法令上の制限 実戦篇

諸法令の過去問アーカイブス 平成10年・問25


次の記述のうち,誤っているものはどれか。(平成10年・問25)

1.「宅地造成等規制法によれば,宅地造成工事規制区域は,宅地造成に伴い災害が生ずるおそれの著しい市街地又は市街地となろうとする土地の区域について指定される。」

2.「建築基準法によれば,災害危険区域内における建築物の建築に関する制限で災害防止上必要なものは,市町村の規則で定めなければならない。

3.「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律によれば,急傾斜地とは,傾斜度が30度以上である土地をいい,急傾斜地崩壊危険区域は,崩壊するおそれのある急傾斜地を含む土地で所定の要件に該当するものの区域について指定される。」

4.「河川法によれば,河川保全区域内において土地の形状を変更する行為 (政令で定める行為を除く。) をしようとする者は,河川管理者の許可を受けなければならない。」

【正解】

×

1.「宅地造成等規制法によれば,宅地造成工事規制区域は,宅地造成に伴い災害が生ずるおそれの著しい市街地又は市街地となろうとする土地の区域について指定される。」

【正解:昭和58年,61年,平成元年,4年,8年,9年,10年

◆宅地造成工事規制区域の指定

 都道府県知事(指定都市,中核市,特例市の区域内の土地については,それぞれ指定都市,中核市又は特例市の長。)は,必要があると認めるときは、関係市町村長(特別区の長を含む)の意見を聴いて,宅地造成に伴い災害が生ずるおそれの著しい市街地又は市街地となろうとする土地の区域を宅地造成工事規制区域として指定することができます。(宅地造成等規制法・3条1項)

宅地 農地,採草放牧地及び森林並びに道路,公園,河川その他政令で定める公共の用に供する施設の用に供せられている土地以外の土地

宅地造成 宅地以外の土地を宅地にするため又は宅地において行なう土地の形質の変更で政令で定めるもの(宅地を宅地以外の土地にするために行なうものを除く。)

災害 がけくずれ又は土砂の流出による災害。

 ⇒ 宅地造成等規制法 

●類題
「規制区域は,宅地造成に伴い,がけくずれ又は土砂の流出を生ずるおそれが著しい土地の区域であれば,どこでも指定することができる。」(昭和51年)
【正解 :×】『市街地又は市街地になろうとする土地の区域』に限られる。どこでも指定することができるのではない。→人が密集していく土地に土砂災害が生じるのを防ぐ。

2.「建築基準法によれば,災害危険区域内における建築物の建築に関する制限で災害防止上必要なものは,市町村の規則で定めなければならない。

【正解:×昭和42年,昭和54年・肢4,平成10年・問25・肢2,

◆災害危険区域

 建築基準法では,

 地方公共団体は,条例で,津波高潮出水等による危険の著しい区域
 災害危険区域として指定することができます。(39条1項)

 建築物の建築制限については,

 災害危険区域内における住居の用に供する建築物の建築の禁止その他建築物の建築に関する制限で災害防止上必要なものは、地方公共団体の条例で定める(39条2項)

となっており,市町村の規則ではありません。

    区域の指定 制限行為について
砂防指定地

(砂防法)

国土交通大臣 都道府県知事が禁止・制限し,
都道府県の条例で定める

(下記の場合は,国土交通大臣が知事の職権を施行,
国土交通省令で定める。

他の都道府県の利益の保全のために必要なとき
利害関係が一の都道府県にとどまらないとき)

災害危険区域

(建築基準法)

地方公共団体 建築物の建築についての制限は
地方公共団体の条例で定める

3.「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律によれば,急傾斜地とは,傾斜度が30度以上である土地をいい,急傾斜地崩壊危険区域は,崩壊するおそれのある急傾斜地を含む土地で所定の要件に該当するものの区域について指定される。」

【正解:平成11年,14年

◆急傾斜地崩壊危険区域

 「急傾斜地」とは,傾斜度が30度以上である土地をいいます。(2条1項)

 急傾斜地崩壊危険区域は,崩壊するおそれのある急傾斜地を含む土地で所定の要件に該当するものの区域について都道府県知事が指定します。(3条1項)

 急傾斜地崩壊危険区内において当該急傾斜地の崩壊が助長され,又は誘発されるおそれがある行為をしようとする者は,原則として都道府県知事の許可を受けなければいけません。(7条1項)

第3条  都道府県知事は,必要があると認めるときは,関係市町村長(特別区の長を含む。)の意見をきいて,崩壊するおそれのある急傾斜地で,その崩壊により相当数の居住者その他の者の危害が生ずるおそれのあるもの及びこれに隣接する土地のうち,当該急傾斜地の崩壊が助長され,又は誘発されるおそれがないようにするため,第7条第1項各号に掲げる行為が行なわれることを制限する必要がある土地の区域急傾斜地崩壊危険区域として指定することができる。(平成10年)

第7条  急傾斜地崩壊危険区域内においては,次の各号に掲げる行為は,都道府県知事の許可を受けなければ,してはならない

ただし,非常災害のために必要な応急措置として行なう行為,当該急傾斜地崩壊危険区域の指定の際すでに着手している行為及び政令で定めるその他の行為については,この限りでない。

一  水を放流し,又は停滞させる行為その他水のしん透を助長する行為 (平成14年)

二  ため池,用水路その他の急傾斜地崩壊防止施設以外の施設又は工作物の設置又は改造(平成11年)

三  のり切,切土,掘さく又は盛土

四  立木竹の伐採

五  木竹の滑下又は地引による搬出

六  土石の採取又は集積

七  前各号に掲げるもののほか,急傾斜地の崩壊を助長し,又は誘発するおそれのある行為で政令で定めるもの

2  都道府県知事は,前項の許可に,急傾斜地の崩壊を防止するために必要な条件を附することができる。

 ⇒ 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律

災害防止関係法令の過去問の出題状況
    平成10年 平成11年 平成12年 平成13年 平成14年 平成15年
災害危険区域             
急傾斜地崩壊危険区域             
地すべり防止区域内             
ぼた山崩壊防止区域            
土砂災害特別警戒区域   *** *** ***  施行     

※平成13年・16年に「災害防止関係法令」の出題は,ありませんでした。
〔宅地造成等規制法の出題はありました。〕

災害防止関係法令(砂防関係の指定権者,許可権者)
    誰が指定するか 許可権者
急傾斜地崩壊危険区域 都道府県知事 都道府県知事 
地すべり防止区域内 主務大臣
(国土交通大臣 or
農林水産大臣)
都道府県知事
ぼた山崩壊防止区域 主務大臣
(国土交通大臣 or
農林水産大臣)
都道府県知事
土砂災害特別警戒区域 都道府県知事  都道府県知事

災害防止関係法令は,税法その他の土地の問題にも関係するので,用語の定義
指定区域についてはよく見ておきましょう。

4.「河川法によれば,河川保全区域内において土地の形状を変更する行為 (政令で定める行為を除く。) をしようとする者は,河川管理者の許可を受けなければならない。」

【正解:昭和57年,63年,平成13年,14年

◆河川保全区域

 河川区域,河川保全区域,河川予定地で以下のような行為をしようとするには,
河川管理者の許可が必要です。(55条1項など)

●河川法
   河川管理者
制限内容
1級河川 国土交通大臣 ・土地の掘さく,盛土又は切土その他土地の形状を
変更する行為(昭和62,平成10,14)

・工作物の新築又は改築(平成13)

(2つとも,政令で定める行為については除く)

2級河川 都道府県知事

(1級河川は国土交通大臣,2級河川は都道府県知事が指定。)

(河川法において「河川」とは,1級河川及び2級河川をいい,これらの河川に係る河川管理施設を含むものとする。)

河川管理の自的=「治水」、「利水」、「河川環境」(水質、景観、生態系等)の整備と保全

 ⇒ 河川法 

「○○管理者の許可」のまとめ

 道路  (道路法)  道路管理者 平成12・14・16年出題
 都市公園  (都市公園法)  公園管理者
 河川保全区域  (河川法)  河川管理者 平成10・13・14年出題
 海岸保全区域  (海岸法)  海岸管理者 平成14年出題
 港湾区域  (港湾法)  港湾管理者 平成15年出題

●諸法令〔その他の制限法令〕の過去問Archives
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