法令上の制限 実戦篇
宅地造成等規制法の過去問アーカイブス 平成17年・問24
宅地造成等規制法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。なお、この問における都道府県知事とは、地方自治法に基づく指定都市、中核市及び特例市にあっては、その長をいうものとする。(平成17年・問24) |
1.「国土交通大臣は、都道府県知事の申出に基づき、宅地造成に伴い災害が生ずるおそれの大きい市街地及び市街地となろうとする土地の区域であって,宅地造成に関する工事について規制を行う必要があるものについて、宅地造成工事規制区域として指定することができる。」 |
2.「宅地造成工事規制区域内において行われる宅地造成に関する工事は、擁壁、排水施設又は消防の用に供する貯水施設の設置その他宅地造成に伴う災害の発生を防止するため必要な措置が講じられたものでなければならない。」 |
3.「造成主は、宅地造成等規制法第8条第1項の許可を受けた宅地造成に関する工事を完了した場合、都道府県知事の検査を受けなければならないが、その前に建築物の建築を行おうとする場合、あらかじめ都道府県知事の同意を得なければならない。」 |
4.「都道府県知事は、宅地造成工事規制区域内の宅地で、宅地造成に伴う災害の防止のたる必要な擁壁が設置されていないため、これを放置するときは宅地造成に伴う災害の発生のおそれが大きいと認められるものがある場合、一定の限度のもとに当該宅地の所有者以外の者に対しても擁壁の設置のための工事を行うことを命ずることができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
1.「国土交通大臣は、都道府県知事の申出に基づき、宅地造成に伴い災害が生ずるおそれの大きい市街地及び市街地となろうとする土地の区域であって,宅地造成に関する工事について規制を行う必要があるものについて、宅地造成工事規制区域として指定することができる。」 |
【正解:×】 ◆宅地造成工事規制区域の指定−都道府県知事 宅地造成工事規制区域は,都道府県知事 (又は指定都市等の長。以下,同じ。)が定めるので誤り。 なお,宅地造成工事規制区域は,<宅地造成に伴い災害が生ずるおそれの大きい市街地及び市街地となろうとする土地の区域であって,宅地造成に関する工事について規制を行う必要があるもの>に指定するという後半部分の記述は正しい(宅地造成等規制法・3条1項)。 |
2.「宅地造成工事規制区域内において行われる宅地造成に関する工事は、擁壁、排水施設又は消防の用に供する貯水施設の設置その他宅地造成に伴う災害の発生を防止するため必要な措置が講じられたものでなければならない。」 |
【正解:×】昭和59年・問25・肢4,平成17年・問24・肢2, ◆宅地造成に関する工事の技術的基準等 宅地造成工事規制区域内において行なわれる宅地造成に関する工事は,政令で定める技術的基準に従い,擁壁,排水施設その他の政令で定める施設の設置その他宅地造成に伴う災害を防止するため必要な措置が講ぜられたものでなければならない(宅地造成等規制法・9条1項)。 消防の用に供する貯水施設の設置は,宅地造成に伴う災害とは関係ないのだから,災害の防止のため必要な措置の中には入っておらず,誤りであることはすぐわかる。 ▼9条1項の規定により講ずべきものとされる措置のうち政令で定めるものの工事<高さが5mを超える擁壁の設置,切土・盛土をする土地の面積が1,500平方メートルを超える土地における排水施設の設置>は,政令で定める資格を有する者の設計によらなければならない(宅地造成等規制法・9条2項,施行令17条)。 |
●宅地造成等規制法9条 |
(宅地造成に関する工事の技術的基準等)
第9条 宅地造成工事規制区域内において行われる宅地造成に関する工事は、政令(その政令で都道府県の規則に委任した事項に関しては、その規則を含む。)で定める技術的基準に従い、擁壁、排水施設その他の政令で定める施設(以下「擁壁等」という。)の設置その他宅地造成に伴う災害を防止するため必要な措置が講ぜられたものでなければならない。 2 前項の規定により講ずべきものとされる措置のうち政令(同項の政令で都道府県の規則に委任した事項に関しては、その規則を含む。)で定めるものの工事は、政令で定める資格を有する者の設計によらなければならない。 |
●施行令4条
第4条 法第9条第1項(法第12条第3項において準用する場合を含む。以下同じ。)の政令で定める施設は、擁壁、排水施設及び地滑り抑止ぐい並びにグラウンドアンカーその他の土留とする。 |
●宅地の保全義務 |
宅地造成工事規制区域内の宅地の所有者・管理者・占有者は,宅地造成(宅地造成工事規制区域の指定前に行なわれたものを含む。)に伴う災害が生じないよう,その宅地を常時安全な状態に維持するように努めなければならない(宅地造成等規制法・16条1項)。 都道府県知事は,宅地造成工事規制区域内の宅地について,宅地造成に伴う災害の防止のため必要があると認める場合には,その宅地の所有者・管理者・占有者等に対し,擁壁又は排水施設の設置又は改造その他宅地造成に伴う災害の防止のため必要な措置をとることを勧告することができる(宅地造成等規制法・16条2項)。 |
3.「造成主は、宅地造成等規制法第8条第1項の許可を受けた宅地造成に関する工事を完了した場合、都道府県知事の検査を受けなければならないが、その前に建築物の建築を行おうとする場合、あらかじめ都道府県知事の同意を得なければならない。」 |
【正解:×】 ◆工事完了検査前の建築行為 造成主は,宅地造成等規制法第8条第1項の許可を受けた宅地造成に関する工事を完了した場合,宅地造成に関する工事の技術的基準等に適合しているかどうかについて,都道府県知事の検査を受けなければならない(宅地造成等規制法・13条1項,9条1項)。 その検査の前に建築物の建築を行おうとする場合,あらかじめ都道府県知事の同意を得なければならないとする規定は宅地造成等規制法にはない。 |
4.「都道府県知事は、宅地造成工事規制区域内の宅地で、宅地造成に伴う災害の防止のたる必要な擁壁が設置されていないため、これを放置するときは宅地造成に伴う災害の発生のおそれが大きいと認められるものがある場合、一定の限度のもとに当該宅地の所有者以外の者に対しても擁壁の設置のための工事を行うことを命ずることができる。」 |
【正解:○】 ◆改善命令 本肢では,当該宅地の所有者以外の者に対しても擁壁の設置のための工事を行うことを命ずることができるというのがポイント。災害防止のためには,所有者以外の者にも命令することができるようにしておかないと実効性が薄いということを理解しておけば,本肢が正しいことがわかる。 都道府県知事は,宅地造成工事規制区域内の宅地で,宅地造成に伴う災害の防止のため必要な擁壁又は排水施設が設置されていないか又はきわめて不完全であるために,これを放置するときは,宅地造成に伴う災害の発生のおそれが大きいと認められるものがある場合に,その著しいおそれを除去するため必要であり,かつ,土地の利用状況等からみて相当であると認められる限度において,当該宅地・擁壁・排水施設の所有者,管理者又は占有者に対し,相当の猶予期限をつけて,擁壁・排水施設の設置・改造又は地形の改良のための工事を行なうことを命ずることができる(宅地造成等規制法・17条1項)。 【関連出題歴】昭和52年・肢3,平成6年・問25・肢4, |
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