法令上の制限 実戦篇

諸法令の過去問アーカイブス 昭和60年・問27 


次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和60年・問27)

1.「新住宅市街地開発事業の施行者から,建築物を建築すべき宅地を譲り受けた者〔その承継人も含む。〕は,新住宅市街地開発法の規定に基づき,原則として,その譲受けの翌日から起算して10年以内に,処分計画で定める規模及び用途の建築物を建築しなければならない。」

2.「都市計画区域内に所在する土地で,かつ,都市計画施設の区域内にあるものを所有する者は,その土地を有償で譲り渡そうとするときは,市町村に譲り渡すときであっても,公有地の拡大の推進に関する法律の規定に基づき,原則として,その土地の所在および面積,譲渡予定価格等を都道府県知事(市の区域内では市長)に届け出なければならない。」

3.「生産緑地地区内において宅地の造成を行おうとする者は,生産緑地法の規定に基づき,原則として,市町村長の許可を受けなければならない。」

4.「地域森林計画の対象となっている民有林〔保安林並び保安施設地区の区域内及び海岸保全区域内の森林を除く。〕において開発行為をしようとする者は,森林法の規定に基づき,原則として,農林水産大臣の許可を受けなければならない。」

【正解】

× × ×

1.「新住宅市街地開発事業の施行者から,建築物を建築すべき宅地を譲り受けた者〔その承継人も含む。〕は,新住宅市街地開発法の規定に基づき,原則として,その譲受けの翌日から起算して10年以内に,処分計画で定める規模及び用途の建築物を建築しなければならない。」

【正解:×

◆新住宅市街地開発事業

 <譲受けの翌日から起算して10年以内>ではなく,<譲受けの翌日から起算して5年以内>です。

 新住宅市街地開発事業の施行者等から,建築物を建築すべき宅地を譲り受けた者〔その承継人も含む。〕は,原則として,その譲受けの日から起算して5年以内に,処分計画で定める規模及び用途の建築物を建築しなければならない。(新住宅市街地開発法・31条)

新住宅市街地開発事業の施行者から土地を譲り受けた者が,その土地を,第三者に転売するのを防止するための措置です。

●条文確認
(建築物の建築義務)
第31条
 施行者又は第23条第二項の規定により処分計画に定められた信託を引き受けた信託会社等(以下「特定信託会社等」という。)から建築物を建築すべき宅地を譲り受けた者(その承継人を含むものとし、国、地方公共団体、地方住宅供給公社、特定信託会社等その他政令で定める者を除く。)は、その譲受けの日の翌日から起算して5年以内に、処分計画で定める規模及び用途の建築物を建築しなければならない。

(造成宅地等に関する権利の処分の制限)
第32条
 第27条第2項の公告(事業地の工事完了の公告)の日の翌日から起算して10年間は、造成宅地等又は造成宅地等である宅地の上に建築された建築物に関する所有権、地上権、質権、使用貸借による権利又は賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利の設定又は移転については、国土交通省令で定めるところにより、当事者が都道府県知事の承認を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに掲げる場合は、この限りでない。

一  当事者の一方又は双方が国、地方公共団体、地方住宅供給公社その他政令で定める者である場合

二  相続その他の一般承継により当該権利が移転する場合

三  滞納処分、強制執行、担保権の実行としての競売(その例による競売を含む。)又は企業担保権の実行により当該権利が移転する場合

四  土地収用法 (昭和26年法律第219号)その他の法律により収用され、又は使用される場合

五  その他政令で定める場合

2.「都市計画区域内に所在する土地で,かつ,都市計画施設の区域内にあるものを所有する者は,その土地を有償で譲り渡そうとするときは,市町村に譲り渡すときであっても,公有地の拡大の推進に関する法律の規定に基づき,原則として,その土地の所在および面積,譲渡予定価格等を都道府県知事に届け出なければならない。」

【正解:×昭和57年・問28,60年・問27,平成2年・問28,

◆公有地の拡大の推進に関する法律

 都市計画施設の区域内にあるものを所有する者は,その土地を有償で譲り渡そうとするときは,原則として,その土地の所在および面積,譲渡予定価格,譲り渡そうとする相手方等の主務省令(総務省令・国土交通省令)で定める事項を,当該土地の所在する市町村長を経由して,都道府県知事(市の区域内では市長)事前に届け出なければいけません(4条1項)

 しかし,これにはいくつか例外があり,国・地方公共団体・政令で定める法人に譲り渡されるものであるとき,又はこれらの者が譲り渡すものであるときは届け出る必要はありません。(4条2項1号)

 ⇒ 公有地の拡大の推進に関する法律 

国土利用計画法の事後届出をするケースでも,公拡法による届出を事前にしなければいけないことがあります。(公拡法は公有地に必要な土地を確保するという制度趣旨。)

■公有地の拡大の推進に関する法律の届出対象となる土地

区域区分 届出対象となる土地
都市計画施設の
区域内
土地区画整理事業で規定されている一定の土地を除く(昭和57,60)
都市計画区域内 道路、都市公園、河川などの予定地、及び政令で定める土地

・新たな市街地の造成を目的とする土地区画整理事業で、
都道府県知事が指定し、主務省令で定めるところにより
公告したものを施行する区域内の土地

住宅街区整備事業の施行区域として定められた土地の
区域内の土地

都市計画法の「生産緑地地区」の区域内の土地 

都市計画区域内 上記のほか、面積が2,000平方メートルを下回らない規模で
政令で定める規模以上のもの

3.「生産緑地地区内において宅地の造成を行おうとする者は,生産緑地法の規定に基づき,原則として,市町村長の許可を受けなければならない。」

【正解:昭和59年,平成11年,13年

◆生産緑地地区

 生産緑地地区は,市街化区域内の一定の農地等に都市計画で定められました。(生産緑地法・3条1項)

  農地等(2条1項)…現に農業の用に供されている農地・採草放牧地
             現に林業の用に供されている森林
             現に漁業の用に供されている池沼

 生産緑地内では,次の行為は市町村長の許可を受けなければいけません。(8条1項)

・建築物その他の工作物の新築,改築又は増築 (平成13年)
・宅地の造成 (昭和60年),土石の採取その他の土地の形質の変更 (昭和59年,平成11年)
・水面の埋立て又は干拓

 ⇒ 生産緑地法 

●各制限の許可権者
生産緑地地区
(生産緑地法)
この区域は、都市計画で定める
(市街化区域内の一定の農地等に定める)
市町村長の許可
特別緑地保全地区
(都市緑地法)
この区域は、都市計画で定める
(都市計画区域内の一定の緑地に定める)
都道府県知事等の許可

4.「地域森林計画の対象となっている民有林〔保安林並び保安施設地区の区域内及び海岸保全区域内の森林を除く。〕において開発行為をしようとする者は,森林法の規定に基づき,原則として,農林水産大臣の許可を受けなければならない。」

【正解:×保安林・昭和56年問29,57年,62年,民有林・昭和56年問28,58年,

◆地域森林計画の対象となっている民有林の開発許可

 地域森林計画の対象となっている民有林では,原則として,以下のようになっています。

・立木の伐採をする → 事前に市町村長に届出 (森林法・10条の8第1項)

・開発行為(1 ha を超える) → 都道府県知事の許可が必要 (森林法・10条の2第4項)

■開発行為 土石又は樹根の採掘,開墾その他の土地の形質を変更する行為で,森林の土地の自然的条件,その行為の態様等を勘案して政令で定める規模(1 ha)を超えるもの (森林法・10条の2第1項,施行令・2条の3)

【出題歴】開発行為 (開発規模=昭和56年問28,許可権者=58年,60年)

 ⇒ 森林法 


●諸法令〔その他の制限法令〕の過去問Archives
昭和56年昭和57年昭和58年昭和59年,昭和60年,昭和62年昭和63年平成元年平成2年平成10年平成11年平成12年平成13年平成14年・問24平成14年・問25平成15年平成16年平成20年・問25

諸法令の過去問アーカイブスに戻る   過去問アーカイブス・法令制限に戻る 

1000本ノックのその他の法令制限に戻る 宅建1000本ノック・法令上の制限に戻る