宅建過去問 権利の変動篇
平成21年・問10・肢2 補充 判例 民法557条1項 最高裁・昭和40.11.24
【判例】 解約手附の授受された売買契約において,当事者の一方は,自ら履行に着手した場合でも,相手方が履行に着手するまでは,民法第557条第1項に定める解除権を行使することができるものと解するのを相当とする(最高裁・昭和40.11.24)。 解約手附の交付があつた場合には、特別の規定がなければ、当事者双方は、履行のあるまでは自由に契約を解除する権利を有しているものと解すべきである。然るに、当事者の一方が既に履行に着手したときは、その当事者は、履行の着手に必要な費用を支出しただけでなく、契約の履行に多くの期待を寄せていたわけであるから、若しかような段階において、相手方から契約が解除されたならば、履行に着手した当事者は不測の損害を蒙ることとなる。従つて、かような履行に着手した当事者が不測の損害を蒙ることを防止するため、特に民法557条1項の規定が設けられたものと解するのが相当である。 同条項の立法趣旨を右のように解するときは、同条項は、履行に着手した当事者に対して解除権を行使することを禁止する趣旨と解すべく、従つて、未だ履行に着手していない当事者に対しては、自由に解除権を行使し得るものというべきである。このことは、解除権を行使する当事者が自ら履行に着手していた場合においても、同様である。 すなわち、未だ履行に着手していない当事者は、契約を解除されても、自らは何ら履行に着手していないのであるから、これがため不測の損害を蒙るということはなく、仮に何らかの損害を蒙るとしても、損害賠償の予定を兼ねている解約手附を取得し又はその倍額の償還を受けることにより、その損害は填補されるのであり、解約手附契約に基づく解除権の行使を甘受すべき立場にあるものである。 他方、解除権を行使する当事者は、たとえ履行に着手していても、自らその着手に要した出費を犠牲にし、更に手附を放棄し又はその倍額の償還をしても、なおあえて契約を解除したいというのであり、それは元来有している解除権を行使するものにほかならないばかりでなく、これがため相手方には何らの損害を与えないのであるから、右557条1項の立法趣旨に徴しても、かような場合に、解除権の行使を禁止すべき理由はなく、また、自ら履行に着手したからといつて、これをもつて、自己の解除権を放棄したものと擬制すべき法的根拠もない。 |
4 A所有の甲土地に抵当権の登記があり、Bが当該土地の抵当権消滅請求をした場合には、Bは当該請求の手続が終わるまで、Aに対して売買代金の支払を拒むことができる。 |
【正解:○】昭和59年・問10・肢4,昭和63年・問10・肢4,平成元年・問4・肢3,平成2年・問6・肢2, A(抵当権設定者)・・・・抵当権者 買い受けた不動産に,先取特権,質権,抵当権の登記があるときは,買主は,抵当権消滅請求の手続きを終わるまで,その代金の支払いを拒絶することができます(民法577条1項)。 買主が抵当権消滅請求する場合には,抵当権消滅請求を終えるまで代金支払を拒絶することができ,その代金から抵当権消滅請求に要した費用を差し引いて売主に支払うこともできます。 |