Brush Up! 権利の変動篇

不動産登記の過去問アーカイブス 区分建物の登記 平成元年・問16 改正対応


区分建物に係る登記に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(平成元年・問16)

1.「敷地権たる旨の登記ある土地の登記記録には,敷地権を目的とする一般の先取特権の保存の登記及び質権又は抵当権の設定の登記は,その土地が敷地権の目的となる前にその登記原因が生じたものであっても,することができない。」

2.「建物について敷地権の表示を登記したときは,敷地権の目的である土地の登記記録の権利部の相当区に,敷地権たる旨の登記をしなければならない。」

3.「区分建物の所有権保存の登記は,表題部所有者から所有権を取得した者も,申請をすることができるが,当該建物が敷地権付き区分建物であるときは,当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。」

4.「数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき共用部分は,区分建物として登記をすることができない。」

区分建物  建物の区分所有等に関する法律第2条第1項に規定する区分所有権の対象になる建物をいう。

【正解】

×

1.「敷地権たる旨の登記ある土地の登記記録には,敷地権を目的とする一般の先取特権の保存の登記及び質権又は抵当権の設定の登記は,その土地が敷地権の目的となる前にその登記原因が生じたものであっても,することができない。」(関連・昭和61年・問16)
【正解:×

◆敷地権と専有部分の分離処分禁止の例外

 原則

 敷地権たる旨の登記がなされると、その土地の登記記録には敷地権を目的とする一般の先取特権の保存,質権・抵当権の設定の登記はできません

 例外=敷地権の生ずる前

 ただし、その土地が敷地権の目的となる前にその登記原因が生じたものであれば、抵当権・質権の設定を登記することができます(不動産登記法・73条2項)

一般の先取特権は,債務者の一般財産の全てに及ぶため,土地または建物のみに生じるということはありません。

▼専有部分のみを目的とする登記が例外的に許される場合

敷地権付き区分建物についての所有権又は担保権に係る権利に関する登記(所有権・一般の先取特権・質権・抵当権)であって,区分建物に関する敷地権の登記をする前に登記されたもの(登記の目的等が敷地権の目的となった土地の権利にされた担保権の登記の目的等と同一の担保権の登記を除く。)

・その土地が敷地権の目的となる前に登記原因が生じていた所有権に関する仮登記

・その土地が敷地権の目的となる前に登記原因が生じていた抵当権・質権の登記

・敷地権が生じた後にその登記原因が生じたもの(分離処分が禁止されていない場合に限る。)

2.「建物について敷地権の表示を登記したときは,敷地権の目的である土地の登記記録の権利部の相当区に,敷地権たる旨の登記をしなければならない。」 (類・昭和61年・問16)(類・昭和62年・問15,平成13年・問14)

【正解:

◆敷地権たる旨の登記→土地の登記記録の権利部の相当区

 登記官は,表示に関する登記のうち,区分建物に関する敷地権について表題部に最初に登記をするときは,当該敷地権の目的である土地の登記記録について,職権で,当該登記記録中の所有権,地上権その他の権利が敷地権である旨の登記をしなければならない(不動産登記法・46条)

 区分建物の敷地権の目的となった旨の登記は、土地の登記記録の権利部の相当区、つまり、

・その敷地利用権が所有権に基づく→「甲区」

・地上権又は賃借権の場合→「乙区」

に登記がなされます。

▼敷地権の表示が登記されるとは何か

1棟の建物の表題部に、「敷地権の目的たる土地の表示の登記」がなされる。

区分建物の表題部に、「敷地権の表示」がなされる。

●敷地権たる旨の登記まで
 分譲業者などがマンションを新築
  
 表題登記 48条
  
 敷地権の表示 44条1項
(・表題部(1棟の建物の表題部)に、「敷地権の目的たる土地の表示」の登記がなされる。
 ・表題部(区分建物の表題部)に、「敷地権の表示」の登記がなされる。)
  
 敷地権たる旨の登記 46条
(敷地権の表示の登記がなされると、登記官が、敷地権の目的である土地の登記記録の権利部の相当区に職権で、登記する。)

3.「区分建物の所有権保存の登記は,表題部所有者から所有権を取得した者も,申請をすることができるが,当該建物が敷地権付き区分建物であるときは,当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。」(類・平成8年・問16,平成12年・問14)

【正解:

◆所有権保存登記 区分建物の表題部に記載された所有者から取得した者

 区分建物の登記記録の表題部所有者から所有権を取得した者は,直接自己名義に当該建物の所有権保存の登記を申請することができます。ただし,当該建物が敷地権付き区分建物であるときは,当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければなりません(不動産登記法・74条2項)

4.「数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき共用部分は,区分建物として登記をすることができない。」(類・昭和62年・問15)

【正解:

◆法定共用部分

 法定共用部分(数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき共用部分)は、区分建物の要件(構造上の独立性、利用上の独立性)を満たさないので、区分建物として登記することはできません。

 もっとも、法定共用部分であっても、区分所有者全員の同意の上(共有物の変更、民法251条)、構造上・利用上の独立性をもつように区画して区分建物として登記申請することは可能ですが、本肢はそこまでは想定していないと思われます。

法定共用部分の例

専有部分以外の

建物の躯体部分など

 廊下、階段室、玄関、ロビー、バルコニー、ベランダ、屋上、

 屋根、外壁、柱・梁、耐力壁、基礎、電気室、機械室、

 共用トイレ、エレベーター室(隔壁については議論があります)

専有部分に属さない

建物の附属物

 電気の配線、ガス、水道の配管、排水管、消火・冷暖房設備、

 エレベーター、屋外の給水塔、避雷設備、共聴アンテナ等


区分建物の登記の過去問(単独問題)

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