⇒ 抵当権者の同意の登記
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