Brush Up! 権利の変動篇
不動産登記の過去問アーカイブス 昭和54年 改正対応
仮登記・登記原因証書・売主の代理として登記申請・合筆禁止
不動産登記に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和54年) |
1.「所有権移転請求権保全の仮登記を申請する場合は,所有権の移転がすでに行われているが,登記申請に必要な手続上の条件が整っていないときである。」 |
2.「売買の目的たる土地の所在及び地番の表示がされていない売買契約証書は,登記原因を証する情報とはならない。」 |
3.「登記権利者たる買主は,登記義務者たる売主の代理人となって売買の対象となった不動産の所有権移転の登記を申請することができない。」 |
4.「所有者が同一人である接続した二筆のそれぞれの土地について,抵当権設定の登記がなされている場合であっても,それが同一債権を担保するためのものであるときには,その合筆の登記を申請することができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | × | × |
1.「所有権移転請求権保全の仮登記を申請する場合は,所有権の移転がすでに行われているが,登記申請に必要な手続上の条件が整っていないときである。」 |
【正解:×】 ◆所有権は移転しているが手続上の条件が整っていない→1号仮登記 本肢は,1号仮登記と2号仮登記を混同している人を引っ掛ける問題です。 所有権移転請求権保全の仮登記とは,2号仮登記ですが,『所有権の移転がすでに行われているが,登記申請に必要な手続上の条件が整っていないとき』に申請するのは1号仮登記です(不動産登記法・105条)。 つまり,本肢は,表紙が「所有権移転請求権保全の仮登記」(2号仮登記)なのに,中身が「要件不備の仮登記」(1号仮登記)となっているので×です。
→ 仮登記 |
2.「売買の目的たる土地の所在及び地番の表示がされていない売買契約証書は,登記原因を証する情報とはならない。」 |
【正解:○】 ◆登記原因を証する書面−売買契約書に所在や地番が表示されていないとき
登記原因証明情報(登記原因を証する書面等)とは,売買契約書・贈与契約書・抵当権設定契約書・判決書正本など,登記する物権変動を証する書面です。 この登記原因証明情報は,申請書に記載されている登記事項と不動産の表示が一致していなければなりません。 したがって,『売買の目的たる土地の所在及び地番の表示がされていない』売買契約証書は,売買の目的が確定されているとは言えず,登記原因を証する書面とはなりません。 |
3.「登記権利者たる買主は,登記義務者たる売主の代理人となって売買の対象となった不動産の所有権移転の登記を申請することができない。」 |
【正解:×】 ◆買主は売主の代理人として移転登記の申請ができるか 自己契約・双方代理は民法では禁じられていますが,例外がいくつかあります。
本肢も,これに準じて考えると,買主が売主の代理で登記申請しても問題はないと考えられます。 |
4.「所有者が同一人である接続した二筆のそれぞれの土地について,抵当権設定の登記がなされている場合であっても,それが同一債権を担保するためのものであるときには,その合筆の登記を申請することができる。」 |
【正解:×】 ◆合筆のできない場合 関連出題・平成2年問15・平成11年問11 「所有権の登記」以外の「権利の登記」がある土地を合併(合筆)することは原則としてできませんが(不動産登記法・41条6号),次の場合は例外として合筆できます。 ・承役地の登記がある場合 (登記規則・105条1号) ・抵当権設定登記の登記原因と登記原因の日付,登記の目的,受付番号が同じ場合 本肢では,『同一債権を担保するための抵当権であるときには,合筆の登記を申請できる』となっていますが,同一債権を担保するものであっても必ずしも抵当権設定登記の登記原因と登記原因の日付,受付番号が同じとは限りませんから,×になります。 ▼抵当権設定のある建物の合併についても,抵当権設定登記の登記原因と登記原因の日付,登記の目的,受付番号が同じならば,合併することができます。(不動産登記法・56条5号,登記規則131条) → 出題・平成6年・問15 ▼「所有権の登記」以外の「権利の登記」のあるものについて,原則として合併できないのは建物でも同じです。
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●類題 |
「抵当権の登記がある2筆の土地は,その抵当権が同一の債権を担保するものであっても,合筆することができるとは限らない。」(土地家屋調査士・昭和56年) |
【正解:○】 |
●担保権設定登記の登記原因と登記原因の日付,登記の目的,受付番号が同じ場合 |
登記官は、甲土地を乙土地に合筆する合筆の登記をするときは, 甲土地及び乙土地の登記記録に登記の目的,申請の受付の年月日及び受付番号並びに登記原因及びその日付が同一の担保権の登記があるときは, 乙土地の登記記録に当該登記が合筆後の土地の全部に関する旨を付記登記によって記録しなければならない(登記規則・107条5項)。 |