宅建業法 実戦篇
営業保証金の過去問アーカイブス 平成19年・問37
宅地建物取引業者A(甲県知事免許)の営業保証金に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、誤っているものはどれか。なお、Aは、甲県内に本店と一つの支店を設置して事業を営んでいるものとする。(平成19年・問37) |
1 Aが販売する新築分譲マンションの広告を受託した広告代理店は、その広告代金債権に関し、Aが供託した営業保証金からその債権の弁済を受ける権利を有しない。 |
2 Aは、免許の有効期間の満了に伴い、営業保証金の取戻しをするための公告をしたときは、遅滞なく、その旨を甲県知事に届け出なければならない。 |
3 Aは、マンション3棟を分譲するための現地出張所を甲県内に設置した場合、営業保証金を追加して供託しなければ、当該出張所でマンションの売買契約を締結することはできない。 |
4 Aの支店でAと宅地建物取引業に関する取引をした者は、その取引により生じた債権に関し、1,500万円を限度として、Aが供託した営業保証金からその債権の弁済を受ける権利を有する。 |
<コメント> |
●出題論点● |
肢1 営業保証金から還付を受けられる人の範囲
肢2 営業保証金取り戻しの公告の届出 肢3 営業保証金の供託−現地出張所 肢4 債権の弁済を受けられる額は,本店支店どちらで取引があっても同じ |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | ○ | × | ○ |
正答率 | 84.1% |
1 Aが販売する新築分譲マンションの広告を受託した広告代理店は、その広告代金債権に関し、Aが供託した営業保証金からその債権の弁済を受ける権利を有しない。 |
【正解:○】平成11年・問38・肢3,平成17年・問33・肢3, ◆還付請求権を有する者の範囲 宅建業者と宅建業に関して取引をした者は,その取引により生じた債権に関し,宅建業者が供託した営業保証金について,その債権の弁済を受ける権利があります(宅建業法27条1項)。 ここでいう<宅建業に関して取引をした者>とは,具体的には,宅地や建物を購入した者,売買・交換・貸借の媒介を依頼した者等のことを言います。 本肢のように,広告代金債権を有する者は,<宅建業に関して取引をした者>には入りません。 |
2 Aは、免許の有効期間の満了に伴い、営業保証金の取戻しをするための公告をしたときは、遅滞なく、その旨を甲県知事に届け出なければならない。 |
【正解:○】平成10年・問37・肢4,〔支店廃止〕平成16年・問35・肢3, ◆営業保証金取り戻しの公告の届出 営業保証金の取戻しをするための公告をしたときは,遅滞なく,その旨を免許権者に届け出なければなりません(営業保証金規則8条3項)。 ▼営業保証金の取り戻しのための公告は官報〔×都道府県の公報〕に公告しなければなりません(営業保証金規則8条1 項)。 |
3 Aは、マンション3棟を分譲するための現地出張所を甲県内に設置した場合、営業保証金を追加して供託しなければ、当該出張所でマンションの売買契約を締結することはできない。 |
【正解:×】平成15年・問34・肢1, ◆営業保証金の供託−現地出張所 出張所でも,「宅建業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置くもの」を設置した場合は,その他の事務所として支店と同じ500万円を供託して,その旨の届出をしなければ,その出張所で営業を開始することはできません(宅建業法26条2項,25条2項,施行令2条の4)。 しかし,本肢の現地出張所は,契約締結権限のある使用人については何の記述もないことから,契約行為を行うための案内所等<契約締結権限のある使用人がいない>として考えるしかありません。 契約行為を行うための案内所等は,営業保証金を供託する必要はなく,その業務を開始する10日前までに50条2項の届出をしておけば,売買契約を締結できるので,本肢は誤りです。 |
●施行令 |
(法第3条第1項 の事務所) 第1条の2 法第三条第一項 の事務所は、次に掲げるものとする。 一 本店又は支店(商人以外の者にあつては、主たる事務所又は従たる事務所) 二 前号に掲げるもののほか、継続的に業務を行なうことができる施設を有する場所で、宅地建物取引業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置くもの |
●宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 (国土交通省) |
第3条第1項関係 1 令第1条の2第1号に規定する「事務所」について 本号に規定する「事務所」とは、商業登記簿等に登載されたもので、継続的に宅地建物取引業者の営業の拠点となる施設としての実体を有するものが該当し、宅地建物取引業を営まない支店は該当しないものとする。 2 令第1条の2第2号に規定する「事務所」について (1) 「継続的に業務を行なうことができる施設」について 宅地建物取引業者の営業活動の場所として、継続的に使用することができるもので、社会通念上事務所として認識される程度の形態を備えたものとする。 (2) 「契約を締結する権限を有する使用人」について 原則として、「継続的に業務を行なうことができる施設」の代表者等が該当し、取引の相手方に対して契約締結権限を行使(自らの名において契約を締結するか否かを問わない。)する者も該当するものとする。 |
4 Aの支店でAと宅地建物取引業に関する取引をした者は、その取引により生じた債権に関し、1,500万円を限度として、Aが供託した営業保証金からその債権の弁済を受ける権利を有する。 |
【正解:○】平成9年・問34・肢2, ◆債権の弁済を受けられる額は,本店支店どちらの取引でも同じ Aは,営業保証金を本店につき1,000万円,支店につき500万円を供託しているはずなので,Aと宅建業に関する取引をした者は,その取引により生じた債権に関し,1,500万円を限度として,営業保証金からその債権の弁済を受ける権利があります(宅建業法27条1項)。 Aの本店,支店のどちらで取引をしても,債権の弁済を受けられる限度額は同じ (1,500万円) です。 |