Brush Up! 権利の変動篇 

借地借家法の過去問アーカイブス 平成6年・問12

借家権 原賃貸契約終了と転貸借   


から賃借している建物をに転貸した場合に関する次のそれぞれの記述は、民法及び借地借家法の規定及び判例によれば○か、×か。(1-4 : 平成6年・問12)

1.「AC間の転貸借がの承諾を得ていない場合でも、その転貸借がに対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、の解除権は発生しない。」

2.「AB間の賃貸借が合意解除によって終了すれば、の承諾を得て転借していても、特段の事由のない限り、AC間の転貸借は終了し、の権利は、消滅する。」

3.「AB間の賃貸借がの解約の申入れによって終了した場合において、の承諾を得て転借しているが建物の使用を継続するときは、が遅滞なく異議を述べないと、AB間の賃貸借が更新される。」

4.「AB間の賃貸借の期間が満了する場合においても、は、の承諾を得て転借しているに対してその旨の通知をしなければ、その終了をに対抗することができない。」

5.「の承諾を得て第三者に建物を賃貸した場合、AB間の賃貸借契約が期間の満了により終了すれば、当然にBC間の転貸借契約も終了する。」

【正解】

× ×

1.「AC間の転貸借がBの承諾を得ていない場合でも、その転貸借がBに対する背信的

行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、Bの解除権は発生しない。」

【正解:

 賃貸人の承諾のない転貸借は、賃貸人につき契約の解除権が発生する(民法第612条2項)ものと考えられますが、転借人の保護の観点から、判例によれば「その転貸借が、建物の持主に対する背信的(ウラギリ)行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、解除権は発生しない」と、その転貸借は保護がされ、このような特段の事情があれば、解除権は発生しません。(最高裁・昭和41.10.21など)

<関連問題1>次の記述は、判例によれば、○か×か。

AのCへの転貸が一時的なものであり、AがCから当該建物の返還を受けた後であっても、Bがこの転貸の事実を知らなかった場合は、BはAB間の賃貸借契約を解除できる。

【正解:×】判例によれば、一時的な転貸は、「特段の事情」であり、解除権は発生しないとしています。(最高裁・昭和32.11.12)

<関連問題2>次の記述は、判例によれば○か×か。

Aが、B所有の建物を賃借していて、Aが建物を第3者CにBの承諾を得て転貸している場合に、BはAの賃料不払いの債務不履行を理由として、Aとの賃貸借を解除し、Cに明渡しを求めてきた。この場合、CはBに対して明渡しをせざるを得ない。

【正解:

 転貸借は、賃貸借契約の存在を前提にしており、その権利の範囲内で設定されます。本問のようなケースでは、転貸借のモトになる賃貸借契約が解除によってなくなっており、転借人は賃貸人に転貸借権で対抗することはできません。(最高裁・昭和36.12.21)

 この場合,転貸借は,賃貸人が転借人に目的物の返還を請求したときに,転貸人の転借人への履行不能により終了します。(最高裁・平成9.2.25)

2.「AB間の賃貸借が合意解除によって終了すれば、CがBの承諾を得て転借していても

、特段の事由のない限り、AC間の転貸借は終了し、Cの権利は、消滅する。」

【正解:×原賃貸契約が合意解除→平成4年・問11

 「賃貸人と賃借人が合意解除しても、賃貸人はその解除をもって、転借人に対抗することはできない」という民法第613条に関する判例があります。(最高裁・昭和38.4.12)

適法に建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が、期間満了や解約の申入れによって終了するときには、「建物の賃貸人」は「建物の転借人」にその旨を通知しなければ、その終了をもって、建物転借人に対抗できません(借地借家法第34条1項)。なお、通知後6月で終了します(〃条2項)。

    転貸借の終了時点
 原賃貸借の合意解除  賃貸人は,転借人に対抗できない。
 原賃貸借が期間満了or
 解約申入れにより終了〔借家〕
 賃貸人からの通知の日から6ヵ月を経過したとき
 原賃貸借の債務不履行による解除  賃貸人が転借人に目的物の返還を請求したとき

原賃貸借の終了と転貸借の出題歴〔建物の転貸借〕

  原賃貸借が期間満了or解約申入れにより終了平成元年・問6,平成6年・問12
                                        平成10年・問12平成12年・問12平成16年・問13

  原賃貸借が合意解除・→平成4年・問11,平成6年・問12,平成10年・問6平成16年・問13 

  原賃貸借が債務不履行による解除→平成10年・問6平成16年・問13

  転借人の使用継続による原賃貸借の法定更新
   ・原賃貸借の解約の申入れ+転借人の使用継続 平成6年・問12
   ・原賃貸借の期間満了+転借人の使用継続 平成10年・問12

3.「AB間の賃貸借がBの解約の申入れによって終了した場合において、Bの承諾を得て

転借しているCが建物の使用を継続するときは、Bが遅滞なく異議を述べないと、AB間の

賃貸借が更新される。」

【正解:

 建物の転貸借がされているとき、転借人による建物の使用の継続を、賃借人がする使用の継続とみなして、賃貸人と賃借人との間で、法定更新がされることになり(借地借家法第26条3項)、転借人は保護されています。

4.「AB間の賃貸借の期間が満了する場合においても、Bは、Bの承諾を得て転借してい

るCに対してその旨の通知をしなければ、その終了をCに対抗することができない。」

【正解:

 現在建物を使用収益している者は、建物の持主であるBの承諾を得たCであり、つまり、Cは、建物の居住関係につき、最も重要な利害関係にあり、またCは、AB間の賃貸借期間の満了を知らないかも知れず、設問2で解説したように、Bは、その旨をCに通知しなければ、その終了をもって対抗できません(借地借家法第34条1項)。

 このように転借人は、特段の事情がなければ、賃借人とほぼ同じ地位が与えられています。

5.「AがBの承諾を得て第三者Cに建物を賃貸した場合、AB間の賃貸借契約が

期間の満了により終了すれば、当然にBC間の転貸借契約も終了する。」

【正解:×クドイ?

 現在建物を使用収益している者は、建物の持主であるBの承諾を得たCであり、つまり、Cは、建物の居住関係につき、最も重要な利害関係にあり、またCは、AB間の賃貸借期間の満了を知らないかも知れず、設問2で解説したように、Bは、その旨をCに通知しなければ、その終了をもって対抗できません(借地借家法第34条1項)。

 本設問では、「AB間の賃貸借契約が期間の満了により終了すれば、当然にBC間の転貸借契約も終了する。」となっているため、×になります。


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