平成17年度 宅地建物取引主任者資格試験 解説・要約版 

法令上の制限分野 

◆実際の受験者がどう解いたのか,見ることも参考になります。

 ⇒ 平成17年宅建試験・受験者はこう解いた! 法令制限

【問17】 国士利用計画法第23条の届出 (以下この問において 「事後届出」 という。) に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 が、市街化区域において、の所有する面積3,000平方メートルの土地を一定の計画に基づき1,500平方メートルずつ順次購入した場合、は事後届出を行う必要はない。

2 は、市街化調整区域において、の所有する面積8,000平方メートルの土地を民事調停法に基づく調停により取得し、その後当該土地をに売却したが、この場合、はいずれも事後届出を行う必要はない。

3 甲県が所有する都市計画区域外に所在する面積12,000平方メートルの土地について、10,000平方メートルをに、2,000平方メートルをに売却する契約を、甲県がそれぞれと締結した場合、のいずれも事後届出を行う必要はない。

4 事後届出に係る土地の利用目的について、乙県知事から勧告を受けたが勧告に従わなかった場合、乙県知事は、当該届出に係る土地売買の契約を無効にすることができる。

 正答率  68.9%
【問17の解き方】 事後届出の要否

 4肢とも頻出問題。易しい問題である。

 事後届出の要否の問題は,区域による面積要件と契約内容の2つで判断する。

面積要件 都市計画区域 市街化区域 2,000平方メートル以上
非線引き都市計画区域 5,000平方メートル以上
市街化調整区域
都市計画区域外 準都市計画区域
両区域外
10,000平方メートル(1 ha)以上

1 × 買いの一団の問題。市街化区域での面積要件は2,000平方メートル。

 同一の利用目的(利用目的が相互に密接な関係も含む。)のために,複数の契約(売買のみとは限らない。例・売買契約と借地権設定など。)によって,複数の土地の権利を取得した場合に,1つ1つの契約で権利取得した土地の面積は面積要件未満でも,全体の土地の面積を合計すると面積要件を満たす場合には,事後届出の対象となる。これを「買いの一団」という。

 買いの一団のポイント : 同一の利用目的計画の一貫性物理的一体性

 本肢の場合,個々の取引では市街化区域での面積要件の2,000平方メートル以上に該当しない1,500平方メートルであるが,2回の取引全体の合計で見ると3,000平方メートルになり,事後届出の必要な面積要件に達するので,は事後届出を行う必要がある。買いの一団に該当する場合は権利取得した土地の全体で届出の要否を判断するからである。

 したがって,誤りである。

 ⇒ 買いの一団については,岡山市のページを参照。

2 × 市街化調整区域の面積8,000平方メートルの土地は5,000平方メートル以上に該当するので,面積要件では事後届出対象となる。

 Cが民事調停法に基づく調停により取得した時点では,は事後届出をする必要はない。民事調停法に基づく調停により取得の場合は,事後届出制は適用されないからである(国土利用計画法23条2項3号)

 しかし,から当該土地を取得したは事後届出を行う必要がある。民事調停で取得した土地を転売した場合の取引については,事後届出は適用除外にはなっていないからである。

 したがって,<はいずれも事後届出を行う必要はない。>とする本肢は誤りである。

3 ○ 都市計画区域外では10,000平方メートル以上が事後届出対象となる面積要件。

 のいずれも,甲県から取得しているので面積に関係なく,事後届出をする必要はない。当事者の一方又は双方が国等の場合は,事後届出制は適用されないからである(国土利用計画法23条2項3号)。 

4 × 勧告と契約の効力 

 事前届出,事後届出とも,都道府県知事(又は指定都市の長)は,勧告を受けた者が勧告に従わなかったときは,その旨及びその勧告の内容を公表することができるが(国土利用計画法26条,27条の5第4項,27条の8第2項),届出に係る土地売買の契約を無効にすることはできないので,誤り。

都道府県知事(又は指定都市の長)は勧告した場合に,事前届出,事後届出とも,必要があると認めるときは,勧告を受けた者に対し,その勧告に基づいて講じた措置について報告をさせることができる(国土利用計画法25条,27条の5第4項,27条の8第2項)

 

【問18】 次に掲げる開発行為のうち、開発行為の規模によっては、実施に当たりあらかじめ都市計画法の開発許可を受けなければならない場合があるものはどれか。

1 市街化区域内において行う、農業を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為

2 都市再開発法第50条の2第3項の再開発会社が市街地再開発事業の施行として行う開発行為

3 車庫の建築の用に供する目的で行う開発行為

4 幼稚園の建築の用に供する目的で行う開発行為

 正答率  59.2%
【問18の解き方】 開発許可の要否

 開発許可の要否の問題は,区域による面積要件と開発目的(適用除外になっていないか)の2つで判断する。(適用除外になっているものは,開発目的のみによるもの(肢2〜肢4)と開発目的・区域によるもの(肢1)と2種類ある。)

 肢3を除いて頻出問題なので,適用除外になる区域に注意すれば,正解肢の肢1を見出すのは比較的容易である。

1 規模によっては許可が必要。

 農業を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為は,市街化区域外では,開発許可の適用除外となっており,開発許可は不要である(都市計画法29条1項2号,同29条2項1号)

 しかし,市街化区域内では1,000平方メートル以上であれば,農業を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為は,開発許可が必要になる。

 【出題歴】平成9年・問18肢2, 

2 許可不要。

 市街地再開発事業の施行として行う開発行為は,開発許可は不要である(都市計画法29条1項7号)

3 許可不要。

 車庫,物置その他これらに類する附属建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為は,「通常の管理行為,軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの」として開発許可は不要である(都市計画法29条1項12号,都市計画法施行令22条2号)

4 許可不要。

 公益上必要な建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為は,開発許可は不要である(都市計画法29条1項3号)

 幼稚園は学校に含まれる。学校(大学,専修学校,各種学校を除く。)は,公益上必要な建築物に該当し,その建築のための開発行為は,開発許可は不要である。

【問19】 都市計画法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 区域区分は、都市計画区域について無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときに、都市計画に定める市街化区域と市街化調整区域との区分をいう。

2 準都市計画区域は、都市計画区域外の区域のうち、相当数の住居その他の建築物の建築又はその敷地の造成が現に行われ、又は行われると見込まれる一定の区域で、そのまま土地利用を整除することなく放置すれば、将来における都市としての整備、開発及び保全に支障が生じるおそれがあると認められる区域をいう。

3 再開発等促進区は、地区計画について土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の増進とを図るため、一体的かつ総合的な市街地の再開発又は開発整備を実施すべき区域をいう。

4 高層住居誘導地区は、住居と住居以外の用途を適正に配分し、利便性の高い高層住宅の建設を誘導するため、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域等において定められる地区をいう。

 正答率  44.4%
【問19の解き方】 区域区分,地域地区,地区計画

 条文そのままの出題であるわりには正答率が低い。学習が不十分だった受験者が多いのではないだろうか。

 肢2,肢3は初出題であるが,肢4の高層住居誘導地区は過去問でも平成15年問17肢1に出題がある。この問19の肢4はどの用途地域について定められるか知っていれば容易に×と判断できるが,過去問出題内容のみをそのまま覚えているだけではこのような問題には対処できない。関連するものについても整理しておく必要がある。

 また,肢2,肢3は近年の法改正によって創設されたもので,2つの肢とも,法改正は余計なものという認識をもっていた受験者を狙い撃ちにした肢である。出題者としては,そのような受験者は肢4の出題内容も面倒くさがっておそらく学習していないだろうという見込みのもとに,作問したと考えられる。

1 ○ 区域区分 

 区域区分とは,都市計画に市街化区域と市街化調整区域との区分を定めることをいう。
 区域区分は,都市計画区域について無秩序な市街化を防止し,計画的な市街化を図るため必要があるときに、都市計画に定める(都市計画法7条)

 区域区分に関する都市計画は都道府県が定める(都市計画法15条1項2号)

2 ○ 〔初出題〕 準都市計画区域

 準都市計画区域とは,都市計画区域外の区域のうち,相当数の住居その他の建築物の建築又はその敷地の造成が現に行われ,又は行われると見込まれる一定の区域で,そのまま土地利用を整除することなく放置すれば,将来における都市としての整備、開発及び保全に支障が生じるおそれがあると認められる区域をいい,準都市計画区域は市町村が指定し,準都市計画区域についての都市計画は市町村が決定する(都市計画法5条の2,19条5項)

  (1000本ノックの該当箇所) http://tokagekyo.7777.net/echo_legal/toshi/sup2-ans.html

3 ○ 〔初出題〕 再開発等促進区 

 再開発等促進区は,一定の要件を備えている土地の区域における地区計画について都市計画で定めることができる(都市計画法12条の5第3項)

 再開発等促進区とは,土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の増進とを図るため、一体的かつ総合的な市街地の再開発又は開発整備を実施すべき区域をいう。
 1000本ノックでも扱っている。

 (1000本ノックの該当箇所) http://tokagekyo.7777.net/echo_legal/toshi/sokushin.html

4 × 高層住居誘導地区

 高層住居誘導地区は,都市計画区域内において(都市計画法8条2号の4),住居と住居以外の用途を適正に配分し,利便性の高い高層住宅の建設を誘導するため,第一種・第二種住居地域,準住居地域,近隣商業地域,準工業地域5つの用途地域内にあり,都市計画で容積率が40/10又は50/10と定められた土地の区域内で定めるものである(都市計画法9条16号)

 第一種中高層住居専用地域,第二種中高層住居専用地域では定めることができないので,本肢は誤りである。

 (1000本ノックの該当箇所) http://tokagekyo.7777.net/echo_t2/1517.html

【問20】 都市計画法33条に規定する開発許可の基準のうち、主として自己の居住の用に供する住宅の建築の用に供する目的で行う開発行為に対して適用のあるものは、次のうちどれか。

1 予定建築物等の敷地に接する道路の幅員についての基準

2 開発区域に設置しなければならない公園、緑地又は広場についての基準

3 排水施設の構造及び能力についての基準

4 開発許可の申請者の資力及び信用についての基準

 正答率  33.5%
【問20の解き方】都市計画法33条の開発許可基準

 主として自己居住用住宅の建築の用に供する目的で行う開発行為についての開発許可基準については,近年では,平成12年・問19に出題があった。自己居住用住宅のための開発行為なので,肢2や肢4は該当しないのはすぐわかるが,肢1と肢3のどちらなのかで迷った受験者は少なくないと思われる。

 ちなみに,正解肢の肢3については,1000本ノックでは補充説明として扱っているものである。

(註) 33条の開発許可基準は,大別すると,

・主として,自己の居住又は自己の業務 の用に供する
・その他 (分譲のために宅地造成を行う場合など)

の二つに区分される。

自己の居住 

又は 

自己の業務

自己の居住 ・開発行為を施行する主体が
 自らの生活の本拠として使用
自然人に限られる
自己の業務 ・当該建築物・特定工作物において、
 継続的に自己の業務に係る経済活動
 行われる。
その他    * 他人に譲渡又は使用させることが業務の目的で、
 利用者が開発行為者以外の者となる。

1 × 主として,自己の居住用住宅の建築の用に供する目的で行う開発行為以外の開発行為では,予定建築物等の用途,予定建築物等の敷地の規模等に応じて,6m以上12m以下で国土交通省令で定める幅員以上の道路が敷地に接するように配置されていなければならないが(都市計画法33条1項2号,同33条2項,都市計画法施行令25条2号),この基準は自己の居住用住宅の建築の用に供する目的で行う開発行為には適用されないので,誤り。

  【関連問題の出題歴】平成10年・問19(道路の整備),

2 × 主として,自己の居住用住宅の建築の用に供する目的で行う開発行為以外の開発行為では,開発区域に設置しなければならない公園,緑地又は広場についての基準が定められているが(都市計画法33条1項2号,都市計画法施行令25条7号・8号),この基準は自己の居住用住宅の建築の用に供する目的で行う開発行為には適用されないので,誤り。

3 ○ 排水路その他の排水施設の構造及び能力についての基準については,自己居住用・自己の業務用・その他の区分を問わず,適用されるので正しい(都市計画法33条1項3号)

 (1,000本ノックの該当箇所) http://tokagekyo.7777.net/echo_t2/1219.html

4 × 『自己の居住用住宅の建築の用に供する目的で行う開発行為』,『(住宅以外の建築物の建築や特定工作物の建設のために)自己の業務の用に供する目的で行う開発行為』では,当該開発行為を行うために必要な資力及び信用があることは要求されていない(都市計画法33条1項12号)ので,誤り。

 【出題歴】平成12年問19肢2,

【問21】 建築基準法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 2階建てで延べ面積が100平方メートルの鉄骨造の建築物を建築する場合、構造計算は必要としない。

2 5階建てで延べ面積が1,000平方メートルの共同住宅の所有者は、当該共同住宅の敷地、構造及び建築設備について、定期的に一級建築士等に調査させなければならず、調査を担当した一級建築士等は、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。

3 特定行政庁は、建築基準法施行令第9条に規定する建築基準関係規定である都市計画法第29条に違反した建築物について、当該建築物の所有者に対して、違反を是正するための措置を命ずることができる。

4 便所には、採光及び換気のため直接外気に接する窓を設けなければならないが、水洗便所で、これに代わる設備をした場合においては、必ずしも設ける必要はない。

 正答率  29.5%
【問21の解き方】 構造計算・定期報告・違反建築物等に対する措置・便所の採光と換気

 受験者のインタビューでは,肢3の正誤判定がしにくいという声があった。

 肢1は明らかに×であることはわかっても,肢2(マンション管理士試験の受験者ではよく知られている),肢3,初出題の肢4のうちのどれが正しいのかと五里霧中で疑心暗鬼になった受験者が多かったと思われる。

1 × 構造計算

  木造以外の建築物で2以上の階数を有しているもの又は延べ面積が200平方メートルを超えるものは,政令で定める基準に従った構造計算によって確かめられる安全性を有するものでなければならない(建築基準法20条2号イ,6条第1項3号)

 【出題歴】昭和60年・問20・肢4平成7年・問21・肢4平成9年・問25・肢2

2 × 〔近年では,初出題〕 特定行政庁への定期報告を要する建築物

 100平方メートル超の特殊建築物その他政令で定める建築物特定行政庁が指定するものの所有者〔所有者と管理者が異なる場合は管理者〕は,当該建築物の敷地,構造及び建築設備について,定期に,その状況を一級建築士・二級建築士・国土交通大臣が定める資格を有する者に調査させて,その結果を特定行政庁に報告しなければならない(建築基準法12条1項,建築基準法施行令16条)

(註) 政令で定める建築物とは,特殊建築物を除いて,事務所その他これに類する用途に供する建築物のうち,階数が5以上で,延べ面積が1,000平方メートルを超える建築物をいう(建築基準法施行令16条)

 本肢の共同住宅 (100平方メートル超の特殊建築物)は,特定行政庁から指定されていれば,定期報告の対象となる。

 特定行政庁に報告するのは一級建築士等ではなく,建築物の所有者〔所有者と管理者が異なる場合は管理者〕なので本肢は誤りである。

3 × 違反建築物等に対する措置

 特定行政庁は,建築基準法令の規定〔建築基準法・建築基準法に基づく命令・条例の規定〕又はこの法律に基づく許可に付した条件に違反した建築物又は建築物の敷地について,当該建築物の建築主,工事の請負人・現場管理者,所有者・管理者・占有者に対して,違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる(建築基準法9条1項)

 問題文では,<建築基準法施行令第9条に規定する建築基準関係規定である都市計画法第29条に違反した建築物について>違反是正命令を出せるとなっているが,

 都市計画法29条が建築基準関係規定ではあることはマチガイないにしても,建築基準法9条の条文をそのまま出題したとすれば〔解釈や運用を考えなければ〕,特定行政庁が違反是正命令を出せるのは<建築基準法令に違反した建築物又は建築物の敷地>なので,本肢は誤りとせざるを得ない。

●建築規準関係規定とは何か

 建築基準法では,一定の建築物を建築しようとする場合,建築基準関係規定〔建築基準法令の規定その他建築物の敷地,構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるもの〕に適合するものであることについて,建築主事などの確認を受けることになっている(建築基準法6条1項,建築基準法施行令9条12号)。この建築基準関係規定の中に,都市計画法29条1項・2項が政令で定めるものとして施行令で指定されている。

 ⇒ 建築確認の法的性格については,指定確認検査機関制度が施行されるまでは,行政行為としては,「確認行為説」,「許可行為説(建築基準法6条6項を根拠とする)」の2つがあり,現在は裁判例でも「確認行為説」が優勢である。しかし,行政機関による裁量の余地が全くないというわけではない。

4 ○ 〔初出題〕 便所の採光及び換気 

  便所には,採光及び換気のため直接外気に接する窓を設けなければならないが,水洗便所で,これに代わる設備をした場合には,必ずしも窓を設ける必要はない(建築基準法施行令28条)

マンションや複合ビル等では,窓のないトイレが多いことに思い至れば,正解肢に達することができた。

【問22】 建築基準法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 建築物の容積率の制限は、都市計画において定められた数値によるものと、建築物の前面道路の幅員に一定の数値を乗じて得た数値によるものがあるが、前面道路の幅員が12m未満である場合には、当該建築物の容積率は、都市計画において定められた容積率以下でなければならない。

2 建築物の前面道路の幅員に一定の数値を乗じて得た数値による容積率の制限について、前面道路が二つ以上ある場合には、それぞれの前面道路の幅員に応じて容積率を算定し、ひのうち最も低い数値となる。

3 建築物の敷地が都市計画に定められた計画道路 (建築基準法第42条1項第4号に該当するものを除く。) に接する場合において、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて許可した建築物については、当該計画道路を前面道路とみなして容積率を算定する。

4 用途地域の指定のない区域内に存する建築物の容積率は、特定行政庁が土地利用の状況等を考慮し、都市計画において定められた数値以下でなければならない。

 正答率  46.9%
【問22の解き方】 容積率と前面道路

 本問題の肢1,肢4は問題文の正誤が判定しにくいという声が受験者のインタビューであった。正解肢の肢3は初出題であり,肢1,肢4の正誤がわからないと,肢3を含めて3つの肢の中から一つを選んで,薄氷を踏む思いで解答をマークした受験者が多かったと思われる。

1 × 前面道路が12m未満である場合の容積率の制限

 建築物の敷地に接する前面道路の幅員が12m未満である場合には,当該建築物の容積率は,都市計画において定められた容積率以下であるとともに,前面道路の幅員のメートルの数値に用途地域の区分に従って一定値を乗じて得た数値以下でなければならない(建築基準法52条1項,2項)

 したがって,<前面道路の幅員が12m未満である場合には、当該建築物の容積率は、都市計画において定められた容積率以下でなければならない。>とする本肢は,誤りである。

建築物の敷地に接する前面道路の幅員が12m未満である場合には,都市計画において定められた容積率以下,かつ,前面道路の幅員のメートルの数値に用途地域の区分に従って一定値を乗じて得た数値以下でなければならないので,2つのうちの小さいほうが容積率の限度になるのだから,結果的には,都市計画において定められた容積率以下になっているはずだと考えると,ロジックとしては正しくても,題意とは異なる結論になってしまう。

 ここは素直に,建築物の敷地に接する前面道路の幅員が12m未満である場合には,都市計画において定められた容積率の制限だけでなく,前面道路の幅員のメートルの数値に用途地域の区分に従って一定値を乗じて得た数値の制限も受けると考えて誤りとしなければならない。

2 × 12m未満の前面道路が2つ以上あるときに基準とする幅員

 建築物の敷地に接する前面道路の幅員に一定の数値を乗じて得た数値による容積率の制限では,前面道路が二つ以上ある場合には幅員の最大のものを基準とするので,誤りである(建築基準法52条2項)

3 ○ 〔初出題〕 計画道路は前面道路とみなす

 建築物の敷地が都市計画において定められた計画道路(2年以内にその事業が執行されるものとして特定行政庁が指定して第42条第1項第4号に該当するものを除く。)に接する場合又は当該敷地内に計画道路がある場合に,特定行政庁が交通上,安全上,防火上及び衛生上支障がないと認めて許可した建築物については,当該計画道路を前面道路とみなして,容積率の規定を適用するので正しい(建築基準法52条10項)

当該敷地のうち計画道路に係る部分の面積は,敷地面積又は敷地の部分の面積に算入しないことに注意。

4 × 用途地域の指定のない区域内の容積率

 用途地域の指定のない区域内に存する建築物の容積率は,特定行政庁が土地利用の状況等を考慮し,当該区域を区分して都道府県都市計画審議会の議を経て定める(建築基準法52条1項6号)

 本肢では,

 1) <都道府県都市計画審議会の議を経て>という部分が抜けていること

 2)用途地域の指定のない区域内であっても,12m未満の前面道路の幅員による制限を受けるので<特定行政庁が定める容積率の制限>だけ受けるのではない(建築基準法52条2項)。⇒肢1と類似の理由

 この2つの理由から,誤りとしなければならない。

条文中の表現としては,<特定行政庁が・・・定める>となっていて,問題文中にあるように,「都市計画で定める」とはなっていない。

【問23】 土地区画整理法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 土地区画整理組合が総会の決議により解散しようとする場合において、その組合に借入金があるときは、その解散についてその債権者の同意を得なければならない。

2 土地区画整理組合は、その事業に要する経費に充てるため、賦課金として参加組合員以外の組合員に対して金銭を賦課徴収することができるが、当該組合に対する債権を有する参加組合員以外の組合員は、賦課金の納付について、相殺をもって組合に対抗することができる。

3 換地処分の公告があった場合においては、換地計画において定められた換地は、その公告があった日の翌日から従前の宅地とみなされるため、従前の宅地について存した抵当権は、換地の上に存続する。

4 公共施設の用に供している宅地に対しては、換地計画において、その位置、地積等に特別の考慮を払い、換地を定めることができる。

 正答率  50.3%
【問23の解き方】 土地区画整理組合の解散,賦課金,換地処分の効果,換地計画での特別の宅地に対する特別の考慮

 4肢ともほぼ条文どおりの出題であるが,肢3のほかは初出題なので,戸惑った受験者が多かったと思われ,正答率も低い。

 しかし,正解肢の肢2の賦課金と相殺については,1000本ノックでも賦課金の解説や40条を補充として掲載していたので,見ていた人はとれたはずである。清算金については過去問でも出題があったので,類似するものとの比較をしていれば,当然賦課金についても整理することができた。

1 ○ 〔初出題〕 組合の解散での債権者の同意

 土地区画整理組合が総会の議決定款で定めた解散事由の発生事業の完成又はその完成の不能のいずれかによって解散しようとする場合に,その組合に借入金があるときは,その解散についてその債権者の同意を得なければならない(土地区画整理法45条4項)

 いったん解散してしまえば,借入金の債権者が回収することが難しくなってしまうからである。

2 × 〔初出題〕 賦課金と相殺の禁止

 賦課金とは,組合施行の土地区画整理事業で,保留地の処分が予定価格で売れなかったりして,事業費が不足したときに組合員に賦課する追加の負担金のことをいう(土地区画整理法40条)

 土地区画整理組合は,総会の議決を経て(土地区画整理法31条7号),その事業に要する経費に充てるため,賦課金として参加組合員以外の組合員に対して金銭を賦課徴収することができるが(土地区画整理法40条1項),組合員は当該組合に対する債権を有していても,賦課金の納付について,当該債権を自働債権とする相殺をもって組合に対抗することはできない(土地区画整理法40条3項)

 (1000本ノックでの該当箇所) http://tokagekyo.7777.net/echo_t2/54-kukaku.html

3 ○ 換地処分の効果

 換地処分の公告があった場合,換地計画において定められた換地は,その公告があった日の翌日から従前の宅地とみなされるため,従前の宅地について存した抵当権は,換地の上に存続する(土地区画整理法104条1項,2項)

4 ○ 〔初出題〕 特別の宅地に関する措置

 土地区画整理法や政令で定めている一定の宅地については,換地計画において,その位置,地積等に特別の考慮を払い,換地を定めることができる(土地区画整理法95条1項)

 本肢での<公共施設の用に供している宅地>についても適用されるので正しい(土地区画整理法95条1項6号)

【問24】 宅地造成等規制法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。なお、この問における都道府県知事とは、地方自治法に基づく指定都市、中核市及び特例市にあっては、その長をいうものとする。

1 国土交通大臣は、都道府県知事の申出に基づき、宅地造成に伴い災害が生ずるおそれの著しい市街地及び市街地となろうとする土地の区域を宅地造成工事規制区域として指定することができる。

2 宅地造成工事規制区域内において行われる宅地造成に関する工事は、擁壁、排水施設又は消防の用に供する貯水施設の設置その他宅地造成に伴う災害の発生を防止するため必要な措置が講じられたものでなければならない。

3 造成主は、宅地造成等規制法第8条第1項の許可を受けた宅地造成に関する工事を完了した場合、都道府県知事の検査を受けなければならないが、その前に建築物の建築を行おうとする場合、あらかじめ都道府県知事の同意を得なければならない。

4 都道府県知事は、宅地造成工事規制区域内の宅地で、宅地造成に伴う災害の防止のたる必要な擁壁が設置されていないため、これを放置するときは宅地造成に伴う災害の発生のおそれが著しいものがある場合、一定の限度のもとに当該宅地の所有者以外の者に対しても擁壁の設置のための工事を行うことを命ずることができる。

 正答率  28.6%
【問24の解き方】 宅地造成等規制法は,やさしい問題が諸法令で出題されて単独問題では出題されなかった年が過去に何年か続いたために,余り学習していない受験者が多い。出題者はその辺の事情には極めて明るく,用意周到に手堅く保全関係の問題を出題した。

 肢1,肢2はすぐ切れるが,肢3には少し迷った方がいるかもしれない。
 肢4については,どの基本書にも書いてある基本知識のはずだが,意外に正答率が低い。学習不足の受験者が多かったものと思われる。

1 × 宅地造成工事規制区域の指定

 宅地造成工事規制区域は,都道府県知事 (又は指定都市等の長。以下,同じ。)が定めるので誤り。なお,宅地造成工事規制区域は,<宅地造成に伴い災害が生ずるおそれの著しい市街地及び市街地となろうとする土地の区域>に指定するという後半部分の記述は正しい(宅地造成等規制法・3条1項)

2 × 宅地の保全等 制度趣旨で考える問題。

 宅地造成工事規制区域内の宅地の所有者・管理者・占有者は,宅地造成(宅地造成工事規制区域の指定前に行なわれたものを含む。)に伴う災害が生じないよう,その宅地を常時安全な状態に維持するように努めなければならない(宅地造成等規制法・15条1項)

 都道府県知事は,宅地造成工事規制区域内の宅地について,宅地造成に伴う災害の防止のため必要があると認める場合には,その宅地の所有者・管理者・占有者等に対し,擁壁又は排水施設の設置又は改造その他宅地造成に伴う災害の防止のため必要な措置をとることを勧告することができる(宅地造成等規制法・15条2項)

 消防の用に供する貯水施設の設置は,宅地造成に伴う災害とは関係ないのだから,災害の防止のため必要な措置の中には入っておらず,誤りであることはすぐわかる。

3 × 工事完了の検査前の建築行為

 造成主は,宅地造成等規制法第8条第1項の許可を受けた宅地造成に関する工事を完了した場合,宅地造成に関する工事の技術的基準等に適合しているかどうかについて,都道府県知事の検査を受けなければならない(宅地造成等規制法・12条1項,9条1項)

 その検査の前に建築物の建築を行おうとする場合,あらかじめ都道府県知事の同意を得なければならないとする規定は宅地造成等規制法にはない。

4 ○ 改善命令

 本肢では,当該宅地の所有者以外の者に対しても擁壁の設置のための工事を行うことを命ずることができるというのがポイント。災害防止のためには,所有者以外の者にも命令することができるようにしておかないと実効性が薄いということを理解しておけば,本肢が正しいことがわかる。

 都道府県知事は,宅地造成工事規制区域内の宅地で,宅地造成に伴う災害の防止のため必要な擁壁又は排水施設が設置されていないか又はきわめて不完全であるために,これを放置するときは,宅地造成に伴う災害の発生のおそれが著しいものがある場合に,その著しいおそれを除去するため必要であり,かつ,土地の利用状況等からみて相当であると認められる限度において,当該宅地・擁壁・排水施設の所有者,管理者又は占有者に対し,相当の猶予期限をつけて,擁壁・排水施設の設置・改造又は地形の改良のための工事を行なうことを命ずることができる(宅地造成等規制法・16条1項)

 【関連出題歴】昭和52年・肢3平成6年・問25・肢4

【問25】 農地法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 農地を一時的に資材置場に転用する場合は、いかなる場合であってもあらかじめ農業委員会に届出をすれば、農地法第4条第1項又は同法第5条第1項の許可を受ける必要はない。

2 市街化区域内の農地を耕作の目的に供するために取得する場合は、あらかじめ農業委員会に届け出れば、農地法第3条第1項の許可を受ける必要はない。

3 農業者が山林原野を取得して、農地として造成する場合、農地法第3条第1項の許可を受ける必要がある。

4 農業者が自ら居住している住宅の改築に必要な資金を銀行から借りるため、自己所有の農地に抵当権を設定する場合、農地法第3条第1項の許可を受ける必要はない。

 正答率  74.5%
【問25の解き方】 農地法の許可の要否

 農地法の自己採点集計での正答率は例年70%台で,わかっている人には農地法は得点源になっている。しかし,なぜか苦手とする人もいる。

 苦手の原因は,過去問の練習不足という次元ではなく,根本的に制度趣旨やディテールが理解されていないことによるものと考えられる。

 今回の農地法の問題も頻出問題ばかりであり,制度趣旨を理解していれば肢4が正しいと即座に判断できたはずである。

1 × 農林水産大臣との協議が調った市街化区域内では,農地の自己転用,転用目的の権利取得とも,あらかじめ農業委員会に届出をすれば,農地法第4条第1項又は同法第5条第1項の許可を受ける必要はないが,市街化区域外では,都道府県知事又は規模により農林水産大臣の許可を必要とするので,誤り。

2 × 農地の自己転用,転用目的の権利取得の場合は,農林水産大臣との協議が調った市街化区域内では,あらかじめ農業委員会に届出をすれば,農地法第4条第1項又は同法第5条第1項の許可を受ける必要はないが,市街化区域内の農地を耕作の目的に供するために取得する場合は特例措置はないので,当該農地が取得する者の居住地にあるかどうかで,あらかじめ農業委員会又は都道府県知事の農地法第3条の許可を受けなければならない。

 したがって,誤りである。

3 × 農地法での農地以外の土地 (現況農地は含まれない。) を取得して,農地として造成する場合には,農地法第3条の許可を受ける必要はない。

 農地法第3条は,農地の場合,耕作者等の変化について目を光らせるというのが制度趣旨であり,それまで農地でなかった土地が農地になるのを取り締まるのではないからである。

4 ○ 自己所有の農地に質権を設定する場合には,実質的に農地を使用収益する者(耕作する者)が変わってしまうので農地法3条の許可が必要であるが,抵当権を設定する場合は、抵当権設定者である農地の所有者は引き続き農地を耕作できるので,農地法第3条の許可は不要である。


【正解】

17 18 19 20 21

22 23 24 25


●平成17年度・宅建試験・解説要約版
権利変動(問1〜問16),法令制限(問17〜問25),宅建業法(問30〜問45)税法その他(問26〜問29/問46〜問50)宅建過去問'05のトップに戻る

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