Brush Up! 権利の変動篇
不動産登記の過去問アーカイブス 権利部の甲区と乙区 平成3年・問15 改正対応
●メッセージ |
この問題と同一の問題が昭和56年・問16で出題されていますが,今後このレベルの出題がされる可能性は低いと思われます。補充問題で挙げた差押・付記登記などが断片的に出題される程度でしょう。 |
不動産登記に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(平成3年・問15) |
1.「所有権移転の登記の抹消は,権利部の甲区に記録される。」 |
2.「抵当権の順位の変更の登記は,権利部の乙区に記録される。」 |
3.「根抵当権の登記名義人の氏名等の変更の登記は,権利部の甲区に記録される。」 |
4.「買戻しの特約の登記は,買主の権利取得の登記の付記登記として権利部の甲区に記録される。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | ○ | × | ○ |
●基本的な考え方−出題者が想定していたレベル |
所有権に関する登記 → 甲区 (差押・買戻権も甲区に記載される)
所有権以外に関する登記 → 乙区 |
1.「所有権移転の登記の抹消は,権利部の甲区に記録される。」 |
【正解:○】 ◆抹消の登記 権利の登記の抹消はその権利の相当区に記載されます。 所有権に関する登記(甲区)の抹消は 甲区 所有権以外の権利に関する登記(乙区)の抹消は 乙区 |
●参考問題 |
1.「甲区事項欄には『所有権に関する事項』が記載され,所有権保存,所有権移転のほか所有権登記名義人の表示変更等および買戻しの特約に関する事項も掲載されるが,差押の登記については,これは抵当権に基づくものであるから,乙区事項欄に記載される。」(宅建実務講習・平成12年) |
【正解:×】差押の登記は,権利部の甲区に記載されます。 |
【権利部 (甲 区)】 (所有権に関する事項) | ||||
【順位番号】 | 【登記の目的】 | 【受付年月日・受付番号】 | 【原因】 | 【権利者その他の事項】 |
1 | 所有権保存 | ・・ | 余白 | 所有者 豊臣秀吉 |
2 - |
所有権移転 ----------- |
・・ --- |
売買 ---- |
所有者 徳川家康 ---------------- |
3 | 2番所有権抹消 | ・・ | 売買無効 | 余白 |
*下線のあるものは抹消事項であることを示す。
2.「抵当権の順位の変更の登記は,権利部の乙区に記録される。」 |
【正解:○】 ◆抵当権の順位変更の登記 抵当権は乙区に記載されるので,その順位変更の登記もやはり乙区に記載されます。 ▼抵当権の順位の変更とは,複数の抵当権者の間で,その順位を入れ替えて,抵当権設定登記での順位によらずに変更後の順位によって優先弁済を受けることができるようにするものです。(民法374条1項) ▼抵当権の順位変更の登記は常に主登記でなされます。
▼抵当権の抹消の登記は主登記でなされます。 ▼抵当権の処分の登記(譲渡・放棄,転抵当など)は付記登記でなされます。
|
●参考問題 |
1.「乙区事項欄には『所有権以外の権利に関する事項』が記載されるが,その権利の設定については主登記で行われ,その権利の変更および抹消については付記登記でなされる。」(宅建実務講習・平成12年) |
【正解:×】抹消登記は主登記でなされます。 |
●参考問題 |
1.「抵当権の順位変更の登記を申請する場合には、申請書に順位を変更する各抵当権の登記識別情報を提供しなければならない。」(平成10年・問14・肢4) |
【正解:○】抵当権の順位や順位変更については頻出問題です。 → 抵当権と登記 |
3.「根抵当権の登記名義人の氏名等の変更の登記は,権利部の甲区に記録される。」 |
【正解:×】 ◆登記名義人の表示の変更の登記 根抵当権は乙区に記録されるので,その登記名義人変更の登記もやはり乙区に記録されます。甲区ではありません。 ▼登記名義人とは,登記記録の権利部に権利者として記録されている者をいいます。例えば,所有者として登記されている者や,抵当権者として登記されている者です(不動産登記法・2条11号)。 登記名義人の氏名・住所,法人では名称に変更があるときは,登記名義人が単独で申請することができます(不動産登記法・64条)。 登記名義人の氏名等の変更登記は付記登記によって記録します(登記規則・3条1号)。 ●対照整理●表題部所有者・・・所有権の登記がない不動産の登記記録の表題部に,所有者として記録されている者をいう(不動産登記法・2条10号)。 |
【権利部 (乙 区)】 (所有権以外の権利に関する事項) | ||||
【順位番号】 | 【登記の目的】 | 【受付年月日・受付番号】 | 【原因】 | 【権利者その他の事項】 |
1
付記1番 |
根抵当権設定 | ・・ | 設定 | 根抵当権者 東京都港区・・ ------------ 北条氏直・・ |
1番登記名義人変更 | ・・ | 住所移転 | 住所 東京都新宿区・・ |
*下線のあるものは抹消事項であることを示す。
4.「買戻しの特約の登記は,買主の権利取得の登記の付記登記として権利部の甲区に記録される。」(類・昭和53年・問12・肢3,昭和59年・問15・肢3) |
【正解:○】 ◆買戻しの特約 買戻しの特約の登記は権利部の甲区に記載されます。 買戻し特約の登記は,所有権移転登記と同時に申請されると,その二つの登記は同一の受付番号で受理され,買戻し特約の登記は所有権移転登記に付記して登記されます。(登記規則・3条9号) ▼買戻しの特約とは,売主が売買によって所有権を移転した後で,買主が支払った代金や契約費用を,買主に返還することによって,不動産を取り戻すことができる特約です。 買戻しの特約は当事者の間では当然有効ですが,売買による所有権移転登記をすると同時に買戻しの登記をしておかないと第三者に対抗できません。(民法581条1項) A (売主。買戻しの特約) 例えば,Aが買戻しの登記をしておかないと,BがCに転売したときに,Aは買戻しをして不動産を取り返せなくなります。 買戻しの登記をしておけば,Aは買戻し権を行使することによってCから所有権移転登記を受けることができます。 ▼買戻権を行使したとき(買い戻したとき)の登記は抹消登記の申請ではなく,所有権移転登記の申請(登記原因=買戻し)になります。(買戻権の行使によって所有権移転登記がなされると買戻特約の登記は職権で抹消される。) |
【書式例】
【権利部 (甲 区)】 (所有権に関する事項) | ||||
【順位番号】 | 【登記の目的】 | 【受付年月日・受付番号】 | 【原因】 | 【権利者その他の事項】 |
1 | 所有権保存 | ・・ | 余白 | 所有者 豊臣秀頼 |
2
付記1号 |
所有権移転 | ・・ | 年月日 売買 |
所有者 徳川家康 |
買戻特約 | ・・ | 年月日 特約 |
買戻権者 豊臣秀頼 |
●買戻しの登記=付記登記 |
1.「買戻の特約の登記は,すべて同時になされる所有権の取得の登記の付記登記としてなされる。」(昭和53年・問12・肢3) |
【正解:○】 |
●主登記と付記登記 |
主登記と付記登記は,ワンセットになっているカテゴリーです。
主登記・・・甲区,乙区に1番から順次連続して独立の番号を付してなされる登記です。付記登記の対象となる既になされた権利に関する登記をいう。(不動産登記法・4条2項) 付記登記・・・付記登記は,それ自体独立の順位番号を持たず,既存の主登記の順位番号に付記○号という番号を付加する方法により記録ます。(不動産登記法・4条2項,登記規則148条) |
付記登記は,主登記との同一性や同一順位を保持する必要がある場合になされるものです。 例・所有権以外の権利の移転登記(登記規則・3条5号) |
●主登記と付記登記 |
1.「付記登記は,主登記との同一性を保持しようとする場合又は付記登記によって表示される権利が主登記と同一の順位を有することを明らかにしようとする場合になされる登記である。」(平成4年・問15・肢4) |
【正解:○】 |