法令上の制限 実戦篇

宅地造成等規制法の過去問アーカイブス 平成15年・問24 


宅地造成等規制法に規定する宅地造成工事規制区域(以下この問において「規制区域」という。 )に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。なお,この問における都道府県知事とは,地方自治法の指定都市等にあっては,それぞれの指定都市等の長をいうものとする。 (平成15年・問24)

1.「規制区域内で過去に宅地造成に関する工事が行われ,現在は造成主とは異なる者がその工事が行われた宅地を所有している場合,当該宅地の所有者は災害が生じないようその宅地を常時安全な状態に維持するよう努める必要はない。」

2.「規制区域内の宅地において行われる切土による土地の形質の変更に関する工事で,当該宅地に高さ1.5メートルのがけが生じ,かつ,その面積が600平方メートルのときには,造成主は,あらかじめ都道府県知事の許可を受けなければならない。」

3.「新たに指定された規制区域内において,指定の前にすでに着手されていた宅地造成に関する工事については,その造成主はその指定があった日から21日以内に,都道府県知事の許可を受けなければならない。」

4.「規制区域内の宅地造成に関する工事の検査済証が交付された後,宅地造成に伴う災害防止上の必要性が認められるときは,都道府県知事は宅地の所有者に対して,当該宅地の使用を禁止又は制限をすることができる。 」

【正解】

× × ×

1.「規制区域内で過去に宅地造成に関する工事が行われ,現在は造成主とは異なる者がその工事が行われた宅地を所有している場合,当該宅地の所有者は災害が生じないようその宅地を常時安全な状態に維持するよう努める必要はない。」

【正解:×昭和60年,63年,平成3年,7年,15年

◆保全義務

 規制区域内の宅地所有者・管理者・占有者は,宅地造成に伴う災害が生じないよう,その宅地を常時安全な状態に維持するよう努めなければいけません(16条1項)

 ここでいう宅地造成とは,規制区域の指定前に行われたものも含まれており(平成7年出題),いつ行われた宅地造成であってもそれに伴う災害が生じないように努める義務があります。(昭和60年出題)

 宅地造成した後に所有者が替わってもこのことに変わりはなく,前の地主がしたことだからと保全について何もしなくてもいいということではありません。(平成15年出題)

 ただし,「規制区域内の土地」であっても「宅地ではないもの」(平成3年出題)や「規制区域外の土地」については,この保全義務はありません。

●『保全義務』の出題の見取り図

 宅地以外の土地 平成3年
 造成主とは異なる者が宅地を所有 平成15年 ⇒ 類似の出題 62-25-4
 当該区域の指定前に行われた宅地造成 平成7年,昭和60年 

2.「規制区域内の宅地において行われる切土による土地の形質の変更に関する工事で,当該宅地に高さ1.5メートルのがけが生じ,かつ,その面積が600平方メートルのときには,造成主は,あらかじめ都道府県知事の許可を受けなければならない。」

【正解:昭和58年,平成2年,9年,15年,16年

◆500平方メートルを超える形質の変更

 宅地で行われる形質の変更で,切土によって生じるがけの高さが2mを超えなくても,その面積が500平方メートルを超えるならば,宅地造成に該当し,許可が必要になる。

形質変更の目的 :
<宅地以外→宅地にする>
〔宅地以外→宅地〕
  土地の面積が

500平方メートルを超えるもの

   許可が必要
形質変更の場所 :
<宅地で行われる>
〔宅地→宅地〕

●一定規模を超える形質の変更とはどのようなものか−施行令3条
(定義1) 高さ2mを超えるがけを生ずる切土

(定義2) 高さ1mを超えるがけを生ずる盛土

(定義3) 切土盛土を同時にする場合で2mを超えるがけを生ずるもの〔正確には,この中で,盛土をした土地の部分に高さが1m以下のがけを生ずるもの〕

(定義4) (1)〜(3)に該当しなくても,土地の面積が500平方メートルを超えるもの

●許可の要否の判定問題の解法
1.土地の形質変更の目的『宅地→宅地以外』,『宅地以外→宅地以外』は許可不要
        ↓ 
2.〔宅地以外→宅地〕,〔宅地→宅地〕のとき 土地の形質変更の規模 面積⇒高さ 

  ・高さ2mを超えるがけを生ずる切土
  ・高さ1mを超えるがけを生ずる盛土
  ・切土盛土を同時にする場合で2mを超えるがけを生ずるもの
  ・土地の面積500平方メートルを超えるもの

3.「新たに指定された規制区域内において,指定の前にすでに着手されていた宅地造成に関する工事については,その造成主はその指定があった日から21日以内に,都道府県知事の許可を受けなければならない。」

【正解:×昭和55年,57年,59年,62年,63年平成7年15年

◆規制区域指定の際に現に行われている宅地造成→指定後21日以内に届出

  ポイント : 許可ではなく届出,指定後21日以内

 規制区域の指定の際に,現に行われている宅地造成工事の造成主は,その指定があった日から21日以内に,都道府県知事にその旨を届け出なければならない。(15条1項)

ある日突然規制区域の指定があるわけではなく,規制区域指定の前には都道府県知事によって公示され,関係市町村にも通知されることになっています。このため,指定の前に駆け込みで宅地造成をしようとする人が出てくるので,このような措置が設けられています。届出によって宅地造成したのがチェックできるからです。

4.「規制区域内の宅地造成に関する工事の検査済証が交付された後,宅地造成に伴う災害防止上の必要性が認められるときは,都道府県知事は宅地の所有者に対して,当該宅地の使用を禁止又は制限をすることができる。 」

【正解:×完了検査の出題:昭和62年,平成元年,7年,8年

◆完了検査

 検査済証が交付されたということは,その宅地造成工事が所定の技術的基準に適合していることを意味するので,宅地の使用を禁止又は制限を受けることはありません。

完了検査

 造成主は,許可を受けた宅地造成工事が完了したとき,政令で定める技術的基準に従い災害を防止するための必要な措置が講じられているかどうかについて,国土交通省令で定めるところにより,都道府県知事の検査を受けなければいけません。(13条1項)

検査済証

 都道府県知事は,検査の結果工事が技術的基準に適合していると認めた場合は,国土交通省令で定める様式の検査済証を造成主に交付しなければなりません。(13条2項)


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