法令上の制限 実戦篇

諸法令の過去問アーカイブス 平成2年・問28


は,甲県内 (指定都市の区域外) 2,000平方メートルの土地を有し,当該土地に住宅を建築し,又は当該土地を売却しようとしている。この場合に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成2年・問28)

1.「当該土地が都市計画区域外の農地で,当該土地に住宅を建築するときは,は,農地法の規定に基づき甲県知事の許可を,また,都市計画法の規定に基づき甲県知事の許可を,それぞれ受けなければならない。」

2.「当該土地が乙市の市街化調整区域内の土地で,当該土地を乙市に売却するときは,は,公有地の拡大の推進に関する法律の規定に基づき,甲県知事に届出をしなければならないが,都市計画法の規定に基づき,甲県知事に届け出る必要はない。」

3.「当該土地が土地収用法による事業認定の告示において起業地とされている土地で,当該土地に住宅を建築するときは,は,同法の規定に基づき,甲県知事に届出をしなければならない。」

4.「当該土地が国定公園の特別保護地区内の土地で,当該土地をに売却するときは,は,自然公園法の規定に基づき,甲県知事に届け出る必要はない。」

【正解】

× × ×

1.「当該土地が都市計画区域外の農地で,当該土地に住宅を建築するときは,は,農地法の規定に基づき甲県知事の許可を,また,都市計画法の規定に基づき甲県知事の許可を,それぞれ受けなければならない。」

【正解:×

◆都市計画区域外の農地

 例え,都市計画区域外であっても農地に住宅を建築するときは,農地法4条1項により,農地の転用について,都道府県知事(4ha超は農林水産大臣)の許可を受けなればなりません。

 しかし,都市計画区域外の土地に住宅を建築する事について,都市計画法の規定による許可を受ける必要はありません。

2.「当該土地が乙市の市街化調整区域内の土地で,当該土地を乙市に売却するときは,は,公有地の拡大の推進に関する法律の規定に基づき,甲県知事に届出をしなければならないが,都市計画法の規定に基づき,甲県知事に届け出る必要はない。」

【正解:×昭和57年,昭和60年

◆公有地の拡大の推進に関する法律

 <都市計画施設の区域内の土地>や,<都市計画区域内〔当然市街化調整区域も含まれる〕に所在する一定の土地〔要件については下の表参照〕>を所有する者は,その土地を有償で譲り渡そうとするときは,原則として,その土地の所在および面積,譲渡予定価格,譲り渡そうとする相手方等の主務省令(総務省令・国土交通省令)で定める事項を,当該土地の所在する市町村長を経由して,都道府県知事(市の区域内では市長)に事前に届け出なければいけません(4条1項)

 しかし,これにはいくつか例外があり,国・地方公共団体・政令で定める法人に譲り渡されるものであるとき,又はこれらの者が譲り渡すものであるときは届け出る必要はありません。(4条2項1号)

 本肢では,売却する相手方が地方公共団体である市なので届け出る必要はありません。
したがって×です。〔後半部分はメクラマシなので気にする必要はありません。〕

 ⇒ 公有地の拡大の推進に関する法律 

国土利用計画法の事後届出をするケースでも,公拡法による届出を事前にしなければいけないことがあります。(公拡法は公有地に必要な土地を確保するという制度趣旨。)

 なお,国土利用計画法で規制区域に指定された区域内の土地の場合や注視区域・監視区域の事前届出が必要な場合は,公拡法の届出義務はありません。

■公有地の拡大の推進に関する法律の届出対象となる土地

区域区分 届出対象となる土地
都市計画施設の
区域内
土地区画整理事業で規定されている一定の土地を除く(昭和57,60)
都市計画区域内 道路、都市公園、河川などの予定地、及び政令で定める土地

・新たな市街地の造成を目的とする土地区画整理事業で、
都道府県知事が指定し、主務省令で定めるところにより
公告したものを施行する区域内の土地

住宅街区整備事業の施行区域として定められた土地の
区域内の土地

都市計画法の「生産緑地地区」の区域内の土地 

都市計画区域内 上記のほか、面積が2,000平方メートルを下回らない規模で
政令で定める規模以上のもの

3.「当該土地が土地収用法による事業認定の告示において起業地とされている土地で,当該土地に住宅を建築するときは,は,同法の規定に基づき,甲県知事に届出をしなければならない。」

【正解:×

◆起業地

 事業の認定をした旨の告示があった後においては,都道府県知事の許可を受けなければ,起業地について明らかに事業に支障を及ぼすような形質の変更をすることができません(土地収用法・28条の3・第1項)

 本肢では,単に「届出でよい」としているので×です。『住宅を建築する』というのは『起業地について明らかに事業に支障を及ぼすような形質の変更』に該当します。

●類題
「事業の認定の告示があった後においては,何人も,市町村長の許可を受けなければ,起業地について明らかに事業に支障を及ぼすような形質の変更をしてはならない。」(不動産鑑定士・2次・平成9年)

【正解:×】「市町村長の許可」ではなく,<都道府県知事の許可>。

4.「当該土地が国定公園の特別保護地区内の土地で,当該土地をに売却するときは,は,自然公園法の規定に基づき,甲県知事に届け出る必要はない。」

【正解:国立公園・昭和56年,57年,国定公園・昭和59年,62年,63年,平成11年,15年

◆国定公園・特別保護地区

 国定公園の特別保護地区では一定の行為については都道府県知事の許可が必要ですが,土地の売却についての許可や届出は規定されていません。したがってです。

 環境大臣は国立公園について(都道府県知事は国定公園について),当該公園の景観を維持するため,特に必要があるときは,公園計画に基づいて,特別地域内に特別保護地区を指定することができる。(21条1項)

 特別保護地区内においては,一定の行為は,国立公園にあっては環境大臣の,国定公園にあっては都道府県知事の許可を受けなければ,してはならない。(21条3項)

 国立公園・国定公園の特別地域や特別保護地区では,以下の行為をしようとする者は,国立公園では環境大臣,国定公園では都道府県知事の許可を受けなければいけません。(自然公園法・20条3項,21条3項)

・工作物を新築し(昭和56-57,62,平成11)改築し又は増築すること
・土地を開墾し(昭和59)その他土地の形状を変更すること。(昭和63)
・広告物その他これに類する物を掲出し,若しくは設置し,又は広告その他これに類するものを工作物等に表示すること。
・木竹を伐採すること。

・環境大臣が指定する区域内において木竹を損傷すること
・鉱物を掘採し,又は土石を採取すること
・水面を埋め立て,又は干拓すること。

・環境大臣が指定する区域内において当該区域が本来の生育地でない植物で、当該区域における風致の維持に影響を及ぼすおそれがあるものとして環境大臣が指定するものを植栽し、又は当該植物の種子をまくこと。

・環境大臣が指定する区域内において当該区域が本来の生息地でない動物で、当該区域における風致の維持に影響を及ぼすおそれがあるものとして環境大臣が指定するものを放つこと

・特別地域における風致の維持に影響を及ぼすおそれがある行為で政令で定めるもの
・特別保護地区における景観の維持に影響を及ぼすおそれがある行為で政令で定めるもの

 ⇒ 自然公園法 

自然公園法の出題

 特別保護地区 昭和56年,57年,62年,平成2年
 特別地域 昭和59年,63年,平成11年,
 風景地保護協定 平成15年

●類題
「国立公園又は国定公園の特別保護地区内の土地を売買した場合には,その土地の譲受人は,環境大臣にその旨を届け出なければならない。」(不動産鑑定士・2次・平成12年)

【正解:×】売買についての規定はないので×

●国立公園・国定公園の許可と届出−頻出事項

■国立公園・国定公園の出題歴

  国立公園・特別保護地区 昭和56年,昭和57年,
  
国定公園・特別保護地区 昭和62年,平成2年,
         特別地域 昭和59年,63年,平成11年 

 国立公園  特別地域
 特別保護地区
 海域公園地区
 環境大臣

 地域の指定・許可権者

 国定公園  特別地域
 特別保護地区
 海域公園地区
 都道府県知事

 地域の指定・許可権者

 普通地域は,国立公園又は国定公園の区域のうち特別地域及び海域公園地区に含まれない区域で,一定の行為について事前の届出が必要になります。

 国立公園  普通地域  環境大臣に届出。
 国定公園  普通地域  都道府県知事に届出。

●諸法令〔その他の制限法令〕の過去問Archives
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