宅地建物取引主任者資格のガイド
ここでは、初めて宅建を受験される方のために、宅建ワールドをご案内し、学習方法・受験者の統計データ、などをご紹介します。 なお、ここでの資料は、(財)不動産適正取引推進機構と自由国民社 『今年こそ宅建!』 の編集部の方のご提供、ご協力で、掲載させて戴いております。この場を借りて、感謝申し上げます。
●平成21年3月31日現在の宅地建物取引主任者の統計(不動産適正取引推進機構調べ)
資格登録者 | 主任者証交付 | 就業者 | 就業者/登録者 | |
全体 | 843,178 | 471,744 | 279,135 | 33.11% |
男性 | 650,728 | 361,144 | 219,306 | 33.70% |
女性 | 192,450 | 110,600 | 59,829 | 31.09% |
女性の占有率 | 22.8% | 23.4% | 21.4% | − |
− 目次 ―
1 宅建ワールド・ツアー
−職種による合格率の差−
−合格者の年齢構成ー
−年代別の合格率−
2 合格者の学習データ
●宅地建物についての知識・スキルの重要性 |
長い人生で,必ず必要となるのは,医療・法律・金融・不動産・情報資源です。不動産は医者や弁護士,銀行,新聞・テレビなどの情報資源と同じくつきあいの長いものであり,産業や家庭の物質的基盤ともなるものです。
また,バブル崩壊後の近年は社会的なリストラとも言える激変期を迎えており,不動産や法律への関心は深まっています。宅建は,本来は不動産流通業に必要とされる資格ですが,近年は自己啓発で受験する方が相当な数に上っています。〔司法書士,不動産鑑定士,土地家屋調査士等の入門資格として受験する場合も含む。〕 不動産についての知識やスキルはいわゆる学校で教えられるものではなく,アパートの賃貸借契約やマイホームの購入,マンションの管理,会社での用地取得などで私たちは折に触れて学んできました。近年の不動産流通業以外の方の宅建受験は,社会的に,受身での知識取得からより積極的な知識取得に向かっているとも考えられます。 不動産の流通業務には,産業や家庭の物質的基盤ともなる不動産を扱うという大きな責任があります。宅建主任者の資格取得はこの業界の方にとってはスタートラインになっています。 |
1 宅建ワールド・ツアー
宅地建物取引主任者の仕事 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
■不動産業≠宅地建物取引業 まず、初めに確認しておきたいのは、不動産業という言葉の定義。不動産業は、多岐にわたっており、次のように分類できます。(平成12年版・建設白書・不動産業の動向と施策) 開発・分譲部門、流通部門、賃貸部門、管理部門 宅地建物取引業とは、この不動産業の中の、主に流通部門・開発分譲部門になり、『宅地・建物の売買・交換、宅地・建物の売買・交換・貸借の代理・媒介』を扱い、平成17年3月末日現在の業者数130,819(大臣免許業者2,071、知事免許業者128,748)であり、このうち法人業者79.7%、個人業者20.3%になっています。なお、この場合の『宅地』・『建物』・『取引』・『業』のひとつひとつは『宅地建物取引業法』で定義されているもので、通常使われている意味とは異なっているので注意してください。 宅地建物取引業という分類は、実は、国土交通大臣や都道府県知事から免許を得て、「宅地」や「建物」を取引する事業者という共通項のみであり、さまざまな業種に渡っています。 ------------ (1) いわゆる不動産業 大手や中堅の不動産会社は、開発・企画・建設・分譲・売買・仲介・賃貸・管理と他業種までも統合していることが多いのに対し、例えば法人相手にしか取引をしない会社、競売物件の売買に特化した会社、売買の仲介専門の会社などさまざまな専門的企業もあり、最後に、地域密着型の町の不動産屋(アパート・マンション・テナントの賃貸物件、土地・1戸建ての売買などを扱う)。ざっと見るとこんな感じです。 (2) 一般企業の不動産部門 鉄道会社・運輸業・倉庫業・保険・百貨店・商社・外食産業・金融業なども、進出しています。本業の業績不振から事業の多角化に乗り出しているところもあれば、遊休地の資産運用のためというところもあるし、宅地建物を担保にすることの多い金融機関の関連会社もあります。規制緩和・不動産証券化の折から、異業種参入はこれからも増えてくると思います。 (3) 信託会社、信託銀行 国土交通大臣・都道府県知事免許業者以外に、信託会社・信託業務を兼営する銀行があります。この二つには、宅建業法の免許の規定は適用されていません。信託業務の中に宅建業は含まれており、信託会社・信託業務を兼営する銀行の場合、信託業務について内閣総理大臣から認可(信託業務を兼営する銀行)または免許(信託会社)を与えられているので、その他に宅建業の免許をとる必要はなく、国土交通大臣から免許を受けた宅建業者とみなされます。もちろん、免許の規定以外のものには、宅建業法が適用されます。 ------------ つまり、不動産業>宅地建物取引業 になっているわけで、この点は注意しなければなりません。大まかに言えば、宅地建物取引業(以後、宅建業と略します) は、日常でいうところの『不動産屋さん』に該当しますが、「いわゆる不動産屋さん」ではない法人・個人業者も多い、ということでした。 註 不動産関連業という場合、具体的には、次のような業務を指します。 宅地建物取引業・不動産賃貸業・不動産鑑定業・不動産管理業・不動産投資顧問業・宅地以外(山林・農地・公園)の土地の取引業・各種の用地の大規模な造成・開発、コンサルティング業務など。 宅地建物取引主任者は、この宅建業の中で、次の業務を行うとされています。 (1) 契約の成立する前に『重要事項(物件の法律で定められた項目)説明書』に記名押印する。 (2) 重要事項説明書を、物件を入手しようとする当事者に交付して説明する。(契約するかしないかの判断材料になる) (3) 契約が成立したあと遅滞なく 両当事者(売主・買主)に交付する、契約書面(37条書面)に記名押印する。37条書面とは、契約内容をめぐるトラブルを防止する為に、売主・買主お互いに契約内容を確認する目的で、物件の法律で定められた項目を記したものであり、宅建業者は両当事者に交付することが義務付けられています。 この三つは宅建主任者でなければできず、宅建業者は必ず宅建主任者にさせなければならないものとされています。特に重要事項説明は怠ると業者は業務停止処分の対象にもなりうるという厳しいものです。 不動産取引では、購入・賃借する前に、建築基準法・都市計画法・国土法などの法令上の制限や、物件固有の条件・状況、税制面での優遇措置、ローンなど、一般の人には専門的かつ複雑でわかりにくい、物件についての情報を十分知っておく必要があります。そこで『宅建業法』では、宅地・建物の知識や法律に詳しく、国家試験に合格した者だけが重要事項の書面を用いて説明できる、としたのです。契約書面への記名押印も同じ趣旨であり、宅地建物取引主任者の果たす役割と責任は大きいと言えます。 (4) また、宅建業者は、専任の宅建主任者を、(宅建業者の)事務所には『宅建業の従業者5人に1人以上』(例えば、6人では最低2人の主任者、11人では最低3人というようになっています)、おかなければなりません。欠員が生じた場合、2週間以内に補充しないと、業務停止処分を受けることがあります。欠員が生じてすぐ代りの主任者が見つかるとは限らないので、その場合に備えて、宅建業者は常に人数を確保しておく必要があります。 この場合、注意しなければならないのは、宅建業を専業にしていない場合は、その事務所の全従業員の数に対して、5人に1人以上ということではなく、宅建業に従事しているとみなされる部署の人数に対してのものであるということです。 (5) さらに、マンションや新築住宅の現地案内所・展示会場(但し、宅建業法で規定のあるもの)にも、主任者を1人以上おくことになっています。 以上が『宅建業法』で『宅建主任者』に定められたものですが、宅建主任者が宅建業者の中でやる仕事はこれだけではなく、不動産取引の営業(セールス)、売買物件・賃貸物件をめぐる情報収集・調査、イベント・宣伝広告などによる顧客の開拓、トラブル処理、業者への紹介・依頼、顧客のニーズに合ったサービス、地方自治体への許認可申請、報告書などの書類作成など、広大な範囲の仕事をすることになります。 ただ誤解されると困るので、申し添えますが、宅建業の経験のない方が宅建主任者になったからといって、これらの仕事がいきなり全てできるようになるということではなく、宅建資格は、不動産スペシャリストの登竜門に過ぎず,宅建主任者証は、いわば、宅建業への入場券のようなもので、そのあとは主任者になった方の自己研鑚、努力による具体的な成果(成約)によって初めてその方の社会的評価がなされるということは言うまでもありません。資格は取る為のものではなく、その資格を使うことによって仕事をするためにあるものであり、宅建資格の取得はゴールではなく、あくまでもスタート地点である、ということを銘記したいと思います。『資格は持っていても、仕事はできない』ということのないようにしたいものです。 宅地建物取引主任者の実務経験年数が受験資格となるものもあります。 ◇ 不動産コンサルティング技能(登録には5年以上の実務経験) http://www.kindaika.jp/consul/index.shtml (財)不動産流通近代化センターが不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技術について試験を行い、その合格者を登録するとともに、登録者に対し「不動産コンサルティング技能登録証」等を交付することにより、一定水準の知識及び技術を有していることを証明するもので、平成4年10月から始まりました。平成15年9月3日現在、24,830名が登録されています。(資格・称号ではありません) この技能認定は、宅地建物取引主任者・不動産鑑定士の5年間の実務経験を持っている方だけが登録を受けることができます。平成15年度から不動産コンサルティング技能の受験資格から「実務経験5年」を撤廃。これにより、『宅建主任者の資格登録者or不動産鑑定士の登録者』であり、かつ、『従事者、もしくは従事しようとする者』であれば、実務経験に関係なく受験可能になりました。 受験申込受付期間 平成19年8月1日(水)〜8月31日(金)〔消印有効〕 試験日 平成19年11月11日(日) 合格発表 平成20年1月15日(火) ▼平成12年9月より、「取引一任代理等の認可制度」が創設され、投資法人などから依頼を受け、不動産の運用を行う「認可宅地建物取引業者」(不動産投資顧問業)になるには、国土交通大臣より認可を受けることになりました。このときの認可の人的条件として、この「不動産コンサルティング技能登録証」保持者の数が基準になっています。 このほかには、「不動産特定共同事業」(不動産会社等が投資家からの出資を受けて賃貸等の不動産事業を行い、その収益を投資家に分配する事業)における「業務管理者」となるための資格にも指定されています。 ◇ 不動産アナリスト(5年以上の実務経験)http://www.zentaku.or.jp/005/anarist.html 全宅連の認定する称号。<現在は新規募集を休止> 全宅連の実施する「不動産アナリストコース」を修了し、かつ、不動産コンサルティング技能登録者であることを必要とする。(このためには、最低5年以上の宅建主任者としての実務経験を必要とする) ※「不動産アナリストコース」・・・"不動産有効活用における企画立案と提案方法の習得"を目的とした、 ■宅建と複合する資格 宅建主任者の資格を持っている方がほかにどんな資格をもっているか調べた調査があります。上位の五つは以下のようになっています。(もっとも、宅建主任者の中の同時保有資格の調査といっても調査対象全員が宅建業に必ずしも従事していないことや、母集団の関係もあり、いくらか割り引く必要があります。)
中公新書「資格の経済学」(今野浩一郎・下田健人共著,ISBN4-12-101236-4)による。 このほかには、マンション管理士、(マンション)管理業務主任者、区分所有管理士、ファイナンシャル・プランナー(FP)、建築士、土地家屋調査士、司法書士、インテリア・コーディネーター、インテリア・プランナー、建築設備士、測量士、木造建築士、建築施工管理技士、土木施工管理技士、建設経理事務士、税理士、建築主事(地方公務員)、福祉住環境コーディネーター(検定)など関連する資格がたくさんあります。 マンション管理士では、マンション管理センターの検索サービスに登録されている2,008名中1,452名が宅地建物取引主任者です。(2005.3.15現在) |
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どのような人が宅建資格を取得するか | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
■不動産関連の会社勤務の場合 平成12年の合格者の中で、職業別合格者の内訳を見てみましょう。
不動産・建設・金融で47.9%です。他業種と比べても比率が高いことがわかります。この三つの業種の場合、宅建主任者の資格がダイレクトに仕事に反映している為、受験者・合格者とも多いわけです。他業種の20.7%というのも、上で挙げた意味合いのもの(不動産業以外の業種で宅建業も並行して行っている企業)が含まれていることは予想できると思います。 ▼平成18年の合格者の構成比
▼平成19年の合格者の構成比
▼平成20年の合格者の構成比
不動産に関連する企業に勤務している場合、主任者の資格を取得すると、資格取得祝い金のプレゼント、毎月の給与に資格手当がつくなどのメリットもあります。(最近は、資格手当をなくしたり、大幅に祝い金を減額するところもでているようですが) 資格手当・祝い金以外でのメリットとしては、宅建主任者になることで営業力と顧客からの信頼度が高まり、社内での昇給、昇進などの人事評価にも反映されます。また取り扱う仕事の幅も広がり、社内での信頼も高まることになります。不動産業の会社の場合は、宅建は持っていて当然の資格なので、受験者数も他業種に比べて多いのです。 なお、職種による合格率の差ですが、極端な差はないようです。平成19年のデータでは、以下のようになっています。〔全体の合格率17.3%〕
<参考>平成11年のデータでは、以下のようになっています。〔全体の合格率15.9%〕
宅建受験神話として、学生は有利なのではないか、というのがありますが、それは事実ではないということがわかります。 平成19年の女性の受験者は、54,203人(全受験者の25.8%)であり、合格者は9,653人(全合格者の26.7%)でした。女性の合格者の中で、主婦は1,351人(全合格者の3.7%)でした。つまり、女性の合格者の約14%、ほぼ7人に1人は主婦だということです。ちなみに、男性の合格率は17.1%、女性の合格率は17.8%になっています。平成19年の受験者全体の合格率は17.3%なので、女性の合格率は、男性よりも若干ながら高いというのが裏打ちされた感があります。 今後は、不動産業にも女性がもっと進出してくるのでは、とささやかれています。女性の営業社員の場合、やる気満々の男性が対応するよりも、警戒心をもたれにくく話しやすいということや、高齢化社会への突入で男性よりもきめこまかな配慮の利く女性のほうがお年寄りに好感をもたれやすいということがあげられています。勤務時間・家事・育児の関係で主婦の不動産業での活躍はまだまだですが、生活感覚が顧客に1番近い立場のため、営業にもプラスだという考えもあり、今後も増えていくことが予想されています。 ●平成21年3月31日現在の宅地建物取引主任者の統計(不動産適正取引推進機構調べ)
●最近16年間の女性比率の推移
宅建の試験には、年齢・学歴・実務経験などによる受験資格がなく、受験料も\7,000と他の国家試験に比べても低廉になっており、必要な学習期間も鑑定士・司法書士などのように2年から3年ということもなく、殆どの受験生の学習期間が1年以下ですむため、不動産系の試験の中でも、1番門戸の広い試験になっています。そのため、さまざまな方が『宅建合格』をめざして頑張っています。 統計的には出てきませんが(不動産推進機構が集計しており、申込書に受験動機の記載がない)、自己啓発で受験する方はいらっしゃるようです。資格ホルダーやボケ防止のために受けている方もいますし、現在は異業種だがいずれはこの業界に参加したいという方(例えば、主婦の方もこの分類に含まれると思います)、定年後の再就職・開業の準備のためという方もいます。 平成18年の最高齢合格者は、80才、最年少合格者は12才でした。18才未満の合格者は8人であり、この方々も自己啓発には含まれると思われます。史上最年少合格は平成18年の12才。史上最高齢合格は平成17年の90才。(申込者・受験者の最年少者は平成14年の10才,申込者・受験者の最高齢者は平成14年の93才)
(平成18年 不動産適正取引推進機構 合格者の年齢構成比) → 合格者の平均年齢・最年少・最高齢 (昭和63年〜平成19年) ●平成14年・16年・18年・19年・20年合格者の職業別平均年齢
受験動機が自己啓発と就職活動というのは、ある意味ダブっていると考えられます。学生の方の場合は、もちろん就職活動の一環ですが、単に自己啓発のためと言っても、いずれは転職や定年後のときに、資格があれば役立てようと考えるのは当然のことですし、推進機構の統計でも、宅建合格後、何年も経ってから、主任者登録する方は数は少なくてもいらっしゃいます。 さらに、宅建より上の資格、つまり不動産鑑定士、土地家屋調査士、司法書士などを取得するためのステップとして受験される方、会計事務所などで職務の必要上受験される方もおり、自己啓発と言っても多様な背景があることがうかがわれます。 よく日米の企業戦士の比較で言われることですが、日本では自分のプライベートな時間を削って遅くまでサービス残業をし、競争社会が意識されているアメリカでは、家庭でキャリア・アップのための勉強をし、休日でも自分のために勉強しているという話を聞くことがあります。アメリカの場合、働きながら大学や大学院に行くというケースはよくある話であり、その後は転職したり、昇給・昇任に活かすというのがポピュラーになっています。日本の企業社会では、まだまだアメリカと同じようにはいかないでしょうが、きのうまでの部下がいきなり自分の上司になったり、タイムカードに各人の時給が書いてあったりするアメリカで言えたことは、日本でもいずれ現実のものになるのではないかという気もします。 現在、日本社会は雇用面で大変動を迎えています。バブル崩壊、リストラ、企業のサバイバルと、日本の労働者をとりまく環境は厳しいものになっています。企業内でのいわゆる正社員率は低下の一途を辿っており、ひところ若者の労働意識の変化が原因とされた、人材派遣社員も、よくよく考えてみれば、企業の経営合理化が背景となっており、企業の中に複雑な階級制度が生まれようとしています。正社員、準社員、人材派遣からの臨時社員、アルバイトと複雑怪奇であり、最近は、さらに分社という形で社員を企業の外に出すということも行われ始めました。一部の企業に見られる、終身雇用、年功序列、退職金、ボーナスなどの廃止、年金制度の変貌と日本社会は、企業のサバイバルの時代から、個人のサバイバルの時代に突入したことを示しています。 このような趨勢を鑑みるに、資格やキャリア・アップに対する関心が社会的に増しているのは、この雇用面の大変動が背景になっていることは間違いないことであり、宅建試験もこの影響を受けていると考えられます。 −年代別の合格率− 宅建試験の全体合格率が同じ15.9%であった平成11年と平成20年で年代別の合格率を見ると、年齢による合格率は極端な差はないようです。 平成11年度の年代別合格率
平成20年度の年代別合格率
これを見ると、若い人が有利だという神話も間違いだということもわかります。 −18歳未満の受験状況− 平成8年から受験資格が撤廃されたため、申込者・受験者・合格者の最年少者が注目されるようになりました。 合格者の最年少者が平成18年の12才 (申込者及び受験者の最年少者は平成14年の10才) と聞いて、ビビる方もいらっしゃると思いますが、合格率では他の年代の脅威になるまでには至っていません。 〔参考〕 平成11年の18歳未満受験状況の内訳
〔参考〕 平成18年の18歳未満受験状況の内訳
〔参考〕 平成8年〜平成20年の18歳未満合格者数の推移
このほかの受験者としては、自分所有の土地・建物などの資産管理をするために、受験する方もいます。取引している不動産屋の人に軽く見られたくないという理由で受験する方、人それそれですが、最後に宅建受験指導機関で活躍している、いわゆる『宅建講師』の方々のことも触れておきたいと思います。 まず制度面の説明ですが、行政書士の試験と同じように、宅建の試験も、過年度の合格者も受験することを認めているので、宅建講師の方も受験できることになります。 宅建講師の方の受験理由としては、さまざまなことが考えられます。 1) 予備校などで一刻も早く解答速報を出すために、問題を早く入手し解答を出す必要がある。(試験終了後の1時間後に解答を出すところもあります) 2) 受験会場の状況と受験者の雰囲気、解答用紙のレイアウトの変化を実地に把握できる。特に、その年の問題に対する受験者の生の反応が観察できる。このことによって、翌年以降の受験指導に役立てることができる。 3) 普通に受験すれば合格するのは間違いないので、解答の仕方によって合否がどうなるかを実験する。マーク不十分(マーク覧からのハミダシ、マーク覧より小さい塗りつぶし、マークし直しによる消しゴムのカスの付着、マークの濃淡など)による合否の実地調査がその筆頭です。 4) 受験者を試験会場でも、励ましたり、フォローして、本当に試験直前まで指導できる。試験日に、自信がなくて、元気のない受験生がふだん教えてもらっている講師の顔を見ることによって勇気付けられることもあり、メンタルな面での最大のバックアップになる。(受験生以外立ち入り禁止の試験会場もあるので、実際に受験するしかない場合もあります。) 中には、テレビのクイズ番組の感覚で受験される方もいるようですが、殆どの宅建講師の方は受験生のフォローの一環として受けていると思われます。 ちなみに、大半の宅建講師の方は、正解は問題用紙にチェックして、解答用紙にはデタラメなマークをして提出しているので、一般の受験生の合否には、全く影響はないでしょう。 |
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宅建試験最近13年間のデータ推移 |
各年度の主要なデータをあげてみます。
⇒ 年度別合格者の概要 平成12年・平成13年・平成14年・平成15年・平成16年・
試験実施年度 | 平成9年 | 平成10年 | 平成11年 | 平成12年 | 平成13年 | 平成14年 |
試験日 | 10/19(日) | 10/18(日) | 10/17(日) | 10/15(日) | 10/21(日) | 10/21(日) |
試験会場数 | 199会場 | 197会場 | 185会場 | 176会場 | 174会場 | 167会場 |
受験申込者数 | 234,175 | 224,822 | 222,913 | 210,465 | 204,629 | 209,672 |
受験者数 | 190,131 | 179,713 | 178,384 | 168,094 | 165,104 | 169,657 |
受験率 | 81.2% | 79.9% | 80% | 79.9% | 80.7% | 80.9% |
合格推定点 | 34点 | 30点 | 30点 | 30点 | 34点 | 36点 |
合格者 (全体) | 26,835 | 24,930 | 28,277 | 25,928 | 25,203 | 29,423 |
(男性) | 18,949 | 18,118 | 21,378 | 18,699 | 18,515 | 21,784 |
(女性) | 7,886 | 6,812 | 6,899 | 7,229 | 6,688 | 7,639 |
合格率 (全体) | 14.1% | 13.9% | 15.9% | 15.4% | 15.3% | 17.3% |
(男性) | 13.1% | 13.1% | 15.5% | 14.6% | 14.7% | 16.8% |
(女性) | 17.4% | 16.4% | 17.0% | 18.2% | 17.1% | 19.1% |
平均年齢(全体) | 32.4才 | 32.5才 | 34.5才 | 32.9才 | 33.3才 | 33.5才 |
(男性) | 33.0才 | 33.0才 | 35.1才 | 33.5才 | 33.9才 | 34.1才 |
(女性) | 30.9才 | 31.1才 | 32.5才 | 31.2才 | 31.7才 | 31.9才 |
試験実施年度 | 平成15年 | 平成16年 | 平成17年 | 平成18年 | 平成19年 | 平成20年 |
試験日 | 10/19(日) | 10/17(日) | 10/16(日) | 10/15(日) | 10/21(日) | 10/19(日) |
試験会場数 | 177会場 | 185会場 | 197会場 | 199会場 | 204会場 | 242会場 |
受験申込者数 | 210,182 | 216,830 | 226,665 | 240,278 | 260,633 | 260,591 |
受験者数 | 169,625 | 173,457 | 181,880 | 193,573 | 209,684 | 209,415 |
受験率 | 80.7% | 80.0% | 80.2% | 80.6% | 80.5% | 80.4% |
合格基準点 | 35点 | 32点 | 33点 | 34点 | 35点 | 33点 |
合格者 (全体) | 25,942 | 27,639 | 31,520 | 33,191 | 36,203 | 33,946 |
(男性) | 18,690 | 19,902 | 22,595 | 23,825 | 26,550 | 24,172 |
(女性) | 7,252 | 7,737 | 8,925 | 9,366 | 9,653 | 9,774 |
合格率 (全体) | 15.3% | 15.9% | 17.3% | 17.1% | 17.3% | 16.2% |
(男性) | 14.6% | 15.3% | 16.6% | 16.5% | 17.1% | 15.7% |
(女性) | 17.6% | 18.0% | 19.5% | 19,0% | 17.8% | 17.6% |
平均年齢(全体) | 33.7才 | 33.4才 | 33.5才 | 33.2才 | 33.6才 | 33.9才 |
(男性) | 34.3才 | 34.0才 | 34.0才 | 33.7才 | 34.0才 | 34.4才 |
(女性) | 32.3才 | 31.8才 | 32.4才 | 31.9才 | 32.4才 | 32.5才 |
試験実施年度 | 平成21年 |
試験日 | 10/18(日) |
試験会場数 | 221会場 |
受験申込者数 | 241,944 |
受験者数 | 195,515 |
受験率 | 80.8% |
合格基準点 | 33点 |
合格者 (全体) | 34,918 |
(男性) | 25,309 |
(女性) | 9,609 |
合格率 (全体) | 17.9% |
(男性) | 17.5% |
(女性) | 18.8% |
平均年齢(全体) | 35.1才 |
(男性) | 35.7才 |
(女性) | 33.5才 |
合格者の職業構成比と宅建主任者数、宅建業者数の年度別推移状況
平成9年 | 平成10年 | 平成11年 | 平成12年 | 平成13年 | 平成14年 | |
不動産関連業 | 22.2% | 21.4% | 23.6% | 21.8% | 23.1% | 22.3% |
建設関連業 | 16.1% | 16.0% | 16.5% | 15.6% | 15.2% | 14.7% |
金融関連業 | 11.2% | 12.3% | 12.4% | 10.5% | 8.9% | 10.0% |
他業種 | 22.1% | 21.3% | 21.3% | 20.7% | 22.7% | 22.2% |
学生 | 12.5% | 12.0% | 9.2% | 12.3% | 11.3% | 11.4% |
主婦 | 6.2% | 5.8% | 5.2% | 5.5% | 5.3% | 5.0% |
その他 | 9.8% | 11.1% | 11.8% | 13.5% | 13.4% | 14.5% |
宅建主任者数 | 628,555 | 647,165 | 661,105 | 676,645 | 695,215 | 709,949 |
新規主任者登録 |
22,469
|
20,780
|
20,703
|
20,785 | 20,693 |
20,526
|
宅建業者数 | 141,547 | 138,752 | 139,288 | 138,816 | 135,283 | 132,440 |
平成15年 | 平成16年 | 平成17年 | 平成18年 | 平成19年 | 平成20年 | |
不動産関連業 | 24.6% | 24.4% | 29.5% | 30.6% | 34.9% | 32.6% |
建設関連業 | 13.4% | 12.9% | 11.8% | 11.5% | 11.0% | 11.4% |
金融関連業 | 8.6% | 8.0% | 7.6% | 7.4% | 7.2% | 8.9% |
他業種 | 22.3% | 22.9% | 20.5% | 20.7% | 21.4% | 22.5% |
学生 | 11.5% | 12.3% | 12.3% | 13.0% | 11.9% | 10.3% |
主婦 | 5.2% | 5.2% | 4.5% | 4.2% | 3.7% | 4.3% |
その他 | 14.3% | 14.2% | 13.8% | 12.6% | 10.0% | 9.8% |
宅建主任者登録数 | 730,953 | 750,764 | 768,023 | 793,400 | 821,240 | 843,014 |
新規主任者登録 | 20,785 | 21,762 |
23,993
|
27,073 | 29,781 | 29,695 |
宅建業者数 | 130,298 | 130,819 | 131,251 | 130,647 | 129,991 | 127,702 |
平成21年 | |
不動産関連業 | 32.7% |
建設関連業 | 11.3% |
金融関連業 | 9.1% |
他業種 | 23.2% |
学生 | 8.3% |
主婦 | 3.9% |
その他 | 11.6% |
宅建主任者登録数 | ※ |
新規主任者登録 | ※ |
宅建業者数 | ※ |
※各年度末のデータは,翌年度の11月頃に公表される。
2 合格者の学習データ
ここでは、合格者のアンケートなどの統計から、学習データをご紹介します。
合格者のデータ、合格体験記は最良のイメージ・トレーニングです。
学習費用 |
主に通信教育・宅建講座・受験参考書・問題集・模擬試験の費用と考えられます。その他のほとんどが、3万円程度の省コスト受験生でした。
5万程度 | 8万以内 | 10万以内 | 20万以内 | 20万より上 | その他 |
38% | 9% | 18.2% | 4.5% | 2.3% | 27.3% |
(自由国民社『今年こそ宅建!』'00増刊号より転載。)
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