税法その他 実戦篇

印紙税の過去問アーカイブス 平成2年・問30


印紙税に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。 (平成2年・問30)

1.「『月額家賃10万円,契約期間2年間,権利金60万円,敷金30万円とする』旨を記載した建物の賃貸借契約書については,印紙税は課税されない。」

2.「6万円の印紙税が課税される契約書に,誤って10万円の収入印紙をはり付け,消印した場合,過大に納付した4万円の印紙税については,還付を受けることができない。」

3.「当初作成の『土地を6億円で譲渡する』旨を記載した売買契約書の契約金額を変更するために作成する契約書で,『当初の契約書の契約金額を1億円減額し,5億円とする』旨を記載した変更契約書は,記載金額5億円の不動産の譲渡に関する契約書として,印紙税が課税される。」

4.「『月額賃料20万円,契約期間2年間,権利金100万円,保証金100万円とする』旨を記載した土地の賃貸借契約書については,記載金額680万円の土地の賃借権の設定に関する契約書として,印紙税が課税される。」

【正解】

× × ×

1.「『月額家賃10万円,契約期間2年間,権利金60万円,敷金30万円とする』旨を記載した建物の賃貸借契約書については,印紙税は課税されない。」

【正解:

◆建物の賃貸借契約は非課税

 建物の賃貸借契約書には印紙税は課税されません。〔昭和63年の印紙税法の改正により平成元年4月1日以後に作成されるものは課税されない。〕

2.「6万円の印紙税が課税される契約書に,誤って10万円の収入印紙をはり付け,消印した場合,過大に納付した4万円の印紙税については,還付を受けることができない。」

【正解:×

◆過誤納金の還付

 印紙をはり付け,税印を押し又は納付印を押した課税文書で,納付した金額が相当金額を超える場合,過誤納金の還付を受けることができます。〔印紙税法14条1項,基本通達115条(3)〕

還付手続

 印紙税に係る過誤納金の還付を受けようとする者は,政令で定めるところにより,原則として,その過誤納の事実につき納税地の所轄税務署長の確認を受けなければならない。(印紙税法14条1項)

過誤納金の請求権の消滅時効

 過誤納金に係る国に対する請求権は,その請求することができる日から5年を経過することによって,時効により消滅する。(基本通達118条第1項)

●基本通達
(確認及び充当の請求ができる過誤納金の範囲等)
第115条
 法第14条《過誤納の確認等》の規定により、過誤納の事実の確認及び過誤納金の充当の請求をすることができる場合は、次に掲げる場合とする。

(1)  印紙税の納付の必要がない文書に誤って印紙をはり付け(印紙により納付することとされている印紙税以外の租税又は国の歳入金を納付するために文書に印紙をはり付けた場合を除く。)、又は納付印を押した場合(法第10条《印紙税納付計器の使用による納付の特例》第2項の規定による承認を受けた印紙税納付計器の設置者が、交付を受けた文書に納付印を押した場合を含む。(3)において同じ。)

(2)  印紙をはり付け、税印を押し、又は納付印を押した課税文書の用紙で、損傷、汚染、書損その他の理由により使用する見込みのなくなった場合

(3)  印紙をはり付け、税印を押し、又は納付印を押した課税文書で、納付した金額が相当金額を超える場合

(4)  法第9条《税印による納付の特例》第1項、第10条第1項、第11条《書式表示による申告及び納付の特例》第1項又は第12条《預貯金通帳等に係る申告及び納付等の特例》第1項の規定の適用を受けた課税文書について、当該各項に規定する納付方法以外の方法によって相当金額の印紙税を納付した場合

(5)  法第9条第2項の規定により印紙税を納付し、同条第1項の規定により税印を押すことの請求をしなかった場合(同条第3項の規定により当該請求が棄却された場合を含む。)

●国税通則法
(還付)
第56条
 国税局長、税務署長又は税関長は、還付金又は国税に係る過誤納金(以下「還付金等」という。)があるときは、遅滞なく、金銭で還付しなければならない。

2  国税局長は、必要があると認めるときは、その管轄区域内の地域を所轄する税務署長からその還付すべき還付金等について還付の引継ぎを受けることができる。

●印紙税法(税印による納付の特例)

第9条  課税文書の作成者は、政令で定める手続により、財務省令で定める税務署の税務署長に対し、当該課税文書に相当印紙をはり付けることに代えて、税印(財務省令で定める印影の形式を有する印をいう。次項において同じ。)を押すことを請求することができる。

2  前項の請求をした者は、次項の規定によりその請求が棄却された場合を除き、当該請求に係る課税文書に課されるべき印紙税額に相当する印紙税を、税印が押される時までに、国に納付しなければならない。

3  税務署長は、第一項の請求があつた場合において、当該請求に係る課税文書の記載金額が明らかでないことその他印紙税の保全上不適当であると認めるときは、当該請求を棄却することができる。

3.「当初作成の『土地を6億円で譲渡する』旨を記載した売買契約書の契約金額を変更するために作成する契約書で,『当初の契約書の契約金額を1億円減額し,5億円とする』旨を記載した変更契約書は,記載金額5億円の不動産の譲渡に関する契約書として,印紙税が課税される。」

【正解:×減額・昭和61年,平成2年,9年,11年,13年,増額・平成12年

◆減額→記載金額のないものとして扱い,印紙税額は200円

 変更前の契約金額を証明した契約書が作成されているときは,増額変更の場合は増加した金額を記載金額とし,減額変更の場合は契約金額の記載のないものとして扱います。

 本肢では,1億円の減額のため『記載金額のないもの』として200円が課税されるので×です。

 増額変更  増加した金額を記載金額として印紙税が課税される。
 減額変更  契約金額の記載のないものとして印紙税200円が課税される。

ただし,変更前のもともとの契約書が作成されていない場合は,変更後の契約金額が記載金額として印紙税が課税されます。

4.「『月額賃料20万円,契約期間2年間,権利金100万円,保証金100万円とする』旨を記載した土地の賃貸借契約書については,記載金額680万円の土地の賃借権の設定に関する契約書として,印紙税が課税される。」

【正解:×平成2年,4年,13年

◆土地の賃貸借契約書−1号文書−

 土地の賃貸借契約書で記載金額とされるのは,権利金・礼金・更新料などの『後日返還されることが予定されていない金額』です。⇒別表第一・1号の2「地上権又は賃借権の設定又は譲渡に関する契約書」

 敷金や保証金などの『後日返還されることが予定されているもの』や『賃料』は記載金額には該当しません。

 したがって,本肢の場合での記載金額は権利金の100万円のみなので×になります。

地上権設定の契約書や土地の賃貸借契約書で,権利金・礼金・更新料などの『後日返還されることが予定されていない金額』が記載されていない場合は,「記載金額のないもの」として印紙税が課税されます。


●印紙税の宅建過去問Up-To-Date 50問時代の全問収録 〜検索用〜 
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