宅建試験
法改正情報
レポートNo.01
  '07法改正の展望

●主な改正の概要のアウトライン

 法改正はある日突然施行されるのではありません。学習を始める際に改正の見通しをつけておけば無駄な心配をしなくてすみます。  なお,平成18年までの宅建試験では,その年の4月1日現在の法令を基準とするとされてきており,平成19年も例年通り,4月1日現在の法令によるものと思われます。

【1000本ノック・改正法・一問一答】(改正の詳細予想問題) をご活用ください。

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●宅地建物取引業法 
■35条の重要事項の追加

 売買・交換 (その媒介・代理も含む) ,貸借の媒介・代理とも,重要事項として説明義務があります。(国土交通省の見解では,4) は売買・交換 (その媒介・代理も含む) でのみ説明義務がある。)

 1) 〔建物〕耐震診断を受けているときは その内容

 2) 〔建物〕石綿(アスべスト)の使用の有無の調査結果が記録されているときは その内容。

 3) 〔宅地・建物〕造成宅地防災区域内にある旨

 4) 〔宅地・建物〕<瑕疵担保責任の履行に関して保証保険契約の締結その他の措置で,国土交通省令で定めるものを講じるかどうか,及びその措置を講ずる場合のその措置の概要>(35条1項13号) ⇒ 4) については,条文上明記こそされていないものの,国土交通省の見解では,≪売買・交換(その媒介・代理)に適用され,貸借の媒介・代理には適用されない≫,としています。(この見解に従うと,貸借の媒介・代理では,説明義務はないことになります。)

■37条書面の記載事項 

 <当該責任の履行に関し構ずべき保証保険契約の締結その他の措置についての定めがあるときは,その内容>が37条書面 (売買・交換−媒介・代理も含む−) に加えられました(37条1項11号)

   瑕疵担保責任の履行に係る保証保険契約の締結
 35条の重要事項  説明義務

 (宅地建物の貸借の媒介・代理では,説明義務なし。※)

 37条書面  定めがあれば,その内容を記載

 (宅地建物の貸借の媒介・代理では,記載義務なし。)

※国土交通省の見解による。ただし,条文上では,≪売買・交換 (その媒介・代理)に限り,貸借の媒介代理には適用されない≫とは明示されていない。

●瑕疵担保責任に関する保証保険契約

   35条の説明義務  37条書面の記載義務
 売買・交換
 (媒介・代理)
 説明義務  定めがあるときは
 記載義務
 貸借の媒介・代理  説明義務なし※  記載義務なし

※国土交通省の見解による。ただし,条文上では,≪売買・交換 (その媒介・代理)に限り,貸借の媒介代理には適用されない≫とは明示されてはいない。

●瑕疵担保責任 (保証保険契約以外)

   35条の説明義務  37条書面の記載義務
 売買・交換
 (媒介・代理)
 説明義務はない  定めがあるときは
 記載義務
 貸借の媒介・代理  説明義務はない  記載義務なし

■47条1号の変更

 47条1号の具体的内容が明示されました。

 禁止される行為=故意に事実の不告知,不実のことを告げること

 具体的内容⇒ 35条の重要事項,37条の記載事項,供託所等の説明事項,相手方等の判断に重要な影響を及ぼすもの

 動機契約締結の勧誘に際し,または,申込みの撤回・解除・宅建業に関する取引から生じた債権の行使を妨げるため

(業務に関する禁止事項)
第47条
 宅地建物取引業者は,その業務に関して,宅地建物取引業者の相手方等に対し,次に掲げる行為をしてはならない。

1号 宅地若しくは建物の売買,交換若しくは賃借の契約の締結について勧誘をするに際し,又はその契約の申込みの撤回若しくは解除若しくは宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため,次のいずれかに該当する事項について,故意に事実を告げず,又は不実のことを告げる行為

イ 第35条第1項各号又は第2項各号に掲げる事項
ロ 第35条の2各号に掲げる事項 (供託所等に関する説明)
ハ 第37条第1項各号又は第2項各号(第1号を除く。)に掲げる事項
ニ イからハまでに掲げるもののほか,宅地若しくは建物の所在,規模,形質,現在若しくは将来の利用の制限,環境,交通等の利便,代金,借賃等の対価の額若しくは支払方法その他の取引条件又は当該宅地建物取引業者若しくは取引の関係者の資力若しくは信用に関する事項であって,宅地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの

●国土交通省・宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方
 第47条第1号関係(新設)

第47条第1号の禁止行為の成立時期について

 本号中「宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため」とは、

例えば、

 当該目的物に対する隠れたる瑕疵が発覚した場合や、

 契約の目的物となる宅地又は建物に関連して宅地建物取引業者に不法行為が発生した場合の修補の請求や損害賠償の請求の権利の行使を妨げることを目的として行う場合

が該当する。

■罰則の強化 (79条〜84条)

 (1) 罰則の各条文のうち,宅建業者等に科される罰金刑が 300万円以下(79条〜79条の2),100万円以下(80条〜82条),50万円以下(83条) に変更され,47条1号の違反では,懲役2年もしくは300万円以下の罰金,または併科とされました。

 (2) 両罰規定では,法人の代表者・代理人・従業者が,

 不正手段による免許取得に違反した場合,

 無免許営業の禁止に違反した場合,

 名義貸しの禁止に違反した場合,

 業務停止処分に違反した場合,

 47条1号に違反した場合,

 当該法人に対して1億円以下の罰金刑が科されることになりました。

●都市計画法 
■都市計画法   

準都市計画区域 … 都道府県が指定することに変更(都市計画法5条の2)

 都道府県が準都市計画区域を指定しようとするときは,あらかじめ,関係市町村及び都道府県都市計画審議会の意見を聴かなければならない。⇒都市計画区域の指定手続きと同じ。

 準都市計画区域内の都市計画の決定は,都道府県・市町村が行うことになりました。

 市町村は,準都市計画区域について都市計画を決定しようとするときは,あらかじめ,都道府県知事に協議し,その同意を得なければならない。⇒市町村が,都市計画区域について都市計画を決定する手続きと同じ。

 準都市計画区域内で,都道府県は,緑地保全地域の都市計画を定めることができるようになりました。(平成18年11月30日施行)

都市計画の提案…提案できるものとして,「独立行政法人都市再生機構」,「地方住宅供給公社」,「まちづくりの推進に関し経験と知識を有するものとして国土交通省令で定める団体」が加わりました。(都市計画法・21条の2・第2項) (平成18年8月30日施行)

●建築基準法 
■建築基準法   

建築確認 (平成18年11月30日施行)

 準都市計画区域内で一般建築物の建築確認が除外される区域を,「都道府県知事が都道府県都市計画審議会の意見を聴いて指定する区域」としました。(建築基準法6条1項4号)

石綿の飛散などの防止対策 (平成18年10月1日施行)

 著しく有害な物質として石綿(アスベスト)を規定し、その飛散または発散による衛生上の支障がないよう,一定の基準に適合しなければならないとしました。(建築基準法28条の2など)

●宅地造成等規制法 2006.9.30施行
●宅地造成等規制区域の指定

 都道府県知事(指定都市,中核市,特例市の区域内の土地については,それぞれの長。以下,同じ。)は,この法律の目的を達成するために必要があると認めるときは,関係市町村長(特別区の長を含む。)の意見を聴いて,宅地造成に伴い災害が生ずるおそれが大きい市街地又は市街地となろうとする土地の区域であつて,宅地造成に関する工事について規制を行う必要があるものを,宅地造成工事規制区域として指定することができる(宅地造成等規制法3条1項)

●宅地造成等規制区域内での宅地造成工事の許可

 都市計画法の開発許可を受けて行われる当該許可の内容に適合した宅地造成に関する工事については,都道府県知事の許可を受けなくてもよいことになった(宅地造成等規制法8条1項)

●宅地造成工事の許可を受けたものについての変更の許可

 許可に係る宅地造成に関する工事の計画の変更をしようとするときは,都道府県知事の許可を受けなければならない(宅地造成等規制法12条1項)

 国土交通省令で定める軽微な変更をしたときは,都道府県知事に,遅滞なく,その旨を届け出なければならない(宅地造成等規制法12条2項)

●地下水の排除が地盤について講じる技術的基準に追加

●施行令
(届出を要する工事)

第18条  法第十五条第二項 の政令で定める工事は、高さが二メートルを超える擁壁、地表水等を排除するための排水施設又は地滑り抑止ぐい等の全部又は一部の除却の工事とする。

※地表水等・・・雨水その他の地表水又は地下水 (施行令5条3号)

〔解説〕従来は,<高さが二メートルを超える擁壁、雨水その他の地表水を排除するための排水施設の全部又は一部の除却の工事>だったが,平成18年に2回にわたって施行令の改正が行われ,その結果,地下水を排除するための排水施設地滑り抑止ぐい等が加わった。

●造成宅地保全区域

 既存の一団の造成宅地(宅地造成工事が施行された宅地)の区域内(宅地造成工事規制区域を除く)にあり,政令で定める基準に該当する場合に,都道府県知事等が指定。その区域内で,知事などが改良工事の勧告や改善命令を出せるようにしました。(宅地造成等規制法20条)

●造成宅地保全区域
1 災害防止の措置の努力

 防災区域では、区域内の造成宅地の所有者、管理者又は占有者は、災害が生じないよう、その造成宅地について擁壁等の設置又は改造その他必要な措置を講ずるように努めなければならない。

2勧告 ⇒ 災害防止のため必要な措置

 知事等の勧告 知事等は、防災区域内の造成宅地について、災害の防止のため必要があると認める場合、その造成宅地の所有者、管理者又は占有者に対し、擁壁等の設置又は改造その他の災害の防止のため必要な措置をとることを勧告することができる。

3改善命令 ⇒ 改良工事等

1)知事等は、防災区域内の造成宅地で、災害の防止のため必要な擁壁等が設置されておらず、又は極めて不完全であるために、放置すると、災害の発生のおそれが大きいと認められるものがある場合に、その災害の防止のため必要であり、かつ、土地の利用状況その他の状況からみて相当であると認められる限度において、当該造成宅地又は擁壁等の所有者、管理者又は占有者(以下「造成宅地所有者等」という。)に対して、相当の猶予期限を付けて、擁壁等の設置・改造又は地形・盛土の改良のための工事(以下、「改良工事等」)を行うことを命ずることができる。

2)「造成宅地所有者等以外の者」の宅地造成に関する不完全な工事その他の行為によって災害の発生のおそれが生じたことが明らかで、その行為をした者に上記の改良工事等の全部又は一部を行わせることが相当であると認められ、かつ、造成宅地所有者等に異議がないときは、知事等は、その行為をした者に対して、工事の全部又は一部を行うことを命ずることができる。

※平成19年12月21日,新潟県柏崎市内の山本団地(註)地区約2.4haに,全国初の造成宅地防災区域の指定がありました。(新潟県告示第2147号)

 新潟県中越沖地震で被害の大きかった山本団地(102世帯)は,昭和48年に柏崎地域土地開発公社が砂丘地に造成した。

●住宅金融支援機構法
 現在の住宅金融公庫法は廃止され,平成19年4月1日に,独立行政法人・住宅金融支援機構法が施行になります。そのため,これまでの住宅金融公庫法の過去問の大半は意味をなさなくなります

 従来,住宅金融公庫法は5問免除科目として出題されてきましたが,住宅金融支援機構法が引き続き,その位置を占めるかどうかについては,現段階ではわかりません。

  ⇒ 住宅金融支援機構法 一問一答登録免許税の特例

(機構の目的)

第4条  独立行政法人住宅金融支援機構(以下「機構」という。)は、一般の金融機関による住宅の建設等に必要な資金の融通を支援するための貸付債権の譲受け等の業務を行うとともに、国民の住生活を取り巻く環境の変化に対応した良質な住宅の建設等に必要な資金の調達等に関する情報の提供その他の援助の業務を行うほか、一般の金融機関による融通を補完するための災害復興建築物の建設等に必要な資金の貸付けの業務を行うことにより、住宅の建設等に必要な資金の円滑かつ効率的な融通を図り、もって国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とする。

●税法の改正
 所得税の改正点一問一答

□住宅ローン減税

 1) 控除期間を従来の10年間に加えて,15年間とする特例措置を創設。これにより,10年間または15年間を選択できる。ただし,適用期間全体での控除額は最大で200万円で,従来の制度と今回の特例措置のどちらを選んでも同じ。 

   控除期間 借入金残高 適用年 控除率
従来の制度  10年間  2,500万円以下  1年目〜6年目  1.0%
 7年目〜10年目  0.5%
控除額の特例  15年間  2,500万円以下  1年目〜10年目  0.6%
 11年目〜15年目  0.4%

 2) 住宅ローン減税の対象となる増改築等の範囲に,一定のバリアフリー改修工事を追加する。

□所得税・バリアフリー改修工事の税額控除 (住宅バリアフリー改修促進税制)

 一定の者が,金融機関から融資を受けて,自己居住用の家屋に,バリアフリー改修工事を含む増改築をした場合に,一定要件を満たせば,そのローン残高(1,000万円以下)の一定割合を5年間所得税額から控除する。平成19年4月1日から平成20年12月31日まで。

 従来の住宅ローン減税(増改築等)との選択制。

 (ア)50歳以上の者、(イ)要介護又は要支援の認定を受けている者、(ウ)障害者である者,

 (エ)上記の(イ)または(ウ)に該当する者または65歳以上の者のいずれかと同居している者

   控除期間 借入金残高 適用年 控除率
 バリアフリー以外の増改築費用  5年間

 1,000万円以下

 (バリアフリー改修工事分を含む)

 1年目〜5年目  1.0%
 バリアフリー改修工事費用分  5年間

 200万円以下

 1年目〜5年目  2.0%

 バリアフリー以外の増改築費用分は事実上800万円以下になるので,モデルケースでは控除額の最高で60万円になる。(バリアフリー以外の分年間8万円+バリアフリー分年間4万円)

<比較>

 増改築での住宅ローン減税では適用を受けることのできる人に所得制限以外では要件はないが,バリアフリーでは一定の要件が必要になる。

 増改築での住宅ローン減税での最大控除額は200万円なので,控除額や適用期間だけで見れば,住宅ローン減税のほうが有利。ただし,工事の規模によっては,バリアフリー改修工事の税額控除のほうが有利になる場合がある。

□固定資産税の減額 (住宅バリアフリー改修促進税制)

 一定の者が居住するもの(賃貸住宅を除く。)についてバリアフリー改修工事を行い,当該改修工事に要した費用から補助金等をもって充てる部分を除いた費用が30万円以上の場合,当該家屋に係る翌年度分の固定資産税額(100平方メートル相当分までに限る。)を1/3減額する。平成19年4月1日から平成22年3月31日まで。

65歳以上の者,要介護又は要支援の認定を受けている者,障害者である者

□適用期限の延長

相続等により取得した居住用財産の買換え・交換の長期譲渡所得の課税の特例

 平成19年3月31日までの譲渡を対象としていたが,この制度が廃止されたため,4月1日以後の譲渡については適用されない。 

特定の居住用財産に係る買換え・交換の長期譲渡所得の課税の特例 

 1) 床面積要件の見直し(買換資産の床面積要件の上限280平方メートルを撤廃,
 2) 平成21年12月31日まで適用期限を延長。

特定の居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除制度等

 平成21年12月31日まで適用期限を延長。

住宅用家屋についての登録免許税の軽減措置の期限延長 (平成21年3月31日まで)

 所有権保存登記・所有権移転登記・抵当権設定登記

印紙税の軽減措置 (平成21年3月31日まで適用期限を延長。)

■当サイト代表が執筆・連載した雑誌記事 (平成19年)

 国家試験改正法講座・宅建 (不動産受験新報1月号〜7月号/住宅新報社)


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