宅建過去問 宅建業法
監督処分の過去問アーカイブス 平成21年・問45 指示処分,指導・助言・勧告,
宅地建物取引業法の規定に基づく監督処分に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。(平成21年・問45) |
1 国土交通大臣に宅地建物取引業を営む旨の届出をしている信託業法第3条の免許を受けた信託会社は、宅地建物取引業の業務に関し取引の関係者に損害を与えたときは、指示処分を受けることがある。 |
2 甲県知事は、宅地建物取引業者A(甲県知事免許)に対して指示処分をしようとするときは、聴聞を行わなければならず、その期日における審理は、公開により行わなければならない。 |
3 国土交通大臣は、宅地建物取引業者B(乙県知事免許)に対し宅地建物取引業の適正な運営を確保し、又は健全な発達を図るため必要な指導、助言及び勧告をすることができる。 |
4 丙県知事は、丙県の区域内における宅地建物取引業者C(丁県知事免許)の業務に関し、Cに対して指示処分をした場合、遅滞なく、その旨を丙県の公報により公告しなければならない。 |
<コメント> |
正解肢は2年連続の「指示処分では公告されない」(20年は免許権者による指示処分,21年は免許権者以外の知事による指示処分)でした。しかし,正答率は,2年連続の割には低いものでした。
正解肢以外では,肢1,肢3は実質的に初出題であっても過去問で関連出題があり,肢2も過去問出題歴がありました。ただ,正解肢も含め,4肢とも出題頻度はそれほど高くはありません。正答率が低かったのはそのへんにも関係があると思われます。 監督処分は受験者が嫌がる学習項目なので,正解肢の肢4の論点を2年連続で出題しても,きっと間違えてくれるだろうという出題者の思惑が見事に的中した問題です。 |
●出題論点● |
肢1 信託会社も指示処分や業務停止処分の対象になる。
肢2 指示処分をしようとするときは,聴聞を行わなければならず,その期日における審理は,公開により行わなければならない。 肢3 国土交通大臣は,すべての宅建業者に対し宅建業の適正な運営を確保し,または健全な発達を図るため必要な指導,助言及び勧告をすることができる。 肢4 指示処分では公告されることはない。 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | ○ | ○ | × |
正答率 | 57.3% |
●指示処分 | |
国土交通大臣又は都道府県知事は、その免許を受けた宅建業者が以下に該当するときには,当該宅建業者に対して,必要な指示をすることができる(65条1項)。
1) 65条1項各号のいずれかに該当する場合▼
▼業務停止処分〔情状が特に重いときは免許取消し〕にすることもできる。 2) 宅建業法の規定に違反した場合 3) 特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律 (「履行確保法」という。)の所定の規定※に違反した場合 |
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※第11条第1項(住宅販売瑕疵担保保証金の供託をしていなければならない) 若しくは第6項(供託は主たる事務所の最寄りの供託所にする) 、第12条第1項(基準日ごとに、当該基準日に係る住宅販売瑕疵担保保証金の供託及び住宅販売瑕疵担保責任保険契約の締結の状況について免許権者に届出)、第13条(自ら売主となる新築住宅の売買契約の新たな締結の制限)、第15条(自ら売主となる新築住宅の買主に対し、当該新築住宅の売買契約を締結するまでに、その住宅販売瑕疵担保保証金の供託をしている供託所の所在地その他住宅販売瑕疵担保保証金に関し国土交通省令で定める事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。)若しくは履行確保法第16条 において読み替えて準用する履行確保法第7条第1項(二週間以内にその不足額を供託) 若しくは第2項(不足額供託した旨の届出) 若しくは第8条第1項 若しくは第2項 (主たる事務所を移転したためその最寄りの供託所が変更したとき)の規定 |
1 国土交通大臣に宅地建物取引業を営む旨の届出をしている信託業法第3条の免許を受けた信託会社は、宅地建物取引業の業務に関し取引の関係者に損害を与えたときは、指示処分を受けることがある。 |
【正解:○】関連 専業信託銀行に対する業務停止処分昭和62年・問45・肢3, ◆信託会社への指示処分 宅建業を営む旨の届出をしている信託会社は,国土交通大臣の免許を受けた宅建業者とみなして,宅建業法が適用されます〔免許以外の規定が適用される〕(宅建業法77条1項〜3項)。⇒ 免許を受けるのではないため,監督処分として免許取消し処分を受けることはありません。 宅建業を営む旨の届出をしている信託会社が受ける監督処分には,指示処分と業務停止処分があります〔国土交通大臣またはその業務を行った都道府県の知事から監督処分を受ける〕。 本肢のように,宅建業の業務に関して取引の関係者に損害を与えたときは,指示処分を受けることがあります(宅建業法65条1項1号)。 |
●信託業法3条の免許を受けた信託会社 | |
信託業法第3条は,内閣総理大臣の免許を受けなければ信託業を営めないという規定です。問題文でなぜこんな言い回しをしているかというと,宅建業法77条が次のようになっているからです。 (信託会社等に関する特例) 2 宅地建物取引業を営む信託会社については、前項に掲げる規定を除き、国土交通大臣の免許を受けた宅地建物取引業者とみなしてこの法律の規定を適用する。 3 信託会社は、宅地建物取引業を営もうとするときは、国土交通省令の定めるところにより、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。 4 信託業務を兼営する金融機関及び第一項の政令で定める信託会社に対するこの法律の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。 |
2 甲県知事は、宅地建物取引業者A(甲県知事免許)に対して指示処分をしようとするときは、聴聞を行わなければならず、その期日における審理は、公開により行わなければならない。 |
【正解:○】昭和63年・問44・肢2・肢4,平成10年・問32・肢3,平成14年・問39・肢3, ◆指示処分をしようとするときの聴聞 国土交通大臣または都道府県知事は,宅建業法による宅建業者への監督処分〔指示処分,業務停止処分,免許取消し〕をしようとするときには,行政手続法の規定による意見陳述のための手続区分に関係なく,聴聞を行わなければなりません(宅建業法69条1項)。また,聴聞の期日における審理は,公開により行わなければならない,とされています(宅建業法69条2項,16条の15第5項)。 ▼都道府県知事が,取引主任者への監督処分〔指示処分,事務禁止処分,登録消除〕をしようとするときも同じで,公開による聴聞を行わなければなりません。 |
3 国土交通大臣は、宅地建物取引業者B(乙県知事免許)に対し宅地建物取引業の適正な運営を確保し、又は健全な発達を図るため必要な指導、助言及び勧告をすることができる。 |
【正解:○】関連 平成12年・問43・肢2, ◆指導,助言及び勧告 国土交通大臣はすべての宅地建物取引業者に対して,宅建業の適正な運営を確保し,または宅建業の健全な発達を図るため必要な指導,助言及び勧告をすることができます(宅建業法71条)。 ▼都道府県知事は,当該都道府県の区域内で宅建業を営む宅建業者 〔他の都道府県知事免許業者や国土交通大臣免許業者に対しても〕 に対して,宅建業の適正な運営を確保し,または宅建業の健全な発達を図るため必要な指導,助言及び勧告をすることができる(宅建業法71条)。 |
4 丙県知事は、丙県の区域内における宅地建物取引業者C(丁県知事免許)の業務に関し、Cに対して指示処分をした場合、遅滞なく、その旨を丙県の公報により公告しなければならない。 |
【正解:×】平成20年・問45・肢4, ◆指示処分では公告されることはない 国土交通大臣または都道府県知事が,監督処分した場合に公告しなければならないのは,宅建業者に業務停止処分,免許取消し処分をしたときです(宅建業法70条1項)。〔公告する時期については特に定められていないことに注意。『遅滞なく』ではない。〕 指示処分では公告されることはないので,本肢は誤りです。 ◆◆関連知識◆◆ ▼都道府県知事は,他の都道府県知事免許業者や国土交通大臣免許業者に対して,当該都道府県の区域内における業務に関し,監督処分〔指示処分,業務停止処分〕をすることができます(宅建業法65条3項,4項)。 ▼国土交通大臣が公告するときは官報,都道府県知事が公告するときはその都道府県の公報によって行います(宅建業法70条1項,施行規則29条)。⇒ 丙県知事が丁県知事免許業者に対して業務停止処分をしたときには丙県の公報に公告される。 ▼取引主任者に対する監督処分(指示処分,事務禁止処分,登録消除)が公告されることありません。 ▼都道府県知事が,他の都道府県知事免許業者や国土交通大臣免許業者に対して,監督処分〔指示処分,業務停止処分〕をしたときは,遅滞なく,その旨を,当該宅建業者が国土交通大臣免許業者のときは国土交通大臣に報告し,当該宅建業者が他の都道府県知事免許業者であるときは当該他の都道府県知事に通知しなければならない(宅建業法70条3項)。 ▼ 国土交通大臣が,国土交通大臣免許業者に対して,監督処分〔指示処分,業務停止処分,免許取消し〕をしたときは,遅滞なく,その旨を,当該宅建業者の事務所の所在地を管轄する都道府県知事に通知する(施行規則27条1項)。⇒ 複数の都道府県にわたっているときは,その宅建業者の事務所がある全ての都道府県の知事に対して通知される。 |