税法その他 実戦篇
印紙税の過去問アーカイブス 平成12年・問27
印紙税に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。 (平成12年・問27) |
1.「建物の賃貸借契約に際して敷金を受け取り,敷金の領収書 (記載金額100万円) を作成した場合,その領収書に『賃借人が退去する際に返還する』旨が記載されているときでも,印紙税は課税される。」 |
2.「土地の譲渡契約 (記載金額5,000万円) と建物の建築工事請負契約 (記載金額3,000万円) を1通の契約書にそれぞれ区分して記載した場合,その契約書の記載金額は8,000万円である。」 |
3.「A社を売主,B社を買主,C社を仲介人とする土地の譲渡契約書 (記載金額5,000万円) を3通作成し,それぞれが1通ずつ保存することとした場合,仲介人であるC社が保存する契約書には印紙税は課税されない。」 |
4.「土地の譲渡金額の変更契約書で,『既作成の譲渡契約書に記載の譲渡金額1億円を1億1,000万円に変更する』旨が記載されている場合,その契約書の記載金額は1億1,000万円である。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | × | × |
1.「建物の賃貸借契約に際して敷金を受け取り,敷金の領収書 (記載金額100万円) を作成した場合,その領収書に『賃借人が退去する際に返還する』旨が記載されているときでも,印紙税は課税される。」 |
【正解:○】昭和61年,平成2年,9年,平成12年 ◆建物の賃貸借契約書と敷金の受取書 建物の賃貸借契約書には印紙税は課税されませんが,敷金の領収書は17号文書に該当し,3万円以上の敷金を受領した際の受取書には印紙税が課税されます。(別表第一・17号の2) 『賃借人が退去する際に返還する』旨が記載されているというノイズが入っていますが,この記載の有無は課税の判定には関係なく,上記の原則どおりに考えるべきでしょう。 |
●17号文書 |
1 売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書 2 金銭又は有価証券の受取書で1に掲げる受取書以外のもの |
2.「土地の譲渡契約 (記載金額5,000万円) と建物の建築工事請負契約 (記載金額3,000万円) を1通の契約書にそれぞれ区分して記載した場合,その契約書の記載金額は8,000万円である。」 |
【正解:×】 ◆2つ以上の号に該当するものが記載されていたときの記載金額の判定 一つの文書に,別表第一の2つ以上の号となるものが記載されているときの扱いを尋ねています。 土地の譲渡契約書〔1号文書〕と請負契約書〔2号文書〕が区分して併記してあった場合で,土地の譲渡契約書〔1号文書〕の記載金額が請負契約書〔2号文書〕の記載金額を上回っているときは,土地の譲渡契約書〔1号文書〕として扱われます。(印紙税法・別表第一・課税物件表の適用に関する通則3のロ) 本肢の場合は,土地の譲渡契約 (記載金額5,000万円) の記載金額が建築工事請負契約 (記載金額3,000万円)の記載金額より多いので,記載金額5,000万円の土地の譲渡に係る文書〔1号文書〕として印紙税が課税されます。 したがって,本肢は「記載金額は8,000万円」としているので×です。 ▼請負契約の金額が多いときには,請負契約に係る文書として課税されます。 ▼一つの文書に課税物件表の同一の号の課税事項の記載金額が2以上ある場合は,当該記載金額の合計額です。〔課税物件表の適用に関する通則4のイ・基本通達24条(1)〕 (例) 2 不動産及び鉱業権売買契約書 |
●課税物件表の適用に関する通則 |
3 一の文書が2の規定によりこの表の各号のうち二以上の号に掲げる文書に該当することとなる場合には、次に定めるところによりその所属を決定する。 |
ロ 第一号に掲げる文書と第二号に掲げる文書とに該当する文書は、第一号に掲げる文書とする。ただし、当該文書に契約金額の記載があり、かつ、当該契約金額を第一号及び第二号に掲げる文書のそれぞれにより証されるべき事項ごとに区分することができる場合において、第一号に掲げる文書により証されるべき事項に係る金額として記載されている契約金額(当該金額が二以上ある場合には、その合計額。以下このロにおいて同じ。)が第二号に掲げる文書により証されるべき事項に係る金額として記載されている契約金額に満たないときは、同号に掲げる文書とする。 |
3.「A社を売主,B社を買主,C社を仲介人とする土地の譲渡契約書 (記載金額5,000万円) を3通作成し,それぞれが1通ずつ保存することとした場合,仲介人であるC社が保存する契約書には印紙税は課税されない。」 |
【正解:×】平成9年問28肢1,対比・平成11年問28肢3 ◆不動産仲介業者が保存する文書にも課税される 一の課税文書を二以上の者が共同して作成した場合には,当該二以上の者は,原則としてその作成した課税文書につき,連帯して印紙税を納める義務があります。(印紙税法・3条2項) 契約当事者以外の者に提出又は交付する文書等については原則として課税文書には該当しないとされていますが,不動産の売買契約における仲介人は「契約当事者以外の者」に含まれていないので,本肢での仲介業者C社が保存する契約書にも印紙税が課税されます。(基本通達20条)したがって本肢は×です。 |
●基本通達の原文 |
(契約当事者以外の者に提出する文書) 第20条 契約当事者以外の者(例えば,監督官庁,融資銀行等当該契約に直接関与しない者をいい,消費貸借契約における保証人,不動産売買契約における仲介人等当該契約に参加する者を含まない。)に提出又は交付する文書であって,当該文書に提出若しくは交付先が記載されているもの又は文書の記載文言からみて当該契約当事者以外の者に提出若しくは交付することが明らかなものについては,課税文書に該当しないものとする。 (注) 消費貸借契約における保証人,不動産売買契約における仲介人等は,課税事項の契約当事者ではないから,当該契約の成立等を証すべき文書の作成者とはならない。 |
4.「土地の譲渡金額の変更契約書で,『既作成の譲渡契約書に記載の譲渡金額1億円を1億1,000万円に変更する』旨が記載されている場合,その契約書の記載金額は1億1,000万円である。」 |
【正解:×】減額・昭和61年,平成2年,9年,11年,13年,増額・平成12年 ◆増額→増加した金額1,000万円を記載金額として印紙税が課税される 変更前の契約金額を証明した契約書が作成されているときは,増額変更の場合は増加した金額を記載金額とし,減額変更の場合は契約金額の記載のないものとして扱います。 本肢では,1,000万円の増額のため『記載金額1,000万円』として印紙税が課税されるので,『記載金額は1億1,000万円』とする本肢は×です。
▼ただし,変更前のもともとの契約書が作成されていない場合は,変更後の契約金額が記載金額として印紙税が課税されます。 |
●印紙税の宅建過去問Up-To-Date 50問時代の全問収録 〜検索用〜 |
昭和61年問29,平成2年問30,平成4年問29,平成5年問30,平成9年問28,平成11年問28,平成12年問27,平成13年問27,平成16年問28, |