Brush Up! 権利の変動篇
建物の賃貸借に関する問題3 転貸借 (平成10年・問6)
AはBから建物を賃借し、Bの承諾を得て、当該建物をCに転貸している。この場合、次のそれぞれの記述は、民法の規定及び判例によれば○か、×か。なお、Aの支払うべき賃料の額は、Cの支払うべき転借料の額より小さいものとする。(平成10年・問6) |
1.「AとBとが賃貸借契約を合意解除した場合、AC間の転貸借契約は、その前提を失うため、特別の事情のある場合を除き、当然に終了する。」 |
2.「Cは、Bから請求があれば、CがAに支払うべき転借料全額を直接Bに支払うべき義務を負う。」 |
3.「Bは、Aの債務不履行によりAB間の賃貸借契約を解除しようとする場合、Cに対して、3ヵ月以前に通知し、Aに代わって賃料を支払う機会を与えなければならない。」 |
4.「Bが、Aの債務不履行によりAB間の賃貸借契約を適法に解除した場合、Cは、AC間の転貸借契約に基づく転借権をBに対抗することができない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
1.「AとBとが賃貸借契約を合意解除した場合、AC間の転貸借契約は、その前提を
失うため、特別の事情のある場合を除き、当然に終了する。」類・平成4年・
【正解:×】 B (賃貸人) 賃貸人と賃借人とが賃貸借契約を合意解除しても、特段の事情がない限り、賃貸人は転借人に対してこの合意解除の効果を主張できない。(最高裁・昭和62.3.24) したがって、当然に終了するのではありません。
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2.「Cは、Bから請求があれば、CがAに支払うべき転借料全額を直接Bに支払うべき
義務を負う。」
【正解:×】 B (賃貸人) AのBに支払うべき賃料の額8万円は、CのAに支払うべき転借料の額10万円より小さいので、CがBに8万円を支払えばよい。(この場合は転借料全額をBに支払う必要はありません。) Aの支払うべき賃料の額8万円 < Cの支払うべき転借料の額10万円 転借人は、賃貸人に対して直接の義務を負うとされています。(民法613条1項) しかし、この場合でも、転借人は転貸借契約で定められた賃料の額の範囲で支払い義務を負うだけで、次のようになります。(金額の低いほうを賃貸人に支払えばよい。) 賃貸借の賃料 > 転貸借の賃料 のとき・・・ 転貸借の賃料 転貸借の賃料 > 賃貸借の賃料 のとき・・・ 賃貸借の賃料 |
3.「Bは、Aの債務不履行によりAB間の賃貸借契約を解除しようとする場合、Cに対して、
3ヵ月以前に通知し、Aに代わって賃料を支払う機会を与えなければならない。」
【正解:×】平成16年・問13・肢4 B (賃貸人) Aの債務不履行により解除しようとしている 賃借人の債務不履行により賃貸人が賃貸借契約を解除しようとする場合には、履行遅滞による解除権が適用され、BはAに対して相当の期間を定めて催告し、その期間にAの履行がなければ契約を解除できます。AB間の賃貸借契約が終了した結果、AはCに対して履行不能になり、転貸借は終了します。(民法541条) この場合、判例では、賃料の延滞を理由に賃貸借を解除するには、賃貸人Bは賃借人Aに催告するだけで足り、転借人Cに支払いの機会を与える必要はない、としています。(最高裁・平成9.2.25) |
4.「Bが、Aの債務不履行によりAB間の賃貸借契約を適法に解除した場合、Cは、
AC間の転貸借契約に基づく転借権をBに対抗することができない。」
【正解:○】平成16年・問13・肢4 B (賃貸人) AB間の賃貸借契約がAの債務不履行で解除された場合、賃貸人が転借人に目的物の返還を請求したときにAのCに対する履行不能により、転貸借は終了します。Cは、AC間の転貸借契約に基づく転借権をBに対抗することができません。(最高裁・平成9.2.25) |
●原賃貸借の終了と転貸借の出題歴〔建物の転貸借〕 |
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原賃貸借が期間満了or解約申入れにより終了→平成元年・問6,平成6年・問12 原賃貸借が合意解除・→平成4年・問11,平成6年・問12,平成10年・問6,平成16年・問13, 原賃貸借が債務不履行による解除→平成10年・問6,平成16年・問13 転借人の使用継続による原賃貸借の法定更新
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