法令上の制限 実戦篇

宅地造成等規制法の過去問アーカイブス 昭和60年・問24


宅地造成等規制法に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。なお,本問における都道府県知事とは,指定都市,中核市又は特例市にあっては,指定都市,中核市又は特例市の長をいうものとする。(昭和60年・問24)

1.「都道府県知事は,宅地造成に関する工事の完了検査の結果,工事が一定の技術的水準に適合していないと認られた宅地については,その工事の請負人に対して防災上必要な措置をとることを命ずることができる。」

2.「都道府県知事は,宅地造成工事規制区域内で行われている宅地造成に関する工事で許可を受けていないものについては,その工事の請負人に対して,工事の施行の停止を命ずることができる。

3.「宅地造成工事規制区域内の宅地の所有者は,その宅地が宅地造成工事規制区域の指定以前に宅地造成されたものである場合を除き,宅地を常時安全な状態に維持するよう努めなければならない。」

4.「宅地造成工事規制区域内で行われる宅地造成に関する工事については,造成主は,工事着手後21日以内に都道府県知事の許可を受けなければならない。」

【正解】

× × ×

1.「都道府県知事は,宅地造成に関する工事の完了検査の結果,工事が一定の技術的水準に適合していないと認られた宅地については,その工事の請負人に対して防災上必要な措置をとることを命ずることができる。」

【正解:×昭和56年,60年

◆宅地の使用禁止又は使用制限,災害防止に必要な措置

 本肢では,「その工事の請負人に対して命ずる」となっているので×です。

 工事中ならば工事の請負人に命ずることはできますが(14条2項),完了検査があったということはすでに工事が終わっていることを意味するので,×だということはすぐわかります。

 都道府県知事〔又は指定都市等の長〕は,規制区域内の下記の宅地について,当該宅地の所有者・管理者・占有者・造成主に対して,当該宅地の使用禁止や使用制限,又は相当の猶予期限をつけて,擁壁・排水施設の設置その他災害防止のため必要な措置をとることを命ずることができます。(14条3項)

 ・許可を受けずに宅地造成したとき (昭和62年出題)
 ・完了検査を受けていないとき (昭和56年出題)
 ・完了検査の結果,技術的基準に適合していないとき(昭和56年,60年出題)

2.「都道府県知事は,宅地造成工事規制区域内で行われている宅地造成に関する工事で許可を受けていないものについては,その工事の請負人に対して,工事の施行の停止を命ずることができる。

【正解:昭和56年,60年,平成2年

◆工事の施行停止

 都道府県知事〔又は指定都市等の長〕は,規制区域内で行われている宅地造成工事について,下記の場合において,造成主・工事請負人〔下請人も含む〕・現場管理者に対して,あらかじめ弁明の機会を付与した上で,当該工事の施行の停止を命じ,又は相当の猶予期限をつけて,擁壁・排水施設の設置その他災害防止のため必要な措置をとることを命ずることができます。(14条2項,4項,行政手続法13条1項2号)

 ・許可を受けていないとき
 ・許可の条件に違反して工事が行われているとき
 ・技術的基準に従わず,災害防止のため必要な措置が講じられていない

緊急の場合に,造成主・工事請負人〔下請人も含む〕・現場管理者が現場にいないときには,当該工事に従事している者に対して工事作業の停止を命じることができます。(14条2項,4項)

●行政手続法13条1項
行政庁は,不利益処分をしようとする場合には,当該不利益処分の名あて人となるべき者について,意見陳述のための手続を執らなければならない。
(1) 許認可の取消等 → 聴聞
(2) 許認可の取消等以外の不利益処分 → 弁明の機会の付与

3.「宅地造成工事規制区域内の宅地の所有者は,その宅地が宅地造成工事規制区域の指定以前に宅地造成されたものである場合を除き,宅地を常時安全な状態に維持するよう努めなければならない。」

【正解:×昭和60年,63年,平成3年,7年,15年

◆保全義務

 規制区域内の宅地所有者・管理者・占有者は,宅地造成に伴う災害が生じないよう,その宅地を常時安全な状態に維持するよう努めなければいけません(16条1項)

 ここでいう宅地造成とは,規制区域の指定前に行われたものも含まれており(平成7年出題),いつ行われた宅地造成であってもそれに伴う災害が生じないように努める義務があります。(昭和60年出題)

 宅地造成した後に所有者が替わってもこのことに変わりはなく,前の地主がしたことだからと保全について何もしなくてもいいということではありません。(平成15年出題)

 ただし,「規制区域内の土地」であっても「宅地ではないもの」(平成3年出題)や「規制区域外の土地」については,この保全義務はありません。

●『保全義務』の出題の見取り図

 宅地以外の土地 平成3年
 造成主とは異なる者が宅地を所有 平成15年 ⇒ 類似の出題 62-25-4
 当該区域の指定前に行われた宅地造成 平成7年,昭和60年 

4.「宅地造成工事規制区域内で行われる宅地造成に関する工事については,造成主は,工事着手後21日以内に都道府県知事の許可を受けなければならない。」

【正解:×

◆工事着手前に造成主が許可を得る

 許可を受けるのは『工事に着手する前』。宅地造成等規制法では『21日以内』というのは,規制区域が指定された際に,現に宅地造成工事を行っている造成主が届け出るときです(14条1項)⇒ 指定があった日から21日以内に届出義務

 宅地造成工事規制区域内において宅地造成に関する工事を行おうとする造成主は,宅地造成工事前に,原則として都道府県知事〔又は指定都市等の長〕の許可を受けなければいけません。(8条1項)

 なお,都道府県知事〔又は指定都市等の長〕は,許可するときに,工事の施行に伴う災害を防止するため必要な条件を附すことができます。(8条3項)←平成8年・16年出題

都市計画法29条1項・2項の開発許可を受けて行われる当該許可の内容に適合した宅地造成に関する工事については許可を受ける必要はない。


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