宅建過去問 法令上の制限 

建築基準法の過去問アーカイブス 平成20年・問21 

大規模集客施設,カラオケボックス,北側斜線制限,火葬場,

用途規制・卸売市場等の用途に供する特殊建築物の位置


建築基準法 (以下この問において 「法」 という。) に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。ただし、用途地域以外の地域地区等の指定及び特定行政庁の許可は考慮しないものとする。  (平成20年・問21)

1 店舗の用途に供する建築物で当該用途に供する部分の床面積の合計が20,000平方メートルであるものは、準工業地域においては建築することができるが、工業地域においては建築することができない。

2 第一種住居地域において、カラオケボックスで当該用途に供する部分の床面積の合計が 500平方メートルであるものは建築することができる。 

3 建築物が第一種中高層住居専用地域と第二種住居地域にわたる場合で、当該建築物の敷地の過半が第二種住居地域内に存するときは、当該建築物に対して法第56条第1項第3号の規定による北側高さ制限は適用されない。

4 第一種中高層住居専用地域において、火葬場を新築しようとする場合には、都市計画により敷地の位置が決定されていれば新築することができる。

<コメント>  
 肢1がイキナリ正解肢というパターンの出題です。肢1は改正点なので,知られていたはずですが,正答率が低いところを見ると,改正点を知らない受験者が相当数いたことを意味します。今でも改正点は出ないという神話を信じている受験者がかなりいるということでしょう。

 法改正を押さえておけば肢1にマークして,次の問題に移れます。しかし,肢1の正誤に戸惑うと,肢2〜肢4の泥沼にはまることになります。

 肢2,肢3は出題歴があるので,過去問を見ていた人は何とかスル−できますが,肢4については51条のみを考えていると足をすくわれます。

 この問題は,肢1を見過ごすと,肢2・肢3・肢4と難易度も上昇していく蟻地獄タイプの出題方法です。

●出題論点●
 (肢1) 大規模集客施設は,近隣商業地域,商業地域,準工業地域以外の区域では,
     原則として,建築できない。

 (肢2) カラオケボックス−用途地域による制限

 (肢3) 北側斜線−建築物の各部分が二以上の区域にわたる場合

 (肢4) 用途地域による制限−火葬場

【正解】

× × ×

 正答率  37.4%

1 店舗の用途に供する建築物で当該用途に供する部分の床面積の合計が20,000平方メートルであるものは、準工業地域においては建築することができるが、工業地域においては建築することができない。

【正解:法改正による初出題

◆大規模集客施設 〔特定大規模建築物〕

 大規模集客施設〔店舗・劇場・飲食店等の用途に供する床面積の合計が1万平方メートル超。都市計画法での特定大規模建築物〕は,近隣商業地域,商業地域,準工業地域以外の区域では,原則として,建築できません(建築基準法48条6項,7項,11項,13項,別表第二(へ)項6号,(と)項6号,(る)項7号,(ち),(り),(ぬ)の各項)

 したがって,本肢の<準工業地域では建築できるが,工業地域では建築できない。>とする記述は正しいことになります。

●開発整備促進区

 開発整備促進区では,以下のように,大規模集客施設を建築できる場合がありますが,本問題では,<用途地域以外の地域地区等の指定及び特定行政庁の許可は考慮しない>としているので,これらを除いた48条各項の原則だけで正誤の判定をしなければなりません。

 第二種住居地域,準住居地域,工業地域,(非線引き都市計画区域のうち)用途地域の指定のない区域では,地区計画で「開発整備促進区」を定めている場合に,

・開発整備促進区のうち,地区整備計画で,誘導すべき特定大規模建築物の敷地として 利用すべき土地の区域とされている区域内において,地区整備計画の内容に適合し,特定行政庁が交通上,安全上,防火上及び衛生上支障がないと認めるもの(68条の3・第7項,別表第二(わ)項)

開発整備促進区のうち,地区整備計画で,誘導すべき特定大規模建築物の敷地として 利用すべき土地の区域とされていなくても,開発整備促進区の地区計画において定められた土地利用に関する基本方針に適合し,かつ,特定行政庁が,当該地区計画の区域における商業その他の業務の利便の増進上やむを得ないと認めて許可した場合 (68条の3・第8項,別表第二(わ)項)

などでは,建築することができます。

2 第一種住居地域において、カラオケボックスで当該用途に供する部分の床面積の合計が 500平方メートルであるものは建築することができる。

【正解:×平成6年・問23・肢1平成14年・問20・肢3平成16年・問20・肢1

◆カラオケボックス

 カラオケボックスは,第二種住居地域〜工業専用地域に建築することができます。

 第一種・第二種低層住居専用地域,第一種・第二種中高層住居専用地域,第一種住居地域には,特定行政庁の許可を受けなければ,床面積に関係なく,建築することはできません(建築基準法48条,別表第二(ほ)項)

3 建築物が第一種中高層住居専用地域と第二種住居地域にわたる場合で、当該建築物の敷地の過半が第二種住居地域内に存するときは、当該建築物に対して法第56条第1項第3号の規定による北側高さ制限は適用されない。

【正解:×平成16年・問20・肢2

◆建築物が2以上の用途地域にわたる場合の北側斜線制限

 建築物が二以上の用途地域にわたる場合,北側斜線制限は,建築物の「部分」の属する用途地域ごとに制限が適用されます(建築基準法・56条5項) 

 北側斜線制限については当該敷地の過半が属する用途地域の規定が適用されるのではないので,本肢は誤りです。

⇒ 本肢の場合,第一種中高層住居専用地域に存する建築物の部分については,その都市計画で定められた北側斜線制限に従わなければなりません。

 第二種住居地域内に存する建築物の部分については,もともと北側斜線制限は適用されません〔北側斜線制限があるのは,第一種・第二種低層住居専用地域,第一種・第二種中高層住居専用地域です。〕。

※敷地の過半が属する用途地域の規定が適用されるのは,<建築物の敷地が二以上の用途地域にわたる場合>です。

4 第一種中高層住居専用地域において、火葬場を新築しようとする場合には、都市計画により敷地の位置が決定されていれば新築することができる。

【正解:×火葬場の出題・平成6年・問23・肢2

◆卸売市場等の用途に供する特殊建築物の位置(51条)と用途規制(48条)

 都市計画区域内の火葬場の建築については,48条(用途地域)と51条(卸売市場等の用途に供する特殊建築物の位置)の双方の規定に適合していなければなりません。

1) まず,48条の用途規制の面から検討します。

 卸売市場等の特殊建築物〔卸売市場,火葬場,またはと畜場,汚物処理場,ごみ焼却場その他政令で定める処理施設〕については,第一種・第二種低層住居専用地域,第一種中高層住居専用地域では,特定行政庁の許可がなければ,建築できない(註)と解されています。 ⇒ 茨城県つくば市の用途地域解説ページ

 つまり,これだけで肢4が誤りだと判断できます。

(註) 建築基準法別表第二では,(い)〜(は)〔第一種・第二種低層住居専用地域,第一種中高層住居専用地域〕は,「建築できる建築物」,(に)〔第二種中高層住居専用地域〕以降は「建築できない建築物」として列記されています。

 そのどちらにも火葬場は記載されていないため,第一種・第二種低層住居専用地域,第一種中高層住居専用地域では,特定行政庁の許可(※)がなければ,火葬場等の施設は建築できないと解されています。

※特定行政庁の許可・・・48条の規定により特定行政庁が許可する場合には,利害関係人の出頭を求めて公開による意見聴取を行い,かつ,建築審査会の同意を得なければならない(48条13項)。

2) 卸売市場等の特殊建築物 (51条)

 また,卸売市場等の特殊建築物は,都市計画区域内では,原則として,都市計画で敷地の位置が決定しているもの〔原則として都市計画の施設として決定する〕でなければ,新築や増築〔用途変更も〕をすることはできません。(⇒ 例外については,参考知識を参照)

51条の特殊建築物は,同条本文または但書により新築,増築できる場合でも,その建築物が48条各項本文に抵触するときは,48条各項但書による特定行政庁の許可をも必要とする(建設省当時の回答)

準都市計画区域については都市施設に関する都市計画は決定されないとされているために,準都市計画区域内については建築基準法51条は適用されません。

●参考知識●
  51条但書による例外−都市計画で敷地の決定がなくとも,建築・増築できる場合

 都市計画で敷地の位置が決定していなくても,以下の場合は,卸売市場等の特殊建築物の新築または増築,卸売市場等の特殊建築物への用途変更をすることができます(建築基準法51条,87条2項,3条2項,施行令130条の2の3)どちらも,48条本文の用途規制に抵触するときは,48条但書の特定行政庁の許可が必要です。

1) 特定行政庁が,都市計画審議会の議を経て,その敷地の位置が都市計画上支障がないと認めて許可した場合 

2) 政令で定める小規模の新築・増築・用途変更 (火葬場の場合は小規模な増築,一定の用途変更のみ) ⇒ 周辺への影響が比較的少ない

 卸売市場等の特殊建築物は,いわゆる嫌悪施設なので,取扱いには慎重を期す必要があり,関連する通達などが相当数出ています。その建築については一筋縄ではいきません。

類題・関連問題
1 都市計画区域内においては,卸売市場,火葬場又はと畜場,汚物処理場,ごみ焼却場その他政令で定める処理施設の用途に供する建築物は,都市計画においてその敷地の位置が決定しているものでなければ,新築し,又は増築してはならない。ただし,特定行政庁が建築審査会の同意を得て許可したものについては,この限りではない。(不動産鑑定士・行政法規・平成17年・問19)
【正解:×

 前半 : 正しい記述です。

 後半 : 特定行政庁が敷地の位置について許可するには,「建築審査会の同意を得る」のでなく,「都市計画審議会の議」を経なければいけません。

 また,都市計画においてその敷地の位置が決定しているものでなくても,特定行政庁の許可がある場合のほか,政令で定める小規模であれば新築または増築をすることができます。

2 準工業地域において、ごみ焼却場を建築しようとする場合には、都市計画による敷地の位置の決定があれば新築可能である。(不動産鑑定士・行政法規・平成19年・問20)
【正解:○の設定この問題の出題の翌年の平成20年に,宅建試験の問21で出題。

 ごみ焼却場は,48条,51条双方の規定に適合しなければなりませんが,

 48条 『準工業地域であれば,48条本文の用途規制に抵触しない』

 51条 『ごみ焼却場は,都市計画による敷地の位置の決定がなければ,原則として,新築・増築できない』 (都市計画による敷地の位置の決定があれば新築できる)

 ので,正しい記述です。

〔補充〕

 この問題では,48条本文の用途規制に抵触 せず,都市計画による敷地の位置の決定がある場合に,条文的に可能かどうかと言えば可能だという意味で,○にしたものと思われます。

 実際のところ,嫌悪施設の敷地の位置を準工業地域に定め,新築するには,48条本文の用途規制に抵触しないとしても,そのほかにクリアしなければならないものがたくさんあります。


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