法令上の制限 実戦篇

宅地造成等規制法の過去問アーカイブス 昭和62年・問25


宅地造成等規制法に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。なお,本問における都道府県知事とは,指定都市,中核市又は特例市にあっては,指定都市,中核市又は特例市の長をいうものとする。(昭和62年・問25)

1.「宅地造成工事規制区域が指定された際に,すでに着手している宅地造成に関する工事について,都道府県知事の許可を受けなければならない。」

2.「宅地造成工事規制区域内において,許可を受けて行った宅地造成に関する工事を完了したときは,造成主は,都道府県知事の検査を受けなければならない。」

3.「宅地造成工事規制区域内において,宅地を宅地以外の土地にするため行う土地の形質の変更を伴う工事は,都道府県知事の許可を受けなければならない。」

4.「宅地造成工事規制区域内において,許可を受けないで造成された宅地について,当該宅地の所有者と造成主が異なる場合には,都道府県知事は,当該宅地の所有者に対して宅地の使用を禁止又は制限することはできない。」

【正解】

× × ×

1.「宅地造成工事規制区域が指定された際に,すでに着手している宅地造成に関する工事について,都道府県知事の許可を受けなければならない。」

【正解:×昭和55年,57年,59年,62年,63年平成7年15年

◆規制区域指定の際に現に行われている宅地造成→指定後21日以内に届出

  ポイント : 許可ではなく届出,指定後21日以内

 規制区域の指定の際に,現に行われている宅地造成工事の造成主は,その指定があった日から21日以内に,都道府県知事にその旨を届け出なければならない。(15条1項)

ある日突然規制区域の指定があるわけではなく,規制区域指定の前には都道府県知事によって公示され,関係市町村にも通知されることになっています。このため,指定の前に駆け込みで宅地造成をしようとする人が出てくるので,このような措置が設けられています。届出によって宅地造成したのがチェックできるからです。

2.「宅地造成工事規制区域内において,許可を受けて行った宅地造成に関する工事を完了したときは,造成主は,都道府県知事の検査を受けなければならない。」

【正解:昭和62,平成元年,6年,7年,8年

◆完了検査

 造成主は,許可を受けた宅地造成工事が完了したとき,政令で定める技術的基準に従い災害を防止するための必要な措置が講じられているかどうかについて,国土交通省令で定めるところにより,都道府県知事の検査を受けなければいけません。(13条1項)

検査済証

 都道府県知事は,検査の結果工事が技術的基準に適合していると認めた場合は,国土交通省令で定める様式の検査済証を造成主に交付しなければなりません。(13条2項)

3.「宅地造成工事規制区域内において,宅地を宅地以外の土地にするため行う土地の形質の変更を伴う工事は,都道府県知事の許可を受けなければならない。」

【正解:×昭和62年,平成元年

◆宅地→宅地以外にするための形質の変更は許可は要らない

 「土地の形質の変更」の中の一部が「宅地造成」です。

 「土地の形質の変更」であっても,<『宅地→宅地以外』,『宅地以外→宅地以外』>や<一定規模以下のもの>は宅地造成ではありません

 本肢では,≪宅地を宅地以外の土地にするため行う土地の形質の変更を伴う工事≫なので,都道府県知事の許可を受ける必要はありません。

 公式
 規模には関係なく,<● → 宅地以外> は宅地造成にはならない

 一定規模以下のもの宅地造成にはならない

4.「宅地造成工事規制区域内において,許可を受けないで造成された宅地について,当該宅地の所有者と造成主が異なる場合には,都道府県知事は,当該宅地の所有者に対して宅地の使用を禁止又は制限することはできない。」

【正解:×昭和56年,60年,62年

◆宅地の使用禁止又は使用制限,災害防止に必要な措置

 都道府県知事〔又は指定都市等の長〕は,規制区域内の下記の宅地について,当該宅地の所有者・管理者・占有者・造成主に対して,当該宅地の使用禁止や使用制限,又は相当の猶予期限をつけて,擁壁・排水施設の設置その他災害防止のため必要な措置をとることを命ずることができます。(14条3項)

 ・許可を受けずに宅地造成したとき (昭和62年出題)
 ・完了検査を受けていないとき (昭和56年出題)
 ・完了検査の結果,技術的基準に適合していないとき(昭和56年,60年出題)

 このことは,宅地の所有者と造成主が異なっている場合でも変わりなく,都道府県知事は,当該宅地の所有者に対して命じることができます。

宅地の所有者と造成主が異なっているというのは,宅地造成した者が当該宅地の管理者・占有者(賃借人等)の場合が考えられます。

 宅地造成等規制法は,誰が造成した場合であっても,所有者・管理者・占有者に対して使用禁止等の処分ができるようにしました。例えば,土地の所有者が「あれは賃借人がやったことだから自分には関係ない」と言い抜けすることができないようになっているのです。人命に係ることですから,これくらい厳しくしないと災害防止の実効性がありません。


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