宅建過去問 権利の変動篇 借地借家法
借家権の過去問アーカイブス 平成21年・問12 建物の賃貸借と使用貸借の比較
A所有の甲建物につき、Bが一時使用目的ではなく賃料月額10万円で賃貸借契約を締結する場合と、Cが適当な家屋に移るまでの一時的な居住を目的として無償で使用貸借契約を締結する場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。(平成20年・問12) |
1 BがAに無断で甲建物を転貸しても、Aに対する背信的行為と認めるに足らない特段の事情があるときは、Aは賃貸借契約を解除できないのに対し、CがAに無断で甲建物を転貸した場合には、Aは使用貸借を解除できる。 |
2 期間の定めがない場合、AはBに対して正当な事由があるときに限り、解約を申し入れることができるのに対し、返還時期の定めがない場合、AはCに対していつでも返還を請求できる。 |
3 Aが甲建物をDに売却した場合、甲建物の引渡しを受けて甲建物で居住しているBはDに対して賃借権を主張できるのに対し、Cは甲建物の引き渡しを受けて甲建物に居住していてもDに対して使用借権を主張することができない。 |
4 Bが死亡しても賃貸借契約は終了せず賃借権はBの相続人に相続されるのに対し、Cが死亡すると使用貸借契約は終了するので使用借権はCの相続人に相続されない。 |
<コメント> |
●出題論点● |
(肢1) 無断転貸 賃貸借では,背信的行為と認めるに足らない特段の事情があるときは,賃貸人は,賃貸借契約を解除できない。
(肢2) 返還時期の定めのない使用貸借で,使用目的のみ定めた場合,借主は,目的に従った使用収益が終わったとき,返還しなければならないが,借主がその使用収益を終わる前であっても,使用収益をするのに足りる期間を経過したときは,貸主は,直ちに返還を請求することができる。 (肢3) 第三者に対する対抗力 使用貸借では,第三者に対して対抗することができない 〔使用借権を主張できない〕。 (肢4) 借主の死亡 使用貸借契約は,借主が死亡すれば終了する。 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | ○ | ○ |
正答率 | 43.7% |
1 BがAに無断で甲建物を転貸しても、Aに対する背信的行為と認めるに足らない特段の事情があるときは、Aは賃貸借契約を解除できないのに対し、CがAに無断で甲建物を転貸した場合には、Aは使用貸借を解除できる。 |
【正解:○】〔賃貸借〕平成18年・問10・肢1,〔使用貸借〕平成17年・問10・肢3, 賃貸借では,賃借人は,賃貸人の承諾を得なければ,賃借物を転貸することができず,賃借人がこの規定に違反して第三者に賃借物の使用収益をさせたときは,賃貸人は,契約の解除をすることができます(民法612条1項,2項)。ただし,判例により,賃借人に背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは,賃貸人は,賃貸借契約を解除することはできません(最高裁・昭和28.9.25)。 使用貸借では,借主は,貸主の承諾を得なければ,第三者に借用物の使用収益をさせることができず,借主がこの規定に違反したときは,貸主は,催告することなく直ちに契約の解除をすることができます(民法594条2項,3項)。
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2 期間の定めがない場合、AはBに対して正当な事由があるときに限り、解約を申し入れることができるのに対し、返還時期の定めがない場合、AはCに対していつでも返還を請求できる。 |
【正解:×】〔賃貸借〕平成8年・問12・肢3・肢4,〔使用貸借〕平成17年・問10・肢4, 期間の定めのない賃貸借では,各当事者は,いつでも解約の申入れをすることができますが(民法617条1項),賃貸人は,正当の事由があると認められる場合でなければ,することができません(借地借家法28条)。 返還時期の定めのない使用貸借で,使用目的のみ定めた場合,目的に従った使用収益が終わったとき,返還しなければなりません(民法597条2項本文)。また,借主がその使用収益を終わる前であっても,使用収益をするのに足りる期間を経過したときは,貸主は,直ちに返還を請求することができます(民法597条2項但書)。 つまり,貸主は,いつでも返還を請求できるのではありません※。
※返還時期の定めのない使用貸借で,使用目的を定めなかった場合,貸主は,いつでも返還を請求することができます(民法597条3項)。本肢は,このこととの混同狙いで作られた問題です。 |
3 Aが甲建物をDに売却した場合、甲建物の引渡しを受けて甲建物で居住しているBはDに対して賃借権を主張できるのに対し、Cは甲建物の引き渡しを受けて甲建物に居住していてもDに対して使用借権を主張することができない。 |
【正解:○】〔賃貸借〕平成20年・問4・肢4,〔使用貸借〕平成9年・問8・肢1,平成17年・問10・肢2, 賃貸借では,賃借権の登記〔引渡し〔建物〕,借地上の建物の登記〕があれば,第三者に対抗できます〔賃借権を主張できる〕が(借地借家法10条1項,31条1項),使用貸借では,第三者に対して対抗力はありません 〔使用借権を主張できない〕。 使用貸借〔当事者が親族関係などの特別な関係がある場合が多い〕では,当事者間でしか効力をもたないからです。
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4 Bが死亡しても賃貸借契約は終了せず賃借権はBの相続人に相続されるのに対し、Cが死亡すると使用貸借契約は終了するので使用借権はCの相続人に相続されない。 |
【正解:○】〔賃貸借〕関連・昭和63年・問12・肢3,平成2年・問13・肢4,平成7年・問13・肢3,平成11年・問14・肢2,〔使用貸借〕平成9年・問8・肢3,平成13年・問6・肢3,平成17年・問10・肢1, 賃貸借契約では,賃借人が死亡しても終了しませんが,使用貸借契約では,借主が死亡すれば終了します(民法599条)。使用貸借での借主の地位は一身専属と考えられているからです〔もっとも,特約があれば,相続人が使用借主の地位を承継させることはできる〕。
▼使用貸借の貸主が死亡しても,使用貸借契約は終了しません。 |