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Echo の宅建民法・重点Notes
  「債務不履行」第3回(契約の解除1)

債務不履行の基礎知識Echoの宅建民法・重点Notes / 債務不履行

 第1回・概略&強制執行
 第2回・損害賠償請求
 第3回・契約の解除1
 第4回・契約の解除2+事例研究
 第5回・契約解除のタイプ
 第6回・金銭債務に関する特則

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆「債務不履行」第3回(契約の解除1)◇◆◇◆◇◆◇◆

<前置き>

**1.「債務不履行」とは**

 債務者の責任によって、債務の本旨に従った履行のなされないこと(つまり、

債務者として本来なすべきことをしないこと)を「債務不履行」といいます。

 例)「約束の本来の趣旨をマゲて実行をした」

   「中途半端にやった」

   「遅れてからようやく実行した」

   「実行したくてももうできない、不可能だ」


**2.相手がその者の責任によってその債務を履行しない場合**

 債務者が、どんな事情であれ債務を履行しない場合には、次のような“要求”

をすることができます。

 ア.「強制執行」によって強制的に履行を実現する

 イ.相手方の債務不履行を理由として「損害賠償を請求」する

 ウ.契約を「解除」する

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「債務が履行されない場合の措置」

**ウ.契約の解除**

→通常の契約行為における“契約解除”とは、多少趣が異なりますので、

「債務不履行」における契約解除を中心にお話しいたします。

<契約の解除>

 「契約」で定めた債務の不履行があれば、当然、何らかの手段で履行させよう

(とりあえずは“電話や直接会って「ヤレ!」と催告”)とします。それでも履

行しなければ、これは“契約を解除”するしかありません。

 ここでは、“契約を解除”することに関して、

   「その損害を具体的にどうするか」

   「契約を解除する方が賢いか賢くないか」

という問題はヌキにして、もっと単純に、

(今回)契約を解除するためにはどうしたらよいか。

(次回)その効力と後始末をするときの問題点

に的を絞って解説をいたします。

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<契約の解除>

 ア)当事者の一方がその債務を履行しないとき、相手方は“相当の期間を定め

   て履行を催告”し、その期間内に履行がなかった場合にはじめて契約を

   解除できます(解除権の発生)。

 イ)「定まった時期をハズしたら、契約した意味がナイ行為」の履行がなされ

   ない場合には、契約の解除は、催告することなく「一方的な意思表示」に

   よって行われます。

 ウ)不履行に陥った契約の相手方が“数人”存在するときは、その“全員”に

   対して契約解除の意思表示をしなければなりません。

 エ)逆に、債権者が“数人”あるときは、「その全員が一致して」契約解除の

   意思表示を行う必要があります。

〔注意1〕

“解除権”を持っている者がこれを行使する時には、相手方に対する「意思表

示」によらなければなりません。

 →相手方が善意であろうと悪意であろうと、“解除権”を有する者による

 「解除の意思表示」をしなければ、解除されません。

〔注意2〕(重要!)

一度、「解除の意思表示」をしてしまうと、その意思表示は取り消すことができ

なくなります。

 → 但し、“行為能力の制限 (制限行為能力者) ”,“詐欺・強迫”を理由とする取消とは

   別問題です。

〔参考〕

“契約解除”の他に損害がある場合は、併せて“損害賠償の請求”をすることが

できます。

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<“解除権”が発生する場合>

 契約の解除は、当事者の一方的な通知によって、相手方の立場にかかわらず契

約をはじめからなかったことにしてしまうことです。

 したがって、なんの理由もなしに解除するのは許されないことであり、解除す

るには「解除するだけの理由と権限」が必要になります。

 解除する権利(解除権)があれば、この解除権に基づき、必ずしも裁判上の方

法によらなくても、“書面”または“口頭”で相手方に通知(意思表示)しさえ

すれば、ただちに解除の効力が生じるのです。

 但し、賃貸借契約のような継続的な契約の場合は、解除の通知をしてから一定

の期間が過ぎないと解除の効力は生じないことになっています。

 1.相手方が債務の履行をしないとき

   →相当な期間を定めて債務を履行するように催促し、それでも相手方が

    債務を履行しないときに、はじめて“解除権”が生ずる。

 2.期日に履行されないと困る契約の場合

   →その期日が過ぎればすぐに“解除権”を得て、「一方的」な意思表示

    によって契約が解除できる。催促の必要はなし。

 3.債務の履行が不能(もうデキナイ)になったとき

   →債権者にすぐに“解除権”が生じ、催促なしにただちに契約を解除

    できる。

 4.「手付金」を支払うことによって、「“解除権”が生じた」と解釈

   できる。

 この他に、当事者双方の「合意による」契約の解除もできます。

 その際には、葵の御紋=“解除権”の出るマクはありません。

 当然といえば当然の話ですね。

 この場合、当事者が新たに「その契約を解除しよう」という内容の「契約」を

締結したものとみなされます。

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<もう少し詳しく>

◆『解除権の行使に関して“期間の定めがない”とき』

 違約した人(債務者)は解除権者に対して、相当と思われる期間を定め、その

期間内に、

 「アナタは解除するつもりですか、それとも話し合いますか?」

それを確答してほしい、と催告することができます。

 ア)返事が「解除する」――――→ 契約の解除(解除権の行使)

 イ)返事が「解除しない」―――→ お互いの話し合い(解除権は消滅)

 ウ)何の返事もない――――――→ これまた、話し合い(解除権は消滅)

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次回は、「契約解除の効果」についてお話いたします。    (第3回了)



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆「債務不履行」緊急号外(事例研究)◇◆◇◆◇◆◇◆

<契約解除に関する問題> 下記の記述は民法の記述によれば○か、×か。

「履行遅滞を理由として売買契約を解除する場合、相当の期間を定めて催告し相

当の期間が経過することで、当然に売買契約は解除となる。」

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〔民法第541条〕

『契約当事者の一方が期日がきても債務を履行しないときは、相当な期間を定め

て債務を履行するように催促し、それでも相手方が債務を履行しないときに“は

じめて”契約を解除“することができる”。』

[解説]

どんな契約でも、定めた期日が過ぎれば債務者はすでに債務不履行の責任(第

415条)を負っていいますから、解除するのに改めて催促する必要はないように

も思われます。

しかし、普通の契約の場合はなるべく契約関係を維持して「遅ればせ」ながらで

も本来の目的を達することが望ましい事例は少なくありません。

そこで、民法は、「相当な期間」を猶予して、もう一度催促させ、債務者に再考

を促すことにしたのです。

では、「相当な期間」とはどれくらいの期間か?

これは、それぞれの取引内容に応じて、債務の性質など具体的・客観的事情をみ

て見て決めることになります。

判例では、

・代金引き替えの約束で送付した商品の残代金約60万円について2日間

・1年分の延滞賃料支払いについて12月末日から1月10日まで

というのは、いずれも相当な期間であるとされています。


【正解:×】

“当然に解除”ではなく、“解除権が発生したから行使してもイイヨ”というこ

とになります。

<関連>

催告期間内に履行がないことを停止条件として契約解除の意思表示を行うことが

できます。

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<参考>〔民法第542条〕

―期日に履行されないと意味がなくなる場合―

一定の期日に履行されなければ契約をした意味がなくなるという、期日が大切

な意味をもつ場合、契約の性質上、その期日が過ぎればすぐに契約を解除でき

る。もう一度念をおして催促する必要はない。

(例1)某月某日に海外へ赴任してしまう同僚に贈るための贈り物の注文をした

のに、間に合わなかった。

(例2)お祭りに着る揃いのゆかたを注文したのに、祭りの当日に間に合わな

かった。


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