法令上の制限 基礎編

宅地造成等規制法 §7 宅地造成工事規制区域の許可制 (v) 監督処分

許可の取消,工事施行停止,宅地の使用禁止・制限その他災害防止のため必要な措置


次のそれぞれの記述は,宅地造成等規制法の規定によれば○か,×か。なお,本問における都道府県知事とは,指定都市,中核市又は特例市にあっては,指定都市,中核市又は特例市の長をいうものとする。

1.「偽りその他不正な手段により宅地造成に関する工事の許可を受けた場合またはその許可に付した条件に違反した場合には,その許可が取り消されることがある。」56-25-3

2.「都道府県知事は,宅地造成工事規制区域内で行われている宅地造成に関する工事で許可を受けていないものについては,その工事の請負人に対して,工事の施行の停止を命ずることができる。」60-24-2〔同56-25-1〕

3.「宅地造成工事規制区域内において,許可を受けないで造成された宅地について,当該宅地の所有者と造成主が異なる場合には,都道府県知事は,当該宅地の所有者に対して宅地の使用を禁止又は制限することはできない。」62-25-4

4.「宅地造成に関する工事の許可は受けているが,工事完了の検査を受けていない宅地については,当該宅地の所有者に対して,使用の禁止が命ぜられることがある。」56-25-2

5.「都道府県知事は,宅地造成に関する工事の完了検査の結果,工事が一定の技術的水準に適合していないと認められた宅地については,その工事の請負人に対して防災上必要な措置をとることを命ずることができる。」60-24-1〔同56-25-4〕

●監督処分のポイント

 ・誰に対して・・・〔工事中か工事後かで分かれる〕
 ・何を・・・〔工事の施行停止 or 宅地としての使用禁止・使用制限〕
 ・いつ・・・ 〔工事中か工事後か〕
命じることができるか,チェックする。

災害防止のために必要な措置は,工事中・工事後を問わず,命ずることができる。

●取消処分
 どんな場合か?  誰が処分を受けるか  監督処分の内容
 偽りその他不正な手段

 で許可を受けた

 造成主  許可の取り消し

●宅地造成工事中の監督処分
 どんな場合か?  誰が処分を受けるか  監督処分の内容
 許可を受けずに工事  造成主

 工事請負人〔下請人も含む〕

 現場管理者

 弁明の機会を付与して

 工事の施行停止命令

 許可の条件に違反  相当の猶予期限をつけて

 擁壁・排水施設設置etc
 災害防止に必要な措置

 技術的基準
 災害防止に必要な措置

●宅地造成工事完了後の監督処分
 どんな場合か?  誰が処分を受けるか  監督処分の内容
 許可を受けずに施行  宅地の

 所有者・管理者・占有者

 造成主

 宅地の使用禁止・制限
 検査を受けていない  擁壁・排水施設設置etc
 災害防止に必要な措置
 検査の結果,
 技術的基準に不適合

●行政手続法13条
第1項 行政庁は,不利益処分をしようとする場合には,当該不利益処分の名あて人となるべき者について,原則として,意見陳述のための以下の手続を執らなければならない。
(1) 許認可の取消等 → 聴聞
(2) 許認可の取消等以外の不利益処分 → 弁明の機会の付与

註 許認可の取消等以外の不利益処分でも行政庁が相当と認めるときは聴聞にすることができる。(1号エ)

第2項 前項の規定を適用しなくてもよい場合がある。〔以下のほかにもあるがこのページで関連するもの〕

・公益上緊急に不利益処分をする必要があり意見陳述の手続きが執れないとき

・施設・設備の設置,維持もしくは管理等について遵守すべき事項が法令により技術的な基準をもって明確にされている場合で,その基準が充足されていないことを理由にその基準に従うべきことを命じる不利益処分であり,その不充足が客観的な認定方法によって確認されたものをしようとするとき

【正解】

× ×

1.「偽りその他不正な手段により宅地造成に関する工事の許可を受けた場合またはその許可に付した条件に違反した場合には,その許可が取り消されることがある。」56-25-3

【正解:

◆許可の取消

 都道府県知事〔又は指定都市等の長〕は,偽りその他不正な手段によって許可を受けた者,又はその許可に附した条件に違反した者に対して,規制区域内での宅地造成工事の許可を取り消すことができます。(14条1項)

2.「都道府県知事は,宅地造成工事規制区域内で行われている宅地造成に関する工事で許可を受けていないものについては,その工事の請負人に対して,工事の施行の停止を命ずることができる。」60-24-2〔同56-25-1〕

【正解:昭和56年,60年,平成2年

◆工事の施行停止,災害防止に必要な措置

 都道府県知事〔又は指定都市等の長〕は,規制区域内で行われている宅地造成工事について,下記の場合において,造成主・工事請負人〔下請人も含む〕・現場管理者に対して,あらかじめ弁明の機会を付与した上で(行政手続法13条1項2号),当該工事の施行の停止を命じ,又は相当の猶予期限をつけて,擁壁・排水施設の設置その他災害防止のため必要な措置をとることを命ずることができます。(14条2項,4項)

 ・許可を受けていないとき
 ・許可の条件に違反して工事が行われているとき
 ・技術的基準に従わず,災害防止のため必要な措置が講じられていない

一般に,行政庁が不利益処分をする場合には,原則として,聴聞〔許認可の取消等〕や弁明の機会の付与の手続を執らなければいけません。(行政手続法13条)これは宅地造成等規制法にも当てはまります。しかし,宅地造成工事について工事の停止を命じる場合には,例外的に,緊急の場合は,弁明の機会を付与しなくても命じることができるという規定があります。(13条4項)
●行政手続法13条1項
行政庁は,不利益処分をしようとする場合には,当該不利益処分の名あて人となるべき者について,原則として,意見陳述のための以下の手続を執らなければならない。
(1) 許認可の取消等 → 聴聞
(2) 許認可の取消等以外の不利益処分 → 弁明の機会の付与

⇒ 行政手続法13条1項は,平成10年問32肢3で出題されています。

●類題
1.「都道府県知事は,宅地造成規制区域内において,許可を受けないで宅地造成工事が行われているときは,いつでも直ちに,当該造成主に対して,工事の施行の停止を命ずることができる。」2-25-3
【正解 :×

 緊急のときは例外的な措置として「直ちに工事施行停止を命じる」ことはできますが(14条4項),原則としてあらかじめ弁明の機会を付与した上で行わなければならない(行政手続法13条1項2号)ので「いつでも直ちに」ではありません。(14条2項,4項,行政手続法13条1項2号,同2項1号,同2項3号)

緊急の場合に,造成主・工事請負人〔下請人も含む〕・現場管理者が現場にいないときには,当該工事に従事している者に対して工事作業の停止を命じることができます。(14条4項)

3.「宅地造成工事規制区域内において,許可を受けないで造成された宅地について,当該宅地の所有者と造成主が異なる場合には,都道府県知事は,当該宅地の所有者に対して宅地の使用を禁止又は制限することはできない。」62-25-4

【正解:×昭和56年,60年,62年

◆宅地の使用禁止又は使用制限,災害防止に必要な措置

 都道府県知事〔又は指定都市等の長〕は,規制区域内の下記の宅地について,当該宅地の所有者・管理者・占有者・造成主に対して,当該宅地の使用禁止や使用制限,又は相当の猶予期限をつけて,擁壁・排水施設の設置その他災害防止のため必要な措置をとることを命ずることができます。(14条3項)

 ・許可を受けずに宅地造成したとき (昭和62年出題)
 ・完了検査を受けていないとき (昭和56年出題)
 ・完了検査の結果,技術的基準に適合していないとき(昭和56年,60年出題)

 このことは,宅地の所有者と造成主が異なっている場合でも変わりなく,都道府県知事は,当該宅地の所有者に対して命じることができます。

宅地の所有者と造成主が異なっているというのは,宅地造成した者が当該宅地の管理者・占有者(賃借人等)の場合が考えられます。

 宅地造成等規制法は,誰が造成した場合であっても,所有者・管理者・占有者に対して使用禁止等の処分ができるようにしました。例えば,土地の所有者が「あれは賃借人がやったことだから自分には関係ない」と言い抜けすることができないようになっているのです。人命に係ることですから,これくらい厳しくしないと災害防止の実効性がありません。

●類題
1.「都道府県知事〔又は指定都市等の市長〕の許可を受けずに造成された宅地については,使用の停止を命ぜられることがある。」(昭和49年)
【正解 :

4.「宅地造成に関する工事の許可は受けているが,工事完了の検査を受けていない宅地については,当該宅地の所有者に対して,使用の禁止が命ぜられることがある。」56-25-2

【正解:

◆宅地の使用禁止又は使用制限,災害防止に必要な措置

 都道府県知事〔又は指定都市等の長〕は,規制区域内の下記の宅地について,当該宅地の所有者・管理者・占有者・造成主に対して,当該宅地の使用禁止や使用制限,又は相当の猶予期限をつけて,擁壁・排水施設の設置その他災害防止のため必要な措置をとることを命ずることができます。(14条3項)

 ・許可を受けずに宅地造成したとき (昭和62年出題)
 ・完了検査を受けていないとき (昭和56年出題)
 ・完了検査の結果,技術的基準に適合していないとき(昭和56年,60年出題)

5.「都道府県知事は,宅地造成に関する工事の完了検査の結果,工事が一定の技術的水準に適合していないと認められた宅地については,その工事の請負人に対して防災上必要な措置をとることを命ずることができる。」60-24-1〔同56-25-4〕

【正解:×昭和56年,60年

◆宅地の使用禁止又は使用制限,災害防止に必要な措置

 本肢では,「その工事の請負人に対して命ずる」となっているので×です。

 工事中ならば工事の請負人に命ずることはできますが(14条2項),完了検査があったということはすでに工事が終わっていることを意味するので,×だということはすぐわかります。

 都道府県知事〔又は指定都市等の長〕は,規制区域内の下記の宅地について,当該宅地の所有者・管理者・占有者・造成主に対して,当該宅地の使用禁止や使用制限,又は相当の猶予期限をつけて,擁壁・排水施設の設置その他災害防止のため必要な措置をとることを命ずることができます。(14条3項)

 ・許可を受けずに宅地造成したとき (昭和62年出題)
 ・完了検査を受けていないとき (昭和56年出題)
 ・完了検査の結果,技術的基準に適合していないとき(昭和56年,60年出題)


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