宅建過去問 宅建業法 

35条の重要事項説明の過去問アーカイブス 平成21年・問33 


 宅地建物取引業者Aが行う宅地建物取引業法第35条に規定する重要事項の説明に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。(平成21年・問33)

1 建物の売買の媒介を行う場合、当該建物が地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律第12条第1項の規定に基づく歴史的風致形成建造物であるときは、は、その増築に際し市町村長への届出が必要である旨を説明しなければならない。

2 建物の売買を行う場合、当該建物について石綿の使用の有無の調査の結果が記録されていないときは、は、自ら石綿の使用の有無の調査を行った上で、その結果の内容を説明しなければならない。

3 建物の貸借の媒介を行う場合、当該貸借の契約が借地借家法第38条第1項の規定に基づく定期建物賃貸借契約であるときは、は、その旨を説明しなければならない。

4 建物の貸借の媒介を行う場合、は、当該貸借に係る契約の終了時において精算することとされている敷金の精算に関する事項について、説明しなければならない。

<コメント>  
 肢1は,20年の改正施行による初出題。肢2〜肢4とも出題数が少ないものを意図的に選んで出題しています。

 肢2は,「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(国土交通省)」からの出題ですが,受験者には余り知られていないので,今後も注意が必要です。

●出題論点●
 肢1 歴史的風致形成建造物の増築、改築、移転又は除却についての市町村長への届出

 肢2 石綿の使用の有無の調査の結果が記録されているときは,その内容について説明しなければならないが,宅建業者に石綿の使用の有無の調査の実施を義務付けるものではない

 肢3 定期建物賃貸借契約である旨

 肢4 契約終了時において精算することとされている金銭の精算に関する事項

【正解】

×

 正答率  84.5%

1 建物の売買の媒介を行う場合、当該建物が地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律第12条第1項の規定に基づく歴史的風致形成建造物であるときは、は、その増築に際し市町村長への届出が必要である旨を説明しなければならない。

【正解:初出題

◆歴史的風致形成建造物

 宅建業者は,法令に基づく制限で契約内容の別に応じて政令で定めるものに関する事項の概要について,35条の重要事項として説明しなければなりません (宅建業法35条1項2号)

 建物の売買・交換やその媒介・代理を行う場合,その建物が歴史的風致形成建造物であるときは,その増築に際し市町村長への届出が必要である旨を説明することになっています(施行令3条1項12号の5)⇒ 建物の貸借の媒介では説明義務はありません(施行令3条2項)

地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律
 歴史的風致形成建造物の増築、改築、移転又は除却をしようとする者は、当該増築、改築、移転又は除却に着手する日の30日前までに、主務省令で定めるところにより、行為の種類、場所、着手予定日その他主務省令で定める事項を市町村長に届け出なければならない(15条1項)

2 建物の売買を行う場合、当該建物について石綿の使用の有無の調査の結果が記録されていないときは、は、自ら石綿の使用の有無の調査を行った上で、その結果の内容を説明しなければならない。

【正解:×平成19年・問35・肢1

◆建物に係る石綿の使用の有無の調査結果

 建物の売買・交換(その媒介・代理を含む),貸借の媒介・代理を行う場合『当該建物について,石綿の使用の有無の調査の結果が記録されているときは,その内容』 について,35条の重要事項として説明しなければなりません(宅建業法35条1項14号,施行規則16条の4の3第3号)

 しかし,石綿の使用の有無の調査の結果が記録されていないときは,その旨を説明すれば足りるとされており,宅建業者に石綿の使用の有無の調査の実施を義務付けるものではありません(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方,国土交通省)

 したがって,「自ら石綿の使用の有無の調査を行った上で、その結果の内容を説明しなければならない。」とする本肢は誤りです。

●宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(国土交通省)
3 建物に係る石綿の使用の有無の調査の結果について(規則第16条の4の3第3号関係)

 石綿の使用の有無の調査結果の記録が保存されているときは、「その内容」として、調査の実施機関、調査の範囲、調査年月日、石綿の使用の有無及び石綿の使用の箇所を説明することとする。ただし、調査結果の記録から、これらのうちいずれかが判明しない場合にあっては、売主等に補足情報の告知を求め、それでもなお判明しないときは、その旨を説明すれば足りるものとする。

 調査結果の記録から容易に石綿の使用の有無が確認できる場合には、当該調査結果の記録を別添することも差し支えない。

 本説明義務については、売主及び所有者に当該調査の記録の有無を照会し、必要に応じて管理組合、管理業者及び施工会社にも問い合わせた上、存在しないことが確認された場合又はその存在が判明しない場合は、その照会をもって調査義務を果たしたことになる

 なお、本説明義務については、石綿の使用の有無の調査の実施自体を宅地建物取引業者に義務付けるものではないことに留意すること

 また、紛争の防止の観点から、売主から提出された調査結果の記録を説明する場合は、売主等の責任の下に行われた調査であることを、建物全体を調査したものではない場合は、調査した範囲に限定があることを、それぞれ明らかにすること。

3 建物の貸借の媒介を行う場合、当該貸借の契約が借地借家法第38条第1項の規定に基づく定期建物賃貸借契約であるときは、は、その旨を説明しなければならない。

【正解:平成12年・問39・肢1平成13年・問34・イ

◆定期建物賃貸借

 建物の貸借の媒介・代理を行う場合定期建物賃貸借契約であるときは,その旨を,35条の重要事項として説明しなければなりません(宅建業法35条1項14号,施行規則16条の4の3第8号)

●宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(国土交通省)
8 定期借地権、定期建物賃貸借及び終身建物賃貸借について(規則第16条の4の3第8号関係)

 定期借地権を設定しようとするとき、定期建物賃貸借契約又は終身建物賃貸借契約をしようとするときは、その旨を説明することとする。

 なお、定期建物賃貸借に関する上記説明義務は、借地借家法第38条第2項に規定する賃貸人の説明義務とは別個のものである。また、宅地建物取引業者が賃貸人を代理して当該説明義務を行う行為は、宅地建物取引業法上の貸借の代理の一部に該当し、関連の規定が適用されることとなる。

4 建物の貸借の媒介を行う場合、は、当該貸借に係る契約の終了時において精算することとされている敷金の精算に関する事項について、説明しなければならない。

【正解:平成9年・問38・肢3平成18年・問33・肢4

◆契約終了時における金銭の精算に関する事項

 建物の貸借の媒介・代理を行う場合,敷金その他いかなる名義をもつて授受されるかを問わず,契約終了時において精算することとされている金銭の精算に関する事項 について,35条の重要事項として説明しなければなりません (宅建業法35条1項14号,施行規則16条の4の3第10号)

●宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(国土交通省)
10 契約終了時における金銭の精算に関する事項について(規則第16条の4の3第10号関係)

 規則第16条の4の3第10号は、例えば賃料等の滞納分との相殺や一定の範囲の原状回復費用として敷金が充当される予定の有無、原状回復義務の範囲として定まっているものなどが該当する。

 なお、本事項は、貸借の契約の締結に際してあらかじめ定まっている事項を説明すべき事項としたものであり、こうした事項が定まっていない場合にはその旨を説明する必要がある


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