法令上の制限 実戦篇
諸法令の過去問アーカイブス 平成15年・問25
次の記述のうち,正しいものはどれか。 (平成15年・問25) |
1.「地すべり等防止法によれば,ぼた山崩壊防止区域内において,土石の採取を行おうとする者は,原則として都道府県知事の許可を受けなければならない。」 |
2.「港湾法によれば,港湾区域内において,港湾の開発に著しく支障を与えるおそれのある一定の行為をしようとする者は,原則として国土交通大臣の許可を受けなければならない。」 |
3.「文化財保護法によれば,史跡名勝天然記念物の保存に重大な影響を及ぼす行為をしようとする者は,原則として市町村長の許可を受けなければならない。」 |
4.「自然公園法によれば,環境大臣が締結した風景地保護協定は,当該協定の公告がなされた後に当該協定の区域内の土地の所有者となった者に対しては,その効力は及ばない。」 |
●コメント |
肢3を除いて初出題。(肢3も昭和58年以来の出題。)その割には自己採点の正答率は80%を超えています。これは正解肢の1が過去問では未出題であってもよく研究されていたということを物語ります。 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | × | × |
1.「地すべり等防止法によれば,ぼた山崩壊防止区域内において,土石の採取を行おうとする者は,原則として都道府県知事の許可を受けなければならない。」 |
【正解:○】昭和56年,平成12年,『ぼた山崩壊防止区域』は初出題 ◆ぼた山崩壊防止区域 主務大臣(国土交通大臣または農林水産大臣)は,関係都道府県知事の意見を聴いて,「地すべり防止区域」(昭和56年,平成12年出題),「ぼた山崩壊防止区域」を指定します。〔指定するときには関係主務大臣で協議して国土交通大臣または農林水産大臣が指定します。〕(地すべり等防止法3条1項,4条1項,51条1項) この区域では一定の行為をしようとする者は都道府県知事の許可を受けなければいけません。(地すべり等防止法42条1項)
※「ぼた山」とは,石炭の採掘所等で「石炭又は亜炭に係る捨石が集積されてできた山」であって,この法律の施行の際現に存するものをいいます。各地の炭鉱の閉鎖が報道された後に出題しているのでその意味ではタイムリーな出題かもしれません。 ⇒ 地すべり等防止法 |
災害防止関係法令の過去問の出題状況 | ||||||
平成10年 | 平成11年 | 平成12年 | 平成13年 | 平成14年 | 平成15年 | |
災害危険区域 | ○ | |||||
急傾斜地崩壊危険区域 | ○ | ○ | ○ | |||
地すべり防止区域内 | ○ | |||||
ぼた山崩壊防止区域 | ○ | |||||
土砂災害特別警戒区域 | *** | *** | *** | 施行 | ○ |
※平成13年,16年に「災害防止関係法令」の出題は,ありませんでした。
〔宅地造成等規制法の出題はありました。〕
災害防止関係法令(砂防関係の指定権者,許可権者) | ||
誰が指定するか | 許可権者 | |
急傾斜地崩壊危険区域 | 都道府県知事 | 都道府県知事 |
地すべり防止区域内 | 主務大臣 (国土交通大臣 or 農林水産大臣) |
都道府県知事 |
ぼた山崩壊防止区域 | 主務大臣 (国土交通大臣 or 農林水産大臣) |
都道府県知事 |
土砂災害特別警戒区域 | 都道府県知事 | 都道府県知事 |
※災害防止関係法令は,税法その他の土地の問題にも関係するので,用語の定義・
指定区域についてはよく見ておきましょう。
区域の指定 | 制限行為について | |
砂防指定地
(砂防法) |
国土交通大臣 | 都道府県知事が禁止・制限し, 都道府県の条例で定める (下記の場合は,国土交通大臣が知事の職権を施行, ・他の都道府県の利益の保全のために必要なとき |
災害危険区域
(建築基準法) |
地方公共団体 | 建築物の建築についての制限は 地方公共団体の条例で定める |
2.「港湾法によれば,港湾区域内において,港湾の開発に著しく支障を与えるおそれのある一定の行為をしようとする者は,原則として国土交通大臣の許可を受けなければならない。」 |
【正解:×】初出題 ◆港湾区域・港湾隣接地域 港湾区域内または港湾隣接地域内では,「港湾の開発,利用又は保全に著しく支障を与えるおそれのある政令で定める行為」をしようとする者は,港湾管理者の許可を受けなければいけません。(港湾法・37条1項4号) ▼臨港地区内で「港湾の開発、利用又は保全に著しく支障を与えるおそれのある政令で定める施設の建設又は改良 」を行おうとする者はその旨を港湾管理者に事前に届け出ることになっています。(港湾法・38条の2第1項4号)
■港湾管理者…この法律で「港湾管理者」とは、第2章第1節〔港務局・港務局の設立等〕の規定により設立された港務局又は第33条(港湾管理者としての地方公共団体の決定等) の規定による地方公共団体をいう。 (港湾法・2条1項) ⇒ 港湾法 ●「○○管理者の許可」のまとめ
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3.「文化財保護法によれば,史跡名勝天然記念物の保存に重大な影響を及ぼす行為をしようとする者は,原則として市町村長の許可を受けなければならない。」 |
【正解:×】昭和56年,58年,史跡名勝天然記念物としては初出題 ◆史跡名勝天然記念物の保存に重大な影響を及ぼす行為 史跡名勝天然記念物(特別史跡名勝天然記念物を含む。)の現状を変更または保存に影響を及ぼす行為(文化財保護法125条1項),重要文化財(国宝を含む。)の現状を変更または保存に影響を及ぼす行為(文化財保護法43条1項)は,文化庁長官の許可を受けなければいけません。 ⇒ 文化財保護法 |
4.「自然公園法によれば,環境大臣が締結した風景地保護協定は,当該協定の公告がなされた後に当該協定の区域内の土地の所有者となった者に対しては,その効力は及ばない。」 |
【正解:×】初出題 ◆風景地保護協定〔国立公園・国定公園〕 環境大臣・地方公共団体・公園管理団体は,国立公園又は国定公園内の自然の風景地の保護のため必要があると認めるときは,土地の所有者等と「風景地保護協定」を締結することができ,その公告がなされた後は,当該協定の区域内の土地の所有者となった者に対して,その効力が及びます。(自然公園法・48条) 公告があったことで「承知して購入した」とみなされるわけです。 ⇒ 自然公園法 ▼協定が,公告後に当該協定の区域内の土地の所有者等となった者に対してその効力が及ぶのは,このほかに,建築協定〔建築基準法・75条〕(平成5年,15年),緑地協定〔都市緑地法・第45条〜第54条〕,管理協定〔都市緑地法・24条〜30条〕などがあります。 |
●関連問題 |
1.「建築協定は,特定行政庁の認可を受ければ,その認可の公告の日以後新たに当該建築協定区域内の土地の所有者となった者に対しても,その効力が及ぶ。」(宅建・平成5年・問24・肢4) |
【正解:○】建築基準法75条 |
2.「認可又は締結の公告のあった緑地協定又は管理協定はその公告のあった後において当該緑地協定区域内又は当該管理協定区域内の土地の所有者になった者に対し,その者が不知であった場合を除き,効力を有する。」(不動産鑑定士・2次・平成14年) |
【正解:×】都市緑地法・第29条,第50条。公告があったからには「知らなかった」とは言えない。公告があったということは「知っていた」とみなされる。 |
●風景地保護協定 |
第43条 (風景地保護協定の締結等) 2 風景地保護協定については、風景地保護協定区域内の土地の所有者等の全員の合意がなければならない。 第46条(風景地保護協定の公告等) 環境大臣、地方公共団体又は都道府県知事は、風景地保護協定を締結し、又は33条の認可をしたときは、環境省令で定めるところにより、その旨を公告し、かつ、当該風景地保護協定の写しを公衆の縦覧に供するとともに、風景地保護協定区域である旨を当該区域内に明示しなければならない。 第48条 (風景地保護協定の効力) 公告のあつた風景地保護協定は、その公告のあつた後において当該風景地保護協定区域内の土地の所有者等となつた者に対しても、その効力があるものとする。 |
●関連問題 |
「国定公園の区域内には,民有林も含まれるが,国立公園はすべて国公有地である。」(不動産鑑定士・2次・平成4年) |
【正解:×】国定公園・国立公園とも私有地に指定できないということはなく,国公有地にのみ指定されるのではない。 |
●国立公園・国定公園の許可と届出−頻出事項 | ||||||||||||
■国立公園・国定公園の出題歴 国立公園・特別保護地区 昭和56年,昭和57年,
普通地域は,国立公園又は国定公園の区域のうち特別地域及び海域公園地区に含まれない区域で,一定の行為について事前の届出が必要になります。
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●諸法令〔その他の制限法令〕の過去問Archives |
昭和56年,昭和57年,昭和58年,昭和59年,昭和60年,昭和62年,昭和63年,平成元年,平成2年,平成10年,平成11年,平成12年,平成13年,平成14年・問24, 平成14年・問25,平成15年,平成16年, |