Brush Up! 権利の変動篇
借地借家法の過去問アーカイブス 平成10年・問12
借家権 転貸借 原契約更新拒絶の通知・転借人の造作買取請求権
AがBに対し期間2年と定めて賃貸した建物を、BはCに対し期間を定めずに転貸し、Aはこれを承諾した。この場合、借地借家法の規定によれば、次の記述は○か×か。(平成10年・問12) |
1.「AがBに対する更新拒絶の通知をしたときでも、期間満了後Cが建物の使用を継続し、Aがこれに対して遅滞なく異議を述べないと、AB間の契約は更新される。」 |
2.「AがBに対し更新拒絶の通知をするための正当の事由の有無は、A及びBについての事情によって決せられ、Cについての事情は考慮されない。」 |
3.「CがAの同意を得て建物に付加した造作は、期間の満了によって建物の賃貸借が終了するとき、CがAに対し買取りを請求することができる。」 |
4.「AB間の賃貸借が期間の満了によって終了するときも、AがCに対してその旨の通知をした日から6月を経過しないと、建物の転貸借は終了しない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | ○ | ○ |
1.「AがBに対する更新拒絶の通知をしたときでも、期間満了後Cが建物の使用を継続し、
Aがこれに対して遅滞なく異議を述べないと、AB間の契約は更新される。」
【正解:○】原契約更新拒絶の通知 A (賃貸人) 賃貸人が更新拒絶をするということは、期間満了による賃貸借を意味します。賃貸借期間満了後に建物の賃借人が使用を継続している場合、賃貸人が遅滞なく異議を述べないと契約は従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます。(借地借家法第26条2項) これは、期間の定めのある建物の賃貸借で期間満了の通知(更新しない旨の通知)を1年前から6月前に通知をしたにもかかわらず、賃借人が建物の使用を継続し、賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときにも適用され、法定更新されます。 転借人にもこの規定が適用されます。(借地借家法第26条3項) |
2.「AがBに対し更新拒絶の通知をするための正当の事由の有無は、A及びBについての
事情によって決せられ、Cについての事情は考慮されない。」
【正解:×】原契約更新拒絶の通知のための正当事由 A (賃貸人) 賃貸人が転貸を承諾しているときは、転借人Cが建物の使用を必要とする事情も賃借人Bの事情として考慮し、それでも正当事由があると認められなければ、賃貸人は、更新拒絶の通知又は賃貸借の解約の申し入れはすることができないとされています。(借地借家法第28条但し書) |
3.「CがAの同意を得て建物に付加した造作は、期間の満了によって建物の賃貸借が
終了するとき、CがAに対し買取りを請求することができる。」
【正解:○】 A (賃貸人) 建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申し入れによって終了する場合、転借人も賃貸人の同意を得て建物に付加した造作があるときは、造作を時価で買い取るべきことを請求できます。(借地借家法第33条2項) |
●転借人の造作買取請求権 |
(i) 原賃貸借が期間満了・解約申入れにより終了 A (賃貸人) ⇒ Cは,Aに対して造作買取請求権を行使できる。(借地借家法第33条2項) ただし,Aが造作付加について同意したとき。Aが同意せず,Bのみが同意したときは適用されない。 |
(ii) 転貸借のみが期間満了・解約申入れにより終了 A (賃貸人) ⇒ Cは,Bに対して造作買取請求権を行使できる。(借地借家法第33条1項) |
4.「AB間の賃貸借が期間の満了によって終了するときも、AがCに対してその旨の通知を
した日から6月を経過しないと、建物の転貸借は終了しない。」
【正解:○】 A (賃貸人) 賃貸借が期間の満了又は解約申し入れによって終了する場合、賃貸人が転借人にその旨を通知すれば、その日から6ヶ月後に転貸借は終了します。(借地借家法第34条1項・2項) |
●原賃貸借の終了と転貸借の出題歴〔建物の転貸借〕 |
||||||||
原賃貸借が期間満了or解約申入れにより終了→平成元年・問6,平成6年・問12 原賃貸借が合意解除・→平成4年・問11,平成6年・問12,平成10年・問6,平成16年・問13, 原賃貸借が債務不履行による解除→平成10年・問6,平成16年・問13 転借人の使用継続による原賃貸借の法定更新
|
<ケース・スタディ> 原契約が、賃借人の債務不履行(賃料不払い)のために解除されたとき、転借人の立場はどうなるか? → 平成10年問6,平成16年・問13, |