宅建業法 実戦篇

業務上規制・自ら売主の制限の過去問アーカイブス 昭和62年・問45

 報酬の限度額・手付金等の保全措置・専業信託銀行・重要事項の説明


宅地建物取引業法に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(昭和62年・問45)

1.「宅地建物取引業者AB間の土地の売買の媒介を行う宅地建物取引業者は,宅地建物取引業法第46条第1項に基づき国土交通大臣が定めた報酬の最高限度額を超えて報酬を受けることができる。」

2.「宅地建物取引業者AB間の宅地の売買において,売主は,当該宅地の造成工事の完了前であっても,買主への所有権移転の登記より前に,宅地建物取引業法第41条第1項に定める手付金等の保全措置を講ずることなく代金の額の5/100を超える手付金等を受領することができる。」

3.「宅地建物取引業を営む専業信託銀行は宅地建物取引業の免許を受ける必要はない。従って,宅地建物取引業法第66条及び第67条の免許取消し処分の規定は適用されないが,第65条の規定は適用されるので,業務の停止を命じられることがある。」

4.「宅地建物取引業者AB間の建物の貸借の媒介を行う宅地建物取引業者は借主に対し,当該建物に関して,貸借契約が成立するまでの間に,取引主任者をして宅地建物取引業法第35条第1項に定める重要事項を記載した書面を交付し,説明をさせなければならない。」

【正解】

×

1.「宅地建物取引業者AB間の土地の売買の媒介を行う宅地建物取引業者は,宅地建物取引業法第46条第1項に基づき国土交通大臣が定めた報酬の最高限度額を超えて報酬を受けることができる。」

【正解:×

◆報酬の限度額の規定は業者間の取引の媒介・代理でも適用される

 宅建業者は,国土交通大臣が定めた報酬の最高限度額を超えて報酬を受けることができません(宅建業法46条1項,2項)

 報酬の限度額の規定は当事者の一方又は双方が非宅建業者である取引の媒介・代理だけではなく,宅建業者間の取引の媒介・代理でも適用されるので,

 <宅建業者AB間の土地の売買の媒介を行う宅建業者は,報酬の最高限度額を超えて報酬を受けることができる。>

 としている本肢は誤りです。

宅建業者間の取引で適用がないのは,自ら売主の8種制限のみです(宅建業法78条2項)

 KEY 

 報酬の最高限度額を超えて受領すると
             ↓
  監督処分 1年以内の業務停止処分(全部又は一部)
         情状が特に重いときは,免許取消処分

  罰則  100万円以下の罰金

  両罰規定 行為者を罰するほか,宅建業者である法人・個人にも
        罰金刑を科する。

2.「宅地建物取引業者AB間の宅地の売買において,売主は,当該宅地の造成工事の完了前であっても,買主への所有権移転の登記より前に,宅地建物取引業法第41条第1項に定める手付金等の保全措置を講ずることなく代金の額の5/100を超える手付金等を受領することができる。」

【正解:

◆手付金等の保全措置−宅建業者間の取引やその媒介・代理には適用されない−

 宅建業者が自ら売主となる未完成物件の売買では,宅建業者ではない買主から代金の額の5%超,又は,1,000万円超の額の手付金を受領しようとする場合は,手付金等の保全措置を講じなければいけません(宅建業法・41条1項)

 しかし,この規定も含め,自ら売主の8種制限は,宅建業者間相互の取引 (又は宅建業者間の取引の媒介・代理) には適用されないので(宅建業法78条2項),本肢は正しい記述です。

 KEY 

 自ら売主の8種制限

宅建業間相互の取引には適用されない

3.「宅地建物取引業を営む専業信託銀行は宅地建物取引業の免許を受ける必要はない。従って,宅地建物取引業法第66条及び第67条の免許取消し処分の規定は適用されないが,第65条の規定は適用されるので,業務の停止を命じられることがある。」

【正解:

◆専業信託銀行等

 本肢での<専業信託銀行等>とは,「金融機関の信託業務の兼営等の法律」(平成14年2月1日施行)の施行の際,既に信託業務として宅地建物の媒介等を行っていた信託銀行等の金融機関を指し,従前の例によるものとされており,

 宅建業法66条,67条の免許の取消しの規定や免許に関する規定は適用されませんが,免許及び免許の取消し以外の宅建業法の規定が適用されます(宅建業法・77条4項,施行令9条2項)

 したがって,専業信託銀行でも65条の指示処分及び業務停止処分については適用が除外されていないので,宅建業を営む専業信託銀行が宅建業に関して業務の停止を命じられることがあります。

 KEY 

 信託会社・信託業務を兼営する金融機関

国土交通大臣の免許を受けた宅建業者とみなされ,
宅建業の免許以外の規定が適用される。

信託会社・信託業務を兼営する金融機関が宅建業を営もうとするときはその旨を国土交通大臣に届け出なければなりません(宅建業法・77条3項,施行令9条3項)

●宅建業法の適用
 信託会社信託業務を兼営する金融機関が宅地建物取引業を営む場合,免許の規定(3条〜7条),無免許事業等の禁止(12条),供託した旨の届出をしないときに免許権者が免許の取り消すことができる規定(25条7項),及び免許の取消しの規定(66条,67条1項)の規定を除く宅建業法が適用されます。

 これに対して,国・地方公共団体には,宅建業法全体が適用されず,免許の規定や免許以外の規定も適用されません(78条1項)

   −  免許関連の規定  免許以外の規定
 信託会社
 信託業務を兼営する金融機関
 適用されない  適用される
 国・地方公共団体  適用されない  適用されない

●参考●信託会社,信託業務を兼営する銀行
 信託会社は,信託業法3条の内閣総理大臣の免許又は同法7条1項の内閣総理大臣の登録を受けた者(管理型信託業)をいう(信託業法2条1項)
 「銀行」とは,銀行法4条第1項の内閣総理大臣の免許を受けて銀行業を営む者をいいますが,銀行が信託業務を兼営するには内閣総理大臣の認可を受けなければなりません(金融機関の信託業務の兼営等に関する法律1条1項)

4.「宅地建物取引業者AB間の建物の貸借の媒介を行う宅地建物取引業者は借主に対し,当該建物に関して,貸借契約が成立するまでの間に,取引主任者をして宅地建物取引業法第35条第1項に定める重要事項を記載した書面を交付し,説明をさせなければならない。」

【正解:

◆重要事項説明と35条書面の交付−宅建業者間の取引やその媒介・代理でも適用される−

 宅建業者間相互の取引の媒介代理でも,重要事項の説明と35条書面の交付は,省くことができません。

 宅建業者間相互の取引 (又は宅建業者間の取引の媒介・代理) には適用されないのは自ら売主の8種制限のみだからです(宅建業法78条2項)

 KEY 

重要事項の説明と35条書面の交付 

宅建業者相互間の取引でも,しなければならない。

宅建業者間相互の取引 (又は宅建業者間の取引の媒介・代理) では,重要事項の説明と35条書面の交付のほか,媒介書面の交付37条書面の交付も省くことはできませんから,注意してください。


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