Brush Up! 権利の変動篇

不動産登記法の過去問アーカイブス 平成5年・問16 改正対応

管轄を誤って表示の登記・建物の種類・分筆・所有権登記抹消と抵当権者


不動産登記に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成5年・問16)

1.「建物の新築による建物の表題登記は,管轄を誤って登記されたものであっても,登記が完了すれば,職権によって抹消されることはない。」

2.「建物の表示に関する登記において,建物の種類は,建物の主たる用途により,居宅,店舗,事務所等に区分して定められる。」

3.「甲地を甲地及び乙地に分筆の登記をする場合は,甲地に登記されている抹消された登記も,乙地の登記記録に転写される。」

4.「所有権の登記の抹消を申請する場合において,その抹消につき登記上利害関係を有する抵当権者がいるときは,申請情報と併せて抵当権者の承諾を証する情報及び抵当権者に対抗することができる裁判があったことを証する情報を提供することを要する。」

【正解】

× × ×

1.「建物の新築による建物の表題登記は,管轄を誤って登記されたものであっても,登記が完了すれば,職権によって抹消されることはない。」

【正解:×

◆管轄を誤って登記されたとき

 管轄に属さない不動産の登記の申請は“却下”されることになっていますが(不動産登記・25条1項),不動産の表示に関する登記は,登記官が職権ですることができるので,それによって処理されることになります(不動産登記法・28条)

<参考>権利に関する登記での職権による抹消

 登記官は,登記を完了した後に登記が管轄違いの登記であることを発見したとき,管轄違いに間違いがないかどうかを,登記権利者(登記をして「得」する人)登記義務者(登記をして「損」する人)及び登記上利害関係を有する第三者に対して,「1カ月を超えない期間」を定め,その期間内に異議を述べないときは登記を抹消する旨を通知しなければなりません(不動産登記法・71条1項,登記規則・153条〜154条,準則107条〜110条)

●関連問題

登記所の管轄区域に存する建物の表示の登記の申請が登記所にされたときは,登記所は,その事件を登記所に移送しなければならない。」(土地家屋調査士・昭和56年)

【正解:×

◆管轄を誤って申請を受けたとき → 却下

 管轄に属さない不動産の登記の申請は却下しなければならず,本肢の登記所は,却下するだけでその申請事件を管轄登記所に移送することはできません。(法25条1項)

●職権による登記の抹消
(職権による登記の抹消)

第71条  登記官は、権利に関する登記を完了した後に当該登記が第25条第1号から第3号まで又は第13号に該当することを発見したときは、登記権利者及び登記義務者並びに登記上の利害関係を有する第三者に対し、一月以内の期間を定め、当該登記の抹消について異議のある者がその期間内に書面で異議を述べないときは、当該登記を抹消する旨を通知しなければならない。

2  登記官は、通知を受けるべき者の住所又は居所が知れないときは、法務省令で定めるところにより、前項の通知に代えて、通知をすべき内容を公告しなければならない。

3  登記官は、第一項の異議を述べた者がある場合において、当該異議に理由がないと認めるときは決定で当該異議を却下し、当該異議に理由があると認めるときは決定でその旨を宣言し、かつ、当該異議を述べた者に通知しなければならない。

4  登記官は、第一項の異議を述べた者がないとき、又は前項の規定により当該異議を却下したときは、職権で、第一項に規定する登記を抹消しなければならない。

2.「建物の表示に関する登記において,建物の種類は,建物の主たる用途により,居宅,店舗,事務所等に区分して定められる。」

【正解:

◆建物の種類

  建物の表題登記をするときは,建物の種類は登記事項となります(不動産登記法・44条1項3号)

 建物の種類は,建物の主たる用途により,以下のものに区分し,これらの区分に該当しないものはこれに準じて適当に定めます(登記規則・113条1項)

居宅・店舗・事務所・料理店

・寄宿舎・共同住宅・旅館・

・倉庫・車庫

・工場・発電所・変電所

 これらに該当しない建物の種類については,準則で定められています(準則・80条1項)

▼ヒッカケ対策

 建物の用途が2以上の場合は,当該2以上の用途により建物の種類を定めます(登記規則・113条2項)

 建物の主たる用途が2以上のときは「居宅・店舗」,「居宅・共同住宅」のように記載されます(準則・80条2項)

→建物の表題部について詳しくは,こちらをご覧ください。

3.「甲地を甲地及び乙地に分筆の登記をする場合は,甲地に登記されている抹消された登記も,乙地の登記記録に転写される。」

【正解:×(ゆっくりと、イメージしながら解説を読んでください)

◆抹消された登記は分筆のときに転写されない

       甲地 
     /
  甲地
     \
       乙地

 甲地を甲地と乙地に分筆するとき,乙地の登記記録の権利部の相当区に甲地の登記記録から登記を転写しますが,抹消された登記は,現に効力を有しないため転写されません(登記規則・5条1項)

<コメント>
 不動産登記法は,基本書等に掲載されている登記記録の見本等を参照しながら学習をなさると,理解が早まるでしょう。

4.「所有権の登記の抹消を申請する場合において,その抹消につき登記上利害関係を有する抵当権者がいるときは,申請情報と併せて抵当権者の承諾を証する情報及び抵当権者に対抗することができる裁判があったことを証する情報を提供することを要する。」

【正解:×

◆所有権の抹消−抵当権者がいるとき

 所有権の登記の抹消は,所有権の移転登記がない場合に限り,所有権の登記名義人が単独で申請することができます(不動産登記法・77条)

 抹消登記をするのに足る登記原因の有無は登記官には判断,審査できません。そのため,所有権の登記の抹消を申請する場合において,その抹消につき登記上利害関係を有する第三者がいるときは,その承諾を証する情報があるときに限り,登記申請をすることができることになっています(不動産登記法・68条)

 登記名義人が所有権の登記の抹消を申請するには,申請情報のほかに,

・「登記上利害関係のある第三者の承諾を証する当該第三者が作成した情報(このほかに,登記原因証明情報,登記識別情報も必要。登記令・8条1項5号)
  または,
・「当該第三者に対抗することができる裁判があったことを証する情報」

“いずれか”を提供するのが申請の要件になっています(登記令・7条1項6号,別表26項・添付情報へ)

 本肢は一見すると正しそうな問題文ですが,「抵当権者の承諾を証する情報」をもらったのに,さらに「抵当権者に対抗することができる裁判があったことを証する情報」までは必要ナイ,と気がつくでしょう。つまり,本設問では、

     <抵当権者の承諾を証する情報
             及び
      
抵当権者に対抗することができる裁判があったことを証する情報>

となっていることから×になります。


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