宅建過去問 税法その他 

贈与税の過去問アーカイブス 平成22年・問23

特定の贈与者から住宅取得資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例 


 特定の贈与者から住宅取得資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例(65歳未満の親からの贈与についても相続時精算課税の選択を可能とする措置)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。(平成22年・問23)

1 65歳未満の親から住宅用家屋の贈与を受けた場合でも、この特例の適用を受けることができる。

2 父母双方から住宅取得のための資金の贈与を受けた場合において、父母のいずれかが65歳以上であるときには、双方の贈与ともこの特例の適用を受けることはできない。

3 住宅取得のための資金の贈与を受けた者について、その年の所得税法に定める合計所得金額が2,000万円を超えている場合でも、この特例の適用を受けることができる。

4 相続時精算課税の適用を受けた贈与財産の合計額が2,500万円以内であれば、贈与時には贈与税は課されないが、相続時には一律20%の税率で相続税が課される。

<コメント>  
 住宅取得資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例は,今回が三度目の出題です。

 正解肢はすでに過去問で出題歴がありますが,それ以外の肢は初出題であったため,受験者は混乱し,正答率は低いものになりました。 

 この特例は各基本書や予備校のテキストでも本格的な記述が少ないため,狙い撃ちされたようです。

●出題論点●
 (肢1) 住宅取得資金の贈与を受けた場合にのみ,適用される

 (肢2) 65歳未満の贈与者ごとに適用される

 (肢3) 所得制限はない

 (肢4) この特例を適用した場合の贈与税の税率と相続税額

【正解】

× × ×

 正答率  34.8%

1 65歳未満の親から住宅用家屋の贈与を受けた場合でも、この特例の適用を受けることができる。

【正解:×初出題

◆住宅取得資金の贈与を受けた場合にのみ,適用される

 この特例は,特定の贈与者から住宅取得資金の贈与を受けた場合に適用されます(租税特別措置法70条の3第1項)。住宅用家屋の贈与を受けた場合には適用されません。

 住宅用家屋の贈与を受けた場合に適用を受けることができるのは,相続時精算課税(相続税法21条の9) です。

2 父母双方から住宅取得のための資金の贈与を受けた場合において、父母のいずれかが65歳以上であるときには、双方の贈与ともこの特例の適用を受けることはできない。

【正解:×初出題

◆65歳未満の贈与者ごとに適用される

 この特例は,特定贈与者の年齢が65歳未満の場合であれば適用されるので,父母の一方が65歳以上のときは,65歳未満の他方の親からの贈与に適用が受けられないということはありません(租税特別措置法70条の3第1項)

 この特例は,贈与者ごとに適用を受けることができるので,父母の双方とも65歳未満の場合,双方からの住宅取得のための資金の贈与を受けたときは,双方からの贈与に適用を受けることができます。

65歳以上の特定贈与者から贈与を受けた場合は,相続時精算課税(相続税法21条の9)の適用が受けられます。

3 住宅取得のための資金の贈与を受けた者について、その年の所得税法に定める合計所得金額が2,000万円を超えている場合でも、この特例の適用を受けることができる。

【正解:関連改正との混同を狙った問題 平成16年・問27・肢3,

◆所得制限はない

 この特例には,受贈者の所得制限はありません。合計所得金額が2,000万円を超えている場合でも適用を受けることができます。

 所得制限があるのは,≪直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税≫です。 

 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税では,受贈者の合計所得金額が2,000万円を超えている場合はその特例の適用を受けることができない(租税特別措置法70条の2第2項第1号)

平成22年改正で所得制限が設けられました。なお,この非課税措置は,相続時精算課税制度や本問の特例と異なり,実の父母(将来の被相続人)だけでなく祖父母からの贈与にも適用されます。

4 相続時精算課税の適用を受けた贈与財産の合計額が2,500万円以内であれば、贈与時には贈与税は課されないが、相続時には一律20%の税率で相続税が課される。

【正解:×初出題

◆この特例の適用後の贈与税の税率と相続税額

 この特例の適用を受けた場合の贈与税の額は,特定贈与者ごとに,贈与財産の合計額から2,500万円※を控除した後の金額に,一律20%の税率を乗じて算出します(相続税法21条の10,同21条の12第1項,租税特別措置法70条の3第1項)
⇒ 「2,500万円以内であれば、贈与時には贈与税は課されない」という記述そのものは正しい。

 また,相続時精算課税の適用を受けた場合の相続税額は,相続時精算課税に係る贈与者が亡くなった時に,それまでに贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額と相続や遺贈により取得した財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から,既に納めた贈与税相当額 (贈与時の価額) を控除して算出します(相続税法21条の14)
 ⇒ 相続時の相続税の税率は,一律20%の税率ではなく,相続財産の価額により変動する。

 したがって,本肢の後半の記述−「相続時には一律20%の税率で相続税が課される」−は誤りです。

この2,500万円は,複数年にわたり利用できる特別控除額の合計です。前年までに,既にこの特別控除額を控除している場合は,その残額がその年の限度額となります。

●非課税との併用
 相続時精算課税制度,特定の贈与者から住宅取得資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例とも,特定贈与者ごとに,直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税と併用できます。

1) 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税

 平成26年中に住宅取得等資金の贈与を受けた場合は,そのうち500万円(省エネ等住宅[耐震性住宅,省エネ住宅]は1,000万円)が非課税。

2) 相続時精算課税制度,特定の贈与者から住宅取得資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例 (上記の非課税の適用後に,残りの額に適用される)

 特別控除額2,500万円


●贈与税の過去問アーカイブス  〜検索用〜 
平成16年・問27平成19年・問27平成22年・問23

過去問アーカイブス・税法その他に戻る 所得税・贈与税の過去問のトップに戻る

税法その他・基礎編のトップに戻る 税法/所得税のトップに戻る