Brush Up! 権利の変動篇
抵当権の基本確認6 第三取得者
正解・解説
出題歴=平成2年、4年、6年、8年、10年、11年
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
× | × | ○ | ○ | × | ○ |
第三取得者のまとめ |
▼抵当権の登記があることを知らなかったという理由では売買契約を解除することはできない。(H2,H4)
▼抵当権の登記があったとき (577条1項) 不動産の買主は、買い受けた不動産に先取特権、質権、抵当権が登記されていたときは、抵当権消滅請求(従来の『滌除てきじょ』)の手続が終わるまで、代金の支払いを拒否できる。(H2) ▼抵当権の実行の通知は要らない 抵当権者は、抵当権を実行するとき、滌除者である第三取得者にその旨を通知しなければならないという規定がありましたが廃止されました。(H6) ▼抵当権の実行による契約解除 不動産の買主は、買い受けた不動産に存する抵当権の実行によりその所有権を失った時は、買主は契約の解除および損害賠償請求ができる。担保責任(567条1項)(H8) (系)競売での費用償還請求権 抵当不動産が競落されたとき,第三取得者は抵当不動産についての必要費〔原則として全額〕・有益費〔価格の増加が現存する場合に限り,抵当権者の選択により,費やした金額or増加した価額〕を競売代金から優先的に償還を受けることができます。抵当権者や競落人にとっても利益になったものと認められるからです。(民法391条) ▼出捐の償還請求567条2項(H2、H11) 第三者弁済,代価弁済,抵当権消滅請求などで、買主が自ら金を支出して所有権を保存したときは売主の担保責任により、その出損の償還を請求することができ、また損害があれば損害賠償請求をすることができる。この場合、買主の善意・悪意は問わない。また、除斥期間の制限はない。 ▼第三取得者〔所有権の取得者〕のとる手段(H10) 被担保債権額≦不動産価額の場合によくとられる方法 1) 弁済期→第三者弁済(H4,6) 参考・第三者弁済(弁済) 〔抵当権の被担保債権を消滅させ,連動して抵当権も消滅。〕 当事者が反対しているときはできない。(H4) 2) 弁済期がまだ来ていない時期→債務の引受け 不動産価額≦被担保債権額の場合によくとられる方法 3) 代価弁済…抵当権者の請求に応じて抵当権を消滅させる。 〔代価弁済者との関係で抵当権は消滅するが,被担保債権は残存し,債権額と代価の差額は,債務者が支払うことになり,抵当権者は一般債権者になる。〕 4) 抵当権消滅請求(従来の滌除)…自ら評価額を提示してその全額を支払うことにより 〔抵当権は消滅するが,被担保債権は残存し,債権額と抵当権消滅請求の金額の差額は,債務者が支払うことになり,抵当権者は一般債権者になる。〕 5) 自ら競落人となって抵当権の付着しない所有権を獲得する。(H2) 1)〜4) で、第三取得者が自らの支出で不動産の所有権を保存したときは売主に対して自己の支出額の償還や損害賠償を請求することができます。この場合、買主の善意・悪意は問いません。(民法567条2項)(H2、H11) |
法改正により『滌除』は『抵当権消滅請求』と名称が変わり,滌除による増価競売も廃止されました。 |
AがBに対する債務の担保のためにA所有の土地に抵当権を設定し、登記をした。その後、Aはこの抵当権つきの土地をCに譲渡した。 次の記述は、民法の規定及び判例によれば、○か、×か。 |
1.「Cは、契約の際にBの抵当権が設定されていることを知らなかったときは、Bの抵当権
を実行する前においても、Aに対して、売買契約を解除することができる。」(類H2-6-1、類H4-6-3)
【正解:×】
◆抵当権設定のみでは契約解除はできない A(抵当権設定者)・・・・B(抵当権者) 抵当権が設定されている不動産の買主は、抵当権が実行され所有権を失った時には契約の解除や損害賠償請求をすることができますが、抵当権が設定されているというだけでは売主の担保責任を問うことはできず、契約の解除はできません。(民法567条1項) |
●類題 |
1.「AがBから建物所有の目的で土地を買いうける契約をしたが、AB間に担保責任に関する特約はなかった。この土地が抵当権の目的とされており、その実行の結果、Eが競落したとき、Aは、Bに対して契約を解除することができる。」(H8-8-3) |
【正解:○】 瑕疵担保責任を負わない特約は、原則として有効ですが、この免責の特約は無制限に認められるものではなく、この特約があっても、上記の民法567条1項に規定されているものまでも免れる事はできません。 |
2.「Aから抵当権つきの土地を買い取ったCは、Bの抵当権の実行に対しては、自ら競落
する以外にその所有権を保持する方法はない。」(類H10-5-4) 法改正
【正解:×】
◆第三取得者が抵当権を消滅させる方法 A(抵当権設定者)・・・・B(抵当権者) 第三取得者〔所有権の取得者〕が抵当権を消滅させる方法としては、次の五つがあります。第三取得者が「自ら競落人になる」以外にも方法はあります。 被担保債権額≦不動産価額の場合によくとられる方法 1) 弁済期→第三者弁済 当事者が反対しているときはできない。 〔抵当権の被担保債権を消滅させ,連動して抵当権も消滅。〕 2) 弁済期がまだ来ていない時期→債務の引受け 不動産価額≦被担保債権額の場合によくとられる方法 3) 代価弁済…抵当権者の提示した金額を支払うことにより抵当権を消滅させる。 〔被担保債権の債務者は,第三者が代価弁済した範囲で債務を免れるが,債務額−代価は,無担保の債務となって残る。〕 4) 抵当権消滅請求…滌除権者が自ら評価額を提示してその全額を支払うことにより 〔抵当権は消滅し,抵当権消滅請求の金額が被担保債権額に満たないときは,債務額−滌除金額は,無担保の債務となって残る。〕 5) 自ら競落人となって抵当権の付着しない所有権を獲得する。 |
3.「Aから抵当権つきの土地を買い取ったCは、AおよびBの反対の意思のないときは、
Aの債務を弁済して、抵当権を消滅させることができる。」(類H4-6-4)
【正解:○】
◆第三者弁済 A(抵当権設定者)・・・・B(抵当権者) AB間で前もって第三者の弁済を禁じる合意がなされていないならば(当事者A及びBの反対の意思表示がなければ)、Cは利害関係のある第三者なので、Aの債務を弁済して抵当権を消滅させることができます。(民法474条1項) |
●類題 |
1.「AはBから土地を購入したが,その土地にはBの債権者Cのために抵当権が設定され,登記もされていた。BがCに対して負う債務をAがBに代わって弁済するためには,Bの承諾を得なければならない。」(昭和58年・問10) |
【正解:×】 B(抵当権設定者)・・・・C(抵当権者) BC間で前もって第三者の弁済を禁じる合意がなされていないならば、Aは、利害関係のある第三者なので、債務者Bの意思に反しても第三者弁済をすることができます。(474条2項) |
4.「Aから抵当権つきの土地を買い取ったCは、抵当権の実行を免れるため、AのBに
対する債務を弁済した場合、売主の担保責任を追及して、出捐の償還を請求できる。」(類H2-6-4)
【正解:○】
◆第三者弁済 : 出捐の償還を請求 A(抵当権設定者)・・・・B(抵当権者) 第三取得者が自己の支出によってその所有権を保存したときは売主に対して自己の支出額の償還や損害賠償を請求することができます。この場合、買主の善意・悪意は問いません。(民法567条2項) 第三取得者が自己の支出(出捐といいます)によって、第三者弁済、代価弁済、抵当権消滅請求をした場合にこの償還請求をすることができます。〔売主の担保責任〕 本肢では、Cは第三者弁済をして、Aの被担保債権を消滅させているので、CはAに対して、出捐の償還を請求できます。 ▼法定代位(H6-5-4) 弁済をするにあたり正当の利益を有する者が債務を第三者弁済した場合は、その求償権をもち,債権者の有した権利を代位して行使することができます。(民法500条、474条) → 第三取得者が代価弁済・抵当権消滅請求した場合は民法567条2項の出損の償還と損害賠償の請求のみで,民法500条の法定代位はない。 → 第三取得者が第三者弁済した場合は,民法567条2項の出捐の償還と損害賠償の請求と,民法500条の法定代位とどちらを適用してもよい。 |
●参考問題 |
1.「上記の問題の設定において、DがAの連帯保証人であった場合、CがBに弁済したとき、CはAおよびDに対してBに代位することができる。」(H6-5-4) |
【正解:×】 ▼債務者に対しては債権者に代位できるが、保証人に対しては代位できない。 A(債務者,抵当権設定者) ―― C(第三取得者) 第三取得者Cは、債権者Bへの弁済により、債務者Aに対して債権者Bに代位できますが、Aの連帯保証人Dに対して債権者Bに代位することはできません。(民法501条2号) |
●類題 |
1.「AからBが建物を買い受けた(売主の担保責任についての特約はない。)AがCに設定していた抵当権の実行を免れるため、BがCに対しAの抵当債務を弁済した場合で、BがAB間の契約締結時に抵当権の存在を知っていたとき、Bは、Aに対し、損害請求はできないが、弁済額の償還請求はできる。」(H11-10-3) |
【正解:×】 ▼出損の償還請求567条2項(H2、H11) A(抵当権設定者)・・・・C(抵当権者) 代価弁済や抵当権消滅請求などで、買主が自ら支出して所有権を保存したときは売主の担保責任により、その出捐の償還を請求することができ、また損害があれば損害賠償請求をすることができます。この場合、買主の善意・悪意は問いません。 |
2.「土地について、Aを売主、Bを買主とする売買契約が成立した。その土地に抵当権が設定されているときは、Bは、悪意であっても、自ら出捐をなしてその所有権を保存したときは、一定の場合を除き、Aに対してその出損の償還を請求することができる。」(昭和60-5-3改) |
【正解:○】 ▼出損の償還請求567条2項(H2、H11) A(抵当権設定者)・・・・(抵当権者) 代価弁済や抵当権消滅請求などで、買主が自ら支出して所有権を保存したときは、買主の善意・悪意問わず、売主の担保責任により、その出損の償還を請求することができ、また損害があれば損害賠償請求をすることができます。 ▼例外−1歩先へ しかし、買主が抵当権が設定されていることをあらかじめ知っているだけでなく(悪意)、売買代金を決めるのに被担保債権の額を控除して定めた場合には、この適用はありません。 |
5.「Bが抵当権を実行した場合、Cは競落人になることができない。」(類H2-10-1)
【正解:×】
◆第三取得者も買受の申出はできる A(抵当権設定者)・・・・B(抵当権者) 第三取得者も競買人になることができます。(民法390条) ▼費用償還請求権 第三取得者と競売については次のような規定もあります。 第三取得者は抵当不動産についての必要費〔原則として全額〕・有益費〔価格の増加が現存する場合に限り,抵当権者の選択により,費やした金額or増加した価額〕を競売代金から優先的に償還を受けることができます。抵当権者や競落人にとっても利益になったものと認められるからです。(民法391条) |
●参考問題 | ||||||||
1.「Aは、BのCに対する金銭債権を担保するため、Aの所有地にBの抵当権を設定してその登記をしたが、その後その土地をDに売却し登記も移転した。Bが抵当権を実行した場合、A、C、Dは、競買人になることはできない。」(H2-10-1) | ||||||||
【正解:×】 B(抵当権者) → C(債務者) A・・物上保証人、B…抵当権者、C…債務者、D…第三取得者 民法390条では、「第三取得者も競買人になれる」としているだけで、抵当権設定者(債務者・物上保証人)は競買人になれないという規定はありません。ただ、民事執行法68条では、「債務者は買受の申し出をすることはできない」としています。 このため、買受の申出をすることができる者は次のようになります。
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2,「抵当不動産の第三取得者は,不動産競売における抵当権の目的物である不動産を買い受けることができるが,物上保証人は買い受けることができない。」(司法書士・平成13年・問11) | ||||||||
【正解:×】 |
6.「買い受けた不動産について抵当権の登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求
の手続きを終わるまで、その代金の支払を拒絶することができる。」(昭和59-10-4)
【正解:○】
◆第三取得者の代金支払拒絶権 買い受けた不動産に、先取特権、質権、抵当権の登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求の手続きを終わるまで、その代金の支払いを拒絶することができます。(民法577条1項) 買主が抵当権消滅請求する場合には、抵当権消滅請求を終えるまで代金支払拒絶権を認め、その代金から抵当権消滅請求に要した費用を差し引いて売主に支払うことができるようにすることもできます。 ▼代金の支払拒絶権が認められない場合もあります。(577条1項) ・売主が買主に対して「遅滞なく抵当権消滅請求をするように」請求したにもかかわらずしなかったとき。 ・売主が買主に対して「供託をするように」請求したにもかかわらずしなかったとき。(578条) ・当事者で担保物権による負担を考慮して代金を決定したとき(567条) |
買受けた不動産に先取特権,質権,または抵当権の登記があるときは買主は抵当権消滅請求の手続きが終わるまでその代金の支払を拒むことができる。但し,売主は買主に対して遅滞なく抵当権消滅請求を為すべき旨を請求することができる。(577条)〔登記がされていないと行使できないことに注意。〕 売主は,買主に対して代金の供託を請求することができる。(578条) |
●条文確認 |
第577条
1 買い受けた不動産について抵当権の登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求の手続が終わるまで、その代金の支払を拒むことができる。 この場合において、売主は、買主に対し、遅滞なく抵当権消滅請求をすべき旨を請求することができる。 2 前項の規定は、買い受けた不動産について先取特権又は質権の登記がある場合について準用する。 2 前項の規定は、買受けた不動産について先取特権又は質権の登記ある場合に |
●類題 |
1.「土地及び建物について、Aを売主、Bを買主とする売買契約が成立した。その土地に抵当権の登記がなされている場合は、Aから代金の支払い又は供託の請求があっても、Bは、その登記が抹消されるまで請求に応じる義務はない。」(昭和63-10-4) |
【正解:×】 A(抵当権設定者)・・・・(抵当権者) 抵当権の登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求の手続きを終わるまで、その代金の支払いを拒絶することができますが(民法577条1項)、『登記が抹消されるまで請求に応じる義務はない』とまでは言えません。 |