法令上の制限 基礎編
宅地造成等規制法の基本
§9 宅地造成工事規制区域内での保全義務等 ・ 造成宅地防災区域
宅地の保全義務(16条1項),保全のための勧告(16条2項),改善命令(17条),報告の徴取(19条)
次のそれぞれの記述は,宅地造成等規制法の規定によれば○か,×か。なお,本問における都道府県知事とは,指定都市,中核市又は特例市にあっては,指定都市,中核市又は特例市の長をいうものとする。 |
1.「宅地造成工事規制区域内の宅地の所有者,管理者又は占有者は,宅地造成に伴う災害が生じないよう,その宅地を常時安全な状態に維持するように努めなければならない。」63-26-2 |
2.「都道府県知事は,宅地造成工事規制区域内の宅地について,宅地造成に伴う災害の防止のため必要な措置をとることを勧告することができる。」2-25-4 |
3.「宅地造成工事規制区域内の宅地を購入した者は,宅地造成に伴う災害の防止のため,都道府県知事から,必要な措置をとるよう勧告を受けることがあるほか,擁壁の改善等の工事を行うことを命ぜられることがある。」6-25-4 |
4.「都道府県知事は,規制区域内の宅地の所有者等に対して,当該宅地又は当該宅地において行われている工事の状況について報告を求めることができる。」7-25-3 |
●宅地の保全の勧告・改善命令のポイント |
・誰に対して・・・〔勧告は宅地の所有者・管理者・占有者, |
●勧告 | ||
どんな場合か | 誰が勧告を受けるか | 勧告の内容は? |
災害防止のため
必要と認めるとき |
宅地の
所有者・管理者・占有者 |
擁壁・排水施設の設置・改造 etc災害防止に必要な措置 |
※保全義務があるのは,勧告を受ける者と同じ。
●改善命令 | ||
どんな場合か | 誰が改善命令を受けるか | 改善命令の内容は? |
擁壁・排水施設の 未設置・不完全で 放置すると災害発生 のおそれが著しいとき |
宅地・擁壁・排水施設の
所有者・管理者・占有者 |
相当の猶予期限をつけて 擁壁・排水施設の設置・改造, |
●規制区域内の宅地の所有者・管理者・占有者 |
・災害を生じないように常時安全な状態を維持する努力義務〔保全義務等〕(16条1項) ・災害防止のための必要な措置をとることについて知事から勧告されることがある。〔勧告〕(16条2項) ・擁壁・排水施設の設置・改造や土地の改良のための工事を知事から命ぜられることがある。〔改善命令〕(17条1項)→宅地・擁壁・排水施設の 所有者・管理者・占有者 ・当該宅地又は当該宅地において行われている工事の状況について報告を求められることがある。〔報告の徴取〕(19条) ※このほか,知事などが必要があると認めたときは立入検査をすることがある。〔立入検査〕(18条1項) |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | ○ | ○ | ○ |
1.「宅地造成工事規制区域内の宅地の所有者,管理者又は占有者は,宅地造成に伴う災害が生じないよう,その宅地を常時安全な状態に維持するように努めなければならない。」63-26-2 |
【正解:○】昭和60年,63年,平成3年,7年,15年 ◆保全義務 規制区域内の宅地の所有者・管理者・占有者は,宅地造成に伴う災害が生じないよう,その宅地を常時安全な状態に維持するよう努めなければいけません。(16条1項) ここでいう宅地造成とは,規制区域の指定前に行われたものも含まれており(平成7年出題),いつ行われた宅地造成であってもそれに伴う災害が生じないように努める義務があります。(昭和60年出題) 宅地造成した後に所有者が替わってもこのことに変わりはなく,前の地主がしたことだからと保全について何もしなくてもいいということではありません。(平成15年出題) ただし,「規制区域内の土地」であっても「宅地ではないもの」(平成3年出題)や「規制区域外の土地」については,この保全義務はありません。
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●類題−出題のヴァリエーション |
1.「宅地造成工事規制区域内においては,宅地以外の土地の所有者,管理者又は占有者も,造成工事に伴う災害が生じないよう,その土地を常時安全な状態に維持するように努めなければならない。」3-25-3 |
【正解 :×】 |
2.「規制区域内で過去に宅地造成に関する工事が行われ,現在は造成主とは異なる者がその工事が行われた宅地を所有している場合,当該宅地の所有者は災害が生じないようその宅地を常時安全な状態に維持するよう努める必要はない。」15-24-1 |
【正解 :×】現在の所有者が造成主でない場合でも,保全義務があります。 |
3.「規制区域の宅地の所有者等は,当該区域の指定前に行われた宅地造成についても,それに伴う災害が生じないよう,その宅地を常時安全な状態に維持するように努めなければならない。」7-25-2 |
【正解 :○】 |
4.「宅地造成工事規制区域内の宅地の所有者は,その宅地が宅地造成工事規制区域の指定以前に宅地造成されたものである場合を除き,宅地を常時安全な状態に維持するよう努めなければならない。」60-24-3 |
【正解 :×】指定以前に造成された宅地であっても保全義務があるので×。 |
5.「宅地造成工事規制区域外であっても,都市計画区域内の宅地所有者は,宅地造成に伴う災害が生じないよう,その宅地を常時安全な状態に維持するよう努めなければいけない。」(不動産鑑定士・平成11年) |
【正解 :×】宅地造成工事規制区域外は宅地であっても対象外なので×。 |
2.「都道府県知事は,宅地造成工事規制区域内の宅地について,宅地造成に伴う災害の防止のため必要な措置をとることを勧告することができる。」2-25-4 |
【正解:○】昭和55年,58年,平成2年 ◆保全のために必要な措置をとることの勧告 都道府県知事〔又は指定都市等の長〕は,規制区域内の宅地について,宅地造成に伴う災害防止のために必要があると認めるときは,その宅地の所有者・管理者・占有者に対して(昭和58年出題),擁壁・排水施設の設置・改造その他災害防止のため必要な措置をとることを勧告することができます。(16条2項) 規制区域の指定前に宅地造成が行われた宅地についても,都道府県知事は勧告することができることに注意してください。(昭和55年出題) ▼この場合の勧告は法律的に拘束されるものではなく,従わなかった場合に刑罰が課されることはありませんが,状況によっては,設問3の改善命令が出されることがあります。 |
●類題 |
1.「都道府県知事が,宅地造成工事規制区域内の宅地について宅地造成に伴う災害の防止のため必要があると認める場合において必要な措置を勧告することができるのは,その宅地の所有者に限られる。」58-25-1 |
【正解 :×】宅地の所有者だけではなく,管理者・占有者に対しても勧告することができます。 |
2.「宅地造成工事規制区域の指定前に,宅地造成に関する工事が行われた宅地については,都道府県知事の勧告を受けることはない。」55-23-3 |
【正解 :×】 |
3.「宅地造成工事規制区域の指定前に造成工事を完了した宅地であっても,擁壁の設置が不完全な場合には,都道府県知事〔又は指定都市等の市長〕から改造の勧告を受けることがある。」(昭和49年) |
【正解 :○】 |
4.「都道府県知事は、宅地造成工事規制区域内の宅地について、宅地造成に伴う災害の防止のため必要があると認める場合においては、宅地の所有者に対し、擁壁の設置等の措置をとることを勧告することができる。」18-23-4 |
【正解 :○】 |
3.「宅地造成工事規制区域内の宅地を購入した者は,宅地造成に伴う災害の防止のため,都道府県知事から,必要な措置をとるよう勧告を受けることがあるほか,擁壁の改善等の工事を行うことを命ぜられることがある。」6-25-4 |
【正解:○】 ◆改善命令,必要な措置 都道府県知事〔又は指定都市等の長〕は,規制区域内の宅地で, 災害防止のため必要な擁壁・排水施設が設置されていないか又は不完全であるために,放置すると災害の発生するおそれが著しいものがある場合は, その著しい恐れを除去するため必要であり,かつ,土地の利用状況等から見て相当であると認められる限度において, その宅地・擁壁・排水施設の所有者・管理者・占有者に対して, 相当の猶予期限をつけて,擁壁・排水施設の設置・改造又は地形改良のための工事を行うことを命じることができます。(17条1項) |
●類題 |
1.「都道府県知事は,宅地造成工事規制区域内の土地について,宅地造成工事規制区域の指定以前に宅地造成が行われた場合には,擁壁又は排水施設の設置を命ずることはできない。」(昭和52年) |
【正解 :×】規制区域の指定以前に造成された宅地でも命じられることがあるので×。 |
2.「都道府県知事は、宅地造成工事規制区域内の宅地で、宅地造成に伴う災害の防止のたる必要な擁壁が設置されていないため、これを放置するときは宅地造成に伴う災害の発生のおそれが著しいものがある場合、一定の限度のもとに当該宅地の所有者以外の者に対しても擁壁の設置のための工事を行うことを命ずることができる。」17-24-4 |
【正解 :○】 |
4.「都道府県知事は,規制区域内の宅地の所有者等に対して,当該宅地又は当該宅地において行われている工事の状況について報告を求めることができる。」7-25-3 |
【正解:○】 ◆報告の徴取 都道府県知事〔又は指定都市等の長〕は,規制区域内の宅地の所有者・管理者・占有者に対して,当該宅地又は当該宅地において行われている工事の状況について報告を求めることができます。(19条) |
●報告の徴取−施行令の抜粋 |
第22条 法第19条 の規定により都道府県知事〔又は指定都市・中核市・特例市の長〕が報告を求めることができる事項は,次の各号に掲げるものとする。 一 宅地の面積及び崖の高さ,勾配その他の現況 |
●類題 |
1.「都道府県知事〔又は指定都市等の長〕は,宅地造成工事規制区域内において宅地造成に関する工事が行われている宅地の所有者,管理者又は占有者に対して,報告を求めることができるが,それ以外の者に対しては報告を求めることはできない。」(鑑定士・平成11年) |
【正解 :×】
知事等は,工事の状況だけではなく,その宅地の状況についても報告を求めることができる。したがって,『工事の行われていない宅地の所有者,管理者又は占有者』に対しても報告を求めることができるので×。 |
●造成宅地防災区域 (平成18年改正により創設) |
既存の一団の造成宅地(宅地造成工事が施行された宅地)の区域内(宅地造成工事規制区域を除く)にあり,政令で定める基準に該当する場合に,都道府県知事等が指定。その区域内で,知事などが改良工事の勧告や改善命令を出せるようにしました。(宅地造成等規制法20条)
第4章 造成宅地防災区域 第20条 都道府県知事は、この法律の目的を達成するために必要があると認めるときは、関係市町村長の意見を聴いて、宅地造成に伴う災害で相当数の居住者その他の者に危害を生ずるものの発生のおそれが大きい一団の造成宅地(これに附帯する道路その他の土地を含み、宅地造成工事規制区域内の土地を除く。)の区域であつて政令で定める基準に該当するものを、造成宅地防災区域として指定することができる。 2 都道府県知事は、擁壁等の設置又は改造その他前項の災害の防止のため必要な措置を講ずることにより、造成宅地防災区域の全部又は一部について同項の指定の事由がなくなつたと認めるときは、当該造成宅地防災区域の全部又は一部について同項の指定を解除するものとする。 3 第3条第2項から第4項まで及び第4条から第7条までの規定は、第1項の規定による指定及び前項の規定による指定の解除について準用する。 第5章 造成宅地防災区域内における災害の防止のための措置 (災害の防止のための措置) 2 都道府県知事は、造成宅地防災区域内の造成宅地について、前条第1項の災害の防止のため必要があると認める場合においては、その造成宅地の所有者、管理者又は占有者に対し、擁壁等の設置又は改造その他同項の災害の防止のため必要な措置をとることを勧告することができる。 (改善命令) 2 前項の場合において、同項の造成宅地又は擁壁等の所有者、管理者又は占有者(以下この項において「造成宅地所有者等」という。)以外の者の宅地造成に関する不完全な工事その他の行為によつて第20条第1項の災害の発生のおそれが生じたことが明らかであり、その行為をした者(その行為が隣地における土地の形質の変更であるときは、その土地の所有者を含む。以下この項において同じ。)に前項の工事の全部又は一部を行わせることが相当であると認められ、かつ、これを行わせることについて当該造成宅地所有者等に異議がないときは、都道府県知事は、その行為をした者に対して、同項の工事の全部又は一部を行うことを命ずることができる。 3 第14条第5項の規定は、前2項の場合について準用する。 (準用) |
●宅地造成等規制法の過去問Archives −検索用− |
昭和50年,昭和51年,昭和52年,昭和53年,昭和55年,昭和56年,昭和57年,昭和58年,昭和59年,昭和60年,昭和61年,昭和62年,昭和63年,平成元年,平成2年,平成3年,平成4年,平成5年,平成6年,平成7年,平成8年,平成9年,平成10年〜平成14年,平成15年,平成16年,平成17年, |