法令上の制限 実戦篇
宅地造成等規制法の過去問アーカイブス 平成6年・問25
宅地造成等規制法に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。なお,この問における都道府県知事とは,地方自治法に基づく指定都市,中核市又は特例市にあっては,指定都市,中核市又は特例市の長をいうものとする。 (平成6年・問25) |
1.「宅地造成工事規制区域内の農地に盛土をして高さ2mのがけを生じる場合,引き続き農地として利用するときは,都道府県知事の許可を受ける必要はないが,宅地に転用するときは,その旨届け出なければならない。」 |
2.「宅地造成工事規制区域内で宅地造成を行う場合において,高さ3mの擁壁の設置をするときは,一定の資格を有する者の設計によらなければならない。」 |
3.「宅地造成工事規制区域内の宅地を購入した者は,都道府県知事の検査を受けなければならない。」 |
4.「宅地造成工事規制区域内の宅地を購入した者は,宅地造成に伴う災害の防止のため,都道府県知事から,必要な措置をとるよう勧告を受けることがあるほか,擁壁の改善等の工事を行うことを命ぜられることがある。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
1.「宅地造成工事規制区域内の農地に盛土をして高さ2mのがけを生じる場合,引き続き農地として利用するときは,都道府県知事の許可を受ける必要はないが,宅地に転用するときは,その旨届け出なければならない。」 |
【正解:×】 ◆『盛土のみで高さ1メートルを超えるがけ』を生じる場合は許可が必要 〔宅地以外→宅地〕,〔宅地→宅地〕で『(定義2) 高さ1mを超えるがけを生ずる盛土』は宅地造成に該当するので許可が必要になります。したがって,本肢では以下のようになります。 農地〔宅地以外〕→農地〔宅地以外〕 ⇒ 許可は不要 …≪前半≫ ○ 農地〔宅地以外〕→宅地 ⇒ 「盛土をして高さ2mのがけを生じる」ので
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●宅地造成を判定する要素 |
1.<形質変更の目的 : 宅地以外→宅地 にするものか>〔宅地以外→宅地〕
<形質変更の場所 : 宅地で行われるものか>〔宅地→宅地〕 2.<その形質変更は一定規模を超えるものか>〔一定規模を超えるもの〕 |
●一定規模を超える形質の変更とはどのようなものか−施行令3条 |
(定義1) 高さ2mを超えるがけを生ずる切土
(定義2) 高さ1mを超えるがけを生ずる盛土 (定義3) 切土・盛土を同時にする場合で2mを超えるがけを生ずるもの〔正確には,この中で,盛土をした土地の部分に高さが1m以下のがけを生ずるもの〕 (定義4) (1)〜(3)に該当しなくても,土地の面積が500平方メートルを超えるもの |
2.「宅地造成工事規制区域内で宅地造成を行う場合において,高さ3mの擁壁の設置をするときは,一定の資格を有する者の設計によらなければならない。」 |
【正解:×】昭和55年,59年,平成6年 ◆設計資格−災害防止のため必要な措置のうち政令で定める工事に必要 高さ3mの擁壁(5m以下)なので,資格者の設計は不要。 宅地造成工事規制区域内における宅地造成に関する工事は,もともと擁壁,排水施設その他の政令で定める施設の設置その他宅地造成に伴う災害を防止するため,必要な措置をとるものとされており(9条1項),その必要な措置のうち政令や都道府県の規則で定めるものの工事〔一定の擁壁の設置及び排水施設の設置〕については,政令で定める資格を有する者の設計によらなければいけません。(9条2項) ■設計資格を要する工事 (施行令16条) …『高さ5mを超える擁壁の設置』(平成6年出題) 『切土又は盛土をする土地の面積が1,500平方メートルを超える土地における排水施設の設置』 ■設計…その者の責任において設計図書〔必要な図面及び仕様書〕を作成すること。 |
●類題 |
1.「宅地造成工事規制区域内において許可を受けて行う宅地造成に関する工事は,すべて政令で定める一定の資格を有する者の設計によらなければならない。」(昭和59年,同55年) |
【正解 :×】宅地造成工事のすべてで資格を有する者の設計が必要なのではない。 |
2.「規制区域内において宅地造成に伴う災害を防止するため設置される高さ5mを超える擁壁に関する工事は,一定の資格を有する者の設計によらなければならない。」(不動産鑑定士・平成9年) |
【正解 :○】 |
3.「宅地造成工事規制区域内の宅地を購入した者は,都道府県知事の検査を受けなければならない。」 |
【正解:×】昭和62,平成元年,6年,7年,8年 ◆完了検査 造成主は,許可を受けた宅地造成工事が完了したとき,政令で定める技術的基準に従い災害を防止するための必要な措置が講じられているかどうかについて,国土交通省令で定めるところにより,都道府県知事の検査を受けなければいけません。(13条1項) 規制区域内の宅地を購入した者が,都道府県知事の検査を受ける必要はありません。 ▼都道府県知事等は,<必要がある場合に,当該宅地に立ち入り,当該宅地又は当該宅地において行われている宅地造成に関する工事の状況を検査することができる。>という立入検査の規定がありますが(17条),本肢での「検査」はこのことを訊ねているわけではありません。 |
●規制区域内の宅地の所有者・管理者・占有者 |
・災害を生じないように常時安全な状態を維持する努力義務〔保全義務等〕(16条1項) ・災害防止のための必要な措置をとることについて知事から勧告されることがある。〔勧告〕(16条2項) ・擁壁・排水施設の設置・改造や土地の改良のための工事を知事から命ぜられることがある。〔改善命令〕(17条1項)→宅地・擁壁・排水施設の 所有者・管理者・占有者 ・当該宅地又は当該宅地において行われている工事の状況について報告を求められることがある。〔報告の徴取〕(19条) ※このほか,知事などが必要があると認めたときは立入検査をすることがある。〔立入検査〕(18条1項) |
4.「宅地造成工事規制区域内の宅地を購入した者は,宅地造成に伴う災害の防止のため,都道府県知事から,必要な措置をとるよう勧告を受けることがあるほか,擁壁の改善等の工事を行うことを命ぜられることがある。」 |
【正解:○】昭和52年,平成6年 ◆改善命令,必要な措置 都道府県知事〔又は指定都市等の長〕は,規制区域内の宅地で, 災害防止のため必要な擁壁・排水施設が設置されていないか又は不完全であるために,放置すると災害の発生するおそれが大きいと認められるものがある場合は, その恐れを除去するため必要であり,かつ,土地の利用状況等から見て相当であると認められる限度において, その宅地・擁壁・排水施設の所有者・管理者・占有者に対して, 相当の猶予期限をつけて,擁壁・排水施設の設置・改造又は地形改良のための工事を行うことを命じることができます。(17条1項) |
●宅地の保全の勧告・改善命令のポイント |
・誰に対して・・・〔勧告は宅地の所有者・管理者・占有者, |
●類題 |
1.「都道府県知事は,宅地造成工事規制区域内の土地について,宅地造成工事規制区域の指定以前に宅地造成が行われた場合には,擁壁又は排水施設の設置を命ずることはできない。」(昭和52年) |
【正解 :×】規制区域の指定以前に造成された宅地でも命じられることがあるので×。 |
●宅地造成等規制法の過去問Archives −検索用− |
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