宅建過去問 権利の変動篇
担保責任・解約手付の過去問アーカイブス 平成21年・問10 売買契約の小問集合
瑕疵担保責任,解約手付,他人物売買,代金支払拒否権,
Aを売主、Bを買主として甲土地の売買契約を締結した場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。(平成21年・問10) |
1 A所有の甲土地にAが気付かなかった瑕疵 (かし) があり、その瑕疵については、Bも瑕疵であることに気づいておらず、かつ、気付かなかったことにつき過失がないような場合には、Aは瑕疵担保責任を負う必要はない。 |
2 BがAに解約手付を交付している場合、Aが契約の履行に着手していない場合であっても、Bが自ら履行に着手していれば、Bは手付を放棄して売買契約を解除することができない。 |
3 甲土地がAの所有地ではなく、他人の所有地であった場合には、AB間の売買契約は無効である。 |
4 A所有の甲土地に抵当権の登記があり、Bが当該土地の抵当権消滅請求をした場合には、Bは当該請求の手続が終わるまで、Aに対して売買代金の支払を拒むことができる。 |
<コメント> |
肢4は近年出題のなかった論点ですが,肢1〜肢3は頻出論点であるため,肢4を知らなくても,消去法で正解肢にたどり着くことができました。宅建試験の民法としてはかなりやさしい問題であり,正答率は高くなりました。 |
●出題論点● |
(肢1) 担保責任は,判例・通説とも,売主の無過失責任。
(肢2) 〔判例〕当事者の一方は,自ら履行に着手した場合でも,相手方が履行に着手するまでは,手付けによる解除権を行使することができる。 (肢3) 他人物売買の契約は有効であり,無効にはならない。 (肢4) 買い受けた不動産に,先取特権,質権,抵当権の登記があるときは,買主は,抵当権消滅請求の手続きを終わるまで,その代金の支払いを拒絶することができる。 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
正答率 | 80.7% |
1 A所有の甲土地にAが気付かなかった瑕疵 (かし) があり、その瑕疵については、Bも瑕疵であることに気づいておらず、かつ、気付かなかったことにつき過失がないような場合には、Aは瑕疵担保責任を負う必要はない。 |
【正解:×】昭和45年, 瑕疵担保責任は,判例・通説とも,売主の無過失責任〔無過失であっても責任を負う〕と解されています。売主Bに故意や過失がなくても担保責任を負います。 本肢では,「売主が瑕疵に気づいておらず、かつ、気づかなかったことに過失がない場合〔善意無過失の場合〕には、瑕疵担保責任を負う必要はない。」としていますが,誤りです。 |
2 BがAに解約手付を交付している場合、Aが契約の履行に着手していない場合であっても、Bが自ら履行に着手していれば、Bは手付を放棄して売買契約を解除することができない。 |
【正解:×】平成17年・問9・肢4,平成16年・問4・肢2,平成12年・問7・肢2, 買主が,売主に対して手付金を支払っていた場合には,当事者の一方(本肢では買主)が自ら履行に着手していても,相手方(本肢では売主)が履行に着手するまでは解除権を行使できます(民法557条1項,判例)。⇒ 未だ履行に着手していない当事者は,手付けによる解除がされても,自らは履行に着手していないので,不測の損害を蒙ることがないため。 本肢の買主Bは,売主Aが契約の履行に着手していないのであれば,買主Bが自ら履行に着手していても,買主Bは手付を放棄して売買契約を解除することができるので,本肢は誤りです。 【判例】 解約手附の授受された売買契約において,当事者の一方は,自ら履行に着手した場合でも,相手方が履行に着手するまでは,民法第557条第1項に定める解除権を行使することができるものと解するのを相当とする(最高裁・昭和40.11.24)。 |
3 甲土地がAの所有地ではなく、他人の所有地であった場合には、AB間の売買契約は無効である。 |
【正解:×】昭和43年,昭和48年,昭和51年,昭和54年,平成元年・問4,平成11年・問10・肢1, 他人物売買では,目的物の所有者が当初から目的物を譲渡する意思がなくても,契約は有効であり,無効にはなりません。他人物売買の売主は,現在は第三者が所有している他人物の所有権を取得して,買主に移転する義務を負います(民法560条)。 そのため,当該第三者に譲渡の意思がないときであっても,売主は担保責任を負います(最高裁・昭和25.10.26)。 |
4 A所有の甲土地に抵当権の登記があり、Bが当該土地の抵当権消滅請求をした場合には、Bは当該請求の手続が終わるまで、Aに対して売買代金の支払を拒むことができる。 |
【正解:○】昭和59年・問10・肢4,昭和63年・問10・肢4,平成元年・問4・肢3,平成2年・問6・肢2, A(抵当権設定者)・・・・抵当権者 買い受けた不動産に,抵当権の登記があるときは,買主は,抵当権消滅請求の手続きを終わるまで,その代金の支払いを拒絶することができます(民法577条1項)。 ⇒ 買い受けた不動産に先取特権,質権の登記があるときにも準用される(民法577条2項)。 ▼抵当不動産の買主が抵当権消滅請求する場合には,抵当権消滅請求を終えるまで代金支払を拒絶することができ,その代金から抵当権消滅請求に要した費用を差し引いて売主に支払うこともできます。 |