法令上の制限 実戦篇

宅地造成等規制法の過去問アーカイブス 平成2年・問25


宅地造成等規制法に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。なお,この問における都道府県知事とは,指定都市,中核市又は特例市にあっては,指定都市,中核市又は特例市の長をいうものとする。(平成2年・問25)

1.「本法にいう宅地には,工場用地が含まれる。」

2.「本法にいう宅地造成には,宅地において行う盛土で,盛土をする土地の面積が500平方メートルを超えるものが含まれる。

3.「都道府県知事は,宅地造成規制区域内において,許可を受けないで宅地造成工事が行われているときは,いつでも直ちに,当該造成主に対して,工事の施行の停止を命ずることができる。」

4.「都道府県知事は,宅地造成工事規制区域内の宅地について,宅地造成に伴う災害の防止のため必要な措置をとることを勧告することができる。」

【正解】

×

1.「本法にいう宅地には,工場用地が含まれる。」

【正解:平成2年,4年,5年

◆宅地の定義

 宅地造成等規制法でいう「宅地」とは,「農地,採草放牧地,森林,道路・公園・河川その他政令で定める公共施設の用に供せられている土地」以外の土地をいいます。(2条1号)

 工場用地はこれに該当し,「宅地造成等規制法での宅地」です。

 「宅地造成等規制法での宅地」は必ずしも建物の敷地に供せられる土地とは限らないことに注意しましょう。

政令で定める公共施設(施行令2条,施行規則1条)

災害防止〔砂防設備,地すべり防止施設,海岸保全施設〕
交通〔港湾施設,飛行場,鉄道施設〕
国又は地方公共団体が管理する学校,運動場,緑地,広場,墓地,
                      水道及び下水道

 これまで過去問で出題された非・宅地の具体例としては,次のようなものがあります。
・農地(50,)果樹園(5)
・森林(50,9)
・公園(50,53,9)

これまで過去問で出題された宅地の具体例
・私営の墓地(53,)宗教法人が建設する墓地(5)
・私立高校(5)
・ゴルフ場(5)
・工場用地(2)

 

2.「本法にいう宅地造成には,宅地において行う盛土で,盛土をする土地の面積が500平方メートルを超えるものが含まれる。

【正解:昭和58年,平成2年,9年,15年,16年

◆切土または盛土で面積が500平方メートルを超えるもの・・・(定義4)

 宅地における形質変更で,切土・盛土で生ずる高さには関係なく,形質変更〔切土or盛土〕する土地の面積が500平方メートルを超えていれば,それだけで宅地造成に該当します。(施行令2条4号)

 「宅地造成」とは,以下の要件を満たす「土地の形質の変更」の一部です。

●宅地造成の定義
 【公式i】〔宅地以外→宅地〕宅地以外の土地を宅地にするため
 行う土地の形質の変更政令に定める一定規模を超えるもの(2条2号)

 【公式ii】 〔宅地→宅地〕宅地において
 行う土地の形質の変更政令に定める一定規模を超えるもの(2条2号)
 〔形質の変更後も宅地であるものに限る。〕

<注意点>宅地造成にならないもの
 → 【系1】宅地を宅地以外のものにするために行うものは宅地造成ではない。
    (『宅地→宅地以外』,『宅地以外→宅地以外』は宅地造成ではない。)

 → 【系2】〔宅地以外→宅地〕又は〔宅地→宅地〕の形質の変更であっても,
       一定規模を下回るものは宅地造成ではない

●一定規模を超える形質の変更とはどのようなものか−施行令3条
(定義1) 高さ2mを超えるがけを生ずる切土

(定義2) 高さ1mを超えるがけを生ずる盛土

(定義3) 切土盛土を同時にする場合で2mを超えるがけを生ずるもの〔正確には,この中で,盛土をした土地の部分に高さが1m以下のがけを生ずるもの〕

(定義4) (1)〜(3)に該当しなくても,土地の面積が500平方メートルを超えるもの

3.「都道府県知事は,宅地造成規制区域内において,許可を受けないで宅地造成工事が行われているときは,いつでも直ちに,当該造成主に対して,工事の施行の停止を命ずることができる。」

【正解:×昭和56年,60年,平成2年

◆工事の施行停止は,例外的に,緊急の場合は,あらかじめ弁明の機会を与えなくても命じることができる

一般に,行政庁が不利益処分をする場合には,原則として,聴聞〔許認可の取消等〕や弁明の機会の付与の手続を執らなければいけません。(行政手続法13条)これは宅地造成等規制法にも当てはまります。しかし,宅地造成工事について工事の停止を命じる場合には,例外的に,緊急の場合は,弁明の機会を付与しなくても命じることができるという規定があります。(14条4項)

 都道府県知事〔又は指定都市等の長〕は,規制区域内で行われている宅地造成工事について,下記の場合において,造成主・工事請負人〔下請人も含む〕・現場管理者に対して,あらかじめ弁明の機会を付与した上で(行政手続法13条1項2号),当該工事の施行の停止を命じ,又は相当の猶予期限をつけて,擁壁・排水施設の設置その他災害防止のため必要な措置をとることを命ずることができます。

 ・許可を受けていないとき
 ・許可の条件に違反して工事が行われているとき
 ・技術的基準に従わず,災害防止のため必要な措置が講じられていない

 緊急のときは例外的な措置として「直ちに工事施行停止を命じる」ことはできますが,工事停止命令は原則としてあらかじめ弁明の機会を付与した上で行わなければならないので「いつでも直ちに」ではありません。(14条2項,4項,行政手続法13条1項2号,同2項1号,同2項3号)

緊急の場合に,造成主・工事請負人〔下請人も含む〕・現場管理者が現場にいないときには,当該工事に従事している者に対して工事作業の停止を命じることができます。(14条2項,4項)

●行政手続法13条1項
行政庁は,不利益処分をしようとする場合には,当該不利益処分の名あて人となるべき者について,意見陳述のための手続を執らなければならない。
(1) 許認可の取消等 → 聴聞
(2) 許認可の取消等以外の不利益処分 → 弁明の機会の付与

4.「都道府県知事は,宅地造成工事規制区域内の宅地について,宅地造成に伴う災害の防止のため必要な措置をとることを勧告することができる。」

【正解:昭和55年,58年,平成2年

◆保全のために必要な措置をとることの勧告

 都道府県知事〔又は指定都市等の長〕は,規制区域内の宅地について,宅地造成に伴う災害防止のために必要があると認めるときは,その宅地所有者・管理者・占有者に対して(昭和58年出題),擁壁・排水施設の設置・改造その他災害防止のため必要な措置をとることを勧告することができます。(16条2項)

 規制区域の指定前に宅地造成が行われた宅地についても,都道府県知事は勧告することができることに注意してください。(昭和55年出題)

この場合の勧告は法律的に拘束されるものではなく,従わなかった場合に刑罰が課されることはありませんが,状況によっては,改善命令が出されることがあります。

●宅地の保全の勧告・改善命令のポイント

 ・誰に対して・・・〔勧告宅地の所有者・管理者・占有者,
            改善命令は,宅地・擁壁・排水施設の所有者・管理者・占有者,〕
 ・どんな土地について・・・〔規制区域内の宅地,いつ宅地造成したのかは関係ない
勧告または命じることができるか,チェックする。


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