Brush Up! 権利の変動篇

共有の過去問アーカイブス 平成15年・問4


及びが,建物を共有している場合(持分を各3分の1とする。 )に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,誤っているものはどれか。(平成15年・問4)

1.「は,の同意を得なければ,この建物に関するの共有持分権を売却することはできない。」

2.「は,の同意を得なければ,この建物に物埋的損傷及び改変などの変更を加えることはできない。 」

3.「が,その共有持分を放棄した場合,この建物は,の共有となり,共有持分は各2分の1となる。」

4.「各共有者は何時でも共有物の分割を請求できるのが原則であるが,5年を超えない期間内であれば分割をしない旨の契約をすることができる。 」

【正解】

×

1.「は,の同意を得なければ,この建物に関するの共有持分権を売却することはできない。」

【正解:×】頻出問題。最近では,平成9年・問2・肢1

◆持分権の処分

 持分権の処分については民法に明文の規定はありませんが,共有持分も所有権なので,各共有者は自分の持分権を原則として自由に処分することができると考えられています。(譲渡・抵当権などの担保設定・放棄)

 したがって,の同意を得なくても自由に共有持分権を売却することができます。

 原則 共有者Aは自己の持分については自由に処分することができる

2.「は,の同意を得なければ,この建物に物埋的損傷及び改変などの変更を加えることはできない。 」

【正解:】頻出問題。最近では,平成6年・問3・肢2

◆共有物の変更

 各共有者は,他の共有者全員の同意がなければ,共有物に変更を加えることはできません。(251条)

 したがって,の同意を得なければ,共有物に変更を加えることはできません。

「変更」とは…

 ・共有物の性質または形状を物理的に変化させる。〔本肢の場合〕

 ・法律的に処分する。〔共有物自体の売却,担保を設定する等。〕

●共有物の保存・管理・変更
 保存行為  共有物の現状を維持する行為  単独でできる
 管理行為  使用方法の協議

 利用行為 (収益を図る)

 改良行為 (経済的価値を増加)

 共有者の持分の価格に従い,

 その過半数で決定する

 変更行為  物理的な変更

 法律的な処分

 全員の同意が必要
3.「が,その共有持分を放棄した場合,この建物は,の共有となり,共有持分は各2分の1となる。」

【正解:】頻出問題。最近では,昭和63年・問7・肢4

◆持分の放棄

 共有者の1人がその共有持分を放棄したときや,または死亡して相続人がいないときは,原則として,その持分は他の共有者に帰属します。(255条)

 の 1/3は,均等にB・Cに分けられます。

    が放棄する前 が放棄した後
   1/3  −
   1/3  1/3+1/6=1/2   
   1/3  1/3+1/6=1/2

盲点

 1) 共有者の1人がその共有持分を放棄したことによって
   他の共有者がその持分を取得したことを
   第三者に主張するにはその旨の登記が必要
です。(177条)

   例えば,上のが放棄した持分を第三者のが差し押さえたときに
   が放棄した持分をB・Cが取得した登記がなければ
   B・Cは第三者のに対抗できません。

 2) 共有者の1人が死亡して相続人がいないとしても,内縁の妻事実上の養子
   被相続人の病気の療養に努めた者などの特別縁故者がいる場合には,その
   特別縁故者に死亡した者の持分は帰属します。(958条の3,判例)
    → 平成4年・問12・肢3に出題

4.「各共有者は何時でも共有物の分割を請求できるのが原則であるが,5年を超えない期間内であれば分割をしない旨の契約をすることができる。 」

【正解:】頻出問題。最近では平成3年・問5・肢3

◆共有物の分割と不分割特約

 共有者が共有関係から脱出するには2つの方法があります。

持分権を処分
〔放棄も含む。〕
 ⇒ 持分権を処分した者は共有から離脱するが,
  その者以外の共有自体は存続する。
共有物を分割 全体の分割  ⇒ 共有自体が終了する。
一部を分割    分割の請求者の持分に該当する部分のみを
 ⇒ 分割して,他の共有者間では共有を継続する。
    (最高裁・昭和62.4.22)

 持分権の処分(明文規定はない)分割請求(256条1項)いつでもできるのが原則ですが,分割請求には制限をすることができます

 もし,5年を超えない期間内には分割をしないという取決めを共有者間でしていれば,その期間内には分割請求できません。(不分割特約,256条1項)

盲点

 不分割特約があっても持分そのものは処分することができるので,持分の特定承継人が現れることがあります。(共有者の1人が自分の持分を第三者に売却など。)

 この特定承継人に対しても,「不分割特約で分割請求はできない」と主張できるでしょうか?

 共有物が不動産の場合は,不分割特約を登記しておかないと特定承継人には対抗できないとされています。つまり登記があれば特定承継人に不分割特約を主張することができます。


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