宅建基本書における法改正の位置付け 2001/07/02
●今年の基本書の動向について
(この原稿は、3月にメルマガに掲載したものをベースに加筆したものです) |
先週、らくらくの過去問宅建塾(上・下)と住宅新報社の「宅地建物取引の知識」、 「パーフェクトNo.3 宅建予想問題集」が刊行され、テキストがほぼ出揃いました。 これまで刊行された基本書のざっと見た感想を申し上げたいと思います。 まず、基本書の出版時期ですが、大手の出版社・予備校の基本書の刊行が例年 より遅かったことが今年の特徴と考えられます。今年は省庁統合の年であった訳 ですが、さすがにこれに対応していないものはないと思います。(例年は12月下旬発行) →一部の基本書では、未対応。法改正レポートNo.7 例年では12月20日前後には基本書の大半が揃ってしまうようですが、住宅新報の パーフェクトの2月刊行に見られるように、改正法対策をある程度した上での 刊行は望ましいものと思います。 昨年の「法改正レポート」で申し上げた通り、今年の基本書にも改正点を全て、 詳細に載っているものは少なかったと思います。これはこれで一つの判断であり、 基本書の編集者並びに著者の方のご判断なので、受験者のご判断によって、知識を 取捨選択して上乗せしていくしかないと思います。基本書の改正法の掲載について は、編集者・著者の長年の経験と改正法への重要性の判断があるわけですから。 法改正と言っても、突然施行されるわけではなく、公布→施行と一定の期間がある わけであり、平成12年版の基本書で大半の基本書が「成年後見制度」、「定期借家」 を掲載していなかったのは、誠に残念でした。(編集は平成11年の秋。この時点で 既に改正は確定していました。平成12年の場合は、6月以降に改正法の冊子を各社 ともハガキで請求した読者には発送しましたが、これでも半年の経過がありました。 これも読者の自己責任の範囲とはいえ、半年もの間には旧法で覚えてしまった受験者 も実際にはいました。) ◆権利の変動 平成12年の制限能力者〔平成17年以降は制限行為能力者〕・定期借家権などの導入については大半の基本書が取り入れており、制限能力者導入に伴う「成年後見登記」「任意後見制度」「被補助人」の記載に、基本書によって若干の差異が見られます。 ほかには、「遺言方式の変更」などがあります。 定期借家については、法改正レポートNo.5をご覧下さい。 ◆不動産登記法 登記簿等の写しの交付請求・閲覧請求に追加がありました。→No.10 ◆宅建業法 今年は、こまごまとした改正が、宅建業法・施行令・施行規則にありました。 この法改正レポートをご活用下さい。→No.2, No.7, No.9 昨年の改正点も、一部の基本書で掲載していない場合があります。 →法改正レポートNo.6 ,No.4 , 「取引一任代理等の認可制度」などは、このあとの法改正レポートで扱います。 ◆建築基準法 基本書によって改正点の記述の差異が激しいところです。 宅建六法など典拠となるものを早めに確認しておく必要性を感じます。 中間検査の意義などで不十分なものが見うけられます。 これまでも申し上げましたが、基本書の中には昨年の宅建試験に出た平成10年施行 のものでも改正前の叙述をしているものも見うけられます。 昨年の問22肢1の再現は繰り返してほしくないと思います。 (正しいものを選べという問題で、改正前の記述が肢1で出題され、平成10年施行の 改正を知らずに、肢1をマークした受験者が実際にいました。昨年の合格推定点は、 30点。決して無視できない1点でした。) 昨年までの建築基準法の改正施行分については、メルマガに掲載していますが、 この法改正レポートNo.12以降で掲載します ◆土砂災害防止法 今年の4月1日から、施行されました。→レポートNo.11 (都市計画法の大改正について 都市計画法及び建築基準法の一部を改正する法律(平成12年5月19日法律第73号)は、 平成13.5.18施行のため今年の宅建本試験の範囲ではありません。現在、実務についている方にとっては、仕事では改正法、宅建の学習では、旧法を勉強することになり、ご負担だと思いますが、ご注意ください。) →平成13年施行の都市計画法・建築基準法の改正点については、以下を参照。 http://www.tokeikyou.or.jp/city1.html (これは今年の宅建試験の範囲ではありません。くれぐれも、ご注意下さい。) ◆農地法 宅建関係では、3条の許可をする際の下限面積を都道府県知事が農林水産大臣 の承認を受けなくても、省令で定める基準を満たしていれば、実情に応じて変える ことができるようになりました。また、罰則も変更になっています。→No.12 ◆住宅の品質確保の促進等に関する法律 1瑕疵担保責任期間10年間の義務付け 新築住宅の売買契約において、売主は買主に引き渡した時から10年間、住宅の うち構造力学上主要な部分又は雨水の侵入を防止する部分などの隠れた瑕疵に ついて、瑕疵補修請求・損害賠償請求・契約解除などの責任を負う。(基本構造部分) 新築住宅の請負契約においても、請負人は注文者に引き渡した時から10年間、 上記と同様の責任を負うものとする。(契約解除は除く) http://www.f-hinkaku.gr.jp/jyumoku/index.html 2住宅性能表示制度の整備と指定住宅紛争処理機関の創設 火災時の安全や高齢者への配慮など9分野28項目にわたり、住宅の性能を表示 する共通ルールを設定。こうした性能を評価するのが国土交通大臣の指定を受けた 第三者機関で、設計・施行・完成段階で性能をチェックする。 この制度の利用は任意で、施主でも供給者でも一定の費用を払うことで利用でき 、審査の結果、「住宅性能評価書」が交付される。 性能評価を受けた住宅のトラブルは、指定住宅紛争処理機関(各都道府県の弁護 士会住宅紛争審査会など)が担当し、民事裁判に比べて低料金と迅速な解決を図る。 宅建業法の規定と並行して存在することになり、細かい規定までは出題されない だろうという判断で掲載していないものが基本書で目立ちますが、知っておいて 損はないと思われます。 ◆マンション管理適正化法の施行による関連法などの改正 重要事項説明での追加事項がありました。→法改正レポートNo.2 これは基本書には間に合わなかったためか、掲載している本はありません。 ◆税法 税法改正点は、出題頻度が高いと言われています。注意してください。 ◆「住宅金融公庫法」、「不動産の表示に関する公正競争規約」 こちらは、法改正レポートの後半で扱います。 ◆消費者契約法 全ての基本書が掲載しておりません。→法改正レポートNo.8 ◆改正法の出題数 改正法の出題数は、例年2問から3問程度です。 これまで挙げた以外にもこまごまとした改正はありますが、とりあえずおもちの 基本書を信頼して学習した上で、重要なもの・頻出のもの・新たに創設されたもの などに限定して改正法を補充するべきだと思います。 木を見て森を見ずの譬えの通り、基礎的な分野の全体像を早めに把握して おけば、直前になって慌てることはありません。 ざっと大雑把に基本書の改正法対処を見てきましたが、くれぐれも、基本書の 中にある改正法資料請求のハガキは出しそびれないようにしていただきたいと 思います。 なお、改正法について気になる方は、最近刊行された、以下の本を本屋で立ち 読みしておくといいかと思われます。 平成13年版 不動産事業者のための 法令改正と実務上のポイント (編著・不動産流通近代化センター/大成出版社/B5判) この改正法レポートは、随時更新しますので、折に触れてご覧になることを お勧めします。 |
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