税法その他 実戦篇

土地の過去問アーカイブス 平成8年・問1 扇状地・崖錐堆積物・自然堤防・旧河道


土地に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(平成8年・問1)

1.「扇状地については,大縮尺の地形図や空中写真によって,土石流や洪水流の危険度をある程度判別できることが多い。」

2.「崖錐堆積物は,一般的に透水性が低く,基盤との境付近が水の通り道となって,そこをすべり面とした地すべりが生じやすい。」

3.「自然堤防は,主に砂や小礫からなり,排水性がよく地盤の支持力もあるため,宅地として良好な土地であることが多い。」

4.「旧河道は,それを埋める堆積物の上部が厚い粘土質からなるとき,軟弱地盤となって地盤の支持力が小さく,宅地には不適当であることが多い。」

【正解】

×

1.「扇状地については,大縮尺の地形図や空中写真によって,土石流や洪水流の危険度をある程度判別できることが多い。」

【正解:

◆扇状地の危険度の判断

 扇状地の頂点(谷の出口にあたる部分,扇頂)や中央部(扇央)では,土石流や洪水流などの危険性が高いといわれていますが,地形図や空中写真によってもある程度予測することができます。

 ⇒ 小扇状地の地形解析の例地形図から地理情報を理解する(慶應大学,PDF)

扇状地での土石流

 集中豪雨で山崩れなどにより土石流が発生することがあります。

扇状地での洪水流

 扇状地の土質は透水性の高い砂礫質のため河川の水は地下を流れる伏流水となり,地上の流量は減るので,扇状地での河川では普段は水流はわずかです。しかし,集中豪雨などで一時的に降水量が増えると,伏流水は本来の姿を地上に現し,河川は増水して流路を変えようとするために洪水流が起こりやすくなります。

●扇状地・谷の出口の出題
【プラスの評価で出題の扇状地】昭和61年・問1・肢1平成4年・問1・肢1

【マイナスの評価で出題の扇状地】昭和53年・肢2平成6年・問1・肢2,〔扇状地の危険度の判断〕平成8年・問1・肢1,(扇状地と土石流)平成12年・問49・肢3

【谷の出口の土石流堆】昭和60年・問1・肢1

2.「崖錐堆積物は,一般的に透水性が低く,基盤との境付近が水の通り道となって,そこをすべり面とした地すべりが生じやすい。」

【正解:×

◆崖錐堆積物

 前半の<透水性が低い>が誤り。

 崖錐堆積物とは,崖錘の構成物のこと。崖錘堆積物は未固結で侵食に弱く透水性が高いために,崖錐では,基盤との境界付近が帯水層となっていて,末端部(水が沁みだす)の洗掘や切土をすると土砂崩れ地滑りを起こしやすいといわれます。

 また,谷底や河底に崖錐堆積物が堆積していて,急傾斜・保水能力の低い山間地では集中豪雨時に土石流(鉄砲水・山津波)を引き起こす場合もあります。

●崖錐

 崖錐(がいすい)とは,風化,剥離した岩屑(がんせつ)が急斜面を落下して堆積した地形で,急な崖の下(崖の基部)に形成され,崖錐斜面(30゜〜40゜)を構成します。

 透水性が高いため地すべりを起こしやすく,集中豪雨の時には,斜面崩壊から土石流を引き起こしやすい。

 ⇒ 参考・崖錐斜面の図

●崖錐の出題
〔地すべりとの関連〕平成4年・問1・肢4平成8年・問1・肢2

【崖錐】平成11年・問49・肢3

3.「自然堤防は,主に砂や小礫からなり,排水性がよく地盤の支持力もあるため,宅地として良好な土地であることが多い。」

【正解:

◆自然堤防

 自然堤防とは,河川の両岸に,上流から運搬されてきた土砂などが堆積してできた微高地のことをいい,砂質・砂礫質の土質からなり排水性がよく地盤の支持力もあるため,宅地に適しているといわれます。

 自然堤防はなだらかなで,高さは日本では最大で水面から5mくらいです。自然堤防の幅の最大のものは利根川中流域の約3Km,長さでは木曽川で22Kmにわたるものがあります。

自然堤防と自然堤防の間は浅いくぼ地になっていることが多く,後背低地(後背湿地)といわれます。

●自然堤防はどのように造られるか
 河川は増水時に河道から水が溢れ出しますが,河道に近い部分では流速が早いために,砂等の比較的粒の粗い物質が堆積し,河道から遠いところでは流速が遅くなるため,シルト・粘土などの粒の細かいものが堆積されます。

 洪水が繰り返されることにより,このように,河道に沿ってゆるやかな微高地が形成されていきます。

●自然堤防の出題
平成3年・問1・肢3平成8年・問1・肢3

4.「旧河道は,それを埋める堆積物の上部が厚い粘土質からなるとき,軟弱地盤となって地盤の支持力が小さく,宅地には不適当であることが多い。」

【正解:

◆旧河道

 旧河道とは,昔河川だった場所(流路が変わって水が流れなくなった結果できたもの)です。そのため,旧河道では,泥土が堆積しており,周囲の土地よりも低い帯状の地形で湿地になっていることが多く,水害や地震に対しては弱いので宅地には適していません。

 性質=多くは,粘土層や砂礫層が不均一で軟弱地盤(不同沈下が起きやすい。),排水も悪く,低湿で,地震・洪水による被害を受けやすい。

 旧河道は,それを埋める堆積物の上部が厚い粘土質からなるとき,軟弱地盤となって地盤の支持力が小さく,宅地には不適当であることが多い。

⇒ 旧河道・自然堤防の写真

旧河道でも,軟弱地盤ではない場合もあります。扇状地上の旧河道(低湿だが,砂礫層が表面近くまである。),天井川が廃川となった旧河道(表面が砂や砂礫で,周囲よりも高い。)

●旧河道の出題
(平成3年・問1・肢3),平成6年・問1・肢4平成7年・問1・肢4平成8年・問1・肢4,〔厚い粘土質〕平成14年・問49・肢1平成16年・問50・肢1

〔天井川が廃川になった旧河道〕昭和53年・肢4


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