宅建業法 実戦篇
監督処分の過去問アーカイブス 平成10年・問31 免許の基準(欠格要件)・免許取消
宅地建物取引業者A (法人) が受けている宅地建物取引業の免許 (以下「免許」という。) の取消しに関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成10年・問31) |
1.「Aの取締役Bが,道路交通法に違反し懲役の刑に処せられたものの,刑の執行猶予の言渡しを受け,猶予期間中であるとき,このことを理由としてAの免許が取り消されることはない。」 |
2.「Aの非常勤の顧問であり,Aに対し取締役と同等の支配力を有するものと認められるCが,刑法第247条 (背任)の罪により罰金の刑に処せられたとき,このことを理由としてAの免許が取り消されることはない。」 |
3.「Aの従業者で,役員又は政令で定める使用人ではないが,専任の取引主任者であるDが,刑法第246条 (詐欺) の罪により懲役の刑に処せられたとき,このことを理由としてAの免許が取り消されることはない。」 |
4.「Aの取締役かつ取引主任者であるEが,取引主任者の事務に関し1年間の事務禁止の処分を受けた場合で,Aの責めに帰すべき理由があるとき,情状のいかんにかかわらず,このことを理由としてAの免許が取り消されることはない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | ○ | × |
1.「Aの取締役Bが,道路交通法に違反し懲役の刑に処せられたものの,刑の執行猶予の言渡しを受け,猶予期間中であるとき,このことを理由としてAの免許が取り消されることはない。」 |
【正解:×】 ◆禁錮以上の刑 宅建業者である法人の役員が禁錮以上の刑に処せられると,執行猶予の言い渡しを受けていても,免許の取消事由に該当し,国土交通大臣または都道府県知事は,その免許を受けた当該法人の免許を取り消さなければなりません(宅建業法66条1項3号,5条1項3号)。 ▼欠格要件に該当する刑罰を受け執行猶予を言い渡された場合は,執行猶予期間が満了すれば,免許の欠格要件には該当しなくなります。 |
2.「Aの非常勤の顧問であり,Aに対し取締役と同等の支配力を有するものと認められるCが,刑法第247条 (背任)の罪により罰金の刑に処せられたとき,このことを理由としてAの免許が取り消されることはない。」 |
【正解:×】 ◆取締役と同等以上の支配力を有するもの 宅建業法の免許規定〔免許の欠格要件,取消事由〕では,非常勤の顧問であっても,その法人に対して取締役と同等以上の支配力を有するものは,その法人の役員として扱われます(宅建業法5条1項2号の括弧書き)。 刑法での背任罪は罰金刑であっても,免許の取消事由に該当するので,宅建業者である法人で取締役と同等の支配力を有するものが背任で罰金刑に処せられると,国土交通大臣または都道府県知事は,その免許を受けた当該法人の免許を取り消さなければなりません(宅建業法66条1項3号,5条1項3号の2)。 |
3.「Aの従業者で,役員又は政令で定める使用人ではないが,専任の取引主任者であるDが,刑法第246条 (詐欺) の罪により懲役の刑に処せられたとき,このことを理由としてAの免許が取り消されることはない。」 |
【正解:○】 ◆専任の取引主任者 専任の取引主任者〔役員でも政令で定める使用人でもない場合〕が詐欺により懲役の刑に処せられても,その取引主任者が勤務する法人の免許が取消されることはありません。 ▼宅建業者に対しては,業務に関し他の法令に違反し宅建業者として不適当である場合は指示処分等がありますが,そこまで考えると泥沼になるので,本肢では,単に,宅建業者Aとは関係なく,Dが詐欺罪を犯したと考えるしかありません。 ▼取引主任者が禁錮以上の刑に処せられると,登録の欠格要件に該当するので,登録は消除されます(宅建業法18条1項5号,22条2号,21条2号,68条の2第1項1号)。 |
4.「Aの取締役かつ取引主任者であるEが,取引主任者の事務に関し1年間の事務禁止の処分を受けた場合で,Aの責めに帰すべき理由があるとき,情状のいかんにかかわらず,このことを理由としてAの免許が取り消されることはない。」 |
【正解:×】 ◆取引主任者が事務禁止処分を受けたとき 取引主任者が指示処分・事務禁止の処分・登録消除処分を受けた場合に,宅建業者の責めに帰すべき理由があるときは,国土交通大臣または都道府県知事は,その免許を受けた宅建業者に対して,指示処分・業務停止処分をすることができ(宅建業法65条1項4号,2項1号の2),情状が特に重いときは免許取消処分をしなければなりません(宅建業法66条1項9号)。 したがって,<情状のいかんにかかわらず,このことを理由としてAの免許が取り消されることはない。>とする本肢は誤りです。 ▼都道府県知事は,取引主任者が指示処分・事務禁止の処分・登録消除処分を受けた場合に,宅建業者の責めに帰すべき理由があるときは,当該都道府県の区域内において業務を行っている<国土交通大臣または他の都道府県知事の免許を受けた宅建業者>に対しても,指示処分・業務停止処分をすることができます(宅建業法65条3項,4項)。 |
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