平成17年度 宅地建物取引主任者資格試験 解説・要約版
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権利の変動分野 〔民法・区分所有法・借地借家法・不動産登記法〕 |
◆実際の受験者がどう解いたのか,見ることも参考になります。 |
【問1】 自己所有の土地を売却するAの売買契約の相手方に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 買主Bが被保佐人であり、保佐人の同意を得ずにAとの間で売買契約を締結した場合、当該売買契約は当初から無効である。 2 買主Cが意思無能力者であった場合、Cは、Aとの間で締結した売買契約を取り消せば、当該契約を無効にできる。 3 買主である団体Dが法律の規定に基づかずに成立した権利能力を有しない任意の団体であった場合、DがAとの間で売買契約を締結しても、当該土地の所有権はDに帰属しない。 4 買主Eが婚姻している未成年者であり、当該婚姻がEの父母の一方の同意を得られないままになされたものである場合には、Eは未成年者であることを理由に当該売買契約を取り消すことができる。
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【問1の解き方】 肢1・肢2が誤りであることはすぐわかる。肢3・肢4とも初出題であり,肢4の婚姻している者の未成年者は成年とみなすことがわかれば,肢3の正解肢を選ぶことができる。ただし,父母の一方の同意があれば他方の同意がなくてもよいというのは大半の受験者には未知の知識だったと思われる。
1 × 被保佐人が,保佐人の同意が必要な契約なのに,保佐人の同意を得ないで契約を締結したときは,被保佐人は取り消すことができる(民法13条4項)。当初から無効ではないので誤り。 2 × 意思無能力者が締結した契約は,意思無能力者側で意思無能力を立証すれば,無効を主張できる(判例)。意思無能力者が締結した契約は,取り消して無効になるのではなく,当初から無効なので誤り。 3 ○ 〔初出題〕自然人以外で登記名義人になることができる(土地の所有権が帰属する)のは法律の規定による法人〔公益法人・営利法人・中間法人法による法人・特別法による法人〕である(民法33条)。法律の規定に基づかずに成立した任意団体は登記名義人になることができない。 ▼この土地の所有権は任意団体を構成する全員の総有として帰属することになる。(各構成員は,持分を持たず,分割請求権も持たない。)任意団体の代表者の個人名義(代表者という肩書きはつけないで登記),または任意団体を構成する全員の共有名義で登記することになる。 4 × 〔初出題〕父母の一方の同意がなくても他の一方が同意すればよく(民法737条2項),また父母双方の同意のない婚姻の届出が受理されれば,婚姻を取り消すことはできなくなる(判例)。婚姻している未成年者は成年と扱われるので(民法753条),未成年者であることを理由に当該売買契約を取り消すことはできない。したがって,本肢は誤り。 〔出題歴〕未成年者の婚姻には父母の同意が必要。平成11年問1肢2 1000本ノック : 成年擬制 http://tokagekyo.7777.net/brush_echo/seigen-ans2.html |
【問2】 AがBに対し土地の売却の意思表示をしたが、その意思表示は錯誤によるものであった。この場合、次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 錯誤が、売却の意思表示の内容の重要な部分に関するものであり、法律行為の要素の錯誤と認められる場合であっても、この売却の意思表示が無効となることはない。 2 錯誤が、売却の意思表示をなすについての動機に関するものであり、それを当該意思表示の内容としてAがBに対して表示した場合であっても、この売却の意思表示が無効となることはない。 3 錯誤を理由としてこの売却の意思表示が無効となる場合、意思表示者であるAに重い過失があるときは、Aは自らその無効を主張することができない。 4 錯誤を理由としてこの売却の意思表示が無効となる場合、意思表示者であるAがその錯誤を認めていないときは、Bはこの売却の意思表示の無効を主張できる。
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【問2の解き方】 本問題は錯誤の総集編。肢3の正解肢は基本事項。
1 × 錯誤が,意思表示の内容の重要な部分に関するものであり,法律行為の要素の錯誤と認められる場合,その意思表示は無効となるのて誤り(民法95条本文)。 2 × 原則として,錯誤が,意思表示をなす動機に関するものである場合はその意思表示は無効とはならないが,それを当該意思表示の内容として表示したときは,錯誤が成立することがあり,その意思表示は無効となることがあるので誤り(判例)。 3 ○ 錯誤を理由として意思表示が無効となる場合でも,表意者に重大な過失があるときは,表意者は自らその無効を主張することができない(民法95条但書)。 4 × 錯誤による意思表示の無効を主張することができるのは原則として保護されるべき表意者のみであり,相手方や第三者は当該意思表示の無効を主張することはできない(判例)ので誤り。 ▼表意者に対する債権を有する第三者がその債権を保全する必要があり,表意者が錯誤を認めているときは,表意者に錯誤による無効を主張する意思がなくても代位行使する前提として錯誤による無効を主張することができる(判例)。 |
【問3】 買主Aは、Bの代理人Cとの間でB所有の甲地の売買契約を締結する場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはいくつあるか。
1 一つ 2 二つ 3 三つ 4 なし
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【問3の解き方】 顕名・代理権消滅後の表見代理・無権代理行為の追認
ア ○ 代理人が本人のために代理意志を有していることを示さないでした意思表示の効果は代理人に帰属する。ただし,相手方が,代理人が本人のためにすることを知り,又は知ることができたときは,当該意思表示は直接本人に対して効力を生じる(民法100条)ので正しい。 イ ○ 代理権が消滅していたことについて相手方が善意無過失であれば,代理権消滅後の表見代理が成立し,本人は相手方に対抗することができない(民法112条)ので正しい。代理権の消滅を過失なくして知らない相手方を保護した規定である。 ウ ○ 代理権を有しない者が行った無権代理行為は,原則として本人にその効果が帰属することはない(無効・有効が確定していない状態)が,相手方が取消権を行使する前に,本人が相手方に対して追認すれば,有効な代理行為となり,本人にその効力を生じる(民法113条)ので正しい。 ▼本人が無権代理人に対して追認したときは,相手方がその事実を知るまでは,相手方に対して追認したことを主張することはできない。 |
【問4】 Aが有する権利の消滅時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 Aが有する所有権は、取得のときから20年間行使しなかった場合、時効により消滅する。 2 AのBに対する債権を被担保債権として、AがB所有の土地に抵当権を有している場合、被担保債権が時効により消滅するか否かにかかわらず、設定時から10年が経過すれば、抵当権はBに対しては時効により消滅する。 3 AのCに対する債権が、CのAに対する債権と相殺できる状態であったにもかかわらず、Aが相殺することなく放置していたためにAのCに対する債権が時効により消滅した場合、Aは相殺することはできない。 4 AのDに対する債権について、Dが消滅時効の完成後にAに対して債務を承認した場合には、Dが時効完成の事実を知らなかったとしても、Dは完成した消滅時効を援用することはできない。
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【問4の解き方】
1 × 所有権は取得時効にはかからない。所有権は他人の取得時効によって権利が失われることはあるが,所有権の消滅時効によるものではないので誤り。 2 × 抵当権は,債務者や抵当権設定者に対しては,被担保債権と同時でなければ時効によって消滅することはない(民法396条)。被担保債権が消滅時効にかからないのに抵当権だけが消滅時効にかかることを防ぐためである。このため,本肢は誤りになる。 ▼ただし,第三取得者や後順位抵当権者との関係では,被担保債権が消滅時効にかからなくても抵当権だけが20年の消滅時効にかかる(判例)。 ▼民法や他の法令に別段の定めがない債権は,10年間行使しないときは消滅する(民法167条1項)。債権または所有権以外の財産権は20年間行使しないときは消滅する(民法167条2項)。 3 × 相殺できる状態であったにもかかわらず,相殺することなく放置していたために債権が時効により消滅した場合でも相殺することができるので誤り(民法508条)。 ▼時効完成前に相殺適状になっていれば,消滅時効にかかった債権でも自働債権として相殺することができる。 4 ○ 消滅時効の完成後に,時効完成の事実を知らずに債務を承認した場合は,信義則によりその後消滅時効の援用をすることはできなくなる(判例,昭和41.4.20)。 ▼時効が完成した後に債務者が債務を承認すれば,相手方(債権者)は,「債務者は時効をもはや援用しない」と考えるから,その後債務者が時効の援用をすることは許されない。 |
【問5】 物上代位に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
なお、物上代位を行う担保権者は、物上代位の対象となる目的物について、その払渡し又は引渡しの前に他の債権者よりも先に差し押さえるものとする。 1 不動産の売買により生じた債権を有する者は先取特権を有し、当該不動産が賃借されている場合には、賃料に物上代位することができる。 2 抵当権者は、抵当権を設定している不動産が賃借されている場合には、賃料に物上代位することができる。 3 抵当権者は、抵当権を設定している建物が火災により焼失した場合、当該建物に火災保険が付されていれば、火災保険金に物上代位することができる。 4 不動産に留置権を有する者は、目的物が金銭債権に転じた場合には、当該金銭に物上代位することができる。
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【問5の解き方】 担保物権の物上代位性とは,目的物の売却・賃貸・滅失・毀損によって債務者(または物上保証人)が受ける金銭その他のものの引渡しまたは支払を求める請求権に対して,担保権者が権利を行使できることをいう。物上代位性を備えているのは,先取特権(一般の先取特権を除く),抵当権,質権で,留置権には物上代位性はない。留置権は目的物を留置することによって債務者の弁済を強制する権利だからである。
留置権に物上代位がないことを知っていれば,正解肢を見つけることは容易。本問題を,「物上代位できる対象は何か」を問うていると考えると正解にはたどりつけない。 近年では過去問に出題はなくても民法の基本事項を問う問題が目立つことに注意したい。 1 ○ 〔初出題〕物上代位の対象=賃料 債務者の有する特定の不動産を目的物とする先取特権を不動産先取特権といい,生じる原因によって区別され,不動産の保存・不動産の工事・不動産の売買によって生ずる三つがある。(不動産賃貸の先取特権は動産上の先取特権であることに注意。)本肢での先取特権は不動産売買の先取特権のことである。 不動産の売主は不動産の代価や利息について売買の目的物である不動産の上に先取特権を有し,当該不動産が賃貸されれば賃料の請求権に物上代位することができる。 2 ○ 物上代位の対象=賃料(判例,平成元.10.27) 3 ○ 物上代位の対象=火災保険金(判例) 4 × 〔初出題〕留置権には物上代位性がないので誤り。 |
【問6】 BはAに対して自己所有の甲建物に平成15年4月1日に抵当権を設定し、Aは同日付でその旨の登記をした。Aと甲建物の賃借人との関係に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 Bは、平成15年2月1日に甲建物をCに期間4年の約定で賃貸し、同日付で引き渡していた。Cは、この賃貸借をAに対抗できる。 2 Bは、平成15年12月1日に甲建物をDに期間2年の約定で賃貸し、同日付で引き渡していた。Cは、平成16年4月1日以降もこの賃貸借をAに対抗できる。 3 Bは、平成15年12月1日に甲建物をEに期間4年の約定で賃貸し、同日付で引き渡していた。Eは、平成16年4月1日以降もこの賃貸借をAに対抗できない。 4 Bは、平成16年12月1日に甲建物をFに期間2年の約定で賃貸し、同日付で引き渡していた。Fは、この賃貸借をAに対抗できる。
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【問6の解き方】 抵当権に後れる賃借権の取扱の問題。正解肢だけで考えると難問ではない。難問という印象は,短期賃貸借の経過措置を知らない受験者が多かったため。知っていれば基本問題。
抵当権の設定登記後に設定され,抵当権者全員の同意の登記のない賃借権は抵当権者に対抗できない。−知識としては,これだけわかっていれば肢4が正解肢だということはわかるが,市販の基本書では短期賃貸借の経過措置については全く言及していないものが大半なため,肢2・肢3を見て受験者は混乱し,25%という極めて低い正答率になったものと考えられる。 平成16年4月1日に改正施行された現行民法(平成17年4月1日施行分でも)では,経過措置として,「抵当権設定登記後に設定された賃貸借でも,平成16年3月31日までに対抗要件を備えた短期賃貸借は抵当権者に対抗できる」としている(担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律・附則第5条,平成15年8月1日法律第134条)。 以前,借地借家法の経過措置が出題されたことがあり,当サイトでも短期賃貸借の経過措置が出題される可能性があることを指摘していた。 1 ○ 抵当権が設定される前に賃貸借の対抗要件を備えていている場合(建物の賃貸借では引渡し又は賃借権の登記),賃借人は抵当権者に対抗できるので正しい。(抵当権者は,賃借権がついていることを承知して抵当権を設定しているので,賃借人に対抗できないとしても,不利益になるとはいえないからである。) ⇒ 改正前も,施行後も同じ。 15年2月1日 15年4月1日 16年4月1日 ――――●―――――――――――●――――――――●―――――――― 賃借権設定(引渡し) 抵当権設定 改正施行 (抵当権設定より前なので 2 ○ 抵当権設定登記後に設定された賃貸借でも,平成16年3月31日までに対抗要件(建物の場合は引渡し又は賃借権の登記)を備えた短期賃貸借(建物では3年以内)が設定されている場合,民法改正の経過措置で,当該賃借人は抵当権者に対抗できるので正しい。 15年4月1日 15年12月1日 16年4月1日 ――――●―――――――――――●――――――――●―――――――― 抵当権設定 短期賃貸借設定 改正施行 (短期賃貸借なので, (1000本ノックでの該当箇所) http://tokagekyo.7777.net/echo_t1_coll/0509.html 3 ○ 平成16年3月31日までに対抗要件を備えた短期賃貸借は民法改正の経過措置で保護されているが,建物の短期賃貸借は3年以内であるから,平成16年の民法改正施行前に設定された賃貸借であっても4年では短期賃貸借には該当しないため,改正前もまた改正施行後も,抵当権者に対抗できないので正しい。 15年4月1日 15年12月1日 16年4月1日 ――――●―――――――――――●―――――――――●――――――― 抵当権設定 賃借権設定 改正施行 4 × 抵当権の設定登記後に設定され,抵当権者全員の同意の登記のない賃借権は期間の長短に関係なく抵当権者に対抗できないので誤り。(抵当権者の同意の登記の有無は問題文に書かれていないが,本問題のように書かれていない場合は同意の登記はないものとして考えるしかない。(肢1から肢3が正しいので,同意の登記はないものと推定することはできる。)受験者の混乱を避けるためにも,できれば書いておいて欲しかったと考える。) 15年4月1日 16年4月1日 16年12月1日 ――――●―――――――――――●――――――――――●―――――― 抵当権設定 改正施行 賃借権設定 なお,抵当権者に対抗できない建物の賃借人には,競売の買受け人の買受けのときから6ヵ月の明渡し猶予があるが(民法395条),このことと混同してはいけない。 |
【問7】 Aは、土地所有者Bから土地を賃借し、その土地上に建物を所有してCに賃借している。AのBに対する借賃の支払債務に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 Cは、借賃の支払債務に関して法律上の利害関係を有しないので、Aの意思に反して、債務を弁済することはできない。 2 Aが、Bの代理人と称して借賃の請求をしてきた無権限者に対し債務を弁済した場合、その者に弁済受領権限があるかのような外観があり、Aがその権限があることについて善意、かつ、無過失であるときは、その弁済は有効である。 3 Aが、当該借賃を額面とするA振出しに係る小切手 (銀行振出しではないもの) をBに提供した場合、債務の本旨に従った適法な弁済の提供となる。 4 Aは、特段の理由がなくても、借賃の支払債務の弁済に代えて、Bのために弁済の目的物を供託し、その債務を免れることができる。
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【問7の解き方】 弁済 (第三者の弁済・債権の準占有者への弁済・弁済の提供・弁済供託)
正解肢の肢2は,代理人と称する者への弁済は初出題であるが,類題が,(債権の準占有者への弁済)昭和55年・問12・肢3,平成11年・問5・肢3(受取証書の持参人に対する弁済)昭和62年・問11・肢4,平成5年・問6・肢3,で出題歴があるので,正解に達するのは容易である。 1 × 借地上の建物(借地人A所有)を賃借しているCは,AのBに対する地代の弁済について,法律上の利害関係を有するので(判例,昭和63.7.1),当事者ABの間で第三者の弁済を許さない旨の特約をしていない限り,債務者Aの意思に反しても,第三者の弁済をすることができる(民法474条2項)。したがって,本肢は誤りである。 2 ○ 債権者の代理人として請求をしてきた無権限者に弁済した場合は,債権の準占有者に対する弁済の規定(民法478条)が適用され(判例,昭和37.8.21),弁済受領権限があるかのような外観があり,弁済者がそのことに善意無過失ならば,その弁済は効力を有するので,正しい。 (1000本ノックの該当箇所) http://tokagekyo.7777.net/brush_echo/bensai-ans4.html 3 × 〔初出題〕 弁済の提供は,債務の本旨(内容・場所・時期など)に適合するものでなければならない(民法493条本文)。判例では,個人振出しの小切手で弁済の提供をした場合は,当事者間での特約や慣習などがない限り,債務の本旨に従った適法な弁済の提供とはならないとしているので誤りである(判例,昭和35.11.22)。 4 × 〔初出題〕 債権者が弁済の受領を拒み,又はこれを受領することができないときは,弁済者は,債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができる(民法494条本文)。しかし,本肢では,<特段の理由がなくても、・・・供託し、その債務を免れることができる。>としているので,誤りである。 (1000本ノックの該当箇所) http://tokagekyo.7777.net/brush_echo/bensai-ne2.html |
【問8】 Aは、自己所有の甲地をBに売却し、代金を受領して引渡しを終えたが、AからBに対する所有権移転登記はまだ行われていない。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
1 Aの死亡によりCが単独相続し、甲地について相続を原因とするAからCへの所有権移転登記がなされた場合、Bは、自らへの登記をしていないので、甲地の所有権をCに対抗できない。 2 Aの死亡によりCが単独相続し、甲地について相続を原因とするAからCへのの所有権移転登記がなされた後、CがDに対して甲地を売却しその旨の所有権登記がなされた場合、Bは、自らへの登記をしていないので、甲地の所有権をDに対抗できない。 3 AB間の売買契約をBから解除できる事由があるときで、Bが死亡し、EとFが1/2ずつ共同相続した場合、E単独ではこの契約を解除することはできず、Fと共同で行わなければならない。 4 AB間の売買契約をAから解除できる事由があるときで、Bが死亡し、EとFが1/2ずつ共同相続した場合、Aがこの契約を解除するには、EとFの全員に対して行わなければならない。
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【問8の解き方】 物権変動の対抗要件・解除権の不可分性
肢1を見ただけで誤りだということはすぐわかるのでやさしい問題。 1 × Cは,Aの相続人として,甲地の売主としての地位を承継している。相続を原因とするAからCへの所有権移転登記がなされた場合であっても,このことに変わりはなく,Cは売主の相続人,Bは買主として当事者の関係にあり,対抗関係には立たない。したがって,Bは,登記をしていなくても,甲地の所有権をCに対抗でき,売主としての義務の履行(引渡し)をCに求めることができるので誤り。 2 ○ 判例では,AとCは同一人とみなして,Aから譲渡を受けたBとCから譲渡を受けたDは互いに対抗関係に立ち,二重譲渡と同じく,登記をしなければ対抗することができないとした(昭和33.10.14)。 本肢でのBは所有権移転登記をしていないので,登記のあるDに対抗することはできないので,正しい。 3 ○ 当事者の一方が数人ある場合には,契約の解除は,その全員から又はその全員に対してのみ,することができる(民法544条1項)。肢3は,解除権を行使する側が複数の場合である。 買主Bの相続人であるE,Fはそれぞれ単独で契約を解除することはできず,E,Fが共同して解除しなければならないので正しい。 4 ○ 肢4は,解除権を行使される側が複数の場合である。 相手方(買主Bの相続人E,F)が複数いるので,売主Aは,E,Fに対して解除権を行使しなければならない。したがって,正しい記述である。 |
【問9】 売買契約の解除に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 買主が、売主以外の第三者の所有物であることを知りつつ売買契約を締結し、売主が売却した当該目的物の所有権を取得して買主に移転することができない場合には、買主は売買契約の解除はできるが、損害賠償請求はできない。 2 売主が、買主の代金不払を理由として売買契約を解除した場合には、売買契約はさかのぼって消滅するので、売主は買主に対して損害賠償請求はできない。 3 買主が、抵当権が存在していることを知りつつ不動産の売買契約を締結し、当該抵当権の行使によって買主が所有権を失った場合には、買主は、売買契約の解除はできるが、売主に対して損害賠償請求はできない。 4 買主が、売主に対して手付金を支払っていた場合には、売主は、自らが売買契約の履行に着手するまでは、買主が履行に着手していても、手付金の倍額を買主に支払うことによって、売買契約を解除することができる。
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【問9の解き方】 担保責任(全部他人物・抵当権等がある場合),解除権の行使と損害賠償,解約手付による解除,
肢1が正しいことはすぐわかるのでやさしい問題。 1 ○ 売主は,他人の権利を売買の目的物としたときは,その権利を取得して買主に移転する義務を負い(民法560条),売主がその権利を取得して買主に移転できないとき(売主に帰責事由がない場合)は,買主は契約の解除をすることができるが,この場合悪意の買主は損害賠償請求はできない(民法561条)ので正しい。悪意であれば,売主が権利を取得できないリスクも予期できるからである。 2 × 契約は解除によってさかのぼって消滅し,各当事者はその相手方を原状に復させる義務を負う。この場合,解除権を行使した者は債務不履行による損害賠償を請求することもできるので(民法545条),本肢は誤りである。 3 × 抵当権・先取特権がある場合の売主の担保責任は無過失責任であるが(判例),買主の善意・悪意を問わず,抵当権者等の権利の行使によって買主が目的物の所有権を失ったり,買主が自己の費用を支出して所有権を保存したときに,売主の担保責任が生じる(民法567条)。 買主が抵当権者等の権利の行使によって買主が目的物の所有権を失った場合は,買主は解除することができ,損害を受けたときは損害賠償を請求することができる。(買主が自己の費用を支出して所有権を保存したときは,売主に費用の償還を請求することができ,損害を受けたときは損害賠償を請求することができる。) これは,買主が,抵当権が存在していることを知りつつ不動産の売買契約を締結したとしても,変わらないので,<買主は、売買契約の解除はできるが、売主に対して損害賠償請求はできない。>とする本肢は誤りである。 悪意の買主でも保護されるのは,「抵当権がついていても売主が抵当権を抹消させてくれるだろう」と買主が期待するのは当然だからである。 ▼ただし,当事者間で,不動産の価格から抵当権の被担保債権の額を控除して売買代金を決定した場合には,この担保責任の規定は適用されないと解される。 4 × 買主が,売主に対して手付金を支払っていた場合には,当事者の一方(本肢では売主)は自ら履行に着手していても,相手方(本肢では買主)が履行に着手するまでは解除権を行使できる(判例)。 本肢では,<自らが売買契約の履行に着手するまでは、買主が履行に着手していても、売買契約を解除することができる。>としているので誤りである。 ▼売主が解約手付による解除をする場合は,手付金の倍額を買主に償還する(民法557条1項)。 |
【問10】 Aは、自己所有の建物について、災害により居住建物を失った友人Bと、適当な家屋が見つかるまでの一時的住居とするとの約定のもとに、使用貸借契約を締結した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
1 Bが死亡した場合、使用貸借契約は当然に終了する。 2 Aがこの建物をCに売却し、その旨の所有権移転登記を行った場合でも、Aによる売却の前にBがこの建物の引渡しを受けていたときは、Bは使用貸借契約をCに対抗できる。 3 Bは、Aの承諾がなければ、この建物の一部を、第三者に転貸して使用収益させることはできない。 4 適当な家屋が現実に見つかる以前であっても、適当な家屋を見つけるのに必要と思われる客観的な時間を経過した場合は、AはBに対し、この建物の返還を請求することができる。
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【問10の解き方】 使用貸借の問題は,昭和53年,昭和61年・問2・肢2,昭和61年・問14・肢2,平成9年・問8,平成13年・問6・肢2,平成16年・問12・肢2で出題がある。
肢3・肢4は初出題だが,使用貸借には第三者への対抗力はないことを知っていれば,正解肢の肢2を見出すことは容易である。 なお,使用貸借には,借地借家法は適用されない。(昭和61年・問14・肢2) 1 ○ 平成9年問8肢3,平成13年・問6・肢2に類題がある。 使用貸借では,借主の死亡により契約の効力を失う(民法599条)。賃貸借では賃借権は相続されるが,使用貸借では使用借権は相続されない。 ▼貸主が死亡しても使用貸借は終了しないことに注意。 2 × 平成9年問8肢1に出題歴がある。 使用貸借は貸主・借主間の対人関係に基づいて行われ,使用借権には第三者への対抗力はないので,借用物(使用貸借の目的物)が第三者に売却されたり,担保権の実行等で競落されると借主は対抗できない。したがって,誤りである。 (1000本ノックの該当箇所) http://tokagekyo.7777.net/brush_echo/rent-ans8.html 3 ○ 〔初出題〕借主は,貸主の承諾を得なければ,借用物の一部であっても,第三者に借用物の使用や収益をさせることはできない(民法594条2項)。借主がこれに違反すると貸主は契約の解除をすることができる(民法594条3項)。 4 ○ 〔初出題〕この使用貸借は,<適当な家屋が見つかるまでの一時的住居とするとの約定>があるので,返還の時期の定めのないものである。 返還の時期の定めのない場合の貸主からの返還請求については,次の3通りに分けられる。
本肢では,適当な家屋が現実に見つかる以前であっても,適当な家屋を見つけるのに必要と思われる客観的な時間を経過した場合,AはBに対し,この建物の返還を直ちに請求できることになる(民法597条2項但書,判例)。 ▼民法上の賃貸借では,存続期間の定めがない場合,貸主・借主ともいつでも解約の申入れができるが,一定の予告期間を経過することによって終了する(民法617条)。 |
【問11】 Aは、所有する家屋を囲う塀の設置工事を業者Bに請け負わせたが、Bの工事によりこの塀は瑕疵がある状態となった。Aがその後この塀を含む家屋全部をCに賃貸し、Cが占有使用しているときに、この瑕疵により塀が崩れ、脇に駐車中のD所有の車を毀損させた。A、B及びCは、この瑕疵があることを過失なく知らない。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 Aは、損害の発生を防止するのに必要な注意をしていれば、Dに対する損害賠償責任を免れることができる。 2 Bは、瑕疵を作り出したことに故意又は過失がなければ、Dに対する損害賠償責任を免れることができる。 3 Cは、損害の発生を防止するのに必要な注意をしていれば、Dに対する損害賠償責任を免れることができる。 4 Dが、車の破損による損害賠償責任請求権を、損害及び加害者を知ったときから3年間行使しなかったときは、この請求権は時効により消滅する。
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【問11の解き方】 不法行為
請負のからむ不法行為の問題は平成8年・問6,設置保存に係る瑕疵についての不法行為の問題は平成13年・問10に出題歴がある。 正解肢・肢1は平成8年・問6の正解肢・肢3と同一であり,不法行為を学習したことがあれば誰でも知っている基本事項である。不法行為の単独出題は平成13年以来であることから,不法行為を余り学習していなかった受験者が多かったものと推測される。 A (請負工事の注文者,家屋の所有者・賃貸人) ― C (家屋の賃借人−占有者−) 1 × 土地の工作物等の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害が生じ,工作物の占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしていたときは,工作物の所有者Aは,損害の発生を防止するのに必要な注意をしていたかどうかに関係なく,損害賠償をしなければならない (民法717条2項但書) ので,誤りである。〔所有者の責任は免責事由のない無過失責任。〕 ▼損害の原因について他に責任を負う者がいるときは,工作物の所有者はその者に求償することができるが (民法717条3項) ,本肢とはまた別の次元のことであり,工作物の所有者Aは,Dからの損害賠償請求を免れることはできない。 (1000本ノックの該当箇所) http://tokagekyo.7777.net/brush_echo/fuhou-ans3.html 2 ○ 請負人は瑕疵を作り出したことに故意や過失がなければ,Bの工事により塀に瑕疵がある状態となったとしても,不法行為による損害賠償責任は負わない (民法709条) 。 ▼請負人の担保責任は無過失責任であるが (民法634条) ,これと不法行為の成立要件〔不法行為責任を問うには,行為者の故意または過失が必要〕を混同してはいけない。 3 ○ 占有者であるCは,損害の発生を防止するのに必要な注意をしていなかったときは被害者に対して損害賠償する責任を負うが,損害の発生を防止するのに必要な注意をしていたときは,所有者が損害賠償することになる (民法717条2項但書) ので,正しい。 4 ○ 不法行為による損害賠償請求権は,被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは,時効によって消滅する (民法724条) ので正しい。 (不法行為の時から20年を経過したときも,不法行為による損害賠償請求権は消滅する。) ▼不法行為の消滅時効については,平成12年・問8・肢3に出題歴がある。 (1000本ノックの該当箇所) http://tokagekyo.7777.net/brush_echo/fuhou-ans5.html |
【問12】 遺言及び遺留分に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
1 自筆証書による遺言をする場合、証人二人以上の立会いが必要である。 2 自筆証書による遺言書を保管している者が、相続の開始後、これを家庭裁判所に提出してその検認を経ることを怠り、そのままその遺言が執行された場合、その遺言書の効力は失われる。 3 適法な遺言をした者が、その後更に適法な遺言をした場合、前の遺言のうち後の遺言と抵触する部分は、後の遺言により取り消したものとみなされる。 4 法定相続人が配偶者Aと子Bだけである場合、Aに全財産を相続させるとの適法な遺言がなされた場合、Bは遺留分権利者とならない。
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【問12の解き方】 正解肢は平成12年問10肢3で比較的最近に関連出題のあったものであり,やさしい出題といえる。
1 × 〔初出題〕自筆証書によって遺言をするには,遺言者が,その全文・日付・氏名を自書し,押印しなければならないが,立会人は必要とされていない(民法968条1項)ので誤り。証人二人以上の立会が必要なのは,公正証書遺言(民法969条,969条の2),秘密証書遺言(民法970条)である。 2 × 遺言の保管者は,相続の開始を知った後,遅滞なく,家庭裁判所に遺言書を提出して,その検認を請求しなければならない(民法1004条1項)。 遺言書の家庭裁判所への提出を怠り,家庭裁判所の検認を経ないで遺言を執行したり,家庭裁判所外で遺言書を開封した者は,5万円以下の過料に処せられる(民法1005条)が,遺言書の効力が失われるわけではないので,本肢は誤りである。 ▼家庭裁判所の検認を経なかった場合の遺言の効力については,平成6年・問13・肢2に出題歴がある。 (1000本ノックの該当箇所) http://tokagekyo.7777.net/brush_echo/igon-ans2.html 3 ○ 遺言者は,いつでも,遺言の方式に従ったものであれば,それより前にした遺言の全部又は一部を撤回することができる(民法1022条)。 適法な遺言をした者が,その後更に適法な遺言をした場合,前の遺言のうち後の遺言と抵触する部分は,後の遺言により撤回したものとみなされる(民法1023条1項)。 (1000本ノックの関連箇所) http://tokagekyo.7777.net/brush_echo/igon-ans3.html ▼問題文では,<前の遺言のうち後の遺言と抵触する部分は、後の遺言により取り消したものとみなされる。>となっているが,ここは平成17年4月1日に施行された改正民法1023条では,用語が取消し⇒撤回 と変更になったところである。しかし,改正前の民法1023条の<取消し>は<撤回>であると広く解釈されていたことから,必要以上に神経質になる必要はない。 4 × 被相続人の兄弟姉妹には遺留分がない。遺留分が認められるのは,配偶者・子(または,子の代襲相続人,生きて生まれれば胎児。)・直系尊属である(民法1028条)。 法定相続人が配偶者Aと子Bだけである場合に,Aに全財産を相続させるとの適法な遺言がなされた場合でも,子Bは遺留分権利者となるので誤り。 ▼本肢では,被相続人の財産の1/2が総体的遺留分(相続人全体に割り当てられた遺留分) となるが,遺留分権利者である子Bの個別の遺留分は全体の遺留分1/2にBの法定相続分率1/2(妻,子1人の場合の子の法定相続分率)を乗じて得た1/4である。 ▼遺留分は,昭和63年・問8,平成2年・問11,平成4年・問13・肢2,平成9年・問10,平成12年・問10・肢2に出題歴がある。 |
【問13】 借地人Aが、平成15年9月1日に甲地所有者Bと締結した建物所有を目的とする甲地賃貸借契約に基づいてAが甲地上に所有している建物と甲地の借地権とを第三者Cに譲渡した場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。
1 甲地上のA所有の建物が登記されている場合には、AがCと当該建物を譲渡する旨の合意をすれば、Bの承諾の有無にかかわらず、CはBに対して甲地の借地権を主張できる。 2 Aが借地権をCに対して譲渡するに当たり、Bに不利になるおそれがないにもかかわらず、Bが借地権の譲渡を承諾しない場合には、AはBの承諾に代わる許可を与えるように裁判所に申し立てることができる。 3 Aが借地上の建物をDに賃貸している場合には、AはあらかじめDの同意を得ておかなければ、借地権を譲渡することはできない。 4 AB間の借地契約が専ら事業の用に供する建物 (居住の用に供するものを除く。) の所有を目的とし、かつ、存続期間を20年とする借地契約である場合には、AはBの承諾の有無にかかわらず、借地権をCに対して譲渡することができ、CはBに対して甲地の借地権を主張できる。
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【問13の解き方】 借地上の建物と借地権の譲渡
借地権者が借地上の建物の譲渡に伴って賃借権の譲渡・転貸をしようとする場合についての規定が借地借家法19条にあり,本問題はこれを背景にしている。 借地借家法の問題としては,本問題はきわめてやさしい部類に属するので,容易に肢2の正解肢を見つけることができる。 B (甲地の所有者) 1 × 民法では,賃貸人の承諾を得なければ,その賃借権を譲渡したり,又は転貸することはできない。これに違反して第三者に使用収益をさせたときは,賃貸人は賃貸借契約の解除をすることができる(民法612条)。 Aが賃借権の譲渡についてBの承諾を得ていなければ,AがCと借地上の建物を譲渡する旨の合意をしただけでは,Cは甲地の借地権をBに主張できない。建物が登記されているかどうかには関係ないので,誤り。 2 ○ 借地権者が借地上の建物の譲渡に伴って賃借権の譲渡・転貸をしようとする場合に,借地権設定者(土地の所有者)に不利になるおそれがないにもかかわらず,借地権設定者が借地権の譲渡の承諾をしないときには,借地権者は借地権設定者の承諾に代わる許可を与えるように裁判所に申し立てることができる(借地借家法19条1項)ので,正しい。 3 × Aが借地上の建物をDに賃貸していても,借地上の建物と甲地の借地権を第三者Cに譲渡しようとする場合に,AがあらかじめDの同意を得ておく必要はないので誤り。 4 × 事業用の借地権であっても,借地権の譲渡には,借地権設定者の承諾が必要なので,誤りである。 ▼事業用の借地権の設定契約では公正証書によってしなければならない(借地借家法24条2項)。 |
【問14】 建物の区分所有等に関する法律に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1 共用部分であっても、規約で定めることにより、特定の区分所有者の所有とすることができる。 2 専有部分であっても、規約で定めることにより、敷地利用権と分離して処分することができる。 3 構造上区分所有者全員の共用に供されるべき建物の部分であっても、規約で定めることにより、特定の区分所有者の専有部分とすることができる。 4 区分所有者の共有に属さない敷地であっても、規約で定めることにより、区分所有者の団体の管理の対象とすることができる。
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【問14の解き方】 受験界の一部には,もう区分所有法は出題されないと明言していた向きがあったが,4年ぶりに出題された。今回の出題レベルにして正答率が3割というのは,この影響と考えられる。宅建主任者が区分所有法を知らないで重要事項説明をするというのでは,一般消費者は何と思うだろうか。
また,この問題は難問であるという見方をする向きも一部にあるが,実は4肢ともほぼ条文そのままの出題である。ちなみに,正解肢の肢3は平成16年のマンション管理士試験の問1肢4でも関連問題が出題されている。出題者は明らかにこの問題を意識して作問したと思われる。 1 ○ 共用部分であっても,規約で定めることにより,特定の区分所有者の所有とすることができる(区分所有法11条2項,20条,27条1項)ので正しい。 【出題歴】昭和53年肢4, 2 ○ 敷地利用権は,規約に別段の定めがあるときは,区分所有者は,専有部分と敷地利用権を分離して処分することができる(区分所有法22条1項)ので正しい。 ▼共用部分の共有者は,区分所有法に別段の定めがある場合を除いて,専有部分と分離して共用部分の持分を処分することはできない(区分所有法15条2項)ことと対比しておく必要がある。 【出題歴】平成4年・問16・肢2,平成6年・問14・肢2, 3 × 〔初出題〕 構造上区分所有者全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は,区分所有権の目的とはならない(区分所有法4条1項)。 したがって,構造上区分所有者全員の共用に供されるべき建物の部分は,規約で定めても,特定の区分所有者の専有部分とすることができないので,本肢は誤りである。 ▼共用部分の共有者全員の同意があれば,共有物の変更として専有部分にすることができる(民法251条)が,このことと規約で定めることを混同してはいけない(規約の設定・変更・廃止には,区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議が必要)。
4 ○ 〔初出題〕 区分所有者の共有に属さない敷地であっても,規約で定めることにより,区分所有者の団体の管理の対象とすることができる。これを規約敷地という(区分所有法5条)。 |
【問15】 動産の賃貸借契約と建物の賃貸借契約 (借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借、同法第39条に規定する取壊し予定の建物の賃貸借及び同法40条に規定する一時使用目的の建物の賃貸借を除く。) に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。
1 動産の賃貸借契約は、当事者の合意があれば書面により契約を締結しなくても効力を生じるが、建物の賃貸借契約は、書面により契約を締結しなければ無効である。 2 賃貸人は賃借人との間で別段の合意をしない限り、動産の賃貸借契約の賃貸人は、賃貸借の使用収益に必要な修繕を行う義務を負うが、建物の賃貸借契約の賃貸人は、そのような修繕を行う義務を負わない。 3 動産の賃貸借契約は、賃貸人と賃借人が合意して契約期間を6月と定めればそのとおりの効力を有するが、建物の賃貸借契約は、賃貸人と賃借人が合意して契約期間を6月と定めても期間を定めていない契約とみなされる。 4 契約期間を定めた場合、賃借人は、動産の賃貸借契約である場合は期間内に解約を行う権利を留保することができるが、建物の賃貸借契約である場合は当該権利を留保することはできない。
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【問15の解き方】 「動産の賃貸借」という文言に惑わされてはいけない。要は,「民法上の賃貸借」を言い換えているだけに過ぎない。民法上,動産の賃貸借と不動産の賃貸借の違いは,被保佐人・被補助人等の短期賃貸借での期間制限(602条),対抗力の規定(605条),賃料の支払時期(614条),期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ時期(617条)で異なるのみである。本問題ではそれらについて問う肢はないので,各肢とも,民法の賃貸借と借地借家法での違いについて考えればよいことになる。
肢3の正解肢は基本事項。肢1,肢2は容易に誤りだということがわかるが,肢4は少々正誤判定に迷ったかもしれない。 1 × 民法上の賃貸借は,合意のみによって成立し,書面によらなくても契約の効力を生ずる(民法601条)。借地借家法の適用のある建物の賃貸借(定期建物賃貸借,取壊し予定の建物の賃貸借を除く。)でも,特に規定はないので,このことに変わりはない。したがって,誤りである。借地借家法第38条に規定する ▼問題文で除外されているものについてまとめると以下のようになる。 ◇定期建物賃貸借=公正証書による等書面によって契約することが成立要件。 ◇取壊し予定の建物の賃貸借=建物を取り壊すべき事由を記載した書面によってこの特約をしなければならない。 ◇一時使用目的の建物の賃貸借=借地借家法は適用されず,民法の賃貸借が適用される。書面によって契約しなければならないという規定はない。 2 × 民法では,賃貸人は,賃貸物の使用収益に必要な修繕をする義務を負う(民法606条1項)。また,この規定は強行規定ではないので,賃借人が一定の範囲で修繕義務を負担する特約をすることは禁止されていない(判例,昭和29.6.25)。 借地借家法の適用のある建物の賃貸借(定期建物賃貸借,取壊し予定の建物の賃貸借を除く。)でも,特に規定はないので,このことに変わりはない。したがって,誤りである。 3 ○ 民法の賃貸借では,存続期間は20年を超えることはできず,これより長い期間を定めてもその期間は20年になるが,最短期間の定めはない(民法604条1項)。したがって,契約期間を6月と定めれば,そのとおりの効力を有する。 借地借家法の適用のある建物の賃貸借(定期建物賃貸借,取壊し予定の建物の賃貸借,一時使用目的の建物の賃貸借を除く。)では,期間を1年未満とする建物の賃貸借は,期間の定めのない建物の賃貸借とみなす(借地借家法29条1項)。 民法の賃貸借,借地借家法の適用のある建物の賃貸借(定期建物賃貸借,取壊し予定の建物の賃貸借,一時使用目的の建物の賃貸借を除く。)とも,正しい記述である。 ▼借地借家法の適用のある建物の賃貸借(定期建物賃貸借,取壊し予定の建物の賃貸借,一時使用目的の建物の賃貸借を除く。)では,1年未満とする建物の賃貸借であっても,事実上,6ヵ月は存続することになる。(借地借家法27条1項では,期間の定めのない建物の賃貸借で,建物の賃貸人が解約の申し入れをした場合,解約の申入れの日から6月を経過しないと終了しないと定めているため。) 4 × 民法の賃貸借では,当事者が契約期間を定めた場合であっても,特約で,その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保することができる(民法618条)。 、また,借地借家法の適用のある建物の賃貸借契約(定期建物賃貸借,取壊し予定の建物の賃貸借,一時使用目的の建物の賃貸借を除く。)で契約期間を定めた場合でも,特約で,当事者の一方が期間内に解約する権利を留保することができると解されている(通説)。 したがって,後半部の<契約期間を定めた場合、賃借人は、建物の賃貸借契約である場合は当該権利を留保することはできない。>とする本肢は誤りである。 ▼借地借家法の適用のある建物の賃貸借契約(定期建物賃貸借,取壊し予定の建物の賃貸借,一時使用目的の建物の賃貸借を除く。)で契約期間を定めても,特約で,当事者の一方が期間内に解約する権利を留保することができる場合は,期間の定めのない賃貸借の解約の申入れの規定 (借地借家法27条1項) が適用されることになる。 |
【問16】 不動産登記の申請に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1 登記の申請を共同してしなければならない者の一方に登記手続をすべきことを命ずる確定判決による登記は、当該申請を共同してしなければならない者の他方が単独で申請することができる。 2 相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。 3 登記名義人の氏名で若しくは名称又は住所についての変更の登記又は更正の登記は、登記名義人が単独で申請することができる。 4 所有権の登記の抹消は、所有権の移転の登記の有無にかかわらず、現在の所有権の登記名義人が単独で申請できる。
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【問16の解き方】 登記申請
当サイトでは,平成17年の登記法の問題は,「改正で余り変わっていない部分からの標準的な問題」,または「改正部分であるが,やさしい問題」の出題を予想していた。 今回の試験では,「改正で余り変わっていない部分からのやさしい問題」となった。各肢ともほぼ条文どおりの出題であり,所有権の登記の抹消がどんなときにできるかについて理解していれば,肢4が誤りだということはすぐわかる。(肢1〜肢3が正しいことはわかるので,肢4について知らなくても,消去法でも正解に達することができる。) 1 ○ 権利に関する登記では,法令に別段の定めがある場合を除いて,登記権利者と登記義務者が共同して申請しなければならない(不動産登記法60条)。 しかし,登記の申請を共同してしなければならない者の一方に登記手続をすべきことを命ずる確定判決による登記は,当該申請を共同してしなければならない者の他方が単独で申請することができる(不動産登記法63条1項)。 2 ○ 相続又は法人の合併による権利の移転の登記は,登記権利者が単独で申請することができる(不動産登記法63条2項)。 3 ○ 登記名義人の氏名で若しくは名称又は住所についての変更の登記又は更正の登記は,登記名義人が単独で申請することができる(不動産登記法64条1項)。 4 × 所有権の登記の抹消は,所有権の移転の登記がない場合に限り,申請情報と併せて,所有権保存登記の際の登記識別情報 (または登記済証)を提供して,所有権の登記名義人が単独で申請することができる(不動産登記法77条,同22条,不動産登記令8条1項5号)ので,<所有権の移転の登記の有無にかかわらず、現在の所有権の登記名義人が単独で申請できる。>とする本肢は誤りである。 ▼権利に関する登記の抹消は,登記上の利害関係者がある場合には,当該第三者の承諾又はその者に対抗することができる裁判があったことを証する情報を提供するときに限り,申請することができる(不動産登記法68条,不動産登記令別表26)ことにも注意。 (1000本ノックの該当箇所) <抵当権者がいる場合> 平成5年問16肢4 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
3 |
3 |
3 |
4 |
4 |
6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
4 |
2 |
1 |
1 |
2 |
11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
1 |
3 |
2 |
3 |
3 |
4 |
●平成17年度・宅建試験解説・要約版 |
権利変動(問1〜問16),法令制限(問17〜問25),宅建業法(問30〜問45),税法その他(問26〜問29/問46〜問50),◆宅建過去問'05のトップに戻る |
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