宅建過去問 権利の変動篇
不動産登記法の過去問アーカイブス 平成20年・問16 登記申請
不動産の登記に関する次の記述のうち、不動産登記法の規定によれば、誤っているものはどれか。 (平成20年・問16) |
1 所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。 |
2 仮登記の登記義務者の承諾がある場合であっても、仮登記権利者は単独で当該仮登記の申請をすることができない。 |
3 二筆の土地の表題部所有者又は所有権の登記名義人が同じであっても、持分が相互に異なる土地の合筆の登記は、申請することができない。 |
4 二筆の土地の表題部所有者又は所有権の登記名義人が同じであっても、地目が相互に異なる土地の合筆の登記は、申請することができない。 |
<コメント> |
前年の19年に初出題の濫発がありましたが〔正解肢そのものは基本問題〕,20年は,比較的やさしい肢ばかりです。
登記法は正解肢そのもので見ればたやすく正誤が判断できる出題がこのところ続いています。初出題の肢に惑わされずに解けるようにしたいものです。 |
●出題論点● |
(肢1) 所有権に関する仮登記に基づく本登記を申請するには,利害関係人の承諾が必要
(肢2) 仮登記義務者の承諾があれば,仮登記権利者は単独で仮登記の申請ができる。 (肢3) 共有で,持分が相互に異なる土地の合筆の申請はできない。 (肢4) 地目が相互に異なる土地の合筆の申請はできない。 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | ○ | ○ |
正答率 | 67.1% |
1 所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。 |
【正解:○】平成2年・問16・肢4,平成6年・問16・肢3, 所有権に関する仮登記に基づく本登記は,登記上の利害関係を有する第三者がある場合には,<当該第三者が承諾したことを証する当該第三者自身が作成した情報>または<その者に対抗することができる裁判があったことを証する情報>を提供しなければ,申請することはできません(不動産登記法109条1項,登記令7条1項5号ハ,登記令別表69項・添付情報)。 問題文では,「当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。」としていますが,これは登記法109条ソノママの表現なので,これをもって誤りとは言えません。 登記令では,109条1項の<当該第三者の承諾があるとき>を 「本人が承諾している場合」と「本人の承諾に代わるものとして,対抗できる裁判があった場合」の二つに分けているものと考えることができます。 ▼登記官は,所有権に関する仮登記に基づく本登記の申請に基づいて登記をするときは,職権で,第三者の権利に関する登記を抹消しなければなりません(不動産登記法109条2項)。 ●仮登記に基づく本登記の申請での登記義務者 所有権の仮登記に基づく本登記も,登記義務者と登記権利者とで,共同申請します。この場合の登記権利者は仮登記権利者,登記義務者は仮登記義務者です。 たとえば,仮登記義務者Aと仮登記権利者Bによって所有権移転の仮登記がなされた後に,AからCに売買による移転登記がなされている場合に, 仮登記に基づく本登記を共同申請するときの登記権利者はBで,登記義務者はA(またはAを相続した者)です。Cは仮登記に基づく本登記をする場合の<利害関係人>になります。 A(仮登記義務者) ― B (仮登記権利者) A,Bは,利害関係者Cが承諾したことを証するC自身が作成した情報>または<Cに対抗することができる裁判があったことを証する情報>を添付して,所有権の仮登記に基づく本登記を共同申請します。 |
所有権に関する仮登記に 基づく本登記 |
登記上の利害関係を有する第三者の承諾を証する
当該利害関係者自身が作成した情報か, 利害関係者に対抗できる裁判があったことを証する情報 |
所有権以外の仮登記に 基づく本登記 |
利害関係者の承諾の情報や
これに対抗できる裁判があったことを証する情報は不要 |
2 仮登記の登記義務者の承諾がある場合であっても、仮登記権利者は単独で当該仮登記の申請をすることができない。 |
【正解:×】平成5年・問15・肢3,平成16年・問15・肢1, 仮登記も,仮登記権利者と仮登記義務者が共同で申請するのが原則ですが, <仮登記の登記義務者の承諾があるとき>,<仮登記を命ずる処分があるとき>は,共同申請主義の例外として,当該仮登記の登記権利者が単独で申請することができます(不動産登記法107条1項)。 |
3 二筆の土地の表題部所有者又は所有権の登記名義人が同じであっても、持分が相互に異なる土地の合筆の登記は、申請することができない。 |
【正解:○】初出題 二筆の土地が共有名義で,表題部所有者〔保存登記がされているとき〕や所有権の登記名義人〔保存登記または移転登記がされているとき〕で同じであっても,持分が相互に異なる土地の合筆の登記は,申請できません(不動産登記法41条4号)。 |
●合筆の登記の制限 |
(合筆の登記の制限) 第41条 次に掲げる合筆の登記は、することができない。 一 相互に接続していない土地の合筆の登記 二 地目又は地番区域が相互に異なる土地の合筆の登記 三 表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に異なる土地の合筆の登記 四 表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に持分を異にする土地の合筆の登記 五 所有権の登記がない土地と所有権の登記がある土地との合筆の登記 六 所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地(権利に関する登記であって、合筆後の土地の登記記録に登記することができるものとして法務省令で定めるものがある土地を除く。)の合筆の登記 |
4 二筆の土地の表題部所有者又は所有権の登記名義人が同じであっても、地目が相互に異なる土地の合筆の登記は、申請することができない。 |
【正解:○】平成11年・問11・肢3 二筆の土地の表題部所有者〔保存登記がされているとき〕や所有権の登記名義人〔保存登記または移転登記がされているとき〕で同一人であっても,地目が相互に異なる土地の合筆の登記は,申請できません(不動産登記法41条2号)。 |