Brush Up! 権利の変動篇
抵当権の基本確認3 抵当権設定者
正解・解説
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
× | × | × | ○ | × |
抵当権に関する次の記述は、民法の規定及び判例によれば、○か、×か。 |
1.「抵当権者の同意がなければ、抵当権の目的物を譲渡することはできない。」
【正解:×】昭和57,62,平成6年
抵当権設定者は、抵当権を設定した後も抵当不動産を自由に使用・収益・処分することができます。抵当不動産の譲渡(処分)も抵当権者の同意を得る必要はありません。 |
2.「Aがその所有する建物を担保としてBから借り入れ、Bの抵当権設定の登記をした後、
Cにその建物を期間3年で賃貸する契約をCと締結した。この場合、Aは、あらかじめ
Bの同意を得ておかなければならない。」(H5-9-1)
【正解:×】
抵当権設定者は、抵当権を設定した後も抵当不動産を使用・収益・処分することができます。抵当不動産の賃貸も抵当権者の同意を得る必要はありません。 しかし、Cはその賃借権を登記して、その登記について抵当権者全員が同意してその同意の登記がないと、抵当権者や競売での買受人に対して賃借権を対抗することができません。(387条) |
3.「更地に抵当権を設定すると、当該更地の上に建物を建築することはできない。」
【正解:×】昭和57
抵当権設定者は、抵当権を設定した後も抵当不動産を自由に使用・収益・処分することができます。抵当土地の上に建物を建築するについても抵当権者の同意を得る必要はありません。→ 参照・競売・一括競売 |
●参考問題 |
1.「Aは,Bに対し,自己所有の土地に抵当権を設定した後その土地上に建物を建築した。Bは,Aに対し,抵当権に基づきその建物の収去を請求することはできない。」(司法書士・昭和62-8-1) |
【正解:○】 |
4. 「AはBに対して100万円の貸金債権を有している。Cが自己所有の不動産にAの債権
の担保として抵当権を設定(物上保証)している場合、Cは、Aの債権の消滅時効を援用
してAに抵当権の抹消を求めることができる。」(H9-4-3)
【正解:○】
A(Bに貸金債権。Cの不動産の抵当権者) ↓ ↓ B(債務者) C(Bの物上保証人) 被担保債権の消滅時効が完成したときには、物上保証人もこれを援用することにより、抵当権の消滅を主張できます。(最高裁・昭和43.9.23) したがって、CはAに抵当権の抹消を求めることができます。 |
●参考問題 |
1.「債務者の所有物に抵当権を設定する場合は、債権者と債務者で抵当権設定契約を
行うが、第三者(物上保証人)の所有物に抵当権を設定する場合は、債権者と債務者と 第三者の3人で抵当権設定契約を行わなければならない。」 |
【正解:×】 「債権者と債務者」以外の第三者(物上保証人)の所有物に抵当権を設定する場合は、債権者と第三者(物上保証人)の間で、抵当権設定契約を行います。 |
●物上保証人−求償権 | ||||
被担保債権の債務者ではなく、第三者が抵当権設定者になった場合は、その抵当権設定者を『物上保証人』と言います。(質権でも「物上保証人による設定」が可能です。)
物上保証人は、抵当権の被担保債権の債務自体を負うのではないと解されていますが、債務者が債務を履行しない場合には、抵当権の実行によって、抵当権の目的物の所有権を失うという不利益や責任を負担することになります。 このため、物上保証人が「抵当権の実行としての競売」(担保不動産競売)によってその所有権を失ったり、抵当権の実行を免れるために自ら被担保債権の債務を弁済 (第三者弁済) をしたときには、債務者に対して求償することができます。(民法372条による351条の読み替え準用) ●物上保証人の求償について
●民法372条 他人の債務を担保するため抵当権を設定した者は、その債務を弁済し、又は抵当権の実行によって質物の所有権を失ったときは、保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有する。他人の債務を担保するため抵当権を設定した者がその債務を弁済し又は抵当権の実行に因りて抵当権の目的たる不動産の所有権を失いたるときは保証債務に関する規定に従い債務者に対して求償権を有す。(民法372条による351条の読み替え準用) ●民法474条 1 債務の弁済は、第三者もすることができる。ただし、その債務の性質がこれを許さないとき、又は当事者が反対の意思を表示したときは、この限りでない。 2 利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。 |
⇒ 参考・物上保証人の法定代位 | ||||
●参考知識−〔いわゆるドクロマーク〕物上保証人の法定代位については未出題のため参考程度にしてください。
●民法500条 弁済をするについて正当な利益を有する者は、弁済によって当然に債権者に代位する。(500条) 註 正当の利益を有する者・・・連帯債務者・保証人・連帯保証人・物上保証人・ |
⇒ 参考・共同抵当での物上保証人の法定代位 |
共同抵当で,債務者Bが抵当権設定し,かつ,債務者以外のCが抵当権設定したときについて見てみましょう。(Aのほかに抵当権者や一般債権者はいないものとします。) 【例】 A(Bに貸金債権1,000万円。共同抵当権者) |
この事例では,代位は次の場合に生じます。
1) CがBの債務を第三者弁済したとき,Cは,求償権の範囲内において,債権者Aに代位する。この場合,Cは,債権者Aが不動産・甲に有していた抵当権についても代位する。 2) Aが不動産・乙について抵当権を実行して債権全額の弁済を受けた場合(共同抵当での異時配当),Cは,求償権の範囲内において,債権者Aに代位する。この場合,Cは,債権者Aが不動産・甲に有していた抵当権についても代位する。 |
5.「被担保債権が弁済により消滅しても,抵当権の登記を抹消しなければ,
抵当権設定者は,抵当権の消滅を第三者に対抗することができない。」(昭和52年)
【正解:×】
◆被担保債権の弁済により、抵当権は消滅する(附従性) 担保物権とは、本来、債権を担保するための手段であり、債権という主役の従たる存在です。このため、「被担保債権が存在しなければ担保物権も存在せず、被担保物権が消滅すれば担保物権も消滅する」と考えられています。このことを担保物権の附従性といいます。 したがって、被担保債権が弁済によって消滅すれば、抵当権も附従性によって消滅し、たとえ抵当権の登記が残っていたとしても、それは実体のない登記なので、抵当権設定者は第三者に抵当権の消滅を主張できます。 ▼判例では,抵当権の消滅について登記は不要としているものもあります。(大審院・大正9.1.29) |