宅建過去問 宅建業法
重要事項説明の過去問アーカイブス 平成20年・問37
宅地建物取引業者Aが、マンションの分譲に際して行う宅地建物取引業法第35条の規定に基づく重要事項の説明に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。 |
1 当該マンションの建物又はその敷地の一部を特定の者にのみ使用を許す旨の規約の定めがある場合、Aは、その内容だけでなく、その使用者の氏名及び住所について説明しなければならない。 |
2 建物の区分所有等に関する法律第2条第4項に規定する共用部分に関する規約がまだ案の段階である場合、Aは、規約の設定を待ってから、その内容を説明しなければならない。 |
3 当該マンションの建物の計画的な維持修繕のための費用の積立を行う旨の規約の定めがある場合、Aは、その内容を説明すれば足り、既に積み立てられている額については説明する必要はない。 |
4 当該マンションの建物の計画的な維持修繕のための費用を特定の者にのみ減免する旨の規約の定めがある場合、Aは、買主が当該減免対象者であるか否かにかかわらず、その内容を説明しなければならない。 |
<コメント> |
マンションの重要事項説明の単独問題は久しぶりです。出題範囲が施行規則16条の2のみというのも近年では珍しい出題です。
マンションに関する重要事項は,なぜそれが重要事項として必要なのかイメージして覚えるようにすれば,得点源になります。 |
●出題論点● |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
正答率 | 80.8% |
1 当該マンションの建物又はその敷地の一部を特定の者にのみ使用を許す旨の規約の定めがある場合、Aは、その内容だけでなく、その使用者の氏名及び住所について説明しなければならない。 |
【正解:×】平成2年・問45・肢4,平成4年・問40・肢3, ◆特定の者にのみ使用を許す旨の規約〔専用使用権〕 宅建業者は,マンションの専有部分の貸借の媒介・代理の場合を除いて, 当該一棟の建物又はその敷地の一部を特定の者にのみ使用を許す旨の規約(これに類するものを含む。)の定め(その案を含む。)があるときは,その内容 を重要事項として説明しなければなりません(宅建業法35条1項6号,施行規則16条の2第4号)。 しかし,専用使用している者の氏名・住所は,説明すべき重要事項ではありません。 ▼専用使用権が設定されるのは,各戸のバルコニー,専用庭,駐車場,自転車置場,屋上テラスなど。 |
●宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 〔国土交通省〕 |
4 専用使用権について(規則第16条の2第4号関係) 規則第16条の2第4号は、いわゆる専用使用権の設定がなされているものに関するものであり、通常、専用庭、バルコニー等に設定されるものであるが、これらについては、その項目を記載するとともに専用使用料を徴収している場合にあってはその旨及びその帰属先を記載することとする。 駐車場については特に紛争が多発していることにかんがみ、その「内容」としては、使用し得る者の範囲、使用料の有無、使用料を徴収している場合にあってはその帰属先等を記載することとする。 |
2 建物の区分所有等に関する法律第2条第4項に規定する共用部分に関する規約がまだ案の段階である場合、Aは、規約の設定を待ってから、その内容を説明しなければならない。 |
【正解:×】平成2年・問45・肢3,平成15年・問36・肢1, ◆共用部分に関する規約の定め(その案を含む。)があるときは,その内容 宅建業者は,マンションの専有部分の貸借の媒介・代理の場合を除いて, <共用部分に関する規約の定め〔規約共用部分等〕(その案を含む。)があるときは,その内容> を重要事項として説明しなければなりません(宅建業法35条1項6号,施行規則16条の2第2号)。 マンションの新規分譲では,分譲主が規約の案を買主に提示し,買主である区分所有者が最初の集会で決議して正式に規約になるのであり,規約案に過ぎないとしても〔区分所有者の集会で,規約案が承認されず,修正される可能性があっても〕,分譲主〔その媒介・代理業者も〕は,重要事項として説明しなければならないので,本肢は誤りです。 ▼規約の設定を待ってからということは,売買契約成立後に説明することになります〔規約の正式な設定は,買主が区分所有者として初めて集会を開いたときになるから〕。重要事項は契約成立前に説明しなければならないので,これだけで誤りだということがわかります。 ▼規約共用部分の対象になるのは,専有部分や付属の建物で,集会室が典型的。管理員室,車庫・倉庫も規約によって共用部分にすることが可能。 |
●宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 〔国土交通省〕 |
2 共用部分に関する規約の定めについて(規則第16条の2第2号関係) 「共用部分に関する規約の定め」には、いわゆる規約共用部分に関する規約の定めのほか、いわゆる法定共用部分であっても規約で確認的に共用部分とする旨の定めがあるときにはその旨を含むものである。 かっこ書で「その案を含む」としたのは、新規分譲等の場合には、買主に提示されるものが規約の案であることを考慮したものである。 共用部分に関する規約が長文にわたる場合においては、その要点を記載すれば足りるものとする。 |
3 当該マンションの建物の計画的な維持修繕のための費用の積立を行う旨の規約の定めがある場合、Aは、その内容を説明すれば足り、既に積み立てられている額については説明する必要はない。 |
【正解:×】〔滞納額〕平成15年・問45・肢4,平成16年・問37・肢1, ◆計画的な維持修繕費用の積立てを行う旨の規約の定めがあるときは,その内容及び既に積み立てられている額 宅建業者は,マンションの専有部分の貸借の媒介・代理の場合を除いて, <当該一棟の建物の計画的な維持修繕のための費用の積立てを行う旨の規約の定めがあるときは,その内容及び既に積み立てられている額> を重要事項として説明しなければなりません(宅建業法35条1項6号,施行規則16条の2第6号)。 ▼既存マンションの専有部分の売買・交換〔その媒介・代理も含む〕では,売主の区分所有者が管理費や修繕積立金に滞納がある場合は,滞納している金額も重要事項として説明しなければなりません。 管理費や修繕積立金に滞納がある場合は,新所有者に承継されるからです(区分所有法8条)。⇒ 近年の判例では,管理費や修繕積立金の債権は定期給付債権(民法169条)として,5年間の短期消滅時効にかかるとされています(最高裁・平成16.4.23)。 |
●宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 〔国土交通省〕 |
6 修繕積立金等について(規則第16条の2第6号関係) 規則第16条の2第6号は、いわゆる大規模修繕積立金、計画修繕積立金等の定めに関するものであり、一般の管理費でまかなわれる通常の維持修繕はその対象とはされないこととする。 また、当該区分所有建物に関し修繕積立金等についての滞納があるときはその額を告げることとする。 なお、この積立て額は時間の経緯とともに変動するので、できる限り直近の数値(直前の決算期における額等)を時点を明示して記載することとする。 |
4 当該マンションの建物の計画的な維持修繕のための費用を特定の者にのみ減免する旨の規約の定めがある場合、Aは、買主が当該減免対象者であるか否かにかかわらず、その内容を説明しなければならない。 |
【正解:○】平成14年・問37・肢2, ◆金銭的な負担を特定の者にのみ減免する条項 宅建業者は,マンションの専有部分の貸借の媒介・代理の場合を除いて, <当該一棟の建物の計画的な維持修繕のための費用,通常の管理費用その他の当該建物の所有者が負担しなければならない費用を特定の者にのみ減免する旨の規約の定めがあるときは,その内容> を重要事項として説明しなければなりません(宅建業法35条1項6号,施行規則16条の2第5号)。 ▼「買主が当該減免対象者であるか否かにかかわらず」というのはブラフ〔オドシ〕で,これにより正誤が変わるわけではありません。 ●なぜ,説明しなければならないか たとえば,全戸が売れなければ,売れ残りの専有部分は分譲主が所有しているわけですから,分譲主も区分所有者です。 この場合に,分譲主には,管理費用・修繕積立金等が減免されるとしたら,どういうことになるでしょうか? 全戸が売り切れるまで,管理費用・修繕積立金等が不十分な状態で,管理組合はやりくりしなければならなくなります。売れ残りが続けば,管理・維持もいずれ手が回らなくなることは火を見るよりも明らかです。 この意味で,「まだ売れていない専有部分について,分譲主が,管理費用・修繕積立金等を全額負担しない」ということは,買主にとっては,契約するかどうかを決定する重要な事項です(このような場合,当該マンションがスラム化し,資産価値のないものになる可能性があります)。 |
●宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 〔国土交通省〕 |
5 マンション管理規約に定められる金銭的な負担を特定の者にのみ減免する条項について(規則第16条の2第5号関係) マンション管理規約とは、分譲マンションの区分所有者が組織する管理組合が定めるマンションの管理又は使用に関する基本ルールであるが、新築分譲マンションの場合は、分譲開始時点で管理組合が実質的に機能していないため、宅建業者が管理規約の案を策定し、これを管理組合が承認する方法で定められる方法が多い。 そのため、購入者にとって不利な金銭的負担が定められている規約も存在し、その旨が「中高層分譲共同住宅の管理等に関する行政監察報告書」(平成11年11月)においても指摘されているところである。 このような内容の規約を定めること自体望ましいものではない場合もあるが、契約自由の原則を踏まえつつ、購入者の利益の保護を図るため、管理規約中に標記に該当する内容の条項が存在する場合は、その内容の説明義務を宅建業者に義務付けるものである。 なお、本規定は、中古マンションの売買についてもその適用を排除するものではなく、その場合、当該売買の際に存在する管理規約について調査・説明を行うこととなる。 |