Brush Up! 権利の変動篇 過去問のSummary

表見代理−問題を解く視点とKEY


 表見代理の問題を解くポイントを整理してみましょう。

表見代理と無権代理

                   ┌代理権授与表示 (109)
           ┌表見代理権限ゆ越 (110)
広義の無権代理┤       └代理権消滅 (112)
           └狭義の無権代理

権利外観法理

 現実の権利関係とは異なる外観を信頼して取引した相手方を保護しようとするもの。

・信頼した者が善意無過失であること,

・この法理によって不利益を受ける本来の権利者に虚偽の外観作出について帰責事由があること

 この二つが要件とされています。表見代理通謀虚偽表示の相手方の保護などで用い
られています。

表見代理の要件

 の要件の要件とが二つ同時に揃わないと表見代理にはならない

  (本人)
 |
  (代理人)

―――

  (相手方)

代理権授与表示  →  善意無過失
権限ゆ越  → 代理人の権限があると信じる正当な理由がある
代理権消滅  →  善意無過失
 の要件  の要件

●表見代理になる要件−ワンセットにして覚えましょう

の要件が代理権授与表示のときは,は善意無過失であること。

の要件が権限ゆ越のときは,に代理人の権限があると信じることに正当な理由があること。〔正当な理由がある=判例では,『善意無過失』。〕

の要件が代理権消滅のときは,は善意無過失であること。

●参考問題
 現実の授権行為〔代理権の授与〕がないにもかかわらず,本人が他人に代理権を与えた旨を表示したときは,相手方に過失があっても,本人は責任を免れることができない。
【正解:×

 の要件 代理権授与表示

 C       過失

 この場合は,相手方に無権代理であることを知らなかったことについて過失があるので,表見代理は成立していません。無権代理について,相手方が悪意or有過失のときには,表見代理として相手方は保護されません。(最高裁・昭和41.4.22)

表見代理の各類型に共通すること

・表見代理で保護されるのは,代理権のないことに善意無過失の直接の取引相手に限る。
 → 相手方〔悪意or有過失〕からの転得者は保護されない。(最高裁・昭和36.12.12)

表見代理の各類型

代理権授与表示  本人に代理権があると表示 なし  
権限ゆ越  授与された代理権の範囲を越えた行為 51,54,60,,11,14
代理権消滅  代理権消滅後に代理行為 54,55,63,
代理権授与表示+権限ゆ越  表示された代理権の範囲を越えた行為 なし
代理権消滅+権限ゆ越  消滅した代理権の範囲を越えた行為 54

●参考問題
 表見代理の適用にあたっては,本人の帰責事由が必要であり,権限ゆ越の表見代理によって本人に責任を負わせるためには,少なくとも本人に過失があることが必要である。
【正解:×

 判例では,本人が無過失であっても表見代理の責任は免れないとしています。(最高裁・昭和34.2.5)

近年の出題歴

51年 54年 55年 60 63年 平6年 平8年 平11年 平14年
 出題問題番号 8 2 4 2 7 2
 代理権授与表示
 権限ゆ越 ◎総 ◎総 ○2 ◎総 ○2
 代理権消滅 ◎総 ○4 ○4 ○4
 授権表示+権限ゆ越
 代理権消滅+権限ゆ越 ◎総

表見代理の相手方のとり得る手段

 表見代理の相手方のとるべき手段

 表見代理の要件を満たしている場合,相手方は,その選択によって,以下のことをすることができます。

・表見代理の効果を主張して本人に債務の履行を求める。

無権代理人の責任を追及し,債務の履行を請求するか,損害賠償請求をする。(117条1項)

・本人が追認する前に,当該売買契約を取り消す(115条)

●参考問題
 相手方が無権代理人に対して無権代理人の責任を追及した場合に,無権代理人は,表見代理が成立することを主張・立証しても,自己の責任を免れることはできない。
【正解:

 判例によれば,表見代理が成立していても,無権代理人としての責任を免れることはできません(最高裁・昭和62.7.7)

表見代理となったときの本人の損害

 表見代理となったため,本人に損害が生じた場合は,本人から表見代理人に対して,損害賠償を請求することができます。


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