Brush Up! 権利の変動篇

不動産登記の過去問アーカイブス  区分建物の登記 昭和60年・問13 改正対応


●メッセージ
 昭和59年1月1日施行の区分所有法改正(昭和58年5月21日法律第51号)を受けての出題で,区分建物の登記の単独問題としては初めてでした。昭和60,61,62と3年連続出題

区分建物<注>に係る登記に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(昭和60年・問13)

1.「専有部分の床面積は,壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積により算出される。」

2.「区分建物において,建物の名称があるときは,その名称は区分建物の表題部に記録される。」

3.「区分建物の登記記録では,一棟の建物に属する各区分建物ごとに作成され,一棟の建物の表題部,区分建物の表題部,区分建物の権利部の甲区及び乙区が設けられる。」

4.「敷地権があるときは,敷地権の表示は区分建物の表題部に記載される。」

<注>区分建物=建物の区分所有等に関する法律第2条第1項に規定する区分所有権の目的である建物をいう。

【正解】

×

1.「区分建物の床面積は,壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積により算出される。」(類・平成13年・問14)

【正解:×

◆区分建物の床面積内側線で囲まれた部分の水平投影面積

 不動産登記法上では、区分建物(1棟の建物を区分した建物)の床面積は、壁その他の内側線で囲まれた部分の水平投影面積により算出されます(登記規則・115条)

本肢は『中心線』で囲まれた部分の水平投影面積といっているので×です。

区分所有法14条1項は、共用部分の持分割合を専有部分の床面積によると定め、3項ではその専有部分の床面積を「壁その他の内側線で囲まれた部分の水平投影面積」により算出すると定めたものです。

●1棟の建物の各階の床面積

 1棟の建物とは、区分建物が属する建物のことをいいます。

 登記記録の、1棟の建物全体の各階ごとの床面積は、壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積により算出され、記載されています。

 区分建物(専有部分)の床面積の算定基準とは異なりますので、注意してください。

専有部分の床面積 壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積
1棟の建物の
各階ごとの床面積
壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積

各階の専有部分の床面積の合計は、1棟の建物の各階ごとの床面積の合計とは一致しません。

・専有部分の床面積と1棟の建物の各階の床面積の算定基準が異なること。

・1棟の建物の各階の床面積には、共用部分の床面積も算入されていること。

 主に、この2つの理由によります。

2.「区分建物において,建物の名称があるときは,その名称は区分建物の表題部に記録される。」

【正解:

◆建物の名称

 各区分建物(専有部分)の表題部の「専有部分の建物の表示」にある「建物の名称」は、「○○マンション345号室」のような表記になっています。家屋番号とは別のものです。

 各区分建物(専有部分)の表題部の「1棟の建物の表示」にも、「建物の名称」という欄があり、「○○マンション」のように、マンション全体の名称になっていることが多いようです。なお、各区分建物(専有部分)の家屋番号は、表題部(一棟の建物の表題部,区分建物の表題部のどちらにも)に記載されています。

各区分建物

の登記記録

(専有部分)

一棟の建物の

表題部

・一棟の建物の表示

・敷地権の目的たる土地の表示

区分建物の

表題部

・専有部分の建物の表示

 (不動産番号・家屋番号・建物の名称・種類・構造・
  床面積・原因及び日付・登記の日付)

・附属建物の表示(符号・種類・構造・床面積・
  原因及び日付・登記の日付)

・敷地権の表示

権利部・甲区 ・所有権に関する事項
権利部・乙区 ・所有権以外の権利に関する事項

3.「区分建物の登記記録では,一棟の建物に属する各区分建物ごとに作成され,一棟の建物の表題部,区分建物の表題部,区分建物の権利部の甲区及び乙区が設けられる。」
【正解:

◆区分建物の登記記録−区分建物ごとに作成されることに注意

 マンションの各専有部分(区分建物)はそれぞれ一個の独立した1つの建物なので、不動産番号も一棟の建物に属する各区分建物ごとに付され(登記規則90条)、一棟の建物に属する各区分建物ごとに、以下のように登記記録が作成されます(登記規則・4条3項,別表三・区分建物である建物の登記記録,登記規則197条2項3号,別記9号)。

登記記録は、各専有部分ごとに一つの登記記録

▼敷地権登記のある建物の登記記録の構成

各区分建物

の登記記録

(専有部分)

一棟の建物の

表題部

・一棟の建物の表示

・敷地権の目的たる土地の表示

区分建物の

表題部

・専有部分の建物の表示

 (不動産番号・家屋番号・建物の名称・種類・構造・
  床面積・原因及び日付・登記の日付)

・附属建物の表示(符号・種類・構造・床面積・
  原因及び日付・登記の日付)

・敷地権の表示

権利部・甲区 ・所有権に関する事項
権利部・乙区 ・所有権以外の権利に関する事項

●類題
1.「登記簿は,一筆の土地又は一個の建物につき一登記記録が備えられるが,区分建物についても,各専有部分ごとに一登記記録が備えられる。」(昭和59年・問16・改)
【正解:

4.「敷地権があるときは,敷地権の表示は区分建物の表題部に記録される。」

【正解:

◆敷地権の表示の登記=区分建物の表題部

 敷地権(敷地利用権のうち、専有部分と分離して処分できず、かつその旨の登記があるもの)の表示の登記は、区分建物の表題部に記載されます。

土地の登記記録の権利部の相当区に、「敷地権たる旨の登記」がなされるのと混同しないようにしましょう。

▼敷地権に関連する登記は三つあります。間違えやすいので注意!!

▼敷地権たる旨の登記  敷地権の目的である土地の登記記録の
 権利部の相当区

 (敷地権が所有権→甲区、

  敷地権が地上権・賃借権→乙区)

▼敷地権の目的たる土地の表示  表題部(1棟の建物の表題部)
▼敷地権の表示の登記  表題部(区分建物の表題部)

●敷地権たる旨の登記まで
 分譲業者などがマンションを新築
  
 表題登記
  
 表題部に「敷地権の目的たる土地の表示」、「敷地権の表示」の登記がなされる。
  
 敷地権たる旨の登記
(敷地権の表示の登記がなされると、登記官が、敷地権の目的である土地の登記記録の権利部の相当区に職権で、登記する。)

区分建物の登記の過去問(単独問題)

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